JACLaP WIRE No.5 1998.10.21 



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         JACLaP WIRE No.5 1998年10月21日
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│本メールは日本臨床検査医会の発行する電子メール新聞です。なるべく等|
|幅フォントでご覧下さい。電子メールアドレスをお持ちでない会員が近く|
│におられましたら、お手数ですが回覧をお願いします。配信申込、アドレ|
|スの変更、配信の停止等は wire@jaclap.org までお知らせください。  |
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============================≪ 目 次 ≫============================

[お知らせ]◆ようこそ!新入会員紹介
[お知らせ]◆第17回日本臨床検査医会総会
[お知らせ]◆検査医会ホームページへのアクセス数

[ニュース]◆第15回認定臨床検査医認定試験合格者
[ニュース]◆第9回日本光カード医学会総会にて
       一般公開のオープンフォーラム開催
[ニュース]◆形態検査インターネットサーベイ研究班が
       画像・機器評価展示会を開催

[新規収載]◆テイコプラニンの血中濃度測定
[新規収載]◆大腸菌0157 LPS抗原検出検査

[Q&A] ◆100%酸素吸入時の血液ガス
[Q&A] ◆蓄尿に用いられる添加物
[Q&A] ◆凝固検査データの食い違いの原因

[編集後記]◆偉大な国アメリカ
 
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[お知らせ]◆ようこそ!新入会員紹介
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  No.4でお知らせした後、新しく入会された会員をご紹介します。

 岡部 英俊  滋賀医科大学臨床検査医学
 三輪 淳夫  富山県立中央病院臨床病理科
 木野内 喬  帝京大学医学部臨床病理(第3内科兼担)
 平山 牧彦  平山内科クリニック/水戸市
 坂本文比古  医療法人社団天神会 天神内科/熊本市
 葭田 明弘  群馬大学医学部臨床検査医学
 屋形  稔  (株)三菱化学ビーシーエル/東京都
 竹内  純  (株)三菱化学ビーシーエル/愛知県小牧市
 渡辺  襄  渡辺胃腸科・外科医院/秋田県大館市
 岸川 正大  愛知県コロニー・発達障害研究所 形態学部門
 清水  勝  東京女子医科大学中央検査部
 土屋 眞一  長野県がん検診・救急センター 検査部
 藤原 睦憲  日赤医療センター 検査部
 高宮 清之  東邦大学大橋病院臨床生理機能学研究室
 海津 省三  海津内科医院/新潟市
 紺井 忠弥  医療法人社団紺井医院/石川県内灘町
 奥澤 昌道  (株)エスアールエル東京メディカル/千葉県白井町
 中島 安彬  京都大学医学部附属病院病理部
 太田 圭治  済生会山形済生病院/山形市

         (以上19名、入会順、敬称略、1998年10月15日現在)

[庶務会計幹事 高木 康]
 
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[お知らせ]◆第17回日本臨床検査医会総会
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 第17回日本臨床検査医会総会は次のようなプログラムで開催されます。会員
の皆様には奮ってご参加ください。

 日 時:平成10年11月10日(火)午後1時〜2時30分
 場 所:高知会館(高知市) 2F 白鳳の間

 日本臨床検査医会総会  13:00-13:30

 日本臨床検査医会講演会 13:30-14:30
  「ISO/TC212の動向」 河合 忠(国際臨床病理センター)

[庶務会計幹事 高木 康]
 
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[お知らせ]◆検査医会ホームページへのアクセス数
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 お陰様で検査医会のホームページ( http://www.jaclap.org/ )は内容が一
段と充実し、それとともに順調にアクセス件数が増加していますので、直近の
運用状況をお知らせします。

           月間アクセス件数(1998年9月)
公式ホームページ         510
英文ページ             22

衛生検査所一覧表リスト       49
全国大学病院 教授・助教授リスト  116
包括化検査項目リスト        51

日本臨床検査医会 研修教育セミナー
 一般検査編(1)          46
 一般検査編(2)          28
 一般検査編(3)          17
 一般検査編(4)          21
 血液形態編            38
 臨床化学編            22
 臨床免疫編(1)          25
 臨床免疫編(2)          16
 微生物編(1)           26
 微生物編(2)           24
 クオリティ・マネジメント編    14

JACLaP WIRE 編集室         15
日本臨床検査医会要覧        45

臨床検査医のページ        1347
 臨床検査Q&A         906
 新規保険収載検査項目一覧    366
 世界の保健医療ニュース     156
 臨床検査医ニュース       185
 臨床検査関連の製品情報      74
 臨床検査公開サーベイ      191

 運営に当たり、貴重な資料提供、ご助言あるいはご助力をいただいている会
員の先生方に対し、この場を借りて深くお礼申し上げます。今後とも会員の皆
様方の力強いご支援をよろしくお願いいたします。

[情報・出版委員会 情報部門主幹 西堀眞弘]
 
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[ニュース]◆第15回認定臨床検査医認定試験合格者
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 先日行われた平成10年度認定臨床検査医試験において、下記の方々が合格
された。日本臨床病理学会の会員歴が5年未満の方には、その条件を満たした
時点で認定証が交付される。

 家入蒼生夫(獨協医大)
 石田 博(川崎医大)
 浦山 修(秋田大)
 大久保久美子(福岡大)
 太田博良(信州大)
 大原智子(自治医大)
 上平 憲(長崎大)
 康 東天(九州大)
 神田享勉(群馬大)
 岸川匡彦(大阪医大)
 萱場広之(秋田大)
 北島 勲(鹿児島大)
 栗林恒一(和歌山医大)
 越川 卓(愛知県立看護大)
 小林 功(群馬大)
 近藤信一(神戸大)
 佐藤英章(獨協医大)
 島崎英幸(防衛医大)
 下村登規夫(鳥取大)
 茆原順一(秋田大)
 辻 浩一(大分県立病院)
 椿 秀三千(獨協医大)
 堂本英治(防衛医大)
 中野 洋(済生会松阪病院)
 新谷憲治(岡山大)
 野間喜彦(徳島大)
 濱崎直孝(九州大)
 原田美貴(関東逓信病院)
 菱沼 昭(獨協医大)
 福原敏行(県立広島病院)
 藤田昌宏(国立札幌病院)
 益田順一(島根医大)
 三井田 孝(新潟大)
 村田哲也(JA三重厚生連鈴鹿総合病院)
 矢内 充(日本大)
 米原修治(尾道総合病院)
 桑原敦志(群馬大)
 奈良誠人(群馬大)
                      (以上38名、敬称略)
 
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[ニュース]◆第9回日本光カード医学会総会にて
       一般公開のオープンフォーラム開催
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 来る10月24日(土)池袋の東京簡易保険総合健診センター(かんぽヘル
スプラザ)で開催される第9回日本光カード医学会総会は、下記のプログラム
で開催される。

 ●会   期  平成10年10月24日(土) (1日間)

 ●会   場  東京簡易保険総合健診センター
         (池袋東口より徒歩8分)
         〒170-0013 東京都豊島区東池袋 4-7-7 TEL 03-3981-9296

 ●テ ー マ  “21世紀の医療用カードメディアを考える”

 ●プログラム
 ―午前の部―  日本光カード医学会 学術集会(会員のみ)
  9:00〜 9:05  開催挨拶
  9:05〜 9:50  総会長講演
         「ハイパーネットワーク時代の人類」
          西堀 眞弘(東京医科歯科大学)
  9:50〜10:35  特別講演
         「医療における情報化の目指すもの」
          開原 成允(国立大蔵病院長)
 10:35〜10:50  休 憩(機器展示見学)
 10:50〜11:30   一般演題発表
         「光メディカードシステムの開発と現況」
          平井 浩(診療システム研究フォーラム)
         「献血における光カードの応用 第6報」
          田村 弘侯(北海道赤十字血液センター)
 11:30〜12:20  昼食休憩(機器展示見学)
         (日本光カード医学会 評議員会)
 12:20〜13:00  日本光カード医学会 総会

 ―午後の部―  日本光カード医学会 オープンフォーラム(一般公開)
 13:00〜13:45  基調講演
         「保健医療カードの海外動向」
          高橋 隆(京都大学)
 13:45〜14:00  休  憩(機器展示見学)
 14:00〜16:50  パネルディスカッション 『医療用カードの新展開』
         「光カードの標準化」
          大櫛 陽一(東海大学)
         「プライマリケアと光カード」
          田代 祐基(熊本県医師会)
         「在宅介護と光カード」
          原 寿夫(福島県医師会)
         「光カードを利用した施設間連携における薬局の役割」
          堀口 雅巳(望星薬局)
         「光カードと香川県ネットを用いた
                     周産期管理システムの開発」
          山田 直樹(オリンパス光学工業株式会社)

 ●併設展示  機器展示、実演

 ●参加費用  ┏━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━┓
        ┃  総会・学術集会  ┃ オープンフォーラム ┃
   ┏━━━━╋━━━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━━┫
   ┃ 会員*┃        4,000円         ┃
   ┣━━━━╋━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━┫
   ┃ 一般 ┃  参加できません  ┃  4,000円   ┃
   ┗━━━━┻━━━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━━┛
    *年会費5,000円で入会できます

 なお、今年初めての試みとなるオープンフォーラムは一般公開となってお
り、会員以外でも出席可能である。また当日入会も受付けており、会員になる
と、第1回から第9回までの論文集全文と最新版の会員名簿を収載した、特製
光カード2枚組が無料進呈される。

 学会の詳細については、下記ホームページで公開されている。

  http://www.jsmoc.org/

 お問合せ先
   日本光カード医学会 事務局
      〒107-0052 東京都港区赤坂 1-5-12 第2虎ノ門ビル
      (株)ボーダレスヒューマンセンター内
        TEL&FAX;. 03-3505-3388 (担当:井出、加藤)
        e-mail: reception@jsmoc.org

[東京医科歯科大学 西堀眞弘(日本光カード医学会第9回総会長)]
 
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[ニュース]◆形態検査インターネットサーベイ研究班が
       画像・機器評価展示会を開催
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 文部省科学研究費補助金による「形態検査インターネットサーベイ研究班」
が、9月16〜17日幕張での第2回班会議において、画像・機器評価展示会
を開催した。

 本研究は、従来スライド写真にして配布していたサーベイ用画像を、イン
ターネットのホームページで配布しようというものであるが、利用者がどのよ
うな端末を使って閲覧するか分からないので、機種が違うと判定に差が生じる
かも知れないという不安がある。そこでこの展示会では、各種形態検査画像を
集めてデジタイズし、CRTや液晶パネルなど、いろいろな表示装置で総当たり的
に表示させ、各検査領域の専門家がそれらをひとつひとつ評価した。

 その結果、機種によって表示される色にかなりの差があることが判明した一
方で、画像の種類によって、だいたい同じように判定できるものと、著しい差
が認められるものに分かれた。またどの機種でも十分に判定ができない画像も
あった。なお、実験に用いた画像や評価の結果は、研究班ホームページ
(http://square.umin.ac.jp/survey/)において一般に公開されている。

 本研究班は幅広いコンセンサスを得るため、核となる7大学9名の研究者に
加え、各検査分野の専門家、関連の学会、標準化協議会、職種団体、業界など
から多数の研究協力者の参画を得て、現在30名余の陣容となっている。今後
は、表示装置の性能差の解消という大きなテーマについても、さらに人員の強
化を図り取り組んで行く方針である。

[東京医科歯科大学 西堀眞弘(研究代表者)]

(JACLaP NEWS編集室では、会員による研究班活動の記事を募集しております。
該当される方は wire@jaclap.org まで情報をお寄せ下さるようお願いいたしま
す)
 
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[新規収載]◆テイコプラニンの血中濃度測定
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テイコプラニンの血中濃度測定(準用先区分B001-2)(区分D-1)
平成10年8月1日より適用の特定疾患治療管理料
保険点数:500点
トラフレベル:200mg投与時5μg/ml 400mg投与時10μg/ml
直線性:4〜100μg/ml
製品名:タゴシッドTDMキット-IBL
   :タゴシッドTDMキット「HMR」
製造元:Oxis International Inc. Portland, USA
輸入・発売元:(株)免疫生物研究所  TEL 0274-22-2888
      :日本ヘキスト・マリオン・ルセル(株) TEL 0492-43-2240
測定法:蛍光偏光免疫測定法(FPIA) 100テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:20〜30分  自動化:可
同時再現性:6.3%以下 日差再現性:3.5%以下
検体:血清、血漿(クエン酸)
【特徴】 抗テイコプラニン抗体に対する蛍光標識テイコプラニンと検体由来
テイコプラニンとの競合反応を用いる。抗体結合した蛍光標識テイコプラニン
が多いと蛍光平行偏光成分強度が高くなることを利用している。テイコプラニ
ン(タゴシット)は、放線菌から抽出・精製されたグリコぺプシド系の抗生物質
で、グラム陽性菌の細胞壁ペプチドグリカン合成を阻害するので、MRSAな
どに殺菌作用を示す。
 本剤はレッドマン症候群(顔、頚、躯幹の紅斑性充血、そう痒など)や眩暈、
耳鳴、聴力低下などの第8脳神経障害が発現する可能性があり、有効性・安全
性の観点から投与時に血中濃度のモニタリングが必要とされている。さらに使
用患者の次回投与前で血中濃度を測定することにより、患者の最低血中濃度(
トラフレベル)で管理ができる。自動化測定が可能で短時間で結果が出る。免
疫測定なので特異性が高く、バンコマイシンと交差反応がない。
【保険請求上の注意】 特になし
【文献】 松本 文夫、他:Fluorescence polarization immunoassay法による
ヒト血漿中teicoplanin濃度測定の検討.医学と薬学、38:621〜625、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆大腸菌0157 LPS抗原検出検査
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大腸菌0157 LPS抗原検出検査(準用先区分D018-2)(区分D-2)
平成10年8月1日より適用の細菌培養同定検査
保険点数:190点
製品名:E.coli O157 Direct ワコー
製造元:Universal HealthWatch Diagnostics Corp.Columbia,MD,USA
輸入・発売元:和光純薬工業(株) TEL  06-203-3741
測定法:イムノクロマトグラフ法 50テスト/キット(シングル測定)
結果が出るまでの時間:5分  自動化:不可
検体:糞便
【特徴】 テストストリップの検体吸収パッドに含まれている金コロイド標識
抗大腸菌O157:H7抗体(ヤギ)は、検体中の大腸菌O157LPS抗原と反応して「抗
原−抗体」複合物を形成する。この複合物は、テストストリップ上を上昇して
抗大腸菌O157:H7抗体(ヤギ)を塗布したテストライン上に捕捉され、赤紫線を
形成する。未反応の金コロイド標識抗大腸菌O157:H7抗体は、抗ヤギIgG抗体(
ウサギ)を塗布したコントロールライン上に捕捉され、赤紫線を形成する。テ
ストラインに赤紫線が形成された場合を陽性と判定する。
 ベロ毒素産生性大腸菌である腸管出血性大腸菌O157による感染は、4〜8日の
潜伏期間後、出血性の下痢症が見られ、重症例では死亡する。1996年には岡山
県や大阪府で給食による学童の集団食中毒として大量発生し、患者数が1万人
を超え、そのうち重症例では溶血性尿毒症症候群(HUS)や急性脳症で11名が死
亡した。そこで大腸菌O157感染症と他の下痢性疾患との鑑別診断し、早期に治
療を開始することが必要となる。
 現在、保険に適用されている大腸菌O157LPS抗原検出検査は平成9年8月のオ
ーソ・ダイアグノスティック・システムズ社と日本バイオラッド社のELISA法に
よるものである。一方、本キットは金コロイド標識抗大腸菌O157:H7抗体を用い
たイムノクロマトグラフ法により、従来1時間かかった測定時間が5分間に短
縮され、テストストリップ上に出現した2本の赤紫線により陽性と判定できる
。本法とELISA法との相関では、陽性一致率100%、陰性一致率82.1%、一致率87
.2%と良好であった。
【保険請求上の注意】  特になし
【文献】 竹田多恵、他:イムノクロマトグラフィー市販キットを用いたEsch
erichia coli O157患者の迅速診断.感染症学雑誌、72:834〜839、1998

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]

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[Q&A] ◆100%酸素吸入時の血液ガス
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(Q)100%酸素供給中の血液ガス検査の正常範囲を教えてください。

(A)血液ガス分析は患者さんの呼吸状態の管理を主目的とするものですから、
酸素吸入中であっても、動脈血酸素分圧(PaO2)を除く各項目については生理的
状態での基準値が臨床的判断値(decision value)として準用されます。
 PaO2値は吸入気中の酸素濃度に依存するため、その判定は以下の関係式から
肺胞気酸素分圧(PAO2)を求め、肺胞レベルでのガス交換指標である肺胞気-動脈
血酸素分圧較差(AaDO2=PAO2-PaO2)とともに評価します。

  PAO2=(PIO2)-(PACO2/R)

  ここで、PIO2 (吸入気酸素分圧)=(大気圧−飽和水蒸気圧)×酸素濃度
      PACO2 (肺胞気炭酸ガス分圧)=PaCO2(動脈血炭酸ガス分圧)
      R (呼吸商:二酸化炭素排泄量と酸素摂取量の比):通常0.85程度

 例えば30%濃度の酸素吸入時のPAO2値は、PaCO2が40Torrであれば、

  PAO2=(760-47)×0.3-(40/0.85)=167Torr

 となります。AaDO2は健康人では10Torr以下ですので、PaO2値が157Torr程度
であれば正常、AaDO2が20Torrを越えていれば、肺胞での拡散障害、換気/血流
比の不均衡、右左シャントなどの存在を考えます。酸素投与時のPaO2値自体
は、治療による目標値(target value)としての性格が強く、麻酔中の患者で
100Torr以上、慢性呼吸不全に対する酸素療法では病態により60〜80Torr以上を
目標に設定して酸素濃度が調節されます。

 なお、呼吸性因子による血液ガス分析値の変動は迅速で、呼吸単位に異なる
といわれます。このため、麻酔時にはパルスオキシメーターによる動脈血酸素
飽和度(SaO2)の持続モニタリングが用いられています。しかし、SaO2はヘモグ
ロビンの酸素解離曲線の特性からPaO2が比較的高い値の場合変動が少なく、pH
やPaCO2値によって酸素解離曲線自体が変動する点に注意する必要があり、動脈
血ガス分析値との併用が行われています。

回答日:1998年9月7日
回答者:認定臨床検査医 三宅一徳(No.283)

[ホームページ/臨床検査Q&A;(生理検査)]
 
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[Q&A] ◆蓄尿に用いられる添加物
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(Q)蓄尿に用いられる添加物の検査項目による違いについて教えてください。

(A)生化学検査を目的とする蓄尿時に用いられる添加物は、トルエン(キシレ
ン)、塩酸、アジ化ナトリウム、チモール、ホウ酸、酢酸、ヒビテン、クロロホ
ルム、EDTAなど種々の物質があります。これらの添加物は、(1)微生物の増殖と
臭気発生の防止を主目的とするもの(いわゆる防腐剤)と、(2)防腐効果に加え
測定対象とする特定成分の変性・分解の阻止を図るものとに大別できます。

 単なる防腐剤として添加するのであれば、十分な防腐効果があって、測定成
分や測定系に影響を与えない限り、理論的にはいずれの添加物を使用してもよ
いことになります。また、安定な成分については、防腐剤を加えず冷所で蓄尿
するという方法を選択することも可能です。(但し、一般に安定と考えられて
いる物質であっても、尿路感染症を有する患者や自動蓄尿器使用時には測定値
が大きく変化することがあり、注意が必要です。)

 一方、特定成分の変性・分解防止を目的とする場合(上記(2))では、指定の
保存剤の添加が必須です。代表例としてカテコールアミン類に対する塩酸の添
加があります。この場合、塩酸添加によりpHを1〜3に維持して酸化による測
定値低下を予防しないと、偽低値による診断過誤を惹起する可能性がありま
す。また、蓄尿によるCペプチド測定ではアジ化ナトリウムの添加により酵素
的分解を阻止した方が、真値に近い測定値が得られるとされています。

 ご質問のように複数の検査が重複する場合ですが、上記 (2)の添加剤が必要
な検査がある場合、その添加物を優先して使用し、その尿で他の検査が実施で
きるかどうか確認することになります。通常、問題となることが多いのは、塩
酸蓄尿を必要とする検査とその他の検査の組み合わせです。塩酸蓄尿では、ク
ロール測定は無意味ですし、酸性で分解・低下するβ2ミクログロブリン測定は
偽低値となります。また、Cペプチド、17KS測定にも不適とされています。こ
のような場合、検査日を変更して実施する必要があります。

 一般に、酸性蓄尿に限らず、指定以外の保存剤の使用は、同じ検査項目で
あっても、用いられる測定法、測定機器によって測定値の変動の程度が異なる
可能性があります。したがって、上記のように明らかに不適な組み合わせ以外
でも、委託先の衛生検査所に測定の可否を必ず確認しておくべきです。

 現実には衛生検査所側でも検討していない組み合わせもあり、確認作業に時
間がかかることもあると思いますが、サンプリングに関連する検査前誤差の管
理も検査担当者の重要な業務の一つです。毎回の確認作業が煩雑であれば、衛
生検査所側に日常使用される保存剤について各項目の測定可否を記載した一覧
表の作成を依頼してはいかがでしょうか。

【参考文献】
[1] 丹羽正治:1.尿、p1-14、人体成分のサンプリング―排泄液、講談社サ
  イエンティフィック、1972
[2] 伊藤機一:1.一般検査、臨床病理、特集103号、81-91、1996

回答日:1998年9月7日
回答者:認定臨床検査医 三宅一徳(No.283)

[ホームページ/臨床検査Q&A;(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆凝固検査データの食い違いの原因
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(Q)先日3歳の男児で次のような結果が外注検査センターから返ってきました
。どのような原因が考えられるでしょうか。

     1回目   再検
 APTT  69.8sec   28.3sec
 PT   17.0sec   9.7sec
 PT活性 41.0%   177.7%

(A)回答するにはいくつか確認の必要な点があります。

  1.再検は1回目の検体の再検でなく、新しく採血したものですか?
  2.新しく採血した日時は、1回目の採血日時とどれくらい違いますか?
  3.それぞれについて、フィブリノゲンの測定を行っていますか?
  4.3才男児とのことですが、出血症状(or血栓)はあったのでしょうか?
  (凝固検査をした理由)
  5.外注センターは同一ですか?測定機器・試薬は?
  6.外注センターに検体を提出するときに、血漿分離を行い、血漿を凍結し
  て提出していますか?

 以上の点がはっきりすれば、1回目と2回目が違う原因についてある程度推
定することができます。一般的に言うと、ご質問にあるようなことが起きる原
因としては、膨大な種類の可能性が考えられます。大きく分けると

    1.臨床的に両者とも患者の正しいデータである場合
    2.検査時に過誤があった場合

があります。1は上記の情報によって特定できると思います。2には以下のよ
うなことが考えられます。

 ○検体採取時: 採血に時間がかかったため部分凝固していた
         抗凝固剤(クエン酸Na)との混和が不充分
         採血管の間違い
         患者(ID)ラベルの貼り間違い
 ○分離分取時: 血漿分離後分取時の検体の取り違え
 ○検体提出・搬送時: 検体の取り違え
            パラフィルムで密栓しドライアイスで運んだ
 ○検査時: 1回目に用いた試薬の劣化、量の過少、阻止物質の混入
 ○データ処理報告時: データの誤入力

回答日:1998年9月18日
回答者:認定臨床検査医 佐守友博(No.179)

[ホームページ/臨床検査Q&A;(血液検査)]
 
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[編集後記]◆偉大な国アメリカ
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 遂に日経平均株価は13000円を割り込み、日本発の世界恐慌への突入も
時間の問題となってきました。そして頼みの綱である、唯一好況を誇っていた
アメリカも、ヘッジファンドという名の博徒の破綻を機にいよいよ持ちこたえ
られなくなり、金利を引き下げざるを得ない状態に陥りました。ソビエトが崩
壊して以来ひとり勝ちを続けてきた唯一の大国として、あらゆる意味で世界を
支えて来た偉大な国アメリカも、遂に他の国と同じように不況の波に飲み込ま
れてしまうのでしょうか。悠久の人類の歴史の中で、ほんの一瞬だけ輝いて
散ってしまうあだ花に終わるのでしょうか。

 確かに識者の中には、アメリカ式資本主義の欠陥露呈だとか、大衆迎合政治
への堕落などという指摘があります。しかし、アメリカはこんなことでへこた
れるようなやわな国ではありません。アメリカは何と言ってもとてつもなく偉
大な国であり、我々が真摯に学ばなければならない優れた点が、まだまだたく
さん残っているのです。

 余り知られていないことですが、アメリカ政府には門外不出の秘伝中の秘伝
と言われるノウハウが伝えられています。これは貧乏であったアメリカが、古
今東西の人類の歴史をつぶさに調べ、狩猟民族の叡智を結集して作り上げた、
豊かな国になるための究極のノウハウなのです。その要点を分かりやすく言う
と、「農耕民族を目一杯働かせてその上前をはねる」ということです。自分で
いくら一生懸命田畑を耕しても、そうそう富はたまりません。歴史を紐解いて
みれば、ローマ帝国やイギリスなどが桁違いに大きな富を蓄積することができ
たのは、よく働く他民族から徹底的に収奪することに成功したからこそなので
す。

 もちろん、普通のやり方ではうまく行きません。これまで奴隷制、直轄統
治、植民地化、核による威嚇などいろいろな方法がとられましたが、いずれも
非搾取民族の反発を買い、結局長続きはしませんでした。そこでアメリカは、
ある画期的な方法を開発したのです。その方法を使えば、他国民が馬車馬のよ
うに働き、その結果得られた富を何の抵抗もなくアメリカに差し出すようにな
ります。それだけではありません。彼等が心血を注いで生み出した知恵すら
も、何の疑問もなくアメリカに献上するようになるのです。アメリカが建国以
来高々2世紀余りで今の繁栄を築くことができたのは、実はこの卓越したノウ
ハウがあったからに他なりません。

 「そんなうまい方法があるとは信じられない」と思われる方のために、ひと
つだけ例を示してご説明しましょう。第1次世界大戦の特需で大儲けをしたア
メリカは、密かに次の収奪対象国を決めていました。その国はアジアの端の方
にあり、国土は小さいにもかかわらず国民の教育レベルが高く、勤勉で向上心
が強いうえに性格も温和で従順という、ターゲットとしては申し分のない国で
した。うまい具合に第2次世界大戦が起こり、その国はこてんぱんに負けて立
ち上がれない程のダメージを受けました。そんな姿を見て殆どの先勝国が分け
前としての魅力を感じなかったため、アメリカはまんまと占領政策をひとりじ
めにし、遠大な計画を実行に移すことができたのです。

 アメリカは、まず自国で余っていた豚の餌のとうもろこしを税金で買い上
げ、その国に与えました。これにより自国農業の不況対策とその国民の歓心を
買うことに成功しました。合わせてその国民の最も優秀な若い人材、つまり将
来その国のあらゆる分野で指導者となる若者を留学生として招待し、アメリカ
が軍事力や経済力だけでなく、政治や産業や学問や教育の分野でも、世界一偉
大な国であるという観念を徹底的に植え付けました。

 アメリカの庇護の下、典型的な農耕民族であるその国の労働者は休まず働き
続け、予想以上の復興を遂げて戦争賠償金や他国からの借金をあっという間に
払い終えました。その後もその勢いは衰えず、国際収支の黒字が膨らむように
なると、アメリカは今度は自国の借金の証文をさかんにその国に売り付けまし
た。アメリカはどんどんお札を刷ってその返済に当てたので、やがて金本位制
が保てなくなり、もっともらしい理屈をつけてそれを放棄してしまいました。
しかし、アメリカが偉大であるという強迫観念を若い頃に刷り込まれたその国
の指導者は、何の疑問も抱かずその後もせっせとアメリカの証文を溜め込み続
けました。アメリカは前にも増して気軽にお札を刷れるようになり、ドルの価
値がどんどん下がって、アメリカにドル建てで貸したお金が、返してもらうと
きには自国通貨建てで半分以下に減っていても、さらにアメリカの借金が貯金
をはたいても返せない程の額になっていても、その国は何の疑問も抱きません
でした。

 軍事面では、最初はアメリカの駐留軍がすべてを賄っていましたが、やがて
その国に軍隊を作らせ、いざというときはアメリカ軍の盾となることを約束さ
せました。基地も嫌がる地主にただ同然で無理矢理土地を供出させ、アメリカ
兵の家族の住居など、基地の維持経費の大部分もその国に負担させることに成
功しました。しかし、アメリカが偉大であるという強迫観念を若い頃に刷り込
まれたその国の指導者は、その国のいたいけな少女が駐留アメリカ兵に無惨に
陵辱され殺されても、文句ひとつ言わずアメリカの言うことにただただ従うだ
けでした。

 学問の面でも事はアメリカの思惑通りに運び、その国ではアメリカの研究者
に認められることが研究者として最も高く評価される基準となりました。その
国の学問分野で指導的立場になるためには、アメリカに留学し、アメリカの牛
耳る学会で発表し、アメリカ人が選者をしている学会誌に掲載してもらうこと
が、最も重要な条件となりました。アメリカの研究者は、その国からやってき
た留学生が優れた業績をあげたり、その国から優れた論文が投稿されたとき
は、わざと低く評価して発表の機会を奪い、その間にノウハウを盗んで自分た
ちの業績にしてしまいました。そうやってその国の最も優秀な研究者は芽が出
ないように潰し、自分たちを超えることがない程度の研究者を優遇して業績を
あげさせ、帰国後彼等が指導者に選ばれるように操作しました。そしてそう
やって選ばれたその国の指導的研究者は、何の疑問もなく同じことを若い研究
者に求めたので、いつまでたっても同じことが繰り返されました。

 さて、このように世界で最も偉大な国アメリカは、この世界的不況の危機を
どのように乗り切ろうとしているのでしょうか。ぬかりがあろうはずがありま
せん。先程の例に出てきた国からは、まだまだ搾り取ることができるのです。
その国民がコツコツ溜め込んだ1千兆円以上といわれる金融資産が残っている
うえ、毎年400兆円以上の富が生み出されるのです。アジアの不況対策に
300億ドルも出させ、暴落寸前のアメリカ株式を高利回りの投信と称して売
り付け、景気対策のための情報通信投資と称してアメリカ製の原価ほとんどゼ
ロのソフトを売り付け、役にも立たない偵察衛星や迎撃ミサイルを売り付け、
その他いくらでも上前をはねる手口はあります。少なくともターゲットとなっ
たこの哀れな国が骨と皮になるまで吸い尽くされるか、あるいは事の真相に気
付いて何らかの手を打つまでは、偉大な国アメリカは安泰なのです。

 なお、文中の記述にごく身近な実在の国に最近起きている事実と大変よく似
たところがあったとしても、それは単なる偶然に過ぎませんので念のため。

[編集担当 西堀眞弘]

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JACLaP WIRE No.5 1998年10月21日
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