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本メールは日本臨床検査医会の発行する電子メール新聞です。
◇印はJACLaP NEWS No.60に掲載された内容です。
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=========================≪ 目 次 ≫=========================
[寄 稿]◇医療に臨床検査が適切に利用される環境の整備を
[お知らせ-1]◇事務局よりのお知らせ
[お知らせ-2]◆第22回世界病理学・臨床検査医学会議(WASPaLM)の日程と場所の変更について
[お知らせ-3]◆第7回アジア臨床病理学会会議について
[お知らせ-4]◆第9回ISQCについて
[お知らせ-5]◇第3回国際実験診断学会について
[お知らせ-6]◆会員動向
(2001年9月19日現在数 604名 専門医 396名)
[ニュース-1] ◆開発途上国により多くの補聴器を提供したい
<WHOトピックス Press July 2001 WHO-150>
[ニュース-2] ◆ WHOの要請により抗結核剤の価格が最大94%削減
<WHOトピックス Press July 2001 WHO-151>
[Q & A-1]◆「基準値」と「基準範囲」について
[Q & A-2]◆臨床検査項目分類コードについて
[Q & A-3]◆検査報告用紙のあり方について
[Q & A-4]◆ HCV-PCR法とHCV-抗体の結果の解離について
[声の広場-1]◇第44回教育セミナーを開催して
[声の広場-2]◇振興会セミナー『21世紀の臨床検査を考える』を終えて
[声の広場-3]◇第9回GLMセミナーに参加して
[声の広場-4]◇とかくこの世はマニュアル化時代
[声の広場-5]◇雑感
[声の広場-6]◇国立大学病院中央検査部会議から
[声の広場-7]◇臨床検査医学の新しいチーズを楽しもう!
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[寄 稿]◇医療に臨床検査が適切に利用される環境の整備を
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高騰する国民医療費の伸びに対応すべく医療制度改革を目的として、厚生省から
「21世紀の医療制度改革案」、与党医療保険制度改革委員会から「21世紀の国民医
療」と題する改革案が提出されている。
また、平成13年3月28日には、日本医師会が「医療構造改革構想」 を公表、
同年4月12日には、健保連が3章からなる「今後の制度改革に向けての考え方」を
発表した。
これらの改革案ならびに報告書には、臨床検査、なかでも検体検査についてほと
んど触れられておらず、その必要性について十分な議論の上で作成されたとは考え
られない内容のものとなっている。
医療制度改革の目的は「医療資源の効率的活用」と「患者にとって質の良い医療
サービスの提供」の2点が基本的な考え方とされている。
この観点から患者にとって重要である粗診・粗療を防ぎ、検査の質の向上を確保
し、科学的根拠に基づく医療 (EBM: Evidence Based Medicine) を提供し、かつ、
予防医療における検体検査の普及など“検体検査”が、医療制度の改革に当たり適
切に医療に役立つものとして利用できる体制を整えられるよう、6団体協議会におい
て当会・森副会長を委員長として、以下の8点についての要望書を作成し、厚生労
働省、日本医師会、およびその他の機関に提出すべく努力している。
(1) 包括化に対応する検体検査の質を確保するための措置を講ずること。
(2) 委託検査の検査価格差(検査差益)を解消するために、検体検査実施料の扱い
および支払い方式について新しいシステムを導入すること。
(3) 検体検査に使用する検体検査薬(体外診断用医薬品)の安定供給を確保し、研
究開発の促進ができる環境を整備すること。
(4) 体外診断用医薬品の大衆薬化促進を図ること。
(5) ベッドサイド検査 (Point of Care Testing) に、適正な検査管理料を設定すること。
(6) 医師の診断による検体検査の選択についても診療報酬に反映すること。
(7) 検査データ共有化のための環境整備を行うこと。
(8) 検査室勤務医師による検体検査結果の確認とコメント(診断)を診療報酬に反
映すること。
内容の詳細については、正式の要望書が作成された段階で本誌などで明らかにさ
れるが、その趣旨は、臨床検査、とりわけ検体検査が医療資源の有効利用と、患者
にとって質の良いサービスの提供につながるものとなるようにとの考えに基づくも
のである。今回の医療制度の抜本的改革に際し、法的整備を必要とする点もあるが、
ぜひ検討して頂きたい、との関連団体の総意を伝えることを目的としたものである。
このような我々の努力が“臨床検査”のさらなる発展に貢献することを期待したい。
(日本検査医会 渉外委員長 村井哲夫)
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[お知らせ-1]◇事務局よりのお知らせ
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1. 会長選挙
・ 平成14〜15年度会長、監事選挙が行われ、6月5日に選挙管理委員立ち会い
のもとに開票が行われた。この結果、
・ 会長選挙:有効票数215票(総得票数:217票)の過半数以上の候補者がお
らず、投票上位の河野均也先生と森三樹雄先生による決選投票を行い、河野均也先
生が次期会長に決った。開票結果は河野均也先生164票、森三樹雄先生148票、白
票2票であった。
・ 監事選挙:有効得票数214票で、河合忠先生、河野均也先生、大場康寛先生
の順であった。河野均也先生が会長選決選投票の被選挙者であるため、決選投票後
に監事当選者が決定されることになった。この結果平成14〜15年度の役員は、会長
が河野均也先生に、監事が河合忠、大場康寛の両先生に決定いたしました。
2. 日本臨床検査医学会総会中に開催される日本臨床検査医会総会と講演会は下記
のような日程・内容です。奮って御参加下さい。
・日本臨床検査医会総会 8月28日 16:00〜16:30 第2会場
・講演会8月28日16:45〜18:00 第2会場
「臨床検査経済学--原価の概念と役割--」
萩野雅司(高崎商科大学)
座長:村井哲夫、渡邊清明
(事務局長 高木 康)
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[お知らせ-2]◆第22回世界病理学・臨床検査医学会議(WASPaLM)の日程と場所の
変更について
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2003年8月30日〜9月3日に韓国、プサンのコンベンションセンターで開催されます。
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[お知らせ-3]◆第7回アジア臨床病理学会会議について
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2002年12月6日〜9日に台湾の高雄(Kao-Hsiung)で開催することが決定しまし
た。シンポジウムの内容は下記のとおりです。
1)Standardization and Automation 2)Accreditation 3)Status and
Training of Clinical Pathologists 4)Molecular Diagnosis 5)Wellness Testing
6)Emerging Microbiology Resistant Strains
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[お知らせ-4]◆第9回ISQCについて
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第9回精度管理に関する国際シンポジウム(The 9th ISQC)が2001年11月3〜4
日に大阪、千里のライフサイエンスホールで開催されます。会長は、浜松医科大学
の菅野剛副学長、学術組織委員長に大阪市立大学の巽典之教授、テーマは、「世界
的視野での標準化と精度マネジメントの内容を追求するシンポジウム」です。
多数の参加者を募っています。
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[お知らせ-5]◇第3回国際実験診断学会について
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下記の要領で第3回国際実験診断学会が開催されますのでご参加下さい。
日 時:2001年11月1日〜6日
場 所:Huangshan City, Anhui Province, China
(黄山 安徽省 南京から南へ250kmにある世界遺産の景勝地)
抄 録:800 words 以内 用紙なし
抄録締切日:6月30日
抄録送付先のE-メール:jyxi@mail.ahbbptt.net.cn
登録料:本人150$ 同伴者100$
宿泊代:本人100$/日 同伴者50$/日
連絡先:Dr. Yang Qi, Dept. of Medical Laboratory Science,
Bengbu Medical College, Anhui, 233003, China
Tel: 0552-3066412-2030
日 程:11月1日17:30〜18:30 開会式
11月2〜5日 会議
11月6日18:30 閉会式
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[お知らせ-6]◇会員動向
(2001年9月19日現在数 604名 専門医 396名)
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《入会》5名
伊藤栄作 東京医科歯科大学大学院病因・病理学講座
村上正巳 群馬大学医学部臨床検査医学
白川敦子 住友別子病院臨床検査室
末広 寛 山口大学医学部臨床検査医学教室
前田昭太郎 日本医科大学付属多磨永山病院病理部
《退会》3名
岩田克美 神田享勉 渡辺千尋
《訃報》1名
西風 脩 前北海道大学医学部臨床検査医学名誉教授
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[ニュース-1]◆開発途上国により多くの補聴器を提供したい
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<Press July 2001 WHO-150>
WHOは開発途上国にいる聴力障害者に補聴器メーカーに低価格の補聴器を提供
するよう呼びかけた。聴力障害者は全世界で2億5000万人いる。WHOは補聴器メー
カー、サービスプロバイダー、聴力障害者を集め、開発途上国で補聴器が入手可能
になるための会議を7月11〜12日に開催した。開発途上国での補聴器の価格は現在、
200〜500米ドルと高値であるためほとんど利用されていない。普及するには補
聴器1台10〜20米ドルに下げることが必要である。
補聴器の使用により聴力を回復できる人は世界で2億5000万人おり、その3分の
2は開発途上国にいる。補聴器の年間生産高は、需要の10%未満と考えられている。
補聴器の数不足と高価格である以外に、補聴器を耳に合せるサービスマンもいな
いことも問題である。7月に発表されるWHOのガイドラインでは、安価な補聴器
の製造、サービスマンの訓練などが必要であるとしている。開発途上国の人々は若
年者でも聴力障害が起こり、その原因が中耳炎や髄膜炎であることが多い。
子供が聴力障害になると、言語や認識に影響を与える。聴力喪失(耳毒薬の使用、
慢性中耳病患、過度のノイズ)を防止すると共に、聴力訓練のトレーニングも必要
である。
(獨協医科大学越谷病院臨床検査部 森 三樹雄)
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[ニュース-2]◆WHOの要請により抗結核剤の価格が最大94%削減
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<Press July 2001 WHO-151>
WHOの要請により多剤耐性結核(MDR-TB)患者用に低価格の抗結核剤が開発さ
れた。WHOが製薬会社と協力して、現在、MDR-TB患者1人にかかる治療費19,000
米ドルを大幅に削減させることができた。この新しい抗結核剤をMDR-TB患者に使
用することにより、最大94%削減できた国もある。
WHOのBrundltand事務総長によれば、国際的要望で抗結核剤の価格を下げ、有効
利用することによりMDR-TB患者を救うことができる。
毎年、結核のため170万人が死亡している。近年、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、
ラテンアメリカなどの公共機関(病院、刑務所、ホームレスのシェルター)で
MDR-TBが突発的に流行し多数の人が死亡している。
(獨協医科大学越谷病院臨床検査部 森 三樹雄)
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[Q & A-1]◆「基準値」と「基準範囲」について
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(Q)医師国試問題公募用、問題作成手引きではTCの基準範囲は120〜250、欄外に
動脈硬化学会の提案の220以上が高脂血症とあります。この為に、基準範囲を220
までと定めている施設が多々ありそうです。私の大学もそうです。これでは正規の
基準値ではない筈です。この現象に対する、多くの施設での実情と、基準値を大切
にする本学会の、姿勢を教えて下さい。
(兵庫県 認定臨床検査医)
(A)日本臨床検査医学会として「基準値」、「基準範囲」について公式の見解を出した
ことはありませんが、臨床検査情報学専門部会や日本臨床検査医会などで活発に議
論されていますので、それらの議論をまとめると以下のようになると思います。
基準範囲Reference Intervals
1970年代からIFCC(International Federation of Clinical Chemistry)の委員会で
Reference Values, Reference Intervalsの考え方が提案されていましたが、それをほ
ぼ全面的に踏襲して米国のNCCLSが1992年に提案指針C28-Pを出版してから世
界中で広く認識されるようになりました。その後、NCCLSは2回の改定を重ねて最
新版は NCCLS Document C28-A2 [How to Define and Determine Reference
Intervals in the Clinical Laboratory; Approved Guideline - Second Edition
(2000)]です。これには定量検査における基準範囲の設定方法について述べている
に過ぎません。この内容は、既に広く認識されていますので詳細は省きますが、要す
るに厳密に選ばれた基準個体の集団について、通常95%の個体が示す上限値と下限
値により規定された測定値の範囲とされています。したがって、基準範囲を示す場
合には(1)基準個体についてその選び方、種類(性、年齢、生活習慣などを含めて)
及び対象個体数、(2)測定方法と条件、(3)測定値の統計学的処理方法、など
を付記することになっています。 したがって、血清総コレステロールの基準範囲
120〜250mg/dlとする場合には、それを求めた条件を付記することが必要です。
さて、この考え方が日本で普及した経緯について触れておきます。平成2〜4年度厚生
省老人保健事業推進費等補助金に基づく「老人の臨床検査の正常値に関する調査研
究班」(主任研究者:河合 忠)において、会議の冒頭に『正常値とは何か?』に
ついて大議論が起りました。そこで、筆者が海外での動向を紹介したところ全班員
の賛同を得ましたので平成5年3月に当研究班による公開フォーラムを開催し、さ
らに臨床検査関連学会等で議論して頂いた結果、NCCLSの考え方に基本的に合意
を得ることができました。その後、医師国家試験出題基準作成委員会に筆者が委員
として加わっており、他の委員の賛同も得られましたので厚生省医師国家試験出題
基準(平成9年度版)では、正常値、正常範囲という言葉を削除し、新しく基準値、
基準範囲という言葉が採用され、急速に医学界に普及して行ったわけです。
ところで、Reference Intervalにどのような邦訳語を付けるかが問題になりました
が、既に一部の臨床検査専門家(初めて使ったのは、当時東京都立駒込病院検査科
に勤務されていた飯田陽子医師との説があります)によって「基準範囲」が使われて
いましたし、「参考範囲」または「参照範囲」ではNCCLSの意図を十分に反映で
きないということで、基準範囲に落ち着いたわけです。
基準値 Reference Values
さて、もう一つの基準値については、いろいろな解釈があって一部混乱を来たし
ているようですので、NCCLSやISO(国際標準化機構)で多くの国内外の臨床検査専
門家との交流を通して得られた見解を改めてここにまとめることにします。
基準値には、Analytical reference valueとBiological reference valueとがあって、
ISO文書では明確に区別しています。 明らかに使用目的が異なりますので、両者を
混同することはほとんどありません。ここで問題とされているのは、Biological
reference value(生物学的基準値)ですので、以後ここでは単に基準値と表現します。
基準値は、さらに広義に使われる場合と狭義に使われる場合があります。狭義に使
う場合は、基準個体(健常個体)について得られた測定値を意味しています。広義の
場合と区別するために、とくにhealth-associated reference value(“健康”基準値)
と呼ぶ場合があります。この種の基準値を集団について求め、一定の統計処理を行っ
て求めたのが「基準範囲」です。ということは、集団についてみると、すべての基準
値が基準範囲に含まれるわけではなく、基準値の5%は基準範囲から外れることにな
ります。
「広義の基準値」は、文字通り、特定の臨床的目的で意志決定をするために基準
となる測定値をすべて含み、しばしば「病態識別値」とか「臨床的意志決定値」と
も呼ばれています。すなわち、日本動脈硬化学会が決めた高脂血症の診断基準値(例
えば、他にリスク因子をもたない人については、男女を問わず血清コレステロール
値が220mg/dl以上(≦))、高尿酸血症の診断基準値(血清尿酸値が7mg/dl<)、
などが含まれます。その他、治療目標値、パニック値、陽性カットオフ値、なども含
まれます。したがって、血清総コレステロール値「220mg/dl以上」というのは、高
脂血症の診断基準値の一つであって、決して基準範囲とは関係ありません。ちなみに、
120〜220mg/dlとしている施設があるとしますと、二重の誤りを犯していることにな
ります;もともと基準範囲の上限ではありませんし、220mg/dlという数値は高脂血
症に入ります。その上、2001年6月から日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患の予
防と治療のためのガイドライン」が改訂されて、血清総コレステロール値については、
≧240mg/dlを高TC血症、≧220mg/dlを境界域高TC血症としています。
基準範囲やさまざまな病態識別値を含めた一覧表を作成するときには、全体の表題
は「基準値一覧」とするのが正しいと思います。その中に基準範囲(○○○_△△△)
が含まれ、学会などが提案する診断基準値、治療目標値、などもその旨を明記して
一覧表にすべきでしょう。
過去50年にわたって、臨床検査関係者のたゆまぬ努力によって、多くの検査項目
についての測定値の施設間差が著しく改善しているのに、基準範囲や基準値の設定
に問題があるとすると、臨床的判断に大きなバラツキを生ずることになります。是非、
臨床医も、医療関係職の方も、臨床検査専門家も、基準値について正しい認識をも
って、正しい診断情報を効率的に利用するよう努力すべきでしょう。
回答日:2001年8月21日
回答者:国際臨床病理(ICP)センター所長・河合 忠 (ID20010601)
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[Q & A-2]◆臨床検査項目分類コードについて
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(Q)当院では、現在オーダリングの準備を進めております。オーダリングに当たり、
臨床検査項目のコードを日本臨床検査医学会臨床検査項目分類コードを利用したい
と考えております。HPを拝見しましたが、現在掲載されておりますコードは第10
回改訂(JLAC10)・第1版です。現在採用されている検査項目でJLAC10では、対
応できていない項目もあります。
III.「項目コード」の改訂において
現在、新規の検査項目が毎年40〜50件導入されている。これら分類コードについて
は、年6〜8回開催予定の本委員会でコードを決定し、その結果をとりまとめた上
で適宜「臨床病理」誌上にて公表する予定である。との記載がありますが、
1. 検査項目コードの改訂作業は行われているのでしょうか?
2. 改訂作業の結果報告がございましたら掲載紙あるいは内容をお教えください。
3. 今後の改訂予定などもわかる範囲でお教えください。
4. 新規項目について改訂作業までの仮コードの付け方などルール化されたものがあ
りましたら、お教えください。
5. また、6桁運用コードの提案がなされておりますが、運用コードについては、系
統づけた拡張が困難であると個人的には考えておりますが、学会方針としては、今
後の標準化を15桁(結果は17桁)コードを中心に進められるのか、あるいは6
桁運用コードを中心に進められるのかについてもお教えいただければ幸いです。
(大阪府 臨床検査技師)
(A)学会への質問にお答えします。
1.検査項目コードの改訂作業は行われているのでしょうか?
答:3ヶ月に一度程度の新規項目の収載等の改定作業を行っています。
2.改訂作業の結果報告がございましたら掲載紙あるいは内容をお教えください。
答。日本臨床検査医学会のホームページ、ならびに学会誌「臨床病理」に掲載する
予定です。
3.今後の改訂予定などもわかる範囲でお教えください。
答:前述の通り、3ヶ月に一度程度の改定作業を定期的に実施します。
4.新規項目について改訂作業までの仮コードの付け方などルール化されたものがあ
りましたら、お教えください。
答:分類コードとしてあるように、意味あるコードを作成しています。その中心は
大分類、中分類であり、その分類が行われたのち、さらに委員会で最終コードの妥
当性が討議されて、承認される仕組みです。したがって、大、中分類をよくみて頂
ければその概要がつかめます。
5.また、6桁運用コードの提案がなされておりますが、運用コードについては、系統
づけた拡張が困難であると個人的には考えておりますが、学会方針としては、今後
の標準化を15桁(結果は17桁)コードを中心に進められるのか、あるいは6桁
運用コードを中心に進められるのかについて
答:コードはあくまでも17桁です。6桁を作成することについても議論がありま
したが、一般ユーザーのためにあえて作成したものですが、ある程度拡張しえるゆ
とりを持って作ったはずです。
回答日:2001年7月13日
回答者:日本臨床検査医学会会長 櫻林郁之介 (ID20010628)
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[Q & A-3]◆検査報告用紙のあり方について
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(Q)今、本院では全館的オーダリングを試案中です。迅速検査部門の検査データは、
検査システムとインターフェースを介し、オーダリングシステムに送信し、オーダ
リングサイドのデータは約13ケ月保存の形式で開始する予定です(つまり臨床サイ
ドからは13ケ月のデータはみることができます)。なお検査システムではMOに
てすべての検査データは保存しておりますが、迅速には検索し閲覧することはでき
ません。そして現在、外来については再来時発行など各種パターンで、一方入院は
退院時サマリーとして検査データを打ち出しカルテに貼付するように指導する予定
です。ところが、ある科の医師からデータは媒体に保存してあるし、画面で見える
し、また各自が自由に経時的にプリントアウトもできるから検査科からの検査報告
は必要ない(ペーパーレス)と強硬に主張しております。私はカルテの基本からし
て、また医療保険制度上、電子カルテでないので、必要と思っておりますが、検査
報告用紙のあり方について御教授いただければ幸いです。
(検査医会・学会会員)
(A)オーダリングシステムを行っている聖路加国際病院では、検査部から報告書の発
行はしておりません。検査デー夕の検索は各医師が端末から自分で行っております。
回答日:2001年8月30日
回答者:聖路加国際病院 村井哲夫 (ID20010828)
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[Q & A-4]◆HCV-PCR 法と HCV-抗体の結果の解離について
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(Q)HCV-PCR法とHCV-抗体の結果の解離について教えていただきたく存じます。
患者は82才女性で、輸血歴あり(77才で total hip replacement)。以前他院にて
HCV+を指摘されたものの当院ではHCV(-)(定性的、クロマト金コロイド法でした。
精査のためにHCV-PCR法と第2世代HCV-抗体検査を依頼したところ、前者
RT-PCRでは<0.5KIU/mlと陰性、しかし第2世代HCV-抗体(EIA)では1.4と陽性
でした(共にSRLにて)。ちなみに患者のLFT(liver function test)はWNLです。
可能性としてひとまず
1:HCV感染既往はあるものの、carrierであり血中HCVはほとんど存在しない。
2:抗体検査が疑陽性であり、HCV感染は成立していない。
の二つを考えてみました。しかし本当にこの解釈でいいのか、そしてまた他の解釈
があるのか、他にすべき検査はあるのか、などについて教えていただければ幸いで
す。
(群馬県 大学院博士課程学生)
(A)ご質問の症例についての解釈は基本的に質問者の解釈で良いと存じます。ただし、
解釈の1を確認する意味ではHCV RNAを定性法で確認した方が感度が高いので
より良い判定になるでしょう。
回答日:2001年9月11日
回答者:東京医科大学臨床検査医学講座 福武勝幸 (ID20010908)
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[声の広場-1]◇第44回教育セミナーを開催して
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第44回教育セミナーは「検査室管理・検査管理」をテーマとして平成13年5月
19日(土)午前9:30〜午後3:30に昭和大学1号館で開催された。当日は受験予定者
などを含めて40数名の参加があり、講義を中心としたセミナーが行われた。セミナ
ーは河野均也検査医会会長の挨拶で始まり、臨床検査医として知っていなければな
らない種々の「検査管理・検査室管理」関する講義が続いた。まず、順天堂大学の
三宅一徳先生による「臨床検査医に必要な臨床疫学」、続いて日本医学臨床検査研
究所の佐守友博先生による「検査センターと監督医」が講義された。昼食をはさん
で、昭和大学の木村聡先生による「サンプリングと検査」、神奈川県立衛生短期大
学の伊藤機一先生による「米国の精度管理、検査室管理」が講演された。参加者一
同真剣に聴講し、熱心な討論がなされた。セミナーの最後には昭和大学の高木康が
「臨床検査医認定試験について」と題して、認定試験の詳細について細やかなアド
バイスを送った。暑い土曜日にもかかわらず、受講者は真剣にセミナーに参加して
いたが、これらは講師の熱心な講演によるものであり、毎回多忙の中にも講演を快
諾して頂く講師の先生方には心から御礼申し上げる。来年もよろしくお願い致しま
す。
(昭和大学医学部臨床病理 高木 康)
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[声の広場-2]◇振興会セミナー『21世紀の臨床検査を考える』を終えて
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平成13年7月13日(金)午後2:00〜5:00
東京ガーデンパレス2階 高千穂において
第19回日本臨床検査医会振興会セミナーが開催された。下記のプログラムで臨床検
査関連の団体、組織を代表する5人の演者により、それぞれのテーマについて講演
された。
(1) 「日本臨床検査医学会の方向性」
日本臨床検査医学会副会長 渡邉 清明
(2) 「検査室運営の立場から」
香川県立中央病院副院長 桑島 実
(3) 「診断薬企業の戦略」
ロシュ・ダイアグノスティックス(株)社長 平手 晴彦
(4) 「遺伝子検査の将来」
Japan Genome Solutions Inc. 窪田 規一
(5) 「医療行政について」
厚生労働省保険局医療課長 松谷有希雄
当セミナーの企画は日本臨床検査医会渉外委員会が行うもので、各委員の意見を集
約し、多数の参加者が興味をもって出席してくれそうなテーマとして、今回は「21
世紀の臨床検査を考える」を選んだ。
昨今、医療費の増加を抑制する目的で様々の政策が打ち出される中で、“臨床検査”
の縮小さえ予想される状況になってきた。とかく受身の立場でこれに対処しようと
する傾向がみられるが、この際これを打破し積極的に“21世紀の臨床検査”の新た
な発展のための指針を求めるきっかけになることを期待し、“臨床検査”に関連す
る団体で活躍中の5人の演者に講演をお願いした。
各演者の示唆に富む発表に対し、参加者からは活発な質疑応答もあり、盛会のうち
に終了した。なお、本会における発表の詳細については次号 JACLaP CP に掲載さ
れる。
(聖路加国際病院臨床病理科 村井哲夫)
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[声の広場-3]◇第9回GLMセミナーに参加して
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これまで臨床医としてあるいは細胞生化学研究者として直接、間接に臨床検査と
関係はあったが、臨床検査部に所属が移って半年、内側から眺め、その中で仕事を
することは大違いで戸惑うことが多かった。そんなときに日本臨床検査医会主催の
第9回GLMに関するワークショップ(平成13年5月26日〜27日、於自治医大研
修センター)に参加できたのはラッキーであった。
GLM、より良い臨床検査の管理とは、精度管理や精度保証ばかりでなく、検査が
いかに臨床医学に有効に使われ患者・社会に貢献するか、また質の高い臨床医学を
リードしていくか、臨床検査部そのものを運営・管理していくことであると理解で
きた。そのために臨床検査医の責任は重い。特に参考になったのはチームワークの
作り方と、水準向上のための研修の計画の立て方であった。目的を据え、具体的に
何と何ができるようにするのか、それらを達成するための筋道を立て、何を準備し、
さらにいかに参加者が能動的にそれに加わり効果的に学べるかまでを考える、実に
緻密な作業であった。さっそく臨床検査部の再編と、院内感染防止のために実行し
ている。多くの臨床検査医と知り合え、また河野先生、櫻林先生、熊坂先生など著
名な先生方がネクタイをはずして朝から夜遅くまでアドバイスやロールプレイに参
加してくださり、自然とこちらも引きずり込まれ、名実ともに実りのあるワークシ
ョップであった。時折小雨の降る肌寒い中ではあったが、楽しく学べた2日間であ
った。
(国立国際医療センター臨床検査部 倉辻忠俊)
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[声の広場-4]◇とかくこの世はマニュアル化時代
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昨今、世の中全てマニュアル化の時代である。ある大手ハンバーガーチェーン店
では商品の調理の温度、時間などすべて細かく定められており、全国どこででも全
く同じ味を消費者に提供できるようになっています。これは品質管理の面からいっ
て、最も優れた方法であることは言うまでもありません。また作り上げてから◯分
以上経った商品(予測と違って作り過ぎた場合など)は全て廃棄処分にすることま
で決められており、食中毒の危険性も回避できるようにしてあります。つまりマニ
ュアルに則っていれば、品質管理も衛生管理もパーフェクトなわけです。さらに最
近では業界内での値下げ競争が加わり、これで本当に儲かるのだろうかと人事なが
ら心配になってきます(これは余談ですが)。つまり昨日入ってきたバイトの学生
が作ろうが、10年選手の本採用の店員が作ろうが、全く同一のものが出てきます。
それがこのマニュアル化の全てであり、それ以上でも以下でもありません。しかし
本採用の店員の気持ちとしては複雑かもしれません。10年仕事をしていたところで、
新米のバイト店員と同じものしか作れないということであれば、少なくとも彼自身
の優位性をそこに見いだすことはできません。
医療の分野でもこのマニュアル化はどんどん進んでいます。診断、治療のいずれ
においてもマニュアル化が深くかかわっています。治療に関していえば元来これは
マニュアルそのものであり、多少乱暴な言い方をすれば治療方法あるいは内容を忘
れたら本か文献をひっくり返せば済みます。臨床検査医学会では「臨床検査のガイ
ドライン」という冊子を刊行しており、これも立派なマニュアル本の一つです。無
駄な検査をなくし、必要な検査を忘れないようにするということがそのコンセプト
です。また医療事故防止のためのマニュアル作りも盛んです。ただハンバーガーの
場合と異なるのは、ハンバーガーはただそれを作るためだけのマニュアルであり、
一通りでありその分簡潔です。これに対して医療事故対策マニュアルは、事故が起
きないように、あるいは起きたらどうするかという対象(この場合患者さん)の状
況に応じたマニュアルでなければなりません。そのためいろいろなケースを想定し
なければならず、いきおい分厚いマニュアルになりがちです。しかしこのように苦
労して作り上げたマニュアルは実際どの程度現場で役立っているでしょうか。もし
何かあったときにマスコミに「マニュアルさえ作っていなかった…」といわせしめ
ないためのお飾りになっていないでしょうか。同じようなミスが繰り返し起きてい
る現状から察するに、どうもマニュアルにはそういう側面がありそうです。加えて
診断・治療のマニュアルに関していえば、ある医師はハンバーガーのベテラン店員
と同様の不満を持つかもしれません。一口にマニュアルといっても、なかなか難し
いものです。
(岐阜大学医学部臨床検査医学 清島 満)
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[声の広場-5]◇雑感
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この度 JACLaP NEWS に原稿を書くようにとのご依頼を受けました。これまで
いろいろな先生がお書きになるのを読んで楽しんでいましたが、お鉢が回ってきた
という感じです。内科で循環器の臨床をやっていた者が、検査部を担当することに
なってから丁度2年です。でもこの2年は激動の時期でした。技師長からは「大変
な時にこられましたね。」と迎えられました。幸い同じ大学の中で、生理部門とは
一緒に仕事をしてきた間柄でしたから、ある程度様子も分かっていましたので、や
りやすくもありました。しかし、検体部門、輸血部門は経験もなく、病理、微生物
も同様です。昨今国立大学の独立行政法人化、さらには統廃合の話題が急浮上し、
検査部に関してはブランチラボ化の話題まで出てくる始末で、悩み深きこの頃です。
それでは我々ができることは? 先日の国立16大学検査部長会議である先生が
発言されたように、検査部の存在を仕事面から内外にアピールし、存在感を示すこ
とでしょう。そのためにはどうしたらよいか、検査部は診療サイドの検査オーダを
受けて動き始めます。最近の臨床のトレンド、疾患の推移を見極めながら、旧態依
然とした検査を継続するのではなく、時宜を得た検査の充実・導入、あわせて検査
および人員配置の見直しが必要と考えています。臨床検査医学のあらゆる領域にア
ンテナを張っておく必要があると思います。新しい検査の開発が自身でできれば、
いうことはないのですが。
先日臨床検査医の認定試験のための教育セミナーを受講しました。久しく忘れて
いた検査の実際を再体験し、試験のためだけではなく自身にとっても有意義でした。
一方で、今後の日本はこのような検査を検査医あるいは検査技師が行う時代が続く
のだろうか? 検査の評価ができるためには、検査に通じていなくてはならないと
いうのは分かるのですが。ほとんどの検査が自動化され、ブラックボックス化され
てくる時代です。検査技師もルーチン検査には検査の技術的能力より、機械工学的
能力を要求されています。将来のスタートレックの時代には、技術的には血液が何
滴かあれば、遺伝子を含めてほとんどの検査が瞬時にできるようになるでしょう。
そのとき、検査技師、検査医はどういう役割を果たすことが期待されるでしょうか。
検査がなくなるとは思いませんが。
一方、現実に目を戻すと大分医科大学附属病院は今年開院20周年を迎えます。や
っと成人式を迎えた新しい病院です。ごたぶんにもれず本院も、輸血24時間問題、
経営効率改善、リスクマネージメント等当面の課題が山積しています。深刻になり
すぎないよう注意しながら、少し中年になったスタッフと一緒に足下を固めながら、
21世紀の新しい検査部を作り上げていこうと思っています。
(大分医科大学臨床検査医学 犀川哲典)
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[声の広場-6]◇国立大学病院中央検査部会議から
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去る5月30日、京都大学のお世話にて第48回全国国立大学病院中央検査部会議
が行われました。小生も検査部長になって初めて参加いたしました(正確には昨年、
浜松医大が担当しましたので副部長として参加しています)。そこで、今回のコラ
ムではその会議の内容を一部紹介したいと思います。
1) 輸血検査を含めた時間外勤務体制
今、大多数の病院では24時間体制で検査部は動いていると思います。しかし、輸
血部は独立している施設が多く、輸血部技師のみではとても当直ができるだけの人
数がいません。ところが、輸血事故はむしろ時間外に起こりやすいのです。不慣れ
なヒトが輸血業務を行うからです。そういう意味で、多くの施設では検査部・輸血
部が共同で輸血検査業務も含めた当直体制をとっています。また、自動血液型判定
装置などを使用して検査をしています。輸血業務というのは、他の検体検査業務と
はかなり性状が異なっていると思いますので、十分に手慣れた検査技師が担当しな
いと、輸血事故は繰り返されるおそれがあります。三重大のように、検査技師を一
括して病院長配下に置き、各部が協力して業務にあたるという方法も、参考になり
ます。
2) 臨床検査技師の人事交流
今年度から国立大学病院は、地域ブロックごとに他病院検査部と2年の人事交流
が始まりました。しかし、実際は一部で始まっただけにとどまりました。活性化の
ため、教育的観点のためなどの理由はあり、それはそれでメリットもあるでしょう
けれど、経済的なサポートも十分ないシステムです。やる気がある技師は外にいっ
ても十分力を発揮してくれるでしょう。浜松医大は残念ながら相手校が見つからず、
今年度は断念せざるを得ませんでした。ブロックごとですと、相手あっての人事交
流ですので、やりたいことが合わず相手校が見つからなかったりします。今後、本
腰を入れて人事交流を考えるのであれば、ブロックをまたいだ交流も考慮する必要
があると思いました。ただ、経済的な制約はさらに厳しくなるというデメリットを
抱えています。
3) 独立行政法人
各大学が特色のある機能を有する必要があるという共通した意見があります。特
色のある機能を出すためには、それなりのコンセプト、マンパワー、設備投資など
が必要になります。また、一方では地域に立脚した医療を行える機関を目指すとい
う考え方もあります。すなわち、いかに生き残り作戦を展開するかということです。
病院検査部がなくては、診療に大きな障害がでる、検査部にたのめば解析してくれ
る、このような頼りになる検査部を構築していかなければなりません。ブランチ化、
FMS化という言葉が病院関係者から出るようでは負けです。いかにして、特徴のあ
る診療の1チームとして機能するか、それをじっくり、かつ迅速に考える必要があ
ります。
今回の内容は、臨床検査医が働く診療の現場である検査部の管理運営に関してで
した。小泉内閣誕生のこの時勢に、自分の職場の将来を真剣に考える必要があるよ
うです。
(浜松医科大学・臨床検査医学講座 前川真人)
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[声の広場-7]◇臨床検査医学の新しいチーズを楽しもう!
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スペンサー・ジョンソン著「Who moved my cheese?」がいま、ベストセラーだ。
政治、経済、教育等の医療を取り巻く環境が目覚しく変化するなか、素早く行動に
移す者、右往左往する者、変化に気かず動けない者など登場する2匹のネズミと2
人の小人に自分を投射して読みすすめることが読者に受けていると思われる。わた
しも昨年9月より富山医科薬科大学検査部長としてこの迷路に立たされている。こ
の物語で2匹と2人は「迷路」のなかに住み「チーズ」を探す。ここでいう「チー
ズ」とは登場人物の死活を制するものである。この話の中で小人は壁に気づいたこ
とを書き残す。「自分のチーズが大事であればあるほどそれにしがみつきたがる」、
「つねにチーズの匂いをかいでいれば、古くなったのに気がつく」「従来どおりの
考え方をしていては新しいチーズはみつからない」。
私たち臨床検査医が求める臨床検査医学のチーズとはなんだろうか。自分のいる
場所にあるチーズが賞味期限内にあるのか、まだ在庫があるのか、現場を客観的に
分析し、次に探すべきチーズがなんであるのかなど明確に指し示すことが検査部長
の使命であろう。私の考えている検査医学のチーズについて述べてみたい。1) ま
ず、自分の検査部に特産品となるチーズを生産する企業努力が必須である。大学病
院のもつ使命、高度先進医療として予算のとれる分野での開発が重要であろう。2)
全国の検査部には、品質も味も違ったおいしいチーズが散在している。これらの一
部をお互い共有できないだろうか。この物語ではネズミと小人の間でお互い情報を
共有することはなかった。チーズを隔てている壁を取り払い、全国の検査部が特産
品のチーズをお互いアピールして、チーズを交換したり、その作り方や評価(コン
サルト)のリアルタイム情報交換ができないだろうか。しかし、1) で述べたよう
なチーズを供与できない検査部はとり残されてしまうであろう。さらに検査部のホ
ームページを充実したり、臨床検査医会会誌等に投稿し、常に情報を発信しアピー
ルする努力が必要であろう。これらの媒体を通じて全国散在する有能な臨床検査医
が一体化できるような全国レベルの検査コンサルテーションシステムができれば臨
床検査医学の21世紀における医学医療の確固たる地位が構築できるような気がす
る。3) チーズの良い素材を集める。良質のチーズを作る。チーズの食べ方の作法
を教える。すなわち、いま、医学教育が大きな改革を求められるなか、医学・医療
の骨幹を支える学問領域である臨床検査医学は教育の中枢にあるべきというのが私
の持論である。私は富山に赴任して最初に求めているチーズは「教育」である。医
学生の講義はEBMとR-CPCを毎時間行い、予習を前提とした学生主導型に変更し
た。学生実習は検査部を終日利用し1週間1グループ2〜3名までで検査技師と教官
によるman to man体制とし、選択により希望者には再実習を受け入れることにし
た。このため1年間休みなく学生実習が施行されている。私もほぼ毎日学生とつき
あっている。(学生から内容と人気で学内No.1の評価を頂き、この夏休みに再実習
希望者が15名になり、私の夏休みはないものと覚悟した)。また、学内カリキュラ
ム改革委員、学士入学担当、チュートリアル授業責任者と医学カリキュラムに関与
するすべての業務に自ら立候補した。そして機会あるごとに臨床検査の教育に対す
る重要性を発言している。わたしの検査部長室には学生がよく遊びにくる。検査値
についての質問から、就職先の斡旋、彼女にふられた悩みなど、学生にはどんなに
忙しくても最優先でつきあうことしている。根っから学生が好きで教育が生きがい
なのである。しっかりした医学教育の中で臨床検査の意義と使い方、臨床検査医の
仕事の魅力を認識してもらい、ひとりでも臨床検査医を目指す後輩を育てていくこ
とが私自身の求めるべきチーズ(使命・生きがい)と思っている。
(富山医科薬科大学臨床検査医学講座 北島 勲)
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★JACLaP WIRE No.40 2001年09月25日
★発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
★編集:JACLaP WIRE編集室 編集主幹:森三樹雄
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獨協医科大学越谷病院臨床検査部気付
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★日本臨床検査医会ホームページ: http://www.jaclap.org/
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