Lab. Clin. Pract., 19(1) : 55 (2001)

編集後記


 現在,医学部のモデル・コアカリキュラムが文部省下の委員会で作成され,近く発表されると聞く.(おそらく本号が発刊される頃にはその詳細が明らかになっていることと思われるが.)これまでの各大学・各講座の裁量に任されていた教育内容を変えて,医師の素養教育や人間教育まで取り込み,さらに従来の講座制の壁を取り払い,基礎から臨床医学までを一貫して学ぶことになるということで,私見として総論的には賛成である.しかし,その中で検査医学教育はどのようになるのであろうか? 先日の医学界新聞には,臨床検査関連の項目は少ないとの意見が出ているとの委員長の話が載っていた.卒前教育への検査医学(臨床病理学)の関与の程度がどの程度になるかは,その後の大学における検査医学の状況に非常に影響するものであり,大変重要な問題と思っている.
 私の学生時代の恩師に及川 淳元教授(筑波大学)がおられる.卒業後は別の進路を取ったこととその後,残念ながら急逝されたため,卒業後はお会いすることはなかったが,大学時代で最も記憶に残った授業のひとこまは及川先生のものである.今でも大切に持っている Problem solving in clinical medicine from data to diagnosis (Cutler, P. 著)で友人たちと勉強会を行ったものであるが,その本を紹介していただき,また,たばこの煙るカンファレンス室で手ほどきをいただいたことが,今,検査医学に席を置かしていただいていることにつながっている.お人柄もあるが,“熱く”検査医学の魅力を語られた及川先生のような存在に検査医学教育の中で出会えたことが大きな影響を及ぼしたことを考えると,そのような機会を多く持ち,その中で,“熱く”語ることができるよう努力しなければならないと思っている.そのためにも,学生と接する機会が,コアカリキュラムによって少なくならないように,強く願うものである.

(川崎医科大学検査診断学  石田 博)