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2011年

 

尿中総ヨウ素 準用区分先:D001 13 区分E-3(新項目)

平成23年12月1日より適用 尿中特殊物質定性定量検査
【保険点数】200点 判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
【製品名】ヨードモニット
【主な対象】甲状腺中毒症患者
【主な測定目的】甲状腺中毒症における尿中総ヨウ素濃度の測定
【有用性】既存の方法では、放射性ヨウ素の摂取率を測定する必要があり、核種を扱える専門の施設が必要であったが、本品では必要ない。また、妊婦など、放射性ヨウ素を投与できない患者についても、検査を行うことができる。
【製造販売元】日立化成工業株式会社 TEL 03-5320-9380
【測定方法】可視吸光光度法
【包装】480テスト/96ウェルプレート5枚/1キット(ただし、検量線用としてプレート1枚につき16ウェル、計80ウェルを使用する)
【検体】尿

【特徴】甲状腺中毒症は血中の甲状腺ホルモンが過剰となっている病態の総称であるが、バセドウ病(以下GD)、無痛性甲状腺炎(以下ST)や亜急性甲状腺炎の病初期、プランマー病(AFTN)などが含まれる。いずれも血中FT3、FT4が高値で血中TSHが著しく低値となり、これらの項目では鑑別できない。頻度としては、甲状腺中毒症の大部分がGDであるが、次いで多いのがSTである。両者の治療は異なるため、この鑑別は、頻度が高い点、甲状腺腫の性状などの身体所見では区別が難しいことが少なくない点から、臨床上極めて重要である。現在の保険診療では、この2疾患の鑑別の柱は、GDで特異的に検出されるTSH受容体抗体(以下TRAb)測定である。しかし、5-10%程度のTRAb陰性のGDの存在、TRAb偽陽性(この大部分はST)の存在が診断上問題となる。従って、確定診断のために多くの症例において、放射性ヨウ素を用いたRI検査が施行されている。しかし、RI検査は、侵襲がある、高額である、施行可能施設が極めて限られるなど問題が多い。尿中ヨウ素(以下UI)濃度については、過去の報告が示すように、FT4、FT3、TRAbとの比を指標として用いると、上記2疾患を良好に鑑別できることが示唆されている。RI検査に比べやや正確性に欠ける点は否定できないが、TRAb単独での判断の限界を多大に補完することが期待できる。UI測定は簡便な体外診断であり、RI検査のような特別な施設を必要としない。一般医家でも外注で施行可能である。UI測定の導入により、RI検査を必要とした患者の多くで不要となることが期待できる。また、高額なRI検査を減らせることは医療費削減にも貢献し、また患者への侵襲性も減らすことができ、本検査の有用性は高い。


 

肺炎球菌細胞壁抗原(定性) 準用区分先:D012 23区分E2(適用の拡大)

平成23年11月1日より適用 感染症免疫学的検査
【保険点数】210点 判断料:免疫学的検査判断料 144点
【製品名】ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)
【主な対象】肺炎球菌感染が疑われる中耳炎患者または副鼻腔炎患者
【主な測定目的】中耳貯留液・耳漏または上咽頭(鼻咽腔)鼻汁中の肺炎球菌抗原の検出(肺炎球菌感染症の診断補助)
【有用性】培養結果よりも早く起因菌を同定することで、適切な抗生剤を早期に選択できる可能性がある
【製造販売元】大塚製薬株式会社 TEL 03-6361-7311
【測定方法】イムノクロマト法
【包装】10テスト/1キット
【結果が出るまでの時間】約20分
【自動化】否
【検体】中耳貯留液・耳漏または上咽頭(鼻咽腔)鼻汁

【特徴】ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)は,中耳貯留液・耳漏または上咽頭(鼻咽腔)鼻汁中の肺炎球菌抗原の検出を目的とする体外診断用医薬品である。
 小児の急性中耳炎や急性副鼻腔炎は、近年、集団保育の低年齢化などの生活環境の変化や原因菌の薬剤耐性化に伴って、難治例や遷延例が急増しており大きな問題となっている。関連学会がこれらの疾患に対して診療ガイドラインを発表して適切な対処を行うよう啓発しているが、これらの感染症の起因菌を同定するのに、細菌培養同定検査では結果が判明するまでに48-72時間を要し、また、短時間での判定が可能な塗抹検査では、熟練した臨床検査技師や設備、器具が求められるため実施可能な施設が限られてしまうことが問題となっている。これらの状況から、原因菌不明のまま経験的な投薬がなされているのが現状であるが、更なる耐性菌の増加が懸念され、これを防ぐためにも早期に起因菌を同定し、それに適した抗菌薬を投与することが重要であると考えられている。肺炎球菌は急性中耳炎と急性副鼻腔炎の主要起因菌であり、これによる感染を早期に診断することの意義は大きい。
 本製品はイムノクロマト法を測定原理として、肺炎球菌抗原を20分で簡便に検出できる診断薬である。現行の「ラピラン肺炎球菌」は肺炎球菌の細胞壁抗原を認識する診断薬であるが、本診断薬はそれに加え、細胞膜多糖体抗原,莢膜抗原等も認識することにより高感度化し、中耳炎患者の中耳貯留液および耳漏で81.4%、副鼻腔炎患者の鼻咽腔鼻汁で75.2%の感度を有しており、臨床的有用性は高い。
 中耳炎や副鼻腔炎における起因菌検出試薬はない現状であり、本診断薬の利用は抗菌薬の適正使用を促すとともに、薬剤耐性菌の増加を抑制し、難治性・遷延性感染症患者の減少に寄与することが期待される。

【保険請求上の留意事項】
イムノクロマト法により中耳炎および副鼻腔炎の診断に用いた場合に算定できる。


 

IgA-HE抗体価(定性) 準用区分先: D012 23  区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年10月1日より適用 微生物核酸同定・定量検査
【保険点数】210点 判断料:144点
【製品名】イムニスIgA anti-HEV EIA
【主な対象】E型肝炎が疑われる患者
【主な測定目的】血清中のIgA-クラス抗HEV抗体の検出(E型肝炎ウイルス感染の診断の補助)
【有用性】E型肝炎ウイルスの感染を診断できる臨床用の体外診断薬はこれまで存在しなかった。
【製造販売元】株式会社特殊免疫研究所 TEL 03-3814-4081
【測定方法】酵素免疫測定法(EIA法)
【包装単位】96テスト/1キット(ブランクとして1テスト、陽性及び陰性コントロールとして2テスト、最大で91テスト)
【結果が出るまでの時間】約3時間 自動化:不可
【検体】血清
【感度試験】陰性コントロールを試料として5回測定するとき、その平均NetOD値は、0.1以下であり、陽性コントロールを試料として5回測定するとき、その平均Net OD値は、0.9~1.8の範囲内である。
【特異性試験】管理検体を5回同時に測定したとき、陰性管理検体は陰性を、陽性管理検体は陽性を示す。
【同時再現性試験】管理検体を5回同時に測定したとき、陰性管理検体はすべて陰性に、陽性管理検体はすべて陽性に判定される。
【判定】(陽性コントロールの平均Net OD値-陰性コントロールの平均NetOD値)×0.5 として算出したカットオフ値(COV)から、カットオフインデックス(COI)=検体のNet OD値/COV を求める。COI<1を陰性、COI≧1を陽性と判定する。ウイルスが検出されない空白期間の場合や免疫機能低下により抗体産生能が低下している場合には偽陰性、自己免疫疾患血清では非特異反応により偽陽性となる場合があるので、注意を要する。

【特徴】 人獣共通感染症であるE型肝炎ウイルス(HEV)は急性あるいは劇症E型肝炎の原因病原体であり、わが国では感染症法において四類感染症に分類され、届出が義務づけられている。毎年50~60例の感染報告があるが、実際の感染者はこれより遥かに多いと推定され、その発生状況を把握することは重要である。従来は輸入感染症と考えられてきたが、近年、土着HEV株による国内感染が増加している。HEVは主として経口感染するウイルスで、加熱不完全なブタ・シカの内臓肉食などが感染危険因子である。急性期のE型肝炎に対しては対症療法を行うが、寛解後は再発の恐れがないため、E型肝炎と診断できれば肝障害の終息を確認して比較的短期間でフォローアップを終了できる。しかしながら、従来は原因不明とされたため、その他の多くの検査が必要とされてきた。
 イムニスIgA anti-HEV EIA(E型肝炎ウイルス抗体キット)は、E型急性肝炎の原因ウイルスであるE型肝炎ウイルス(HEV)に対する血清中IgAクラス抗HEV抗体を、二段階の抗原抗体反応と酵素呈色反応を用いたEIA法により検出するキットである。
 一般的に急性肝疾患の治療方針の決定には原因の特定が必要である。自己免疫性肝炎や薬剤性肝障害を鑑別するためには除外診断が原則であるが、A, B, C型肝炎に加えE型肝炎を除外することは重要であり、そのためにも本検査は有用である。E型肝炎患者にとっては、E型肝炎の診断が可能になることにより、不要な検査を回避することが可能になる。E型肝炎は他のウイルス性肝炎と比較して重症化率が高く死亡例もあるが、本検査により早期診断を行い、早期治療を行うことにより予後の改善が期待できる。臨床性能試験においては、臨床診断によるE型肝炎患者検体94例を含む1095症例の保存血清について、有病正診率97.8%、無病正診率100%、診断効率99.8%と良好な相関が得られた。IgMクラス抗HEV抗体測定系より非特異反応が少なく、特異性、感度とも良好であることが示された。また、ほとんどの検体において発症当日から陽性と判定でき、初期からHEVを検出可能であった。

【保険請求上の留意事項】
IgA-HE抗体価(定性)は、区分番号「D012-23」の抗アニサキスIgG・A抗体価に準じて算定する。


 

マイコプラズマ核酸同定検査 準用区分先: D023 4  区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年10月1日より適用 微生物核酸同定・定量検査
【保険点数】300点 判断料: 150点
【製品名】LoopampマイコプラズマP検出試薬キット
【主な対象】 マイコプラズマ感染症が疑われる患者
【主な測定目的】咽頭拭い液(鼻咽頭拭い液を含む)又は喀痰から抽出されたマイコプラズマDNAの検出(マイコプラズマ感染の診断補助)
【有用性】 より迅速にマイコプラズマ感染症を診断することができる
【製造販売元】栄研化学株式会社 TEL 0120-308-421
【測定方法】LAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification)法
【包装単位】48テスト/1キット(陽性、及び陰性コントロールとして2テスト、最大で46テスト)
【結果が出るまでの時間】約2時間 自動化:不可
【検体】咽頭拭い液(鼻咽頭拭い液を含む)又は喀痰
【感度・正確性】陰性管理検体(濃度0コピー/テスト)、陽性管理検体1(濃度60コピー/テスト)、陽性管理検体2(濃度600コピー/テスト)を測定したとき、陰性管理検体は陰性に、陽性管理検体1及び2は陽性に判定される。
【同時再現性】管理検体を4回同時に測定したとき、陰性管理検体はすべて陰性に、陽性管理検体はすべて陽性に判定される。
【最小検出感度】25コピー/テスト
【判定】陽性コントロールで濁度が上昇し、陰性コントロールで濁度が上昇していないことを確認した上で、各検体の濁度の上昇が認められた場合を「陽性」、濁度の上昇がみられない場合を「陰性」とする。

【特徴】 非定型肺炎の中で、Mycoplasma pneumoniae によるマイコプラズマ肺炎は頻度が高く、治療法が確立されているにもかかわらず、治療開始早期の段階で結果の得られる診断方法が少ないため、ときに重症化や遷延化するケースがあった。そのため、適切な診断に基づく治療を迅速に行うことが求められている。
 マイコプラズマ肺炎の診断は、臨床症状だけでは困難であり、病原体の検出あるいは病原体に対する抗体の検出が利用されている。病原体の検出で最も確実な検査法は培養法であるが、手技が煩雑であり、結果を得るまでに1週間以上の時間を要する。病原体に対する抗体の検出方法としては血清抗体価測定法があり汎用されているが、ペア血清を用いるため結果を得るまでに数週間を要する。このように既存の方法では、治療後にしか結果が得られず、診断結果を早期に治療に反映できないため、診療現場ではエンピリック治療を行わざるを得ない状況にあり、簡易・迅速な検査法が必要とされている。
 今回、新規保険収載された『LoopampマイコプラズマP検出試薬キット』は、国産技術である遺伝子増幅法のLAMP法によって咽頭拭い液 (鼻咽頭拭い液を含む) 又は喀痰検体中のマイコプラズマ遺伝子を検出するもので、検体採取から判定まで2時間以内に終了し、M.pneumoniae のみを特異的に検出することが可能である。207名の急性下気道感染症が疑われる患者を対象に実施した臨床性能試験では、本法と培養法との比較において、陽性一致率98.3%、陰性一致率93.9%、全体一致率95.2%と良好な結果を示した。
 本検査により、治療開始早期の段階において、マイコプラズマ感染を簡便・迅速に検出できることで、適切な治療方針を立て、エンピリック治療からマイコプラズマ感染に対する抗菌薬への速やかな切り替えが可能となる。また、不要な抗生物質の使用削減は多剤耐性菌出現の抑制にも資することができるものと考えられる。

【保険請求上の留意事項】
マイコプラズマ核酸同定検査は、区分番号「D023-4」の淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定検査に準じて算定する。


 

レジオネラ核酸同定検査 準用区分先: D023 4  区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年10月1日より適用 微生物核酸同定・定量検査
【保険点数】300点 判断料:150点
【製品名】Loopampレジオネラ検出試薬キットC
【主な対象】 レジオネラ感染症が疑われる患者
【主な測定目的】喀痰から抽出されたレジオネラDNAの検出(レジオネラ感染の診断補助)
【有用性】 尿中抗原検査では診断できない血清群に属するレジオネラも診断できる(したがって、診断の感度を上げることができる)
【製造販売元】栄研化学株式会社 TEL 0120-308-421
【測定方法】LAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification)法
【包装単位】48テスト/1キット(陽性、及び陰性コントロールとして2テスト、最大で46テスト)
【結果が出るまでの時間】約2時間 自動化:不可
【検体】喀痰
【感度・正確性】陰性管理検体(濃度0 CFU/テスト)、陽性管理検体1(濃度60 CFU/テスト)、陽性管理検体2(濃度600 CFU/テスト)を測定したとき、陰性管理検体は陰性に、陽性管理検体1及び2は陽性に判定される。
【同時再現性】管理検体を4回同時に測定したとき、陰性管理検体はすべて陰性に、陽性管理検体はすべて陽性に判定される。
【最小検出感度】12.5 CFU/テスト
【判定】陽性コントロールで濁度が上昇し、陰性コントロールで濁度が上昇していないことを確認した上で、各検体の濁度の上昇が認められた場合を「陽性」、濁度の上昇がみられない場合を「陰性」とする。

【特徴】レジオネラ感染は、β-ラクタム剤の投与が無効で症状の進行が早く重症化しやすいことから、早期に有効な治療が行われない場合には、予後が悪く致死率が高いため、早期診断が極めて重要である。
 レジオネラ肺炎は典型的な臨床像を示すことが少なく、診断には尿中抗原検査が主に利用されている。しかしながら、尿中抗原検査はレジオネラ肺炎起炎菌の半数程度を占めるLegionella pneumophila 血清群Ⅰを検出するが、その感度は十分とは言えず、またそれ以外のレジオネラ属菌を検出することが困難なため、結果としてレジオネラ肺炎患者の約半数を見逃していると推定される。そのため、尿中抗原検査で陰性を示しても患者のレジオネラ感染を否定できず、追加で培養検査あるいは抗体検査が行われている。しかし、これらの結果を得るまでには1週間から1ヶ月を要し、診断結果を早期に治療に反映できないことから、エンピリック治療が行われている状況にあり、簡易・迅速な検査法が求められている。
 今回新規保険収載された『Loopampレジオネラ検出試薬キットC 』は、国産技術である遺伝子増幅法のLAMP法を用いて喀痰中のレジオネラ16S rDNAを検出するもので、検体採取から判定まで2時間以内に終了し、L. pneumophila 血清群Ⅰに加えて尿中抗原検査では検出困難な同血清群Ⅰ以外の血清群及び病原性を示すことが知られている40種以上のレジオネラ属菌種の殆ど全てを検出する。
 急性下気道感染症が疑われる患者、及びレジオネラ肺炎患者135例を対象に実施した臨床性能試験では、本法と培養法との比較において、陽性一致率95.5%、陰性一致率100%、全体一致率99.3%(134/135)と良好な結果を示した。
 本検査は、従来法では見逃していたレジオネラ肺炎を治療開始早期の段階で検出できることから、緊急性を要するレジオネラ肺炎の診療において的確な治療方針を立てるのに役立ち、追加検査の削減、エンピリック治療による効果のない抗菌薬の長期投与の低減、患者の延命、予後のQOL向上のために有用である。また必要以上の治療薬の投与を回避することにより、多剤耐性菌の出現を抑制することが可能になると考えられる。

【保険請求上の留意事項】
レジオネラ核酸同定検査は、区分番号「D023-4」の淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定検査に準じて算定する。


 

結核菌群核酸同定検査 準用区分先: D023 7  区分E-2(新方法)(測定方法が新しい品目)

平成23年10月1日より適用 微生物核酸同定・定量検査
【保険点数】410点 判断料:150点
【製品名】Loopamp 結核菌群検出試薬キット
【主な対象】結核菌感染が疑われる患者
【主な測定目的】喀痰から抽出された結核菌群DNAの検出(結核菌群感染が疑われる有症状者を対象とする診断の補助)
【有用性】 既存の検査と比較し、より簡便な機器を用いて診断できる。
【製造販売元】栄研化学株式会社 TEL 0120-308-421
【測定方法】LAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification)法
【包装単位】96テスト/1キット(陽性、及び陰性コントロールとして2テスト、最大で94テスト)48テスト/1キット(陽性、及び陰性コントロールとして2テスト、最大で46テスト)
【結果が出るまでの時間】約1時間 自動化:不可
【検体】喀痰
【感度・正確性】陰性管理検体(濃度0ゲノム相当/テスト)、陽性管理検体1(濃度1.875ゲノム相当/テスト)及び陽性管理検体2(濃度125ゲノム相当/テスト)を測定したとき、陰性管理検体は陰性に、陽性管理検体1及び2は陽性に判定される。
【同時再現性】管理検体を5回同時に測定したとき、陰性管理検体はすべて陰性に、陽性管理検体はすべて陽性に判定される。
【最小検出感度】0.38ゲノム相当/テスト
【判定】 A.リアルタイム濁度検出を行う場合 陽性コントロールで濁度が上昇し、陰性コントロール溶液で濁度が上昇していないことを確認したうえで、下記に従い判定する。
陽性:濁度の上昇が認められた場合
陰性:濁度の上昇が認められなかった場合
B.蛍光目視検出を行う場合 陽性コントロールが緑色の蛍光を発し、陰性コントロール溶液が蛍光を発していないことを確認したうえで、下記に従い判定する。
陽性:緑色の蛍光を発した場合
陰性:蛍光を発しなかった場合

【特徴】結核患者の発見が遅れることは、その間に患者が重症化し排菌量が増加する可能性に加え、周囲の人々の感染の機会をも増加させる危険性があるため、患者の早期発見、早期治療は非常に重要である。
 現在診断のために行われている検査には、塗抹検査、分離培養検査、遺伝子検査などがある。しかし、塗抹検査は短時間で結果が得られるが、手技に熟練を要し、感度が低い。また、分離培養検査の感度は高いが、結果を得るまでに6~8週間を要する。これに対し、遺伝子検査は高感度で、検査に要する時間も短い(検体入手から1日)ことから有効であるとされ、PCR法、TRC法等の核酸増幅技術を測定原理とする検査キットが体外診断用医薬品として発売、保険収載されている。しかし、検体前処理、コスト、専用設備を必要とする等の問題から、検査センターに検査を依頼することも多く、その場合の所要時間は2~3日であり、患者の早期発見のためには、さらに簡易で迅速な診断技術が必要とされている。
 今回、新規保険収載された『Loopamp 結核菌群検出試薬キット』は、LAMP法を測定原理とする遺伝子検査法であるが、乾燥試薬化することで試薬調製ステップが簡略化され、簡易抽出法の採用によって、検体前処理・抽出操作についても簡易、迅速化が図られていることから、医療機関で実施可能なレベルのキットである。本キットの最大の特徴は、NALCNaOH等で前処理した喀痰のみならず、未処理の喀痰から直接結核菌群の検出が可能であることで、この場合、検体採取から1時間以内で判定結果を得ることができる。
 結核を疑う160名の患者から2日間にわたり採取した喀痰検体320検体を用いて実施した本法と既承認品(PCR法及びTRC法)との比較検討では、PCR法との全体一致率は、前処理済み喀痰で92.1%、未処理喀痰で91.5%、TRC法との全体一致率は、前処理済み喀痰で93.0%、未処理喀痰で94.3%と良好な結果が得られている。
 本検査により、結核病棟を有する専門医療機関から一般の医療機関までの幅広い施設において、遺伝子検査による結核菌群の検出が行えることで、結核菌群感染の迅速診断が可能となり、患者の早期発見、更には感染拡大防止に貢献できるものと考えられる。

【保険請求上の留意事項】
「7」の結核菌群核酸同定検査は、核酸増幅と液相ハイブリダイゼーション法による検出、LCR法による核酸増幅とEIA法による検出を組み合わせた方法、又はLAMP法による。
なお、結核患者の退院の可否を判断する目的で、患者の病状を踏まえ頻回に行われる場合においても算定できる。


 

抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA) 準用区分先:D014 18区分E-2(新方法)(測定方法が新しい品目)

平成23年10月1日より適用 自己抗体検査
【保険点数】290点 判断料:免疫学的検査判断料 144点
【製品名】ステイシア MEBLuxテスト MPO-ANCA
【主な対象】急速進行性糸球体腎炎の診断又は経過観察のために測定した場合
【主な測定目的】血清中のミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質自己抗体(MPO-ANCA)の測定
【有用性】専用の全自動装置を用いれば、測定にかかる時間が既存品の6分の1程度となる
【製造販売元】株式会社 医学生物学研究所 TEL 0265-76-1777
【測定方法】化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)
【包装単位】100テスト/1キット(検量線の作成に10テスト、陽性及び陰性コントロールとして2テスト、最大で88テスト)
【結果が出るまでの時間】約20分 自動化:可
【検体】血清
【感度・正確性】ステイシアMEBLuxテスト用MPO-ANCA標準血清1とステイシアMEBLuxテスト用MPO-ANCA標準血清2を測定した場合の発光量比A(次式により算出)は5以上である。A = (ステイシアMEBLuxテスト用MPO-ANCA標準血清2の発光カウント)/ (ステイシアMEBLuxテスト用MPO-ANCA標準血清1の発光カウント)。既知濃度の管理血清3例を測定するとき、いずれも測定値が期待値の±20%の範囲内である。
【同時再現性】陽性管理血清3例を6回同時測定した場合の定量値の変動係数(CV%)は15%以内である。
【測定範囲】1.0~300 U/mL
【判定】陽性:≧ 9.0 U/mL 陰性:< 9.0 U/mL

【特徴】抗好中球細胞質抗体(ANCA)は、1982年Davisらによって壊死性血管炎を示す糸球体腎炎の患者血清中から見い出されたIgG型の自己抗体である。当初は間接蛍光抗体法の染色パターンから、主として細胞質にびまん性に反応するC-ANCAと、核周辺に反応するP-ANCAの二つの染色型に分類されたが、現在ではその抗原の解明によりそれぞれPR-3(proteinase-3)-ANCA、MPO(myeloperoxidase)-ANCAと呼称されるようになっている。前者はウェジナー肉芽腫症で高率に検出され、後者は半月体形成性腎炎および巣状性壊死性腎炎など、急速進行性腎炎と呼ばれる病態で高率に検出されるほか、顕微鏡的多発性血管炎やアレルギー性肉芽腫性血管炎でも検出される。いずれもANCA力価が疾患活動性を反映することが明らかにされており、すでに保険収載されている。
 今回、新規保険収載された「ステイシア MEBLuxテストMPO-ANCA 」は、精製MPO抗原を用いた化学発光酵素免疫抗体法(CLEIA法)を原理として開発された試薬である。本品は既存の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)と比較して約6分の1の時間(およそ20分)で測定可能であり、迅速な検査結果の報告が可能である。性能においても同等以上の測定範囲、基礎性能を有しており、既存試薬との相関も良好である。本品は、免疫発光測定装置「全自動臨床検査システムSTASIA」の専用試薬で検体セット後の測定は自動化されており、効率的な検査室運営にも寄与するものと考えられる。

【保険請求上の留意事項】
「18」の抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)はELISA 法またはCLEIA法により急速進行性糸球体腎炎の診断または経過観察のために測定した場合に算定する。


 

免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比 準用区分先: D014 17  区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年9月1日より適用 自己抗体検査
【保険点数】400点 判断料:144点
【製品名】FREELITE κチェーン 及び FREELITE λチェーン
【主な対象】多発性骨髄腫など、単クローン性ガンマグロブリン血症の患者
【主な測定目的】血清中の免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比の算出(単クローン性ガンマグロブリン血症の診断補助)
【有用性】より低侵襲に、診断や経過観察を行うことができる
【製造販売元】株式会社 医学生物学研究所 TEL 0265-76-1777
【測定方法】ネフェロメトリー法
【包装単位】100検体用/1キット
【結果が出るまでの時間】約18分 自動化:可
【検体】血清
【感度試験】カッパ/ラムダフリースタンダードの最小濃度溶液、及びネフェロメーター用検体希釈液をブランク溶液として各5重測定するとき、ブランク溶液の散乱光強度の平均値はカッパ/ラムダフリースタンダード最小濃度溶液の散乱光強度の平均値の75%未満である。
【正確性試験】異なる濃度の濃度既知管理検体2検体を測定するとき、それぞれの測定値は期待値の±20%以内である。
【同時再現性試験】異なる濃度の濃度既知管理検体2検体につき各10重測定するとき、CV値はいずれも15%未満である。
【測定範囲】検体を100倍希釈して測定したとき、FREELITE κチェーンの測定範囲は5.9 – 190 mg/Lである。検体を100倍希釈して測定したとき、FREELITEλチェーンの測定範囲は8.1 – 260 mg/Lである。
【判定】κ/λ比の参考基準範囲は0.26 – 1.65である。高値(>1.65)で陽性(κ型)。低値(<0.26)で陽性(λ型)

【特徴】 単クローン性γ-グロブリン血症はBリンパ球から分化した形質細胞が腫瘍性に増殖した結果、血中に単クローン性の免疫グロブリンを分泌する事により特徴付けられる。本症には多発性骨髄腫、アミロイドーシス、本態性M蛋白血症( monoclonal gammopathy of undetermined significance,MGUS )などが含まれる。
 一方、免疫グロブリンはH鎖とL鎖から構成されているが、L鎖はH鎖より過剰に産生されているので一部遊離のL鎖が血中に存在する。L鎖には通常κ鎖とλ鎖の2種類があるが、単クローン性γ-グロブリン血症ではκ、λいずれかのL鎖が増加するため、L鎖のκ/λ比に異常が認められる。FREELITE κチェーンとFREELITE λチェーンは、特異抗体により血清中の遊離L鎖のκチェーンとλチェーンをそれぞれ測定し、その比(κ/λ比)を算出する。具体的には、抗ヒト遊離L鎖κまたはλ型ポリクローナル抗体を患者血清と反応させた後、レーザーネフェロメトリーにて遊離L鎖κあるいはλチェーンを測定する。
 従来、単クローン性γ-グロブリン血症の診断においては血清蛋白電気泳動、血清免疫電気泳動、尿免疫電気泳動などの検査が用いられている。血清蛋白電気泳動は血清中の単クローン性γ-グロブリン(M蛋白)の確認に、血清免疫電気泳動はM蛋白の免疫グロブリンサブクラスを決定するのに、尿免疫電気泳動はベンスジョーンズ蛋白などを検出するのに、それぞれ有用である。本測定による血清中の遊離L鎖κ/λ比の算出値はM蛋白確認に有用であるとともに、従来の検査に比べて100倍以上の高い測定感度を有し、今までより低い濃度のM 蛋白が検出可能である。したがって、本検査を従来の検査と組み合わせる事により、より確実に単クローン性γ-グロブリン血症が診断可能となる。多発性骨髄腫の診断感度は、本検査のみでは87.5%、血清蛋白電気泳動のみでは68.8%、血清免疫電気泳動のみでは65.6%であるが、本検査と血清蛋白電気泳動検査を組み合わせた場合には96.9%、本検査と血清免疫電気泳動と組み合わせた場合には93.8%と非常に高率となる。これらは他の単クローン性γ-グロブリン血症であるアミロイドーシスや MGUSでもほぼ同様である。このことよりInternational Myeloma Working Group のガイドラインには「血清中の遊離L鎖κ/λ比検査は血清蛋白電気泳動または血清免疫電気泳動と組み合わせる事により、単クローン性γ—グロブリン血症のスクリーニングに十分な性能を示す」との記載がある。
 また、本検査は感度が高いため、単クローン性γ-グロブリン血症の治療効果判定にも有用である。このため、アミロイドーシスや一部の骨髄腫においては、本検査の施行が国際効果判定基準に定められている。 

【保険請求上の注意】なし。


 

アルカリフォスファターゼ・アイソザイム 区分先:D007 15  区分E-2 (測定項目は新しくないが、測定方法が新しい品目)

平成23年8月1日より適用 血液化学検査
【保険点数】96点  D007 15 アルカリフォスファターゼ・アイソザイムに、D007 15 アミラーゼ・アイソザイムを加算し算定する。 判断料: 生化学的検査(I)判断料144点(月1回に限る)
【製品名】クイックジェル ALP試薬
【主な測定目的】アルカリフォスファターゼ(ALP)アイソザイム(骨型を含む)の測定
【製造販売元】株式会社ヘレナ研究所  TEL 048-833-3208
【測定方法】アガロース電気泳動法  定量検査
【主な対象】 肝障害、腎障害、悪性腫瘍の骨転移等
【有用性】 一連の検査において、アルカリフォスファターゼに加え、骨型ALP(BAP)も測定できる。
【包装単位】240テスト/1キット(コントロール用に48テストを用い、1検体について処理の異なる2試料が必要となるため192テスト=96検体が測定可能)
【結果が出るまでの時間】専用機器で約120分、用手法で約150分
【自動化】可(専用機器)、あるいは用手法
【検体】血清
【最小感度】40U/L(±10%)
【正確性試験】既知分画値の試料を測定するとき、ALP2で90~120%、ALP3で80~110%
【同時再現性試験】分画値の変動係数はALP2、ALP3とも5%以下
【測定範囲】80~1200U/L
【参考基準範囲】総活性値が基準範囲内(104~338U/L)の集団健診受診者のALP3 男性:34.1~74.1(%)、63.0~201.4(U/L) 女性:36.9~76.2(%)、52.8~206.8(U/L)
【相関性】PAGE法に対し、r=0.98 y = 1.30x +20.32 CLEIA法に対し、r=0.93 y = 8.60x-14.17

【特徴】 アルカリフォスファターゼ(ALP)はアルカリ条件下でリン酸エステルから無機リン酸を遊離させる酵素で生体内に広く分布している。血中に出現するアイソザイムには骨型ALP、肝型ALP、胎盤型ALP、小腸型ALPがある。骨型ALP (BAP)は骨芽細胞で産生され、その血中レベルは骨芽細胞数・機能に相関していることから、骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症などの代謝性骨疾患や、骨肉腫や転移性骨癌、多発性骨髄腫などの悪性腫瘍において、骨芽細胞の代謝状態を反映するマーカーとして測定されている。
 今回、保険収載されるクイックジェル ALP試薬(株式会社ヘレナ研究所)は、すでに生化学的検査(II) D008 (14)に収載されているEIA法、CLEIA法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE法)とは異なり、アガロース電気泳動法により、血清中のBAP濃度を測定するものである。あらかじめ測定しておいたALP総活性(U/L)にALP 3分画値(%)を乗じることで、定量値を求める。従来から販売されていたキットを一部改良しており、1検体につき前処理液により処理した試料と前処理液に分離液を加えて処理した試料の2つを同時に電気泳動する。前者では高分子小腸型ALPが通常分子量に変換されることで骨型と重ならない位置に泳動され、後者では肝型と骨型の荷電差を大きくして両者の分画がされやすくなり、骨型をより正確に測定することが可能となった。
 本法とPAGE法及びCLEIA法との相関は良好であり、一方、EIA法、CLEIA法とは異なり電気泳動法でアイソザイムを分画するため、EIA法でときに観察される高分子肝型ALPとの交差反応もみられず、一度の検査ですべての分画のALPアイソザイムを測定できる利点がある。また、ALP結合型免疫グロブリンや脂質結合ALP、小児一過性高ALP血症の鑑別診断にも有用である。さらに、抗体を用いないことで、EIA法などに比し、キットそのものの価格は安価となっている。

【保険請求上の留意事項】
(12) 「15」のアルカリフォスファターゼ・アイソザイムは、アガロース電気泳動法によって、一連の検査によって同時に、骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)を測定した場合には、「15」のアミラーゼ・アイソザイムをさらに加算する。ただし、区分番号「D008」内分泌化学検査の「14」の骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)と併せて実施した場合には、当該加算は算定できない。
*著者注:1つの項目で同じ点数を2回算定できないため、便宜上、同じ点数であるアミラーゼ・アイソザイムの点数を加算することとし、96点となった。


 

WT1 mRNA核酸増幅検査 区分先:D006-7  区分E-2 (新方法)(適応の拡大)

平成23年8月1日より適用 血液学的検査

【保険点数】2000点 判断料:血液学的検査判断料125点(月1回に限る)
【製品名】WT1 mRNA測定キット「オーツカ」
【主な測定目的】末梢血白血球又は骨髄液有核細胞より抽出したRNA中のウイルムス腫瘍-1遺伝子mRNAの測定
【製造販売元】大塚製薬株式会社 TEL 0120-189-840
【測定方法】リアルタイムRT-PCR法  定量検査
【主な対象】 急性骨髄性白血病(AML):微小残存病変のモニタリング(既存の適用)骨髄異形成症候群(MDS):診断補助及び進行度モニタリング(新規の適用)
【有用性】白血病化へのハイリスク群の鑑別法が可能となり、根治療法である同種造血幹細胞移植を含む治療方針の決定に使用できる可能性がある。
【包装単位】96テスト/1キット(検量線作成用に6テスト(3濃度2重測定)、コンタミネーション確認用に1テストを用い、同一検体を2つに分注してそれぞれWT1 mRNAおよびGAPDH mRNAを測定するため、1回に同時に測定できる検体数は標準液も含めて最大17検体)
【結果が出るまでの時間】約6時間(試薬調製の30分を含む)
【自動化】可(専用機器としてコバスTaqMan48を用いる)
【検体】末梢血または骨髄液
【感度試験】【正確性試験】【同時再現性試験】略(添付文書を参照してください)
【測定範囲】WT1 mRNA :2.50 X10e3copy/mL~5.00 X10e7copy/mL
        GAPDH mRNA:6.25 X10e4copy/mL~5.00 X10e9copy/mL

【特徴】ウイルムス腫瘍1遺伝子(Wilms tumor gene -1:WT1)は、1990年にCallらにより小児ウイルムス腫瘍の原因遺伝子として見出され、その後、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、白血病などの多くの癌でWT1 mRNAが高率に発現していることが明らかにされている。
 WT1 mRNAは急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)のモニタリングマーカーであり、治療効果の確認、早期の再発診断に有用な検査として、すでに平成19年11月に保険適用となっている。
 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)は原因不明の血球減少症と前白血病状態を呈する疾患群の総称であって均一の疾患ではなく、予後は病型により異なる。貧血症状、出血傾向、易感染性など様々な病態を呈し、MDS患者の 25~45%がAMLに移行するとされている。そのため、診断時にAMLへの移行のリスク評価を行い、それに基づき治療方針を決定することが重要である。WT1 mRNAが高値のMDS患者は、低値のMDS患者に比べ有意に予後不良であり、また、WT1 mRNAがMDSの病勢を反映して推移することが報告されていることから進行度のモニタリングにも有用である。既存のリスク評価として、国際予後判定システムであるInternational Prognostic Scoring System(IPSS)やWHO classification based Prognostic Scoring System (WPSS)という指標が用いられているが、これらでは骨髄穿刺液を用いた染色体検査が必須である。さらに骨髄線維症等により骨髄穿刺液が採取できない場合があり、検査にも3日から数週間という時間を要する。一方、WT1 mRNA検査は、侵襲の高い検査である骨髄穿刺の回数を少なくできる可能性があり、比較的短時間での測定が可能である。WT1 mRNAは、IPSSと良好な相関を示しているが、IPSS低リスク群の中にもWT1 mRNA高値の患者がおり、またIPSS高リスク群の中にもWT1 mRNA低値の患者がいる。とりわけ、IPSS低リスク群の中からWT1 mRNAにより高リスクの患者を選別できる意義は大きく、現行のリスク評価にWT1 mRNAを加味することで、より精度の高い白血病化へのリスク評価が可能になると考えられる。末梢血白血球または骨髄液有核細胞を用いるWT1 mRNA測定は、個々のMDS患者のリスクに応じた治療法の選択に際し、有用な情報を提供する検査と考えられる。

【保険請求上の留意事項】
(1) WT1 mRNA核酸増幅検査
WT1 mRNA核酸増幅検査は、リアルタイムRT-PCR法により、急性骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群の診断の補助又は経過観察時に行った場合に1月に1回を限度として算定できる。


 

ヒト尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP) 区分先:D001「14」区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年8月1日より適用 尿中特殊物質定性定量検査
【保険点数】210点 判断料:尿・糞便等検査判断料34点(月1回に限る)
【製品名】レナプロL-FABPテスト
【主な測定目的】尿中のL型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の測定(尿細管機能障害を伴う腎疾患の診断の補助)
【製造販売元】シミック株式会社 TEL 03-5745-7068
【測定方法】酵素免疫測定法(ELISA法)  定量検査
【主な対象】1. eGFR≧60の、断続的に治療を受けている糖尿病患者、糸球体腎炎などの慢性腎臓病が疑われる患者 2. 急性腎障害が確立されていない、薬剤性腎障害、敗血症または多臓器不全等の患者
【有用性】1. 腎機能が低下する以前の糖尿病患者に対して、本検査を行うことにより糖尿病性腎症の病期進行リスクを判別し、また治療効果の判定にも使用できる可能性がある。2. 急性腎障害が確立されていない、敗血症または多臓器不全等の患者対し、治療転帰を含めた重症化リスクを判別することで、血液浄化療法などの適応判断に利用可能性がある。
【包装単位】96テスト/1キット(検量線作成用に16テストを用い、80テストが測定可能)
【結果が出るまでの時間】約180分
【自動化】不可
【検体】尿
【最小検出感度】3ng/mL
【正確性試験】既知濃度の管理試料を測定するとき、既知濃度の±20%以内
【同時再現性試験】同一検体を測定するとき、測定値の変動係数15%以下
【測定範囲】3~400ng/mL
【参考基準範囲】0.3~8.4μg/gCr

【特徴】尿中の腎機能指標として、従来から種々の検査が用いられてきている。尿蛋白・尿中アルブミンは糸球体の濾過機能が破綻した結果として血中から漏出されるが、日内変動や疾患特異性に問題があり、また、再吸収機能が低下した結果として相対的に原尿中で増加する尿中NAG、尿中β2ミクログロブリン等は尿中安定性や検出精度において問題があるとされてきた。また古典的な腎障害の指標として知られている血清クレアチニンは糸球体濾過機能の現状があらわされるのみであり、腎疾患進行の原因のひとつとされる尿細管機能障害を早期診断できる指標が求められてきた。
 今回、保険収載されるレナプロL-FABPテストは、酵素免疫測定法(ELISA法)により、ヒト尿中のL型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)濃度を測定するキットである。検体中のL-FABPを抗ヒトL-FABPマウスモノクローナル抗体固相化プレートで反応させたのち、二次抗体として酵素標識抗体を添加して生じたサンドイッチ結合物に基質溶液を加えて発色させ、得られた吸光度からL-FABP濃度(クレアチニン補正値;μg/gCr)を算出する。
 L-FABPは近位尿細管の細胞質に局在し、細胞内の脂肪酸を結合しミトコンドリアやペルオキシソームへ輸送することによりβ酸化を促し、近位尿細管のエネルギー産生・恒常性の維持に寄与していると考えられている。腎疾患進行の原因となる虚血・酸化ストレスにより尿中へ排出されることから、尿細管機能障害を伴う腎疾患の診断に有用であり、早期の尿細管機能障害を特異的に検出できる。また、凍結融解・pH 安定性が高く、早朝尿・スポット尿・蓄尿いずれでも性・年齢差に関係なく、広く一般の測定機器により検査可能であることから、高い診断精度が期待できる。
 薬事承認時の臨床性能試験は、健常人、慢性腎臓病(CKD)、急性腎障害(AKI)、日内変動に大別して実施されている。このうちとくにCKDについては、腎機能正常または軽度低下の糖尿病患者に対して、糖尿病性腎症進行のリスク診断が可能である。また中程度以上の腎機能低下のある腎疾患患者においては、尿細管機能障害に対する治療経過観察が行える。AKIについては集中治療室入室時に薬剤性腎障害、敗血症または多臓器不全が疑われる患者において、治療転帰を含めた重症度の診断ができる。そのほか、国内外から報告された各種臨床試験結果からもCKD,AKIともに尿細管機能障害を伴う腎疾患の診断、および治療中の経過観察に有用であった。
 糖尿病患者はその予備軍も含め年々その数が増加しているといわれ、その合併症である糖尿病性腎症患者数も増加傾向にあるとされる。そこから派生する透析患者を増やさないためにも適切な診断マーカーを用いた集約的治療が求められている。尿中L-FABPを健常人上限値(8.4μg/gCr)未満にコントロールすることにより、腎疾患の重症化を防止可能であると考えられる。特に、濾過機能の指標である尿中アルブミンと独立して尿細管機能の指標である尿中L-FABPを測定し、両者高値の糖尿病患者に対する集約的治療を行うことにより、その後の腎症病期進行・医療費上昇を逓減させることが期待される。また、急性期治療においては、早期診断・治療効果判定により治療の効率化に貢献し、医療費の抑制効果が期待される。
 本品は申請者らが世界に先駆けて国内臨床開発を行ったため、国内外において本項目を測定する既存品のない新項目に相当する。

【保険請求上の留意事項】
(5) ヒト尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)
ア ヒト尿中L型脂肪酸結合蛋白は、「14」の尿中Ⅳ型コラーゲンに準じて算定する。
イ 原則として3月に1回に限り算定する。ただし、医学的な必要からそれ以上算定する場合においては、その詳細な理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。


 

HBVジェノタイプ判定 準用区分先:D013-8 区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年5月1日より適用
【保険点数】340点 判断料:144点
【製品名】イムニスHBVゲノタイプ EIA
【主な検査目的】B型肝炎ウイルスのジェノタイプ(AからHまでの8つの遺伝子型のうち、A、B、C及びDの4つの遺伝子型)を判定する
【製造販売元】株式会社特殊免疫研究所 TEL 03-3814-4081
【測定法】酵素免疫測定法(EIA法)
【包装単位】48テスト/1キット(96ウェル×2プレート=192ウェル)(1測定4ウェル。陰性コントロールとして4テスト、陽性コントロールとして2テスト、最大で42テスト)
【結果が出るまでの時間】約3時間 自動化:不可
【検体】血清
【同時再現性試験】ゲノタイプA,B,C,Dの各管理用検体を試料として6回同時に測定するとき、それぞれゲノタイプA,B,C,Dと判定できる
【正確性試験】ゲノタイプA,B,C,Dの各管理用検体を試料として測定するとき、それぞれゲノタイプA,B,C,Dと判定できる
【感度試験】陰性コントロールを試料として6回測定するとき、m,k,s,u各エピトープの平均吸光度は0.1以下、陽性コントロールm、k、s、uを試料として6回測定するとき、m,k,s,u各エピトープの平均吸光度は0.5以上
【検出感度】抗原濃度既知検体を段階希釈した検討で、最小検出感度に相当するHBs抗原量は1.9~24.8 IU/mL(中央値3.1 IU/mL)であり、それ以上の検体ではゲノタイプ判定が可能であった
【判定】 カットオフ値=各エピトープの陰性コントロールの平均値+0.05としたとき、1)陽性:吸光度がカットオフ値未満  2)陰性:吸光度がカットオフ値以上

【特徴】B型肝疾患の原因ウイルスであるHBVはその遺伝子配列の違いから、A-Jの10種のゲノタイプに分類されている。HBVゲノタイプにより予後や治療応答性が異なることから、HBVゲノタイプの特性に応じた治療方法選択が求められている。
国内においてはゲノタイプB, Cが主であるが、ゲノタイプCはゲノタイプBより予後不良であり、ゲノタイプCでは肝癌を引き起こしやすい。一方、ヨーロッパ・アメリカに多いゲノタイプA感染例が、近年、特に急性肝炎で急激に増加している。ゲノタイプB, Cの成人急性感染では慢性化は稀であるが、ゲノタイプAでは遷延化・慢性化する例があり、慢性感染の増加が危惧されている。ゲノタイプ判定を行うことにより、早期に抗ウイルス療法を行い遷延化・慢性化を阻止することが可能となる。B型慢性肝炎の治療にはインターフェロン(IFN)や核酸アナログ製剤が用いられるが、IFNの効果はHBVゲノタイプによって異なり、ゲノタイプA, BではゲノタイプC, Dより効果が高い。そのため、ゲノタイプを判定しそれに合った治療法を選択することで、より高い治療効果が期待できる。
 今回、新規保険収載された『イムニスHBVゲノタイプ EIA』は、DNA抽出・核酸増幅を要さずにHBVゲノタイプを酵素免疫測定法(EIA法)で判定するキットであり、HBs抗原PreS2領域に存在する4つのエピトープ(m,k,s,u)を検出する4つのEIAで構成されている。ゲノタイプA, B, C, Dではそれぞれsu m,ks, ksuのエピトープを持つため、陽性エピトープの組合せによりゲノタイプA, B, C, Dを判別することができる。
 臨床性能試験において、HBs抗原陽性のB型肝疾患392症例の保存血清での本キットによるHBVゲノタイプ判定は、ゲノタイプA, B, C, Dがそれぞれ28, 67, 266, 9例(7.1%, 17.1%, 67.9%, 2.3%)であり、保留22例(5.6%)を除く370例(94.4%)でゲノタイプ判定可能であった。判定率はHBs抗原3 IU/mL未満では6.3%(1/16)だったが、3 IU/mL以上では98.1%(369/376)と高率であった。また、遺伝子配列解析によりゲノタイプが判明している91例(ゲノタイプA, B, C, D各20, 21, 42, 8例)において正確性を検討した結果、本キットによるゲノタイプ判定はゲノタイプA, B, C, D,保留がそれぞれ19, 20, 40, 8, 4例であり、ゲノタイプ判定できた87例(95.6%)については全てDNA配列解析によるGenotypeと一致した。

【保険請求上の注意】
ア HBVジェノタイプ判定は、「11」のHCV特異抗体価に準じて算定する。
イ EIA法により、B型肝炎の診断が確定した患者に対して、B型肝炎の治療法の選択の目的で実施した場合に、患者1人につき1回に限り算定できる。


 

HER2遺伝子標本作製 準用区分先:N 005 区分E-2(新方法)(測定項目は新しくないが、測定方法が新しい品目)

平成23年5月1日より適用
【保険点数】2,500点
【製品名】ベンタナ インフォーム Dual ISH HER2 キット
【主な測定目的】HER 2遺伝子増幅の測定 (HER 2の過剰発現の有無によって、抗HER 2ヒト化モノクローナル抗体抗悪性腫瘍剤の薬剤投与の適応を判断する)
【製造販売元】ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 TEL 0120-868-555
【測定方法】Dual Color in situ Hybridization (DISH)法
【包装単位】HER2 DNA カクテルプローブ: 50テスト ultraView SISH DNPキット: 100テスト ultraView Red ISH DIGキット: 100テスト
【結果が出るまでの時間】12~14時間(設定条件により異なる) 自動化:全自動免疫染色装置
【検体】ホルマリン固定パラフィン切片
【性能】(1) HER2遺伝子非増幅の管理検体を3枚同時に操作するとき、いずれの管理検体においても細胞あたりのHER2シグナルが1~3個及びChr17シグナルが1~3個得られる。
(2) HER2遺伝子増幅の管理検体を3枚同時に操作するとき、いずれの管理検体においても細胞あたりのHER2シグナルが6個以上及びChr17シグナルが1~4個得られる。
(3) HER2遺伝子増幅/非増幅の境界付近にある管理検体を3枚同時に操作するとき、いずれの管理検体においても細胞あたりのHER2シグナルが2~4個及びChr17シグナルが1~3個得られる。
【判定】HER2遺伝子は黒色のシグナルとして、第17番染色体(Chr17)は赤色のシグナルとして染色される。20細胞の各々の核におけるシグナル数を計測し、Chr17のシグナル総数に対するHER2のシグナル総数の比率を算出して、HER2遺伝子増幅あり・なしの判定を行う。シグナルの計測に際しては、20X、40Xまたは60Xの対物レンズを使用して、個々の細胞の核について、HER2のシグナル数とChr17のシグナル数を数えて、記録する。複数のシグナルがクラスターを形成している場合、小さいクラスターはシグナル6個に、大きいクラスターはシグナル12個に数える。20細胞の算出結果による比率が2.2以上であればHER2遺伝子増幅あり、1.8以下であればHER2遺伝子増幅なしとする。1.8-2.2の場合には、さらに20細胞を計測し、合計40細胞における比率を算出、2.0以上であればHER2遺伝子増幅あり、2.0未満であればHER2遺伝子増幅なしと判定する。

【特徴】 HER2(別名HER2/neuまたはc-erbB-2)遺伝子はチロシンキナーゼ活性を持つ受容体型の膜貫通型タンパクをコードしている。細胞増殖、分化などに関与することが知られており、様々な腫瘍に発現することが報告されているが、その中でも、乳癌の15-20%において、本遺伝子の増幅およびタンパクの過剰発現が認められ、予後不良との関連があることが報告されている。
 HER2タンパクを標的分子とした抗悪性腫瘍剤であるハーセプチン(トラスツズマブ)は、米国Genentech社が開発、既に欧米をはじめとする多くの国で、HER2遺伝子増幅またはタンパク過剰発現が確認された乳癌の治療に使用されている。投与の適応を判断することを目的として、HER2遺伝子増幅およびタンパク過剰発現の検査が必須となっており、添付文書上にも適応症例はHER2陽性(HER2遺伝子増幅あり または HER2タンパク過剰発現あり)であることが明記されている。
 胃癌においては2008年のHofmannらによると17-19%でHER2遺伝子増幅およびタンパク過剰発現が認められることが報告されており、HER2陽性進行・再発胃癌における国際共同第Ⅲ相試験であるToGA試験において、標準的化学療法にハーセプチン(トラスツズマブ)を併用することで生存期間の有意な延長が確認された。既に、胃癌への適応拡大が承認されている欧州では、添付文書に、乳癌同様、適応症例はHER2陽性であることが明記されており、投与の適応を判断する上でHER2遺伝子増幅およびタンパク過剰発現の検査が必須となった。国内においても、ハーセプチン(トラスツズマブ)の胃癌適応拡大が薬事申請されており、適応症例はHER2陽性であることが添付文書上に明記されている。胃癌トラスツズマブ病理部会において、胃癌HER2検査ガイドを作成中であるが、乳癌同様、HER2遺伝子増幅もしくはタンパクの過剰発現を確認すること、HER2タンパク発現が境界域と判定された場合には、さらにHER2遺伝子増幅の有無を確認することを推奨され、胃癌においても乳癌同様にHER2遺伝子増幅の検査が不可欠になる。
 今回保険収載される『ベンタナ インフォーム Dual ISH キット』は、ホルマリン固定パラフィン包埋した病理組織標本を用いて、ヒト乳癌および胃癌の組織または細胞におけるHER2遺伝子増幅の有無を、Silverin situ Hybridization法により診断するものである。HER2遺伝子が局在する第17番染色体のセントロメアをChromogenic in situ Hybridization法により検出することで、光学顕微鏡下での観察が可能になっている。乳癌における既存測定法であるFISH法2品目との相関性(一致率)は98.5%および96.2%と良好であり、胃癌についてもToGA試験で使用されたFISH法との相関性は94.5%と高い一致率が得られている。

【保険請求上の注意】
HER2遺伝子標本作製をDISH法により行った場合、FISH法に準じて算定する。


 

血清中抗 RNA ポリメラーゼIII抗体 準用区分先:悪性腫瘍検査 D004-2  区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年5月1日より適用
【保険点数】2,000点 判断料:150点
【製品名】クリニチップHPV
【主な検査目的】生検によって確認されたCIN1又はCIN2の患者に対して、ハイリスク型HPVのそれぞれの有無を確認する
【製造販売元】積水メディカル株式会社 TEL 03-3272-0918
【測定法】LAMP法と電流検出型DNAチップの組合せ
【包装単位】20テスト/1キット
【結果が出るまでの時間】約2.5時間 自動化:不可(前処理はマニュアルで行い、専用測定機ジェネライザーGLH 2C601またはジェネライザーGLH 2C701を使用)
【検体】子宮頸部細胞から抽出したDNA
【同時再現性試験】管理用陰性コントロール及びHPV DNAを含有する管理用パピローマウイルスDNA陽性コントロール(各1.0×10e3コピー/μL)を試料として各々3回試験するとき、管理用陰性コントロールはすべて陰性を、管理用パピローマウイルスDNA陽性コントロールはすべて陽性を示す
【正確性試験】1)管理用陰性コントロールを試料として試験するとき陰性を示す 2)HPV DNAを含有する管理用ヒトパピローマウイルスDNA陽性コントロール(各1.0×10e3コピー/μL)及び管理用ヒトパピローマウイルスDNA弱陽性コントロール(各2.5×10e2コピー/μL)を試料として各々試験するとき、いずれも陽性を示す
【検出感度】2.5×10e2コピー/μL(合成DNAとして)
【判定】1)陽性:検体の平均電流値と陰性コントロールの平均電流値の差が10nA以上の場合、陽性と判定する 2)陰性:検体の平均電流値と陰性コントロールの平均電流値の差が10nA未満の場合、陰性と判定する

【特徴】  子宮頸部浸潤癌の99%以上から検出されるヒトパピローマウイルス(HPV)は全長約8,000塩基の環状二本鎖DNAウイルスで、現在100種類以上のタイプが発見されている。また、このうちの約40種が外陰部等の粘膜組織に選択的に感染することが知られており、そのうちの少なくとも13種類のHPV(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68)が子宮頸癌の高リスク群として分類されている。本邦における前向きコホート研究において、高リスクHPVの中で6、18、31、33、35、45、52、58型の感染が子宮頸癌の前駆病変であるCINの進展に有意なリスク因子であることが報告されており、HPVのタイピング結果に従った個別のフォローアップが効果的であるとの報告もなされている。初回診断時にCIN1及びCIN2と診断された患者をHPVタイピングにより3つの群に分け、5年後の進展率を調査したところ、前述の8種のHPV(6、18、31、33、35、45、52、58)に感染している群でのCIN3進展率は20.5%であったが、それ以外の高リスクHPVに感染していた群では6.0%に過ぎなかった。以上の結果より、細胞診によりASCUSとされた患者に対し、その後のフォローアップ対象とするか否かを判定する目的で高リスクHPV核酸群定性検査を行った場合に比べ、あらかじめ行われた組織診断の結果CIN1又はCIN2と判定された患者にHPVタイピング検査を実施した場合では、浸潤癌進展に対するHPVタイプ別リスク評価が可能となり、フォローアップ間隔の短縮や早期治療の選択などにつながる。本年2月に日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会より発刊された「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2011」で、HPVタイピング検査は、生検により確認されたCIN1/2の進展リスク評価による治療の選択や経過観察間隔の決定、CIN2/3治療後の残存病変・再発の早期発見において有用性が高い検査として推奨されている。
 今回、新規保険収載された『クリニチップHPV』は、ともに国産技術である電流検出型DNAチップ法と、遺伝子増幅法のLAMP法を組み合わせた診断薬である。子宮頸部細胞から抽出したDNAを試料とし、ハイリスク13タイプのHPVのDNAを各々タイプ特異的に増幅する13種類のプライマーを用いてLAMP増幅法で増幅し、各DNAを個別に検出するものである。2007年4月に、244人の被験者から採取した子宮頸部細胞を用いて実施した本法とPCR-ダイレクトシークエンス法との比較において、陽性一致率99.3%、陰性一致率89.7%、全体一致率95.5%と良好な一致性が確認された。またウイルスタイプ毎の一致性については、感度66.7%~100%、特異度96.1%~100%と良好な結果が得られている。
 本検査により高リスク群HPVのタイピングが簡便且つ高感度に行えることで、上記8タイプの感染の有無が容易に判定可能となり、個別症例のフォローアップに有用な医療情報が提供できるものと考えられる。

【保険請求上の注意】
ア HPVジェノタイプ判定は、区分番号「D004-2」悪性腫瘍組織検査「1」の悪性腫瘍遺伝子検査に準じて算定する。
イ あらかじめ行われた組織診断の結果、CIN1又はCIN2と判定された患者に対し、治療方針の決定を目的として、ハイリスク型HPVのそれぞれの有無を確認した場合に算定する。
ウ 当該検査は、区分番号「D023」微生物核酸同定・定量検査の「6」のHPV核酸同定検査の施設基準を届け出ている保険医療機関のみ算定できる。
エ 当該検査を算定するに当たっては、あらかじめ行われた組織診断の結果及び組織診断の実施日、及び当該検査によって選択した治療法を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
オ 同一の患者について、当該検査を2回目以降行う場合は、当該検査の前回実施日、及び前回選択した治療(その後通常の検診となった場合はその旨)を上記に併せて記載する。<


 

角膜単純ヘルペスウイルス抗原(定性) 準用区分先: D012-23  区分E-3(新項目)(測定項目が新しい品目)

平成23年5月1日より適用
【保険点数】210点 判断料:144点
【製品名】チェックメイト ヘルペス アイ
【主な検査目的】角膜上皮細胞中の単純ヘルペスウイルス抗原の検出(単純ヘルペスウイルス感染の補助診断)
【主な対象】角膜ヘルペスが疑われる角膜上皮病変を認めた患者
【有用性】角膜ヘルペスの診断をより確実に行うことができる
【製造販売元】わかもと製薬株式会社 TEL 03-3279-0392
【測定方法】イムノクロマト法
【包装単位】1テスト用セット×3袋
【結果が出るまでの時間】15分 自動化:不可
【検体】病変部角膜からの擦過上皮
【感度・正確性試験】陽性コントロール1(自社調整HSV-1抗原液、タンパク濃度37.5μg/mL)及び陽性コントロール2(自社調整HSV-2抗原液、タンパク濃度12.5μg/mL)を検体として試験を行うとき陽性を示し、陰性コントロール(検体抽出液)を検体として試験を行うとき陰性を示す。
【同時再現性試験】感度・正確性試験を3回行うとき、陽性コントロール1及び陽性コントロール2は全て陽性を示す。
【交差反応性】水痘帯状疱疹ウイルスなど7種の菌体抗原液を試料として試験したところ、黄色ブドウ球菌以外の抗原液はいずれも交差反応性を示さなかった。

【特徴】単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜炎、すなわち角膜ヘルペスは難治性であることと病態の複雑さのために診断が難しく、先進国においても失明原因となる疾患のひとつである。治療方針を誤れば遷延化し、角膜実質混濁、角膜穿孔などの重篤な視力障害につながることから、他疾患との鑑別が重要である。鑑別すべき疾患には、眼部帯状ヘルペス、薬剤毒性角膜症、再発性角膜びらん、アカントアメーバ(AK)角膜炎、単純性角膜上皮欠損、遷延性角膜上皮欠損など数多くあげられる。HSVの鑑別診断のための検査方法には、分離培養、蛍光抗体法及びPCR法があるが、これらの検査方法は全て高額な機器(培養設備、蛍光顕微鏡、サーマルサイクラー等)や技術を必要とする。PCR法では、角膜ヘルペスではない症例でウイルスDNAを検出した例が報告されており、有病正診率は86.7%に留っている。また、単純ヘルペスウイルス特異抗原を検出する蛍光抗体法の試薬が薬事承認、保険適応されているが、眼科検体は対象としていない。そのため、角膜ヘルペスの迅速で簡便な検査方法が求められてきた。
 今回保険収載された『チェックメイト ヘルペス アイ』は、必要に応じ表面麻酔剤を施した上で滅菌綿棒を用いて角膜の病変部を数回擦過し、採取された上皮から抽出した単純ヘルペスウイルス抗原を免疫クロマト法により検出する眼科用の迅速診断キットである。また、HSV-1抗原とHSV-2抗原の共通部分を認識するモノクローナル抗体を用いたことから、型別判定の不要な眼科検体の検査を単一試薬と単一検体で完了することが可能である。
 本品の臨床試験成績(n=92)より解析した蛍光抗体法、PCR法との診断精度の比較をみると、最終臨床診断と比較した場合の本品の有病正診率は55.0%、無病正診率は100%であり、蛍光抗体法のそれぞれ57.9%、100%と同等であった。本品は無病正診率が100%であり、特異性が極めて優れていることから、本品による検査で陽性となれば角膜ヘルペスであることが確定できる。

【保険請求上の注意】
ア 角膜単純ヘルペスウイルス抗原(定性)は、「23」のアデノウイルス抗原に準じて算定する。
イ 角膜ヘルペスが疑われる角膜上皮病変を認めた患者に対し、イムノクロマト法により行った場合に算定する。