JACLaP WIRE No.14 1999.11.10 



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          JACLaP WIRE No.14 1999年11月10日
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============================≪ 目 次 ≫============================

[お知らせ]◆決戦投票結果速報、新会長は河野均也会員に
[お知らせ]◆「ラボ」の「検査のわかるページ」をホームページにも掲載

[ニュース]◆WASPaLMとIFCCが検査部長の適格要件で合意

[特別寄稿]◆「臨床検査室認定の基本方針」に関するIFCC・WASPaLMによる
                  共同声明文の解説(日本語対訳付)

[Q&A] ◆検査室とISO規格
[Q&A] ◆国際単位における酵素活性測定温度

[人事消息]◆千葉大学の臨床検査医学教授に野村文夫会員が就任

[訃報]  ◆林 康之先生、ご逝去

[編集後記]◆臨床検査医の国際戦略
 
* ========================≪ JACLaP WIRE ≫======================== *

[お知らせ]◆決戦投票結果速報、新会長は河野均也会員に
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 先頃行われた平成12年度〜平成13年度(2000年1月1日〜2001年12月31日)の
会長選挙の決選投票について、熊本市民会館において本日選挙管理委員会に
よって行われた開票の結果、河野均也会員が最高得票数を獲得され、幹事会の
議を経て総会で次期会長として承認されました。なお、監事は選挙の結果通り
大場康寛会員と河合忠会員が承認されました。

[1999年11月9日 総務・会計幹事 高木 康]
 
* ========================≪ JACLaP WIRE ≫======================== *

[お知らせ]◆「ラボ」の「検査のわかるページ」をホームページにも掲載
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 本会は1999年4月より月刊新聞「ラボ」(日本衛生検査所協会発行)の「連
載:検査のわかるページ」を担当していますが、この度同協会のご厚意によ
り、本会ホームページの「検査実務トピックス」にも掲載することになりまし
た。検査医が専門外の方のために臨床検査の使い方などをやさしく解説してい
ますので、どうぞご利用下さい。

[1999年10月22日 情報・出版委員長 土屋達行]
 
* ========================≪ JACLaP WIRE ≫======================== *

[ニュース]◆WASPaLMとIFCCが検査部長の適格要件で合意
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 「臨床検査部の認証に関する原則(Principles of Clinical Laboratory
Accreditation)」について数年越しの協議を重ねてきたWASPaLMとIFCCが、検
査部長の資格を含む事項について9月16日に正式合意した。WASPaLMのホーム
ページに合意文書が全文公開されている。

 WASPaLMのホームページ:http://www.wasp.or.jp/

[1999年11月1日 WASPaLM次期会長 森 三樹雄]
 
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[特別寄稿]◆「臨床検査室認定の基本方針」に関するIFCC・WASPaLMによる
                  共同声明文の解説(日本語対訳付)
        自治医科大学名誉教授/国際臨床病理(ICP)センター
                             河合 忠
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■共同声明文の承認経過

 去る1999年9月17日から21日までの間、ブラジル国サンパウロ市に
おいて第20回世界病理学・臨床検査医学会議が開催された。同時に第4回
MERCOSUL会議、第33回ブラジル臨床検査医学会議、第3回検査室運営会議、
医学展示会が開かれ、ラテンアメリカ圏、とくに地元のブラジルから多数の参
加があり、主催者側の発表で、31カ国から合計4301名の参加者があった
とのことである。その期間中に、IFCC会長であるカナダのMatthew McQueen博
士が特にサンパウロ市の会場を訪れて、WASPaLMの役員との間で両学会の協力
方針について協議が行われ、今回の共同声明文について合意が得られた。その
内容が9月18日の代議員会にはかられた。日本臨床検査医会もWASPに加盟し
ているので、神辺眞之幹事(広島大学医学部教授)が本会の代議員として参加
された。代議員会において、共同声明文の内容について多くの議論が交わされ
たが、最終的にWASP理事会からの提案通り、共同声明文が承認された。IFCCと
WASPとの間の協力関係についての協議は、2年前の1997年にフランス国、
ベルサイユで開催された第19回世界病理学・臨床検査医学会議でも両学会役
員が話合いを持ち、その後主としてドイツ国のHans Reinauer教授(WASP前会
長)とUtz P. Merten博士(現WASP会長)が協議を継続して、今回の合意に漕
ぎ着けた。


■WASPとIFCCの関係

 WASPは、ヨーロッパの臨床病理医が中心となり国際臨床病理学会として
1947年に発足したが、1969年には米国病理医の主導により世界病理・
臨床病理学会連合(WASP)と学会名が変更になった。したがって、WASPは臨床検
査に関わる医師の専門団体として認識され、発展してきた。
 IFCCは1952年に発足し、臨床化学者が中心となり発展してきた。臨床化
学者の中にはもちろん医師会員も多数含まれているが、非医師会員が圧倒的に
多く含まれている。とくに、フランス語圏では伝統的に薬剤師が臨床検査業務
をほぼ独占してきたために、ヨーロッパ大陸と北欧では非医師の臨床化学者が
大きな勢力を占めるようになった。また、開発途上国では、検査室を担当する
主たる医師は形態病理医であることが多いこともあって、非医師の臨床化学者
が臨床検査業務で主役を演ずる状況である。
 WASPが長年(筆者がWASP会長になって企業賛助会員制度を導入するまで)企
業との連携を積極的に進めず常に活動基金に不足してきたのとは対照的に、
IFCCは体外診断企業団体と密接な連携をとって経済的基盤を強めてきた。
 1969年、SI単位系の採用を積極的に導入しようとのWASP/IFCC共同声
明文を公表して以来、両団体の協調体制に特に進展はなかった。しかし、臨床
検査の測定技術(器械、試薬、など)の急速な進歩によって定量検査の領域が
どんどん拡大すると、いわゆる臨床化学は古典的な化学検査から大きく広が
り、免疫化学検査、血液凝固学検査、などまで含むようになった。そうした背
景から、IFCCの中で臨床検査医学(Laboratory Medicine)を標榜する傾向が
出てきた。一方、米国やドイツ国では病理医や臨床検査専門医の間で、以前か
ら臨床検査医学(Laboratory Medicine, Laboratoriumsmedizin)を標榜して
おり、WASP世界会議でもしばしば形態病理学、臨床病理学に加えて臨床検査医
学という言葉が登場してきていた。1970年代後半からWASP役員会では、そ
うしたIFCC内の動向に対して懸念を示す議論が繰り返されていた。ドイツ国で
は、早くからドイツ臨床検査医学会(Deutsche Gesellschaft fur
Laboratoriumsmedizin)とドイツ臨床化学会(Deutsche Gesellschaft fur
Klinische Chemie)は両学会の年会を共同で開催することで協調体制を作り上
げた。しかし、世界的な動向を踏まえて、1997年にWASPとIFCCがいずれも
学会名称の変更を決議した。すなわち、WASPはWorld Association of
Societies of Pathology and Laboratory Medicineへ、IFCCはInternational
Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicineへと変更し、し
かも両団体が今後とも臨床検査の発展に協調体制を確立することで基本的に合
意した。わが国でも、日本臨床病理学会と日本臨床化学会が中心となり、臨床
検査医学に関する合同会議をもつよう協議が進められているところである。


■共同声明文のポイント

 国際標準化機構(International Organization for Standardization, ISO)
は、主として工業界で品質保証に関する国際規格(ISO 9000シリーズ)または指
針(ISOガイド25、など)を公開してきた。1995年から、ISOの中に「臨床検
査と体外診断検査システム」専門委員会(ISO/TC212)が発足し、臨床検査室の精
度(品質)保証についても国際規格を作成中である。しかし、そうした活動は
必ずしも医学的な立場で全面的に議論されているわけではない。その主な理由
としては、(1)医学関係者の委員が少なく、産業界を代表する委員が多いこ
と、(2)ISOがヨーロッパ主導で進められる場合が多いこと、および(3)国際規
格が開発途上国にとっても役立つ目標でなければならないということ、などが
あげられる。そうした動きを補完する意味で、臨床検査関連専門学会とくに
IFCCが中心となって臨床検査の標準化のあり方、とりわけ臨床検査室の認定に
ついて専門的な立場で提言しようとの機運が高まったのである。WASPaLM理事
会としても、IFCC独自の動きとして進めることの長所と短所を十分に議論し、
今回IFCCとの共同声明文を作成すべく協議を進めることに踏み切り、2年間余
の協議の末、今回の合意に漕ぎ着けた。最も問題となったのは、検査部長の資
格をどのように規定するか、が焦点となった。現に、代議員会でも、医師以外
の検査部長を容認する今回の合意内容に対して明確な反対を意志表明する国も
あった。しかし、長時間の議論の末、臨床検査界における世界の現状を踏まえ
た現実的な共同声明文が採択されたのである。
 今回の声明文の内容は基本的にはISO/TC212が準備中の国際規格案と乖離は
ないが、より専門的な立場で明確にした主な点は以下の通りである:

(1)認定の対象を明確に、「すべての検査室と体外診断活動」として診療所
検査ならびにPOC(point-of-care)検査までを含めた

(2)認定のための規格作成と実施は「医科学関連学会が責任をもつべきであ
り、しかも臨床検査室業務に関与している者が主導すべきである」とし、政府
機関や健康保険団体(支払者側)による主導を拒否した

(3)検査実施者は理科系の中等教育レベル以上の教育を受けて、しかも臨床
検査の実際について訓練を受けていることとした

(4)検査部長は医学(medicine)、科学(science)またはそれぞれの国家が認
めた専門分野での大学卒業以上の資格を有し、しかも臨床検査業務に関する卒
後教育を受けていることとした

 両学会で最も問題となったのは、科学(science)の定義であり、国によって
その解釈が異なる点である。“薬学系(pharmacy)”を“science”とは独立に
記載すべきとの強硬な意見が出た。しかし、薬学は理系に入るとの大方の理解
を得たが、前述の強硬論に配慮して“国が適切と認める分野”を付け加えるこ
ととなった。わが国では一般的に、scienceというと、“文系”に対して“理
系”と解釈してよく、薬学、獣医学、歯学などを含むであろう。

(5)近年の医療界での経済状況の悪化を踏まえて、「経済的圧迫に拘わら
ず、適切な技術的、専門的標準を維持すべきである」と明確に宣言した。


 (以下原文は左右対訳であるが、編集の都合上交互対訳として掲載した)

      PRINCIPLES OF CLINICAL LABORATORY ACCREDITATION

A JOINT POLICY STATEMENT BY THE INTERNATIONAL FEDERATION OF CLINICAL
CHEMISTRY AND LABORATORY MEDICINE(IFCC) AND THE WORLD ASSOCIATION OF
SOCIETIES OF PATHOLOGY AND LABORATORY MEDICINE(WASPaLM)

        「臨床検査室認定の基本方針」に関する
       IFCC・WASPaLMによる共同声明文

1. THE PURPOSES AND NATURE OF LABORATORY ACCREDITATION

1.臨床検査室認定の目的及び性質

 It is in the interests of patients, of society, and of of governments
that clinical laboratories operate at high standards of professional
and technical competence, for the following reasons:

 臨床検査室を専門的かつ技術的に高い標準で運営することは、患者、社会及
び政府にとって役立つことであり、その理由は以下のとおりである:

・ Decisions about diagnosis, prognosis and treatment are frequently
based on the results and interpretations of laboratory tests, and
irreversible harm may be caused by erroneous results

・診断、予後及び治療についての意志決定はしばしば臨床検査の成績と解釈に
基づいて行われ、誤った成績により取り返しのつかない弊害を招くことがある

・ Users of clinical laboratory services (both patients and clinicians)
may not have sufficient technical knowledge to allow them to
determine whether a laboratory operates at a satisfactory level

・臨床検査室サービスの利用者(患者と臨床医の両方)は、検査室が満足でき
るレベルで運営されているか否かを判断するのに十分な専門的知識を持ってい
るとは限らない

・ Patients, and to a lesser extent clinicians, may have no choice
about the laboratory to be used

・患者はもとより、臨床医にとっても、利用する検査室を選択できない場合が
ある

・ Laboratory testing can be expensive and the patients, insurance
organizations, or governments who pay for testing expect the
laboratory to provide valid information

・臨床検査は高額となりうるので、検査費用を支払う患者、保険団体または政
府は臨床検査室に対して妥当な情報提供を期待している

・ It is in the interests of competent laboratories that their
competence is verified through a process of inspection, comparison
against appropriate standards, and public affirmation of their good
standing.

・査察、適切な標準規格との比較、優秀さの公認などの手順を通して、検査室
の能力が確認されていることは有能な検査室にとって有用である。


 Accreditation is an external audit of the ability of a laboratory to
provide a high quality service. This requires a laboratory to submit
information demonstrating:

 認定(accreditation)とは、ある検査室が高い質のサービスを提供できるか
どうかを外部から認証することである。それには、検査室が以下のような情報
を提示することが要求される:

・ conformity with published accreditation standards,

・文書化された認定規格に対する適合性(conformity)

・ existence of a management system addressing internal and external
measures of quality, outlined in a quality management manual, and

・クオリティマネジメントマニュアルに記載された内部及び外部精度管理方法
を決めた運営システムの導入、並びに

・ a qualified expert appraisal by an accreditat ion organization.

・認定機関による有資格者の専門的な査定。


2. SCOPE AND ADMINISTRATION

2.作業範囲と運営

・ Inspection and accreditation processes should include all
laboratories and in-vitro diagnostic activities, including physician
office laboratories and point-of-care testing.

・認定手順の対象には、診療所検査室やPOC(point-of-care)検査などすべ
ての検査室と体外診断活動を含むべきである。

・ Accreditation should be based on inspection visits and peer review,
in addition to provision of information to an inspection agency. The
aims of the accreditation system should include improvement of
standards of practice through dissemination of information and
through continuing professional education.

・認定は、査察機関に対する情報提供に加えて、立ち入り調査と専門家による
評価に依るべきである。認定システムの目的には、情報伝達及び継続的な専門
的教育を通して検査室業務の標準の改善を含むべきである。

・ Standard-setting and the inspection process should be implemented by
accreditation bodies in which medical and scientific professional
societies are strongly represented. Government agencies or health
insurance organizations should participate in these bodies to the
extent necessary to ensure acceptance and public accountability of the
accreditation system. The accreditation system should be revised
regularly. The major responsibility for standard-setting remains with
the medical and scientific professionals engaged in clinical
laboratory work.

・規格設定及び査察行程は、医科学専門学会代表者を主とする認定機関により
実施されるべきである。こうした認定機関については、政府機関や健康保険団
体の関与は、その認定システムを了承し、公益的責任を確認するに必要な程度
に留めるべきである。その認定システムは定期的に改訂されるべきである。規
格設定のための主要な責任は臨床検査室業務に関与している医科学専門家にあ
る。


3. ASSESSMENT CRITERIA

3.評価基準

 Standards should be defined by the accreditation body and assessed
by peer review. The standards should include:	

 標準は認定機関が設定し、専門家の評価を受けるべきである。その標準に含
まれるべきことは:

・ Organization and administration

・組織と運営

 This includes the existence of an appropriate administrative and
staffing structure, with documentation of accountability and
responsibilities.

 これに含まれるのは、適切な運営と人材の組織であり、責務と責任を文書化
すること。

・ Staff qualifications

・人材の資格

 There must be sufficient staff with appropriate education and
training, with provision for continuing education and assurance of
staff competencies. Staff performing testing should have post-
secondary education in appropriate scientific dsiciplines, and
training in laboratory procedures. Laboratory directors may have
initial qualifications in medicine or science or another initial
university qualification deemed appropriate by national policy; but
must have specialized post-graduate professional education and
training in clinical laboratory work.

 適切な教育と訓練を受けた人材が十分に居て、継続的教育と人材の能力を保
証しなければならない。検査実施者は適当な理科系分野で二次(中等)教育よ
りも高い教育を受け、臨床検査法の訓練を受けていなければならない。検査部
長については、最初の高等教育として医学(medicine)または科学(science)ま
たは国家の方針により適切とみなされた他の分野の大学卒業資格を有すること
でよいが、しかし臨床検査業務における専門的な卒後教育と訓練を受けていな
ければならない。

・ Facilities

・設備

 The working environment must be safe for staff and patients, and
sufficient and appropriate for the work. Equipment, materials and
reagents must be of suitable quality and and appropriate for the
purposes for which they are used.

 作業環境は職員及び患者にとって安全で、作業のために十分かつ適切でなけ
ればならない。機器、物件及び試薬は良質で、利用目的に適合していなければ
ならない。

・ Quality Policy

・精度保証

 There must be documentation of policies and and procedures, and of
laboratory methods. Internal and external quality assurance proced
ures, and systems evaluation, must cover the preanalytical, analytical
and postanalytical phases of sample analysis or examination.

 精度保証に関する方針と手順、ならびに検査方法について文書化されていな
ければならない。内部及び外部精度保証手順並びにシステム評価には検体分析
または測定における分析前、分析中及び分析後段階を包含していなければなら
ない。


4. ETHICS

4.倫理

 Patients are increasingly and appropriately aware of healthcare
issues, and desire participation in decisions affecting their health.
The ultimate responsibility of a clinical laboratory is to the
patient.

 患者は保健医療の問題にますます適切に関心を寄せており、彼らの健康に関
する決定に参加することを望んでいる。それぞれの臨床検査室の最終的な責任
は患者のためにある。

 Adherence to high standards, such as those related to timeliness of
test results, laboratory accuracy and precision, clinical relevance of
of the tests performed, qualifications and train of personnel, and
prevention of errors, is an ethical responsibility of all clinical
laboratory staff.

 時を得た検査成績,検査の正確さと精密さ,実施された検査の臨床的適切さ、
人材の資格と訓練並びに誤りの発生予防など、高い標準を維持することはすべ
ての臨床検査室職員にとって倫理的責任である。

 Inspection and accreditation of clinical laboratories should also
ensure that the owners, managers and staff complty with ethical
standards, such as:

 臨床検査室の査察及び認定は、また所有者、管理者及び職員が以下のような
倫理的基準に従っていることを保証すべきである:

・Maintenance of confidentiality of patient information

・患者情報の秘密保持

・Adherence to appropriate technical and professional standards
regardless of cost pressures

・経済的圧迫に拘わらず、適切な技術的、専門的標準の維持

・Avoidance of personal, financial and organizational conflicts of
interest	

・個人的、経済的及び組織としての利害対立の回避

・Non-discrimination against patients or staff based on race, gender,
political or religious beliefs, or economic circumstances.

・患者あるいは職員に対する人種、性、政治的信条、信仰または経済的状況な
どによる非差別。


5. ABOUT IFCC AND WASP

5.IFCCとWASPについて

 The International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory
Medicine(IFCC) was founded in 1952 in order to advance the science and
practice of clinical chemistry throughout the world, in the interests
of the peoples of the world. 	

 国際臨床化学・臨床検査医学会(IFCC)は、世界の人々に役立つように、世界
の臨床化学の学問と実践を発展させるために1952年に設立された。

The purposes of the IFCC are now to:

IFCCの目的は、現在、以下の通りである:

- establish, encourage and foster high professional standards of
clinical laboratory science

−臨床検査科学の高い専門的標準を改善し、推進し、且つ達成する

- promote international co-operation and co-ordination in the
development of clinical laboratory science in matters of research,
procedures, materials, regulations and practices, education and
training, codes of ethics and related subjects

−研究、手順、物質、規則と実践、教育と訓練、倫理規程並びに関連事項を含
めて、臨床検査科学の発展において国際的な協同と協調を推進する

- provide a basis for closer liaison and the free exchange of
professional information among clinical laboratory scientists world
wide

−世界中の臨床検査科学者の間で専門的な情報の自由な交換と緊密は関係維持
のための基盤を提供する

- Sponsor and support International Congresses of Clinical Chemistry
and International Congresses of Clinical Laboratory Science; sponsor
and support regional congresses and meetings of international scope
and interest

−臨床化学と臨床検査科学の国際会議を主催および支援する;国際的視野と興
味をもつ地域的会議や会合を主催および支援する

- Encourage, sponsor and/or condut studies, and prepare
recommendations, reviews and reports on facets of clinical laboratory
science of international interest and concern

−国際的に興味と関連を有する臨床検査科学の立場で、調査を推進、支援また
は実施し、提案、検討結果および報告書を作成する

- Provide consultation and advice on facets of clinical laboratory
science to all members of the IFCC, other international and regional
societies, states, nations, industries and others concerned with the
provision of health services and materials

−IFCCの全会員、他の国際的・地域的学会、地域、国、企業など保健・医療サー
ビスや製品に関連したすべてのメンバーに対して、臨床検査科学の立場から相
談を受け、進言する

- Encourage and assist in the organization and establishment of new
societies concerned with clinical laboratory science

−臨床検査科学に関連した団体を助成し、新しい学会の設立を推進、支援する

- Contribute in other ways wherever practical and feasible to the
improvement of clinical laboratory science and its services to
humanity.

−臨床検査科学とそのサービスの改善に実用的かつ妥当ないかなる方法によっ
ても人類に貢献する

IFCC now has member societies representing clinical chemistry and
laboratory medicine in 76 countries, and 41 Corporate Members engaged
in the in-vitro diagnostics industries.

−IFCCは現在76カ国を代表する臨床化学と臨床検査医学の学会が加盟し、体
外診断企業に関連する41法人会員がいる。

IFCC Technical Secretariat
Centre du Medicament
Universite de Nancy 1
30, Rue Lionnois
F-54000 Nancy, France.

IFCC事務局


The World Association of Societies of Pathology and Laboratory
Medicine (WASPaLM) was founded in 1947 as the International Society of
Clinical Pathology;changed to the WASP in 1972. At present, there are
more than 55 Societies, Colleges or Associations in over 40 countries
involved within WASP, and over 40 corporate sponsors engaged in the
in-vitro diagnostic industries.

世界病理学・臨床検査医学会連合(WASPaLM)は1947年に国際臨床病理学会と
して発足し、1972年にWASPと名称が変更された。現在、40カ国以上
から55学会が加盟しており、体外診断企業から40社以上が賛助会員となっ
ている。

The mission of WASP is to improve health throughout the world by
promoting the teaching and practice of all aspects of Pathology/
Laboratory Medicine.

WASPの使命は、病理学・臨床検査医学のすべての面で教育および診療を推進す
ることによって、世界中の健康を改善することである。

Its goals are:

その目標は以下の通りである:

- to promote education, research and international quality standards,
through the committees and secreatariats of WASP and the World
Pathology Foundation,

−WASPの委員会と専門部会並びに世界病理学基金を通して、教育、研究、およ
び国際精度標準を推進する、

- to promote high quality, cost-effective medical laboratory services,

−高い質で、費用効率の良い臨床検査サービスを推進する、

- to promote the exchange of information between pathologists and
medical laboratory scientists throughout the world,

−世界中の病理学者並びに臨床検査科学者の間で情報交換を推進する、

- to encourage the formation of, and cooperation between, societies
of pathology and laboratory medicine throughout the world,

−世界中の病理学会並びに臨床検査医学会の設立を図り、学会間の協調を図
る、

- foster cooperation between WASP and other international health
organizations.

−WASPと他の国際医学関連団体の間で協調を推進する、

In 1969 the World Pathology Foundation was established and the Gordon
Signy Fellowship exists to enable young pathologists to visit other
countries to learn special skills. There were 25 fellowships awarded
since 1969.

 1969年に世界病理学基金が設立され、ゴードンシグニ奨学制度により若
手の病理学者が特殊技術を習得するために他の国を訪問する。1969年から
25名が授与されている。

The WASP Administrative Office
c/o Japan Clinical Pathology Foundation
 for International Exchange
Sakura-Sugamo Building 7th Floor
Sugamo 2-11-1, Toshima-ku
Tokyo 170-0002, Japan

WASP運営事務局

[自治医科大学名誉教授/国際臨床病理(ICP)センター 河合 忠]
 
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[Q&A] ◆検査室とISO規格
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(Q)最近話題になっているISO規格による認証は、やがて我々の検査室でも必
須の条件となるのでしょうか。(栃木県 臨床検査技師)

(A)
■ISO9000シリーズについて
 品質保証の国際規格として工業界では広く知られているもので、その主な国
際規格には次のようなものがあります。
 ISO 9000−1 品質管理及び品質保証の規格―第1部:選択及び使
用の指針
 ISO 9001   品質システム-設計、開発、製造、据付け及び付帯
サービスにおける品質保証モデル
 ISO 9002   品質システム-製造、据付け及び付帯サービスにお
ける品質保証モデル
 ISO 9003   品質システム-最終検査・試験における品質保証モ
デル
 ISO 9004−1 品質管理及び品質システム要素-第1部:指針
(日本語翻訳は(財)日本規格協会による)

■検査室に関連した国際規格について
 臨床検査室の認定(accreditation)についての国際規格は出来ていませ
ん。しかし、それに対応するISO/IECガイド 25(JIS Z
9325)〔校正機関及び試験所の能力に関する一般要求事項〕があります。
ISOガイド25の要求事項を満たしていると認証されるためには、ISO
9002を含むISO 9000シリーズに関連する要求事項に適合していな
ければなりません。しかし、これは工業分析機関を念頭に入れて作成されたも
ので、ヒトの検体を扱う臨床検査室にとっては十分ではありません。とくに分
析前段階と分析後段階における記載に問題があります。そこで国際純正・応用
化学連合(IUPAC)で臨床検査室向けに改訂を進めていましたが、その事業は
1995年にISOの中に発足したTC212〔臨床検査と体外診断検査シス
テム〕専門委員会に実質的に引き継がれ、現在ISO/DIS15189〔臨
床検査室におけるクオリティマネジメント〕が公表され、2000年早々には
最終国際規格案(FDIS)が公表され、近い将来そのまま国際規格(IS)
となる公算が高くなりました。その内容は、基本的には、現在「臨床検査技師
等に関する法律」で規定されている登録衛生検査所に要求されている精度管理
指針と大きく異なっていません。

■日本の臨床検査室は国際規格による認定を受けなければ業務はできなくなる
のか
 登録衛生検査所以外の臨床検査室では、現時点では法的規定はありませんか
ら業務を続けるのに国際規格による認定は必要ありません。しかし、臨床検査
室の国際規格が次々と公表された場合に、わが国の監督官庁〔現在は厚生省健
康政策局が所管)がどのような法的規制に踏み切るかによって情勢は異なって
きます。現在でも、日本にある米軍病院からの検体検査依頼を受注するために
は、アメリカ病理医会(CAP)などの認証機関から認証されていることを要
求される場合があります。また、国際オリッピック委員会から正式にドーピン
グ検査等を受注するためには、国際規格の要求事項を満たしているとの認定を
取得することが要求されています。しかし、日本では国際規格に基づく臨床検
査室の認証機関がありませんので、他の先進国の認証機関に申請しなければな
りません。わが国でもそうした認証機関の設立が急を要する事態になっていま
す。

■他の欧米先進国の状況はどうか
 米国では、CLIA’88(臨床検査室改善改正法1988)が施行されて、す
べての種類の臨床検査機関は国際規格に基づいて米国保健省から認定された認
証機関による認定を受ける必要があります。ヨーロッパ連合内でも臨床検査の
受注が自由化されますから、当然臨床検査室の認定を受けていなければ競争に
負けてしまうことになります。オーストラリア圏では既に認証/認定システム
が確立されています。アジア圏、例えばシンガポールなどの一部の検査室が
オーストラリアの認証機関に申請するような動きがあります。わが国がこのま
ま臨床検査室の認証/認定システムの確立に及び腰になっている間に、アジア
圏のマーケットは欧米の先進国の臨床検査センターに独占されてしまうでしょ
う。また、国立病院、国立大学の独立行政法人化が決定した現在、病院内検査
室も登録衛生検査所に必要な登録をして、院内検査だけではなく、院外検査も
受注しなければ生き残れなくなるでしょう。そうした厳しい競争に勝つために
は、第三者認証機関による認定が不可欠になるでしょう。

回答日:1999年10月18日
回答者:認定臨床検査医 河合 忠(No.22)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(その他)]
 
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[Q&A] ◆国際単位における酵素活性測定温度
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(Q)酵素活性の国際単位の測定条件ついては「温度は必ず記載し、できれば
30℃」と決められていますが、検査報告書に何の記載もない場合でも、37
℃で測定されることがあるのですか。(東京都 試薬メーカー社員)

(A)ご質問にあるように、IUBMB(国際生化学・分子生物学連合、当時はIUB)
は1964年に酵素の測定温度は30℃を標準とすることを定めています。

 日本臨床化学会(JSCC)勧告法も酵素活性の測定温度を30℃と定めています
が、検査用測定装置のほとんどが37℃で測定を行うことから、インキュベー
ション温度のみを37℃に変更した勧告法が1992年にJSCC常用基準法(臨床化学,
23,335-340,1994 参照)として提案され、一般に採用されています。したがっ
て現状では、通常の臨床検査の正常値の測定温度は、特に記載されていない限
り37℃と考えて間違いありません。

 実際の測定値と温度の関係は、温度が上昇すれば測定値も当然高くなりま
す。37/30℃比は、酵素の種類や測定条件等によって異なりますが、他の条件
が同一の場合で1.2〜1.7前後になるようです。

回答日:1999年10月28日
回答者:認定臨床検査医 戸谷誠之(No.158)
    国立健康・栄養研究所 廣田晃一

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[人事消息]◆千葉大学の臨床検査医学教授に野村文夫会員が就任
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 野村文夫 千葉大学医学部臨床検査医学講座教授 新任
 
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[訃報]  ◆林 康之先生、ご逝去
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 前 順天堂大学臨床病理学 教授 林 康之 先生(74歳)には,1999年10月
22日午後8時31分、脳内出血により横浜労災病院において急逝されました。謹
んでお知らせするとともに、ご冥福をお祈りいたします。

[1999年10月29日 順天堂大学医学部臨床病理学 猪狩 淳]
 
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[編集後記]◆臨床検査医の国際戦略
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 最近の教授選では、よそ者に割り込まれてしまう例が後を絶たず、某大学で
は講座自体が存亡の危機に立たされるなど、相変わらず我々にとって危機的な
状況は改善の兆しが見られません。そのような中、形勢を一挙に逆転させうる
可能性を秘めた国際戦略が着々と進められていることは、余り知られていませ
ん。今号では、この度検査部長の適格要件を含む臨床検査室認定の基本方針に
ついて、WASPaLMとIFCCが合意に至ったこと受け、それらの活動を主導してお
られるお一人の河合忠先生に、会員の皆様に向け要点を分かりやすくご解説い
ただきました。Q&Aの回答にあるISOを通じた戦略と共に、ここには我々の
将来を左右する重要なプロセスが示されているように思います。新会長のも
と、そろそろ検査医会としても、このような動きに呼応した、具体的な行動を
起こす時期に来ているのではないでしょうか。

[編集担当 西堀眞弘]

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JACLaP WIRE No.14 1999年11月10日
■発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
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