○今回修了証書を受けられた方々
伊藤 章 横浜市立大学医学部臨床検査部
小野順子 福岡大学医学部臨床検査医学
加藤元一 京都第2赤十字病院中央検査部
幸村 近 旭川医科大学臨床検査医学
佐々木なおみ 呉共済病院臨床病理科
島崎英幸 防衛医科大学校付属病院検査部
白石泰三 三重大学医学部病理学第二講座
千葉仁志 北海道大学医学部附属病院検査部
秦 美暢 自衛隊中央病院研究検査部
藤井寿一 東京女子医科大学中央検査部
宮城洋平 神奈川県立がんセンター臨床研究所・腫瘍病理
横山繁生 大分医科大学病理学講座第一
○第7回までのGLM・WS参加施設[( )は参加者の当時の所属施設で
その後移籍等で現在は不在の施設]
国立、公立大学および短期大学(29校):北海道大学、旭川医大、(秋田
大学)、東北大学、山形大学、福島県立医大、信州大学、群馬大学、防衛医
科大学校、東京大学、東京医科歯科大学、横浜市大、千葉大学、筑波大学、
神奈川県立衛生短期大学、浜松医大、名古屋大学、三重大学、京都大学、京
都府立医科大学、広島大学、広島県立福祉短期大学、岡山大学、山口大学、
鳥取大学、島根医科大学、高知医科大学、(徳島大学)、九州大学、大分医
大、(鹿児島大学)
私立大学(20校):獨協医科大学、自治医科大学、埼玉医科大学、日本
大学、順天堂大学、慈恵医大、昭和大学、杏林大学、(北里大学)、(日本
医科大学)、東邦大学、東京医科大学、東京女子医大、帝京大学、東海大
学、近畿大学、関西医科大学、大阪医科大学、川崎医大、福岡大
その他の参加施設(25施設):私立東葛病院、国立健康栄養研究所、
(財) 東京都保険医療公社 東部地域病院、天理よろづ相談所病院、市立四
日市病院、川田クリニック、香川県立中央病院、株式会社シ−・ア−ル・シ
−、日本医学臨床検査研究所、青森労災病院、山口県立中央病院、、佐久総
合病院、国立弘前病院、京都第一赤十字病院、東京都神経科学総合研究所、
甲府共立病院、(関東逓信病院)、愛知県コロニー発達障害研究所、国立南
和歌山病院、広島市立安佐市民病院、祐生会みどりヶ丘病院、愛知県がんセ
ンター、飯田市立病院、日本赤十字社医療センター、大阪府立病院、京都第
二赤十字病院、呉共済病院、自衛隊中央病院、神奈川県立がんセンター
○GLM・WS未参加校(医学部ないしは医科大学)
国立、公立大学(22校)
私立大学(9校)
[2000年5月26日 副会長 森 三樹雄・チーフプランナー 熊坂 一成]
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[ニュース]◆臨床検査医学における系統的再評価プロジェクト委員会発足
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Evidence Based Medicineを臨床検査医学に応用するためには、検査診断が
必要とされる多様な状況のモデル化や適切なアウトカムの選択など、他の医学
分野より高度なノウハウが要求されるため、理論および実践の両面において固
有のアプローチが不可欠である。そこで、本邦の関連学術界の総力を結集して
この課題に取り組むため、国際臨床病理センターの呼びかけによって、この度
「国際臨床病理センター/臨床検査医学における系統的再評価プロジェクト委
員会(International Clinical Pathology Center / Committee on Systematic
Reviewing in Laboratory Medicine; ICPC/C-SRLM)」が発足した。
本委員会は河合 忠委員長と菅野剛史副委員長のもとに、次の4チームから
構成されている。
(1)統轄チーム(河合忠先生、菅野剛史先生、神辺眞之先生、渡邊清明
先生、福井次矢先生、中原一彦先生、櫻林郁之介先生、河野均也先生)
(2)方法論チーム(チーフ:神辺眞之先生)
本プロジェクトが採用する系統的再評価(メタアナリシス)のための標準的方
法マニュアルを作成すると共に、診断検査の臨床的評価のための研究論文が具
備すべき必要条件を作成する。当初は日本臨床病理学会臨床検査情報学専門部
会EBLM作業班が担当し、同専門部会が企画し内定通知を受けている科学研究費
補助金 平成12年度基礎研究(C)課題番号12897028(研究代表者:石田 博先
生)によるEBLM研究班が正式に発足した時点で、ICPC/C-SRLM統轄チームメン
バーが同研究班の研究協力者となり、共同作業を開始する。
(3)選考チーム(チーフ:渡邊清明先生)
最近研究結果が出版され、現状で臨床的ニーズが高く、しかも担当者が英文
論文として発表して業績となりうるようなテーマを3、4件選び、2名以上の
組合わせでSR担当者を指名または公募して決める。
(4)統計チーム(チーフ:福井次矢先生)
本プロジェクトに最適な統計学的方法について検討し、提案する。
なお、既に本委員会のプロジェクトとして、高感度CRP測定法の臨床的意義
の確立をめざし、とくに新生児感染症の早期診断ならびに循環器系疾患のリス
ク予知をテーマに、竹村 譲先生および石田 博先生が研究を開始している。
これらの成果を含め、本委員会では関連の学術情報を収集、蓄積し、本邦の
EBLM研究の集大成となるデータベースとしてインターネットで公開するととも
に、IFCCとの連携により国際的にも展開を図る計画である。
[2000年5月29日 東京医科歯科大学 西堀 眞弘]
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[特別寄稿]◆故井川幸雄先生への追悼文
東京慈恵会医科大学臨床検査医学 町田勝彦
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東京慈恵会医科大学名誉教授、井川幸雄先生が去る1999年12月5日に脳梗
塞のため急逝されました。井川先生は、1948年(昭和23年)9月東京慈恵会
医科大学卒業後インターンを経て国家試験合格後、直ちに東京慈恵会医科大
学第二生理学教室(当時杉本良一主任教授)に人室、講師、助教授と生理学
の教育、研究に従事されておられましたが、1967年に附属病院中央検査部に
移籍され、1970年教授に昇任、1977年臨床検査医学講座の創設に伴い、その
初代主任教授に就任されました。その後、宇宙医学研究室主任、医科学研究
所所長なども兼任され、それらの発展に大きな足跡を残されています。井川
先生の生理学教室時代は主として人体の代謝過程を中間代謝とエネルギー代
謝の両面から追求され、生理学、運動生理学、体力医学、宇宙航空医学に関
する多くの業績を残されました。また臨床検査医学におきましても時代の趨
勢に対応した臨床検査の自動化、正確で迅速な情報処理などを推進されまし
た。さらに教室員や技師などの人材育成にも尽力され、数多くの学術図書を
刊行し、優れた業績を学会や学会誌などに発表されておられます。
私が井川先生の門下生になりましたのは臨床検査医学講座の創設後半年経
過してからでありました。細菌学教室に在籍中の私が同教室に移籍したの
は、細菌学教室が中央検査部細菌血清科の面倒をみていたことと細菌学教室
の近藤 勇教授が盛岡中学の出身で井川教授の先輩であったことからと聞い
ております。研究に興味をもたれた先生は研究室の拡充に努められ、今日私
どもが自由に研究活動が行うことができる基礎を作られました。また、先生
は生理学、運動生理学、体力医学、宇宙航空医学、臨床検査医学の分野で幅
広く研究されただけでなく、英語、ドイツ語、フランス語、エスペラント語
(晩年にエスペラント学会会長も勤められました)にも堪能で屈託のない人
柄は交際範囲を広くされ、いつも多くの方々に慕われておりました。今日の
複雑な社会にあって先生のようなスケールの大きな柱を失ったことは残念で
あります。ここに謹んで先生のご逝去に心から衰悼の意を表し、ご冥福をお
祈り申し上げます。
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[Q&A] ◆全自動血球計の廃液の処理
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(Q)全自動血球計から排出される廃液を直接下水へ流すのは問題ではない
か、と医療監査で指摘されたのですが、どう対処すればよいでしょうか。
(臨床検査技師)
(A)法的な質問なので廃棄物処理法に基づいて説明します。産業廃棄物に
は一般的な産業廃棄物と特別管理産業廃棄物があります。一般的な産業廃棄
物とは事業活動から生じたもので、かつ、廃棄物処理法が定める19種類(燃
え殻、汚泥 、廃油 、廃酸、廃アルカリなど)に該当する廃棄物をいいま
す。また、爆発性・毒性・感染性などの性状を有して、人の健康や生活環境
に被害が生じるおそれがある廃棄物は、特別管理産業廃棄物として特に厳重
に規制されています。今回の質問である全自動血球計から排出される廃液は
血液などの検体が含まれているため、特別管理産業廃棄物の感染性廃棄物に
含まれると思われます。しかし医師の判断で感染の危険性がないと判断され
た場合は感染性廃棄物として処理する必要はなく、産業廃棄物の廃アルカリ
として処理されます。いずれの場合でも産業廃棄物として慎重に取り扱う必
要があります。処理方法については事業者が自らの責任で処理施設を整備し
処理する場合と専門業者に委託して処理する場合があります。いずれも事業
者は最終処分まで適正に処理をすることが必要です。よって貴院の施設長と
十分に相談し解決して下さい。
回答日:2000年5月23日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 鳥山 満
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査、その他)]
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[Q&A] ◆免疫電気泳動法の原理
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(Q)免疫電気泳動法の原理がどうしても分かりませんので、教えていただ
けないでしょうか。(学生)
(A)免疫電気泳動は、電気泳動法にて血清中の蛋白成分の分画を行い、次
に二重免疫拡散法により蛋白成分の同定を行います。電気泳動法の原理は
セ・ア膜を用いた蛋白分画と同様です。免疫電気泳動では支持体に寒天平板
を用います。緩衝液はベロナール緩衝液(pH8.6、μ=0.05)を使用します。
簡単な手技と原理の説明をします。
寒天平板に血清を塗布し、その平板を泳動槽のプラス電極槽とマイナス電
極槽の間を橋渡しするように置き、一定の強さの電流を流して泳動します。
アルカリ性であるベロナール緩衝液中の血清蛋白はマイナスに荷電している
ため、寒天の中をプラス電極側へと易動します(電気泳動現象:荷電量と電
場の強さに比例)。この時、ベロナール緩衝液の分子は寒天の中をプラス電
極からマイナス電極の方向に流れます。これを電気浸透現象といいます。蛋
白はこの流れに逆らって移動することになります。それぞれの蛋白は、固有
の等電点を持ち、アルブミンなど等電点が低いものはプラス電極側へ強く引
かれます。等電点が高いグロブリンなどは、逆にマイナス電極へ電気浸透で
流されてしまいます。一定時間泳動を行うとプラス側から順にアルブミン、
α1、α2、β、γのそれぞれの分画に分離されます。血清塗布点がちょう
どβ分画になるように、寒天に加えるアガロースを調整すると、きれいに分
離できます。実際には泳動を取り巻く複雑な因子が関与しています。支持体
への蛋白の吸着や分子ふるい効果、緩衝液のイオン強度、ジュール熱などが
挙げられます。
次に寒天に作った溝に抗血清を流し、15〜16 時間静置します。蛋白(抗
原)と抗血清(抗体)は、拡散して抗原・抗体反応が起こります。ちょうど
最適比の場所に沈降線(不溶性の抗原・抗体複合物が白い沈殿物として確認
される)が形成されます。寒天は網の目構造になっているため、分子量に
よって拡散距離がそれぞれ異なります。分子量の大きいIgMやα2マクログ
ロブリンなどは、拡散速度が遅いため抗血清の溝から遠くに沈降線が形成さ
れます。アルブミン分画ではトランスサイレチン、アルブミン、α1分画で
はα1アンチトリプシン、α2分画ではα2マクログロブリン、セルロプラ
スミン、ハプトグロビン、β分画ではトランスフェリン、ヘモペキシン、β
1C・β1A、γ分画ではIgG、IgA、IgMが主要な沈降線として現れます。沈降
線はその太さなどで、おおよそ量の増減がわかります。重要なポイントは多
発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症の際にみられるM成分(M-bow)の
発見です。
【参考文献】
[1]大谷英樹、河合忠:免疫電気泳動法(第2版)、医学書院、東京、
1997
[2]〆谷直人、大谷英樹:M蛋白の検出と検査の進めかた、検査と技術、
19、27-32、1991
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 柴崎 光衛
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[Q&A] ◆供血者に対するHBc検査
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(Q)当院では稀に院内供血者輸血を実施しますが、供血者のHBVのスクリーニ
ングについて、
・HBs抗原だけでなくHBc抗体も検査に加えるべきか
・その場合、HBc抗体陽性例全てを供血適応外とすべきか
・また、どの検査法を採用すべきか
についてご教示ください。(大阪府 臨床検査技師)
(A)供血者の検査にHBc抗体を加えるべきです。
HBc抗体は、HBV感染早期から出現しHBVキャリアで高抗体価を示します。低
抗体価の場合は過去の感染を示します。しかし、HBs抗原陰性でHBs抗体陽性で
あっても、HBc抗体陽性の場合は、血中もしくは肝組織中にごく微量のHBVが存
在する危険があります。ということは、低抗体価でもHBc抗体陽性ならば供血
者として「不適」とするのが妥当です。
日赤血液センターで実施されている検査は、ABO血液型、Rho(D)抗原、不
規則抗体スクリーニング、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体、HIV1,2抗
体、HTLV-I抗体、梅毒血清反応、ALT(GPT)です。院内供血者でも同様な検査
が必要ではないでしょうか。供血者の感染症検査では、検査によって高感度な
測定法が要求されます。特にHIV抗体検査ではWindows periodが問題になり、
抗体検査の限界が指摘されています。日赤ではNAT法を導入するなど、安全な
血液の供給に努力しています。また、「血液製剤の使用にあたって」の中に血
液センターからの供給体制が整っている場合、特別な事情がない限り院内供血
者による輸血は行うべきではないとあります。家族や知人が供血者といえども
感染のリスクは同じです。できれば、医師と話し合ってできるだけ日赤の血液
を用いた方がよいと思われます。
【参考文献】
[1]丸山念之:HBVのウイルスマーカー.メディコピア、39、204-207、
1999
[2](財)血液製剤調査機構 編集:血液製剤の使用にあたって 第2版、
1999
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 柴崎 光衛
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[Q&A] ◆補体のcold activationの検査
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(Q)補体のcold activationを疑うときになぜ血漿中のCH50を測定するのです
か。Caの影響はあるのでしょうか。
(A)cold activation(クリオグロブリンなどが低温での活性の引き金になる
と考えられている)は、肝疾患やHCV抗体陽性者に頻度が多いことが知られて
います。稲井らの報告では低温保存において、C4、C2の活性低下が原因として
います。EDTAはCa2+をキレートするのでC4の活性を抑制します。また、ヘパリ
ンでも同様の作用があります。このように、EDTAやヘパリンを加えて得られた
血漿は、保存による活性化が抑えられ、cold activationを起こしにくくなり
ます。ただし、100%防げるわけではなく、検体によってはcold activationが
多少進行する場合もあります。
cold activationを疑うときは、同一患者の血清と血漿の補体価を同時に測
定し、血漿>血清となることで確認できます。また、血清分離を37℃で速やか
に行い、低温に保存したものと値を比べる(37℃>低温)ことや、C3やC4の蛋
白量を測定することも1つの方法です。
【参考文献】
[1]稲井真弥:病気と補体.代謝.12(臨時増刊号):331-337、1975
[2]稲井真弥、安田玲子:補体価測定法.CLINICAL LABOLATOLY、233-238、
1977
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 柴崎 光衛
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[Q&A] ◆梅毒血清診断について
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(Q)梅毒血清反応のTP抗原測定系に於いてTPHAが陰性化せず陽性反応を示し
つづける例がありますが、なぜですか。また新感染症法の「報告のための基
準」で、「無症候梅毒ではカルジオリピンを抗原とする検査で16倍以上かつ
T.pallidumを抗原とする検査が陽性のもの」とありますが、16倍以上の根拠と
TP抗体価が不要な理由を教えてください。(臨床検査技師)
(A)早期に駆梅療法をすれば、TPHAでも陰性化するといわれています。顕性
梅毒では、未治療期間が長ければ、治療してもTPHA陽性が長期間続きます。他
の感染症でも獲得免疫として長期間抗体が検出されるものは多く、T.pallidum
(TP)に対する抗体に限ったことではありません。細胞性免疫系で免疫記憶細
胞が長期にわたり存在すると考えられます。また、抗体保有者に2次感染が起
こると、ブースター効果により早期にTP抗体が初感染ピーク時の5〜10倍ほど
に上昇します。「抗体価のtailing」とはあまり耳にしませんが、治療後もTP
抗体が長期間検出されることを表現しています。
厚生省の感染症報告義務疾患の診断基準に「無症候梅毒ではカルジオリピン
を抗原とする検査で16倍以上陽性かつT.pallidumを抗原とする検査が陽性のも
の」とあります。無症候梅毒では、臨床症状はみられないがSTSが16倍以上で
あれば治療することが望ましいとされています。治療済み梅毒との区別や治癒
判定基準(8倍以下)、BFPの可能性、過去の膨大なデータやCDCのガイドライ
ンなどを参考に16倍という数値が決められたと思われます。また、TPHAはSTS
に比べ特異性は高いですが、抗体価は治療と一致しませんので、陽性であれば
よいとの判断ではないでしょうか。
【参考文献】
[1]水岡慶二:血清診断法.STD 臨床と細菌(臨時増刊)、137-142、
1984
[2]津上久弥:梅毒の治療:皮膚科MOOK、4、79-89、1986
[3]望月照次、中村良子:梅毒の検査.検査と技術、24、809-818、1996
[4]伊東文行、本田まり子、新村眞人:性感染症診断・治療guide line 梅
毒.日性感染症会誌、10、14-16、1999
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 柴崎 光衛
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[Q&A] ◆免疫学的検査装置の開発・製造の認可
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(Q)免疫学的検査装置の開発・製造を行う場合、国または県の認可および開
発担当者に求められる資格について教えてください。(東京都 製造業勤務)
(A)免疫学的検査装置は、薬事法で規定する医療用具に該当すると思われま
すが、医療用具を業として製造又は輸入販売する場合は、薬事法の規定に基づ
き、厚生大臣又は都道府県知事の許可を受ける必要があります。しかし、ご質
問のように開発段階の試作品等の製造については、国又は県の許可は必要あり
ません。
医療用具を業として製造する場合は、薬事法第12条に基づき、その製造場所
(製造所)について厚生大臣又は知事の許可を受ける必要があります。免疫学
的検査装置のような検査用器具を新たに製造しようとする場合には、その製造
所所在地の都道府県知事に医療用具製造業の許可の申請を行います。
免疫学的検査装置の開発担当者の資格について、薬事法による規制は特にあ
りません。
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[Q&A] ◆免疫血清検査の自動化
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(Q)HBs抗体を粒子凝集法(PA法)で検査を行っている施設はどのくらいあり
ますか。また、この方法を自動的に処理する装置にはどのくらいのニーズがあ
るでしょうか。(東京都 製造業勤務)
(A)HBs抗体をPHA法、PA法などのいわゆるマイクロタイター法で測定してい
る施設数は約20%前後と思われます。
マイクロタイター法が一般的に普及し始めてから約30年になります。現在で
も梅毒検査、HBs抗原や抗体検査、抗HIV抗体検査など感染症関連検査を中心に
広く利用されています。マイクロタイター法が急激に減少することはないと思
いますが、しかし、徐々に減少していることも事実です。EIA法や化学発光法
などの自動化法や簡便な目視法であるイムノクロマトグラフィー法への移行が
原因です。このような現状で、マイクロタイター法の自動処理装置を開発され
ても、需要が少ないと思われます。あるメーカではだいぶ前からCCDカメラを
用いた判定機を発売しています。しかし、検査センターや一部の施設以外、一
般的に普及していないようです。
以上の点から需要はあまり期待できないと考えられます。
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 柴崎 光衛
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[Q&A] ◆梅毒の自然治癒と母児感染
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(Q)西アフリカで、未治療で無症状の妊婦のRPRとTPHAがともに陽性という例
を経験しましたが、梅毒が自然治癒することがあるのでしょうか。一方、小児
は梅毒を発症する例が多かったのですが、これは親が不顕性感染であっても、
小児には感染しやすいということでしょうか。(山口県 臨床検査技師)
(A)梅毒は放置していても自然治癒するといわれています。津上の報告の中
でオスロー大学のBoeck教授の報告例と大阪万代診療所の例が紹介されていま
したので、その部分を抜粋しました。「Boeck教授は、梅毒患者に対し駆梅剤
を用いず対症療法のみを行った結果、6〜7割に後遺症を認めず、その半数は
血清反応も陰転化して自然治癒の経過をとった。また、大阪万代診療所の例で
は過去7年間の初診患者約5,000名の80%はすでに低い抗体価になっており、
戦後砒素剤療法を受けた655人と同年代の過去無治療グループ2,750人の抗体価
は大差なかった。また、こられのうち心血管系などに後遺症のある患者は少数
であったが、オスロー大学の例では心血管梅毒23 %、神経梅毒14%が認めら
れた」。このように自然治癒した報告がされています。
先天梅毒は母親から胎児への垂直感染が原因です。先天梅毒でも無症状で血
清反応のみ陽性の例もあります。母親の感染時期によっても胎児への影響は異
なります。妊娠初期に感染すると、流産になる確率は高くなります。日本では
妊婦検診で梅毒検査が行われています。血清反応が陽性の場合、IgM-TPHAで早
期梅毒であるかの確認が行われ、治療が的確に実施されています。また、新生
児梅毒についても臍帯血のIgM-TPHAを測定し治療の有無を判断しています。し
たがって、小児梅毒で臓器に後遺症を残すような例はまれといえます。小児梅
毒の発病率は、母親の感染時期に影響されると考えられます。また、成人に比
べ免疫ネットワークが十分確立していない小児では、発症率も高いと思われま
す。
【参考文献】
[1]津上久弥:梅毒の治療.皮膚科MOOK、4、79-89、1986
[2]植村一郎:近年における婦人の梅毒について.モダンメディア、35、
589-601、1989
回答日:2000年5月29日
回答者:日本臨床病理学会認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)
獨協医科大学越谷病院臨床検査部 柴崎 光衛
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
(免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
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[人事消息]◆菅野剛史会員、浜松医科大学附属病院長に就任
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《新任》山口大学医学部附属医療技術短期大学部教授…服部幸夫
中村学園大学食物栄養学科教授…………………津田博子
浜松医科大学附属病院長…………………………菅野剛史
[2000年5月15日 庶務・会計幹事 高木 康]
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[編集後記]◆精度管理と検査医の役割
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今回の記事にもあるように、検査医会の諸先生と現場の技師さんの並々な
らぬ努力で、わが国の外部精度管理は着実に実を結んでいるようである。
「SDの幅が狭すぎて困る」などというのは、一昔前から見れば夢のような話
であろう。このような地道な努力が、検査以外の領域からもっと認知が得ら
れるようになってほしいものである。それにしても、あまりに狭い幅で優劣
をつけるとなると、ほとんど臨床的意義に乏しい範囲で正当性を争うことと
なり、その時間的・費用的コストからみて、妥当とは考え難いのではあるま
いか。そのヒマがあったら、もっと安く、早く結果を返すよう精進したほう
が患者のためになる。すなわち臨床的有意性からみた精度管理の落とし所を
提案していくのが、技師さんより臨床を知っている「検査医」の役割と考え
る。結果記入時の取り違えについても、書式をできるだけ判りやすいものに
して、少しでも人為的ミスの起こりにくいサーベイになるよう希望してい
る。取り違えが少なければ少ないほど、お互いに検査室運営がうまく行って
いる証となるからである。
[編集委員 木村 聡]
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JACLaP WIRE No.24 2000年5月29日
■発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
■編集:JACLaP WIRE編集室■編集主幹:西堀眞弘
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