JACLaP WIRE No.4 1998.08.06 



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         JACLaP WIRE No.4 1998年8月6日
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│本メールは日本臨床検査医会の発行する電子メール新聞です。なるべく等|
|幅フォントでご覧下さい。電子メールアドレスをお持ちでない会員が近く|
│におられましたら、お手数ですが回覧をお願いします。配信申込、アドレ|
|スの変更、配信の停止等は wire@jaclap.org までお知らせください。  |
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============================≪ 目 次 ≫============================

[お知らせ]◆ようこそ!新入会員紹介
[お知らせ]◆検査医会ホームページへのアクセス数

[ニュース]◆WASP(世界病理学・臨床検査医学連合)理事会会議報告
       −本会のWASP正式加入、その他−
[ニュース]◆最新現地レポート <アメリカの医療状況 その1>
       −アメリカの病院の過酷生残り策−提携、合併、系列化−
[ニュース]◆最新現地レポート <アメリカの医療状況  その2>
       −HMO(組合保険制度)の問題点とその影響−
[ニュース]◆最新現地レポート <アメリカの医療状況  その3>
       −HMO(組合保険制度)とは何か−
[ニュース]◆血液製剤の感染症遺伝子検査、法律で義務づけの方向へ
[ニュース]◆インターネットを介し多施設で共有できる臨床検査データ
        ベースの開発を目指す研究班が発足
[ニュース]◆形態検査インターネットサーベイ研究班発足

[新規収載]◆サイトケラチン19フラグメント精密測定
[新規収載]◆グロブリンクラス別ウイルス抗体価精密測定
                    (ヒトパルボウイルスB19)
[新規収載]◆HCV抗体価精密測定

[Q&A] ◆インターネットを使った文献の無料検索
[Q&A] ◆新規収載検査の基本知識

[編集後記]◆禍い転じて福と成す
 
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[お知らせ]◆ようこそ!新入会員紹介
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 No.2でお知らせした後、新しく入会された会員をご紹介します。

 井田 隆夫  井田内科胃腸科医院 院長
 伊藤以知郎  袋井市民病院病理部 病理部長, 検査科副部長
 竹下 正昭  医療法人栄城会 理事長
 辻  直子  医療法人祐生会みどりヶ丘病院臨床検査科 勤務医
 中本  周  鳥取県立中央病院検査科 部長
 星田 義彦  市立堺病院病理研究科 医長
 村上 一郎  国立岩国病院研究検査科 科長
 岩田  仁  県立岐阜病院病理診断部 医長
 栗林 恒一  和歌山県立医科大学検査診断学教室 講師
 宮崎 彩子  大阪医科大学病態検査学教室 助手
 山上 松義  医療法人興生会相模台病院 理事長

                      (以上11名、敬称略)
 
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[お知らせ]◆検査医会ホームページへのアクセス数
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 お陰様で検査医会のホームページ( http://www.jaclap.org/ )は内容が一
段と充実し、それとともに順調にアクセス件数が増加していますので、直近の
運用状況をお知らせします。

          月平均アクセス件数(1998年5〜6月)
公式ホームページ         424
英文ページ             4

衛生検査所一覧表リスト       48
全国大学病院 教授・助教授リスト  89

日本臨床検査医会 研修教育セミナー
 一般検査編(1)          66
 一般検査編(2)          41
 一般検査編(3)          27
 一般検査編(4)          26
 血液形態編            53
 臨床化学編            51
 臨床免疫編(1)          45
 臨床免疫編(2)          25
 微生物編(1)           30
 微生物編(2)           22
 クオリティ・マネジメント編    37

JACLaP WIRE 編集室         15
日本臨床検査医会要覧        70

臨床検査医のページ        835
 臨床検査Q&A         396
 新規保険収載検査項目一覧    293
 世界の保健医療ニュース     130
 臨床検査医ニュース       169
 臨床検査関連の製品情報      83
 臨床検査公開サーベイ      173

 運営に当たり、貴重な資料提供、ご助言あるいはご助力をいただいている会
員の先生方に対し、この場を借りて深くお礼申し上げます。今後とも会員の皆
様方の力強いご支援をよろしくお願いいたします。

[情報・出版委員会 情報部門主幹 西堀眞弘]
 
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[ニュース]◆WASP(世界病理学・臨床検査医学連合)理事会会議報告
       −本会のWASP正式加入、その他−
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 平成10年7月11日にWASP理事会会議がWashington D.C.で開催された。日
本から私と櫻林 郁之介 WASP 事務局長が出席者した。

 日本臨床検査医会のWASPへの入会は理事会会議で承認された。

  こんごのWASPの活動はホームページの利用や Global Health Networkな
どと協力していっそうの情報化に取り組むことになった。

 第20回世界病理学・臨床検査医学会議はブラジルのサンパウロで行なわれる
が、日程が1999年9月17日〜21日に変更になった。

 第21回世界病理学・臨床検査医学会議はドイツのデュセルドルフで2001年9
月20日〜23日に開催される予定である。皆さんぜひ出席してください。

[WASP事務総長 森三樹雄]
 
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[ニュース]◆最新現地レポート <アメリカの医療状況 その1>
       −アメリカの病院の過酷生残り策−提携、合併、系列化−
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 アメリカの病院の現状を、ボストンにあるハーバード大学の教育病院である
ボストン小児病院の臨床検査部臨床化学検査室の主任技師 坂本 雅是 氏とタフ
ト大学の教育病院であるニューイングランド・メディカルセンター病院の検査
部長 Dr.Philip Daust に聞いてきたので報告する。

 アメリカの病院はDRG/PPS(Diagnosis Relating Group /
Prospective Payment System)とHMO(組合保険制度)により、入院患者は減少
し、病床利用率も約60%に減少する一方で日帰り手術や外来患者は増加し、こ
こ10年間は病院経営が極めて厳しい状況にある。アメリカでは大学病院や一般
病院も営利会社により運営されており、経営が失敗すれば、倒産につながる。
アメリカの病院は、病院の経営の悪化を防ぐために合併(merge)や提携
(partnership)や系列化され、その結果赤字部門の閉鎖、医薬品や医療材料の大
量購入による値引き、ハイテク機器の効率的な配置などが実施され、生き残り
が図られている。教育病院においては、スタッフである教授、助教授、講師な
どの数が削減されている。

 ハーバード大学の教育病院として、マサチュセッツ総合病院、ブリガム&
ウィメンズ病院、ベスイスラエル病院、ニューイングランド・ディーコネス病
院、ボストン小児病院などがあり、以前はお互いに競い合ってきた。しかしア
メリカの医療制度の変革によりまず初めに代表的な2つの総合病院であるマサ
チュセッツ総合病院とブリガム&ウィメンズ病院が提携した。次いでベスイス
ラエル病院がニューイングランド・ディーコネス病院 (200メートル位離れて
別々に診療をしていた) を吸収合併してベスイスラエル・ディーコネス・メ
ディカルセンターになった。

 タフト大学の教育病院であるニューイングランド・メディカルセンター病院
(NEMCHと略す)は3年前に財政が悪化し、倒産寸前になった。現在は隣の
ロードアイランド州のLifespanという民間会社により運営され、現在は経営内
容がやや改善されている。この会社はロードアイランド州にある他の4つの病
院、すなわち、ロードアイランド病院、ミリアム病院、ニューポート病院、ブ
ラッドレイ病院も系列下にあり、NEMCHを入れて合計5つの病院を経営し
ている。ここ4年間でNEMCHの病理部(検査部も含む)の予算は10%の削減
され、スタッフの数は30%カット(退職した教授、助教授、講師の補充をしない
形式で)された。このNEMCHで3年前は財政が悪化し、臨床検査件数も減少
したが、現在はやや回復している。NEMCHの血液検査の経年的な件数をグ
ラフで示す。

 アメリカの他の地域でも大学病院が提携、合併、系列化されている。すなわ
ち、ニューヨーク市では、コロンビア大学のプレスバテリアン病院とコーネル
大学のニューヨーク病院が提携し、ニューヨーク大学付属病院とマウントサイ
ナイ大学付属病院の提携も行なわれている。西海岸ではカリフォルニア州立大
学サンフランシスコ校付属病院と私立のスタンフォード大学付属病院が提携す
るという大改革が進行中である。

[1998年7月31日 獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[ニュース]◆最新現地レポート <アメリカの医療状況  その2>
       −HMO(組合保険制度)の問題点とその影響−
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 アメリカの病院の経営が悪化した最大の原因は、HMOとの契約にある。
HMOは、地域の住民全体の医療費を1人当りいくらで請け負うかを病院と交渉
し、安い病院に決める。HMOの請負額が毎年値下げされ、病院経営は苦しく
なっている。

 一例をあげると、ハーバード大学の教育病院になっているマサチュセッツ総
合病院とボストン小児病院がこの地域で有力なHMOであるハーバード ピルグ
リムHMO(The Harvard PilgrimHMO)の小児患者の契約をめぐり競争となっ
た。

  1991年度はマサチュセッツ総合病院が契約をとったので、ボストン小児病院
は予算を13%削減し、検査部の人員もそれに見合って削減された。翌1992年は
ボストン小児病院がHMOとの契約を取り戻した。このようにHMOとの毎年
の更新に各病院は一喜一憂している。1994年にはボストン小児病院は予算を20
%削減し、検査部の人員も同じ割合で削減した。1991年から1994年の4年間で
病院予算は33%削減されたことになる。技師数の削減は、管理職や事務員から
はじめるので、管理職のポストは減り、優秀な技師は将来の昇進の見込みがな
くなったため、辞めて民間の試薬会社などに就職している。このような状況で
ボストン小児病院では臨床検査の件数は年々減少している。

 HMOでの問題点としてはHMOはインターンやレジデント教育の経費を支
払わない(メディケアとメディケイドでは支払う)ので、教育病院では経済的に
大変困る。産婦は出産後48時間以内に退院する規則になっているが、これを不
満に思った人が訴訟をおこしている。またこの件に関しては政治家が問題あり
として取り上げ、現在HMOは批判され、入院期間の延長が認められるような
状況になってきている。また、乳房腫瘤の患者でマンモグラフィで乳癌が疑わ
れたので、担当医師が生検を指示したところ、HMOでは許可せず、最終診断
は乳癌とわかり裁判になった例もある。この他、土曜日に運動中の学生が足首
骨折で近くの整形外科病院を受診し、緊急手術を勧められたが、その病院が患
者のHMOと契約していなかったため、手術することができず患者は痛みをこ
らえて、月曜日以降、HMO指定の病院での手術まで待たなければならないと
いう話も聞いた。

[1998年7月31日 獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[ニュース]◆最新現地レポート <アメリカの医療状況  その3>
       −HMO(組合保険制度)とは何か−
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 アメリカのマネージドケア組織には、HMO(組合保険制度、6400万人)と
PPO(優先供給者機構、6700万人)とがあり、ほぼ2分されている。ここでは
ハーバード ピルグリムHMO(Harvard Pilgrim Health HMO)を例にとり説
明する。これはハーハード大学関連のHMOでマサチュセッツ州をはじめ、近
隣のコネチカッチト州、ロードアイランド州、メイン州、ニューハンプシャー
州、バーモント州などのニューイングランド地区をカバーしている。

  このHMOに入会すると、まず始めにプライマリ・ケア医(PCP:Primary
Care Physician)を決めなければならない。通常HMOでは、このプライマリ・
ケア医にできるだけ治療させ、専門医への紹介を減らし利益を上げようとして
いる。もし加入者が病気になった場合には、まずにこのプライマリ・ケア医に
診察してもらうことになる。自分の判断で勝手に専門医のところに行くことは
できない。但し、産婦人科に関する患者に限っては直接診察を受けることがで
きる。

 HMOの保険料について、私の米国の友人にたずねたところ、両親と子供4人
の家族が支払う額は年間400ドル位で同時に勤務先の会社が支払う額は約6000ド
ルとなる。すなわち自分で支払う額は保険料の10%以下の支払になる。この
HMOのマニュアルには、保険でカバーされているものについて次のように記
載されている。救命救急患者としてこの保険でカバーできるのは、心臓発作、
脳卒中、意識喪失、窒息、重症頭部外傷、発作、大量出血などである。このよ
うな場合には、救急連絡911番(日本の119番に相当)をかけて救急車を呼び、プ
ライマリ・ケア医の承諾を得ずに急患室に行くことができるが、入院したら直
ちにプライマリ・ケア医に知らせなければならない。

 悪性の感冒、尿路感染症、風邪による呼吸困難、手首の骨折などの救急では
プライマリ・ケア医に連絡し急患室に行かなければならない。外国や他の州に
出かけた場合には、耳の痛み、風邪、中毒、骨折、内科的救急などがこの保険
でカバーされる。ここでは実在する23歳の男性の診察券(下図)について説明
する。

 ID#は患者が支払う時には必要な番号、InputがHPHCとなっているのは、患者
は個人の開業医またはグループプラクティス医に行くことを意味している。次
に名前(Name)と生年月日(DOB)があり、居住地区がSITEで示されている。PCPに
はプライマリ・ケア医の名前と電話番号が書かれている。次にCopaysで $10
OVは患者がプライマリ・ケア医の診察を受けに一度訪問すると$10、$25 ERは救
急室に一度行くと$25、$5 ALはアレルギーの注射が$5というように患者が支払
う額が示されている。その下のEXCLのPEDIとDENTは小児科と歯科は除外するこ
とを意味している。一番下のRXは薬の支払いで$10Fは約束処方の場合は$10、そ
れ以外の処方は$15支払うことを意味している。

[1998年7月31日 獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[ニュース]◆血液製剤の感染症遺伝子検査、法律で義務づけの方向へ
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 7月22日の新聞報道等で明らかにされた厚生省血液問題検討会安全性専門
委員会の答申につき、厚生省薬務局企画課血液事業対策室に電話取材をした。

 今回の答申では、日赤およびその他のメーカーから供給されるあらゆる血液
製剤について、PCR法によるHIV、HBV、HCVのスクリーニングの法的義務付けが
うたわれている。該当するような自動分析装置もまだ市販されていない現状で
は唐突な感じが否めないが、既に本邦で使用されている全血液製剤について、
500検体プールによる遺伝子スクリーニングが導入済みという実績があり、
制度的には保険点数にも当然反映すべきものなので、自発的に始まったチェッ
ク体制が徹底されるよう法律で後押しするという側面が強く、義務付けによる
混乱はないと予想される。

 今後は不活化処理を含めた総合的な対策が検討される見込みであり、今回の
措置を含めて個別医療機関において同等の対策が困難になるのは確実である
が、医療現場においてはできるだけ製品として供給される血液製剤を用いるこ
ととし、ベッドサイドで供血者から採血するのは止むを得ない場合に限るとい
う方向づけが明確にされつつある。

 なお、血液事業対策室では希望者に今回の答申に関する詳しい資料を配布す
るとともに、2〜3週後には厚生省のホームページ(http://www.mhw.go.jp/)
にも議事録を掲載するとのことである。

[JACLaP WIRE編集室 西堀眞弘]
 
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[ニュース]◆インターネットを介し多施設で共有できる臨床検査データ
        ベースの開発を目指す研究班が発足
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 平成10年度 文部省科学研究費補助金 基盤研究(C)課題番号 10897027 研
究課題「インターネットで共有する臨床検査データベースの開発 -MRSA症例デ
ータベースとその解析システム-」による研究班が発足した。

 班員は、井上裕二(研究代表者・山口大学医学部)、久長 譲(山口大学総
合情報処理センター)、松野容子(山口大学医学部)、只野寿太郎(佐賀医科
大学)、松田信義(川崎医科大学)、管野剛史(浜松医科大学)、岡田正彦(
新潟大学医学部)、神辺真之(広島大学医学部)、大庭雄三(山口大学医学部
)、服部幸夫(山口大学医学部)の10名で、従来複数の施設で別々に構築さ
れていた細菌検査データベースを一定の書式に共通化することによって、他施
設のデータを参照するだけでなく、他施設で開発した解析プログラムを自施設
のデータにも適用できるような情報環境を実現するため、施設毎に異なってい
る検査データベースの書式、検査データの表記法、分析物や検査結果のコード
体系等の検討、日本臨床病理学会コードを基本にしたデータベース標準フォー
マットの作成、およびデータベース利用におけるプライバシィ保護、アクセス
権、セキュリティ管理等についてコンセンサスの形成を目指している。

[山口大学 井上裕二]
 
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[ニュース]◆形態検査インターネットサーベイ研究班発足
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 平成10〜11年度 文部省科学研究費補助金 基盤研究(C)課題番号 10672172
研究課題「インターネットを使って形態学的検査のコントロールサーベイを実
施する研究」による研究班が発足した。

 核となる班員は、大場康寛(近畿大学ライフサイエンス研究所)、伊藤機一
(神奈川県立衛生短期大学衛生技術科)、渡辺清明(慶応義塾大学医学部)、
菅野治重(千葉大学医学部)、櫻林郁之介(自治医科大学大宮医療センター)
、谷合 哲(東京医科歯科大学保健管理センター)、玉井誠一(防衛医科大学
校附属病院)、田中 博(東京医科歯科大学難治疾患研究所)、西堀眞弘(研
究代表者・東京医科歯科大学医学部)の9名で、従来スライド写真にして配布
していたサーベイ用画像を、インターネットのホームページで配布することに
より、外部精度管理事業の画期的なコストダウンを図るため、判定用画像のデ
ジタル処理や選定の方法、および表示端末の性能についてのガイドラインの設
定を目指している。

 幅広いコンセンサスを得るため、関連学会、職種団体、精度管理実施組織、
関連業界等より研究協力者を募るとともに、研究経過を社会に公開し、意見の
収集と成果の還元を円滑に行うため、この度下記アドレスに研究班のホームペ
ージが開設された。

  http://square.umin.ac.jp/survey/

 全体の陣容や研究計画等については、上記ホームページに詳しく掲載されて
いる。

[東京医科歯科大学 西堀眞弘]

(JACLaP NEWS編集室では、会員による研究班発足の記事を募集しております。
該当される方は wire@jaclap.org まで情報をお寄せ下さるようお願いいたしま
す)
 
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[新規収載]◆サイトケラチン19フラグメント精密測定
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サイトケラチン19フラグメント精密測定(準用先区分D009-16)(区分D-2)
平成10年7月1日より適用の腫瘍マーカー
保険点数:310点
基準範囲:2.8ng/ml以下
製品名:エクルーシスシフラ
製造元:Boehringer Mannheim GmbH, Mannheim, Germany
輸入・発売元:ベーリンガー・マンハイム(株) 03-3432-3162
測定法:電気化学発光免疫測定法(ECLIA法) 100テスト/キット(シングル
測定)
結果がでるまでの時間:18分 自動化:可
同時再現性:0.9〜2.9% 日差再現性:2.9〜5.2%
検体:血清、血漿(へパリン、EDTA、クエン酸)
【特徴】 ストレプトアビジンコーティング磁性微粒子と2種のモノクローナル
抗体(ビオチン化抗体、ルテニウム標識抗体)の、ストレプトーアビジン系を
用いたサンドイッチ法と、電気化学的な発光反応による、電気化学発光免疫測
定法(ECLIA法)により測定する。
 肺癌は小細胞癌と非小細胞癌(扁平上皮非癌、腺癌、大細胞癌など)の2種
類に大別され、患者数は1:9と圧倒的に非小細胞肺癌が多い。小細胞肺癌は
化学療法や放射線療法に高い感受性を示すが、非小細胞肺癌は化学療法に対す
る感受性は少なく、手術になることが多い。血中のサイトケラチン19フラグメ
ントの測定は非小細胞肺癌の診断、手術後の経過観察に有用とされている。非
小細胞癌の腫瘍マーカーとしてサイトケラチン19フラグメント、CEA、SCC抗原
について比較すると、有病正診率と無病正診率は他のマーカーに比べ本キット
が優れていた。サイトケラチン19フラグメント精密測定は、すでにEIA法、
IRMA法が普及している。本キットはサンドイッチ法に基づき、標識物質にルテ
ニウム錯体を用いた電気化学的な発光反応による電気化学発光免疫測定法
(ECLA)でサイトケラチン19フラグメントを測定する。本キットは、測定範囲
が0.1〜500ng/mlと従来法に比べ10倍で、高感度測定(分析感度0.1ng/ml)、測
定時間も18分と短いなどの特徴がある。本キットと既存のEIA法との相関はR=
0.992、Y=0.975X−1.253と良好である。
【保険請求上の注意】 特になし
【文献】 平川寛一郎、他:電気化学発光全自動免疫測定装置エクルーシス
2010による血中Cyfra21-1の基礎的検討.臨床検査機器・試薬、21:289
〜293、1998

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆グロブリンクラス別ウイルス抗体価精密測定
                     (ヒトパルボウイルスB19)
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グロブリンクラス別ウイルス抗体価精密測定(ヒトパルボウイルスB19)(準用
先区分D012-25)(区分D-1)
平成10年7月1日より適用の感染症血清反応検査
保険点数:360点
製品名:パルボIgM−EIA「生研」
製造・発売元:デンカ生研(株) TEL 03-3669-9091
測定法:EIA法 48テスト/キット(シングル測定)
検査がでるまでの時間:約4時間  自動化:可
検体:血清及び血漿(抗凝固剤はヘパリン、クエン酸ナトリウム、EDTA−2Na)
【特徴】 IgM抗体捕捉法による検出法であり、まず抗ヒトIgM抗体固相マイク
ロプレートに検体中のヒトパルボウイルスB19(以下B19と略す)IgM抗体、B19
ウイルス抗原、酵素標識抗体を順次反応させた後、基質を添加して発色させ、
反応停止後、その吸光度を測定する。
 人がパルボウイルスB19に感染(潜伏期約7日間)し、1週間目には発熱を伴うイ
ンフルエンザ様症状や溶血性疾患では造血障害発作が起こり、17〜20日目には
風疹様発疹、関節炎、心筋炎・心不全、脳炎・髄膜炎・脊髄炎、胎児感染など
が発生する。
 特に妊婦(妊娠3週以降に感染)が発疹を呈し、パルボウイルスB19感染を疑う
場合には、高率に胎児水腫の発生が予測されるため、超音波検査を行い胎児水
腫の有無を明らかにする。胎児水腫が発生した場合は、パルボウイルスB19
IgM抗体価精密測定を行い、原因を究明すると共に迅速な治療が必要となる。
 現在、風疹感染とパルボウイルスB19感染は、風疹の血清中の特異抗体価およ
びパルボウイルスB19 IgM抗体価により鑑別することになっている。人がパ
ルボウイルスB19に感染すると、感染後7〜10日経過した後、IgM型抗体が検出さ
れ、その後1か月から3か月後に消失する。
 発疹出現日を0病日とした時、パルボウイルスB19感染が判明している検体に
おけるパルボウイルスB19 IgM抗体価の陽性率は、83.1%〜97.6%と高率であ
る。これを発疹出現日を0病日とした時からみると、−4病日以前では0%、
−3〜0病日で83%、1病日で88%、2病日で100%、3病日で89%、4〜10病
日で93%、11〜20病日で100%、21〜30病日で60%、31〜50病日で75%、51〜
100病日で50%、100病日以降は0%であった。
 パルボウイルスB19が原因の胎児水腫は出生1,000人に対して0.65人の割合で
発生するので、年間の胎児水腫の発生数は約770例と考えられる。胎児水腫が発
見され、それがパルボウイルスB19が原因であると確定されれば、母体内で胎児
輸血を柱に、治療方針が決定し適切な治療が行うことになる。
【保険請求上の注意】 ただし、ヒトパルボウイルスB19については、紅班が出
現している妊婦について、このウイルスによる感染症が強く疑われ、IgM型ウイ
ルス抗体価を測定した場合に算定する。
【文献】 布上 董:ヒトパルボウイルスB19のバキュロウイルス組み換え抗原
(VP1+VP2)による流行年別抗体の検出性.感染症誌、69(5):546〜
552、1995

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆HCV抗体価精密測定
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HCV抗体価精密測定(区分D013-7)(区分D-2)
平成10年7月1日より適用の肝炎ウイルス関連検査
保険点数:210点
カットオフ値:1未満が陰性
直線性:50まで
製品名:エバテストHCVAb
製造元:ダイキン工業(株) TEL 06-373-7282
発売元:日水製薬(株) TEL 03-3918-8167
測定法:エバネセント波蛍光免疫測定法(EV-FIA)60テスト/キット(シングル測
定)
結果が出るまでの時間:8分  自動化:可
同時再現性:2.5〜5.9%  日差再現性:1.7〜5.1%
検体:血清及び血漿(クエン酸ナトリウム、EDTA、ヘパリン)
【特徴】 サンドイッチ法による蛍光免疫測定を原理とし、固相表面に形成さ
れた抗原-HCV抗体-蛍光標識プロテインAをエバネセント波により選択的に励起
することにより未結合(遊離)の蛍光標識プロテインAを分離することなく抗体
量に応じた蛍光強度が測光され迅速に検体中の抗体が測定される。本キットは
HCVキャリアのスクリーニングおよびC型肝炎の診断に用いられる。本キットの
特徴は、測定が迅速で操作が簡便なことである。本法とEIA法(イムチェック・
F-HCV Ab)を比較すると、一致率99.2%(n=471例)と良好であった。
 吉沢らの推計によると20〜64歳の日本人の中で無症候性C型肝炎ウイルスキ
ャリアは男性が39.3〜46.4万人、女性34.0〜40.5万人の合計70〜85万人と考え
られている。またわが国におけるC型肝炎患者は急性C型肝炎が3.1万人、慢性
C型肝炎が103万人、合計約106万人と推定されている。
【保険請求上の注意】 特になし
【文献】 田中栄司、他:エバネセント波を用いた全自動免疫測定装置エバ
ネットEV20によるHCV抗測定試薬の臨床的有用性.医学と薬学、38:351
〜328、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[Q&A] ◆インターネットを使った文献の無料検索
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(Q)インターネットに接続すれば無料で文献検索が出来ると聞きました。ぜひ
具体的方法を教えてください。(埼玉県 臨床検査医)

(A)医学および関連分野の文献データベースとして、一番広く使われているは
MEDLINEでしょう。MEDLINEがCD-ROMの形で供給されるようになって以来、文献
検索の時間が大幅に節約でき、さらにその結果をその場で印刷したり、フロッ
ピー・ディスクにダウンロードしてあとで利用することができるようになり、
大学の勤務医等は非常に大きな恩恵を受けています。ただし、それ以外の医療
機関の勤務医あるいは開業医の方々は、大学まで出向かなければこのCD-ROMは
利用できませんでした。しかし最近では、MEDLINEもインターネットを介して無
料で検索できるようになり、ご自宅からでも、いつでもMEDLINEが自由に利用で
きる時代になりつつあります。これを使わない手はありませんので、是非チャ
レンジされることをお勧めします。

 インターネットで利用できるMELINE検索のサービスは有料で提供されている
ものと、無料で提供されているものがありますが、ここでは後者の例をご紹介
します。習うより慣れろですので、お手近にあるインターネットに接続できる
コンピュータで、アドレス http://www.medical-tribune.co.jp/ にあるMedic
al Tribuneのホームページをご覧ください。ここにインターネットを利用した
医学文献検索 (無料MEDLINEの利用法)が載っていますので、後はこのページ
の解説を読んで、その指示に従えば、自由に文献検索ができるようになるはず
です。

 あるいは、日本糖尿病学会 のホームページ(http://www.jds.or.jp/)から
、Free MEDLINE for Diabetesをクリックすれば、糖尿病関連の文献は自由に検
索できます。またサーチエンジンが使えれば、MEDLINE以外のデーターベースも
利用できるようになります。

 繰り返しになりますが、この回答を詳しくお読みいただくよりも、実際に上
記のどちらかのホームページにアクセスして、まずはその便利さを体験してい
ただくことを強くお勧めします。

回答日:1998年7月6日
回答者:認定臨床検査医 熊坂一成(No.236)

[ホームページ/臨床検査Q&A;(その他)]
 
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[Q&A] ◆新規収載検査の基本知識
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(Q)新規収載検査の審査過程、D-1・D-2等の分類、区分、包括化について、基
本知識として知っておくべきことを概説してください。(東京都 臨床検査医
)

(A)以下に要点を説明します。
1)新規収載の検査項目導入は、2年毎の改定の際に導入されることもありま
すが、通常は日本医師会で月2回行われる日本医師会の疑義解釈委員会で審議
されます。疑義解釈委員会ではD-1と呼ばれる検査項目と検査法のいずれもが新
しい検査と、D-2と呼ばれる測定法だけが新しい検査の2つに分けられます。
D-3はゾロ品で、これについてはこの委員会では審査せずに、厚生省の方で、規
格に合えば認可しています。D-1とD-2の検査は共に臨床的意義が認められなけ
れば、承認されません。

 疑義解釈委員会では、日本臨床病理学会の代表として、慶応義塾大学の渡辺
清明教授と私が出席し、新規収載の検査を中心に検査のことについては、われ
われが答申を行なっています。この答申に対し、厚生省から整理案が出され、
健康保険への適応の可否と保険点数が決定します。最終案が中医協で承認さ
れ、翌月の1日付で保険局医療課長名で全国に通知されます。

 平成4年4月から平成9年3月までの5年間において、疑義解釈委員会で保
険に新規収載された件数は84件、1年間平均16.8件になります。この5年間に
新規収載の検査で最も多かったのは血液化学検査で21件、次いで感染症血清反
応13件、腫瘍マーカー9件、自己抗体検査8件、微生物核酸同定・定量検査8
件、肝炎ウイルス関連検査6件などの順になります。

 昭和56年より生化学検査を中心として急速に包括化が実施されましたが、平
成10年度でさらに進みました。生化学検査の包括化の推移とその影響を昭和56
年と平成10年の17年間についてみると、最初の保険点数から減少し48〜64%に
なりました。

2)新規収載検査の準用先区分については医科点数表の解釈(社会保険研究所
出版)を見てください。区分は大別すると下記のようになっています。ここの
中で同一のものか、最も類似している検査点数を準用します。

 D000 尿中一般物質定性半定量検査 D013 肝炎ウィルス関連検査
 D001 尿中特殊物質定性定量検査  D014 自己抗体検査
 D002 尿中沈渣顕微鏡検査     D015 血漿蛋白免疫学的検査
 D003 糞便検査          D016 細胞機能検査
 D004 穿刺・採取液検査      D017 排泄物,滲出物又は
 D005 血液形態・機能検査         分泌物の細菌顕微鏡検査
 D006 出血・凝固検査       D018 細菌培養同定検査
 D007 血液化学検査        D019 細菌薬剤感受性検査
 D008 内分泌学的検査       D020 抗酸菌分離培養検査
 D009 腫瘍マーカー        D021 抗酸菌同定検査
 D010 特殊分析          D022 抗酸菌薬剤感受性検査
 D011 免疫血液学的検査      D023 微生物核酸同定・定量検査
 D012 感染症血清反応       D024 動物使用検査

3)検査の包括化の中で検査の臨床的意義が類似する複数項目(2〜5項)を実
施した場合に種々のしばり(制限)がつくようになりました。そのしばりの内容
を下記に示しました。

 (1) 複数項目を同時に実施しても1項目しか算定できないもの
 (2) 複数項目を実施しても2項目しか算定できないもの
 (3) 計算すれば値が求められるため2項目しか算定できないもの
 (4) 複数の材料では同時に算定できないもの
 (5) 測定項目数と点数に上限があるもの
 (6) 3項目以上測定しないと算定できないもの

など多様化しています。このような同時測定項目の算定時のしばりがついたも
のを別表に示しました(ホームページ:http://www.jaclap.org/の臨床検査Q&
Aページの当該Q&A;、および新規収載臨床検査項目のページにリンクを設定)の
でご利用ください。今後、追加しますので、時々ご覧ください。

回答日:1998年7月6日
回答者:認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)

[ホームページ/臨床検査Q&A;(診療報酬)]
 
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[編集後記]◆禍い転じて福と成す
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 史上最悪の失業率、選挙結果を一顧だにしない政権たらい回し、青酸カレー
事件と暗いニュースが続きます。また米国発の本紙最新レポートは、日本の医
療の厳しい未来を予言しています。まさにお先真っ暗といった今日この頃です
が、見方を変えればあながち悪いことばかりとは限りません。今のように世の
中が大きく変わるときは、今まで営々として築かれてきたさまざまな権威が崩
れ去り、新しい価値が生まれ育つのに絶好の培養条件が整うからです。この機
会をうまく捉えれば、激動の時代に勝ち残り台頭するチャンスが私達にも与え
られているのです。

 そのような目で少し周りを眺めてみると、日臨技は既に政治団体の設立を決
意し、また日本病院会は関連学会と結託して人間ドック認定医なるものをでっ
ち上げようとしています。私達検査の専門医ものんびりと構えてはいられませ
ん。受託検査不当廉売の監視、検査施設の格付け、保険行政への政策提言、抗
生剤感受性検査の標準化、ドック検査の規格化など、その気になれば私達が囲
い込める仕事がいくらでもあります。

 戦後50余年の間にたまりにたまった地殻の歪みは、既に臨界点に達してい
ます。いつ大地震となって吹き出しても不思議ではありません。自民党最後の
政権が崩壊しようとしている今、思い悩むときは過ぎ、機は熟しました。この
夏休みにはたっぷりと充電し、迫り来る闘いの日々に備えようではありません
か。

[編集担当 西堀眞弘]

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JACLaP WIRE No.4 1998年8月6日
■発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
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