Lab. Clin. Pract., 19(1) : 25-30 (2001)

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医 療 情 報
カードメディアの医療応用をめぐって

健康情報カード研究協議会会長
久 慈 直 志


今回労働厚生省が健康保険証の一人1枚のカード化と,自分の健康診断データを退職後も利用できるように制度を改正すると公表した.二十年来ヒトが自分の健康記録(病歴・成長歴・旅行歴・検査歴・入院歴など)をカード化して,自分で持つことを実現しようとしてきた我々にとって,やっと労働厚生省もここまで変わってきたかとの感じを否めないが,事は一片の通達で済むような簡単なことではない.
この運動を進めてきたうちにわかったことは,障害は種々あってもそのほとんどは電子カルテシステムの構成と,電子機器相互の接続にかかわる経済負担の問題で,後は反対のための反対つまり労働厚生省の統一コードに対する無理解と,理由に乏しい医師と患者双方のプライバシーの侵害などという文句づけで,これは今後も続きそうである.

医療情報の性格

情報は常に時間・空間について正確でなければならないが,医療行為は障害行為であるために特に注意が必要である.ある人が複数の医療施設を利用している場合,何処で,何を検査し何を投薬されているのか,同じ病院の中でさえ単一病歴システムを持っていないところでは,他の科が今何を検査・投薬しているのか伝票を見ない限りはわからない.かくして多数の重複投薬・検査が生まれる.
健康情報というものは,ほんのつまらない事例でも重要な意味を持つことがあり,逆にある科のある疾患では非常に重要なある過去の記録も,他の場合・外の科では全く意味がないことが多い.病歴を要約して短く,わかりやすくするのはある特定の目的のためで,それが医師にとっていかに経験と知識を必要とされるか,また要約されない元の病歴がその人にとって別の場合にはどれほど重要であるのかは臨床医ならわかるはずである.
「医師にも知られたくない記録というものが個人にはあるんだ」といった厚生官僚がいたが,それならその人はそれによって起きる医療施設・医師が冒すかもしれない重大な危険や判断の過ちをも是認することになる.これは例えば内視鏡のような検査にはエイズの検査は無用である,というような議論にも結びつく.
また健康情報は書き換えられてはならず,時系列で記録されねばならない.もし誤りを発見しても消去しないで,理由・日時・記載者名を書いて正しい記録を併記するのは,看護学校教育から引き続く医療記録の原則である.つまり,コンピューターで記録する際に行われるように,その場所にオーバーライトして前の記録を消してはならない.訂正後の画面上のディスプレイとしては訂正済の記号があればいいけれども.

健康記録の容量

ヒトの一生の記録は今生まれた人は別として,病気になったときなどに過去を思いだして文字記録する場合,それから後の治療記録を含めて情報量として最大2メガ,最低で0.1平均0.3メガと推定される.2メガ以上の場合は大抵は医師の要約や,診断を推定した際の思考経路・討論の記録などで増加していて,これは医療経路の記録であってその人のものというよりは医師の,または医療組織の知的財産というべきものとなる.
しかし健康記録は文字情報のみではない.情報量として最も大きいのは画像,特にX線写真である.単純撮影はデジタルも増えてはきたが,ほとんどがアナログ情報のために膨大な情報量を必要とするが,これらのうち記録として保存が必要なものは胸部を除きあまりない.CT, MRI-CI, PET, SPECT, 超音波画像などは初めからデジタルなのでそれほどの容量を必要とぜず,また内視鏡もデジタル化が進み,それらは頻度も低く保存の必要性も単一画像で済むことが多い.
したがって通常は2ないし4メガあれば一般人の所持する記録としては十分だと思われる.

カードメディアのスタイルと種類・容量

クレジットカードの形と大きさが一般に馴染みが良いのは,そのサイズか国際規格で決まっているからで,そのホルダーも種々選べるし多くの日常携帯品,例えばワイシャツのポケットのサイズ・定期券にまでその影響が及んでいる.
日用品だから汚れや曲げに強く,水や電気・磁気にも強いことが望ましいが,エンボスカードを除き完全にこれらの性質を持つものはない.テレホンカードのように磁気ストライプを持つものが機能的に便利なので一般的だが,磁気ストライプの場合その容量は保険証の被保険者名・記号・番号・有効期限を入れるのすら十分ではない.
労働厚生省が今までずっと実験を繰り返してきたICカードも容量は磁気カードに比べると遥かに大きいが,国際規格の厚さ0.75ミリを超え,製造会社によってICの位置が違うこととともに,その容量がレセプトと呼ばれる請求書一号紙の記入面を満たすと,2〜3回の健康診断データしか入らず,明らかに病歴用として容量不足である.
光カードはすべての製造していたメーカーが撤退して今はないが,ほぼこの条件(汚れと曲げ・水・電気・磁気に強く容量は4メガ)を満足していた.しかし容量はまだやや不足気味で,X線写真は多数になると圧縮しないと格納できず,施設側には圧縮する機器が必要と思われた.
CDカードは容量は30メガと十分である程度までの曲げに耐え,読み取り・書き込みの機器も価格が安くできるが,汚れと傷に弱いので磁気ストライプとのハイブリッドが可能かどうかという実用上の間題と,書換えが可能? ということが多少引っかかる.原理的には同じことなのだから,CDを光ディスクに変えて付随機器の価格もそれほど上昇させない方法があるなら,それが現在得られる最高のメディアと言えるのだが.
結論的に言うならば,カードメディアで健康情報をすべて格納できるのは最後の二つのメディアのみ,価格的に健康保険組合にとって最も安いのは磁気カードと暗証番号を使って各自治団体か,有料の健康情報蓄積所から健康情報を得ることだと言える.

高速通信綱と健康情報のセキュリティ(プライバシー)

今まで画像などを含む医療情報を回線を使ってやりとりし,医学的議論・検討を行う試みは何回も行われ,すべてが成功している.しかし台湾・膨湖島での実験が示すように,光ファイバーなどを用いた高速大量通信網がないと,情報量が大量の医療情報は一般電話回線を使用しては回線が不足して混乱を起こすことは明白である.
日本では近々のうちに電力線とグラスファイバーを使ったネットワークが身近なものとなり,経済活動はそれによってさらに活性化されるであろうが,それに伴ってほとんどの医療保健機関が医療情報を交換できるようになる.個人の医療健康情報を大容量のホストコンピューターに保管すれば,何処にいてもその人のすべての身体情報を得ることができる.これは救急のときなど役に立つ考えだと思われる.
欠点としてはすでにスェーデンはファイバーネットワークですべての医療機関をつなぎ,ホストコンピューターから情報を得られるようにしたが,先に述べたように医療情報は増加する一方なので,いかにスーパーコンピューターが大容量といえどもオーバーフローし(日本のある厚生官僚のように要約すれば良いんだ,とは言わなかった)その対策に追われた.
スェーデンの人口は800万,日本の各自治体はスパコンを買うだろうか.それでなくとも光ファイバーネットワークの設備は多分,僻地は遅れるだろうから,経済・医療格差は増大するであろう.
もっと重大なことは情報公開が一般化した結果,電子カルテシステムが医療機関に必要不可欠になると,個人の暗証番号の漏洩がなくとも,今でも医療機関の暗証番号(これはある意味では秘匿のしようがない)さえわかれば,あるいはわからなくても,医療機関に保管されている特定の人の病歴が読める可能性が高いということである.例えば外注した検体検査結果は医療機関の番号から自動的に医療機関の中央検査室のコンピューターに入り,そこに電子カルテシステムがあればその人の病歴のデータとなる.それを逆に使えば誰でもハッカーとなりうるだろう.
健康保険組合は善意の第三者として個人の医療行為の有無を知りうる.しかしその結果を知ることはできず,費用の全部または一部を支払った健康診断結果を知ることができるのみであるが,医療施設の電子化がプライバシーの侵害を起こすからといってそれを阻止しようとするのは,人々の莫大な健康上の利益を失うことになる.
所詮病歴のセキュリティは現在でも高くはない.病歴は金庫に保管されているわけではなく,いつでも早く出せるように競っているのが実情であり,またプライバシーというものは侵害されて初めて成立する概念で,マスコミに乗るごく少数の人物を除き,病歴の中身を知ることによって得られる利益は,通常人のそれを知るための手間に全く値しないだけのことなのに,今までそれを言い立てていた法律屋はカード化を遅らせていただけと言える.
だから病歴のカード化,電子化,医療情報のネットワーク化に対してセキュリティ・プライバシーから反対する人は,いわゆる何でも反対人グループ,進歩の阻害者だろう.しかし新薬などを売りつけようと考えたとき,これは病名などから購入可能者を特定・リスト化するときに利用されるだろうし,電子化はハッカーに都合が良く,ネットワーク化はそれを助長する.どんな進歩にも犠牲が付き物だし,それをおそれては破減の道を進むだけである.
以上を結論的に言うならば,大量高速通信網の医療面での利用は促進され有効に作用するであろうが,それにも利用する施設の電子カルテ化が最初に必要であり,さらに通信網による検討はそのときの医学的問題の解決には有効であっても,その患者のすべての情報が伝えられているわけではなく,また自治体ごとのスーパーコンピューター設置が難しいと考えられるので,患者にとってはそれ以外のときには医療情報のバックアップがないに等しく,通信網が電子化された患者カードの必要性のすべてを補ったわけではない.

カードの項目

今まで述べた成長歴・生活歴・家族歴・技能歴・疾患歴(既往歴)・入院歴・手術処置歴(輸血・歯科処置を含む)・薬歴・視聴カを含む検査歴と検体検査値・画像記録などのほかに,血液型(rh, HLA などを含む)・指紋・DNA・眼底写真などが考えられ,これが健康記録カードが1名メディカル・パスポートと言われるゆえんである.
意外に有効なのばカード表面の顔写真以外に顔写真をシステムの中に入れることで,外国人によく見られる保険証の又貸し防止に,また採血の際の取り違え防止に役立つ.中国からこのカードについて講演の依頼があったとき,私はいったんは断わった.専制独裁国家が国民を管理するとき,こんな便利なシステムはないし,中国と北朝鮮はその可能性・必要性が最も高い国だからである.

医療カードの歴史と所謂健康診断記録の実用性

今まで医療カードば実験として集団検診を含む健康診断記録に主に用いられてきた.実用的に臨床で使われたのは移動の多い透析患者のデータ記録の場合と,人の移動の少ない限定された地域の地方自治体の医療機関のみであった.
健康診断記録は立派な医療記録・情報であるが,ほとんどが正常なときの記録であって今,疾患が疑われるときの必要情報ではないことの方が多い.少なくとも大抵は既往歴が不正確であり,薬歴がない.最も必要な疑われる疾患についての検査結果もないのが普通である.健康診断記録より,医師が知りたいのはどこかにかかったことがあるか,そのときの経過と結果であるが,それはおよそ不明のことの方が多い.
本来健康診断はスクリーニング検査記録であって,利用せよと言われても利用価値は限定されていて,有り難く利用させていただくと言うのには余りに不備であると言わざるをえないし,全医療記録が欲しい,と言うのは事にあたるすべての臨床医師の切なる願望ではなかろうか.

中央組織・あるいは官庁にやって貰いたいこと

米国で有名チェーン病院群で患者のステータス・シンボルを目指して,光カードを使った患者カード実験が行われたが,他の医療施設との連係がとれないためカードの効果がなく,実験は中止された.つまりこのシステムがすべでの施設で使われるためには,カードの様式の統一に留まらず各施設のコード様式の統一も必要なのである.
だから健康保険証のカード化は,必然的に少なくとも磁気ストライプのコード様式の統一を前提としない限り,保険証記号番号などの転記ミスを減少させることはない.その統一化は引き続き健康記録の統一・コード統一化に結びつかねばならない.それを行うのには最早や労働厚生省は不適格であろう.となればそれだけの実務経験を持つもの,日本医師会・歯科医師会しかない.

中央医療審議会の課題

厚生省のカード実験が失敗した(彼ら決してはそう言わないが,協力した現地医師会すべてがそれ以上カード利用を行わなかった)理由は,上述のカード規格の不統一・カード容量の不足のほかに,カードシステムの設備投資一切が,読み書き道具(リーダー・ライター)とそれを扱う人件費を含めて施設側負担であるのに(営業資産なので当然だが),見返りである保険点数の増額報酬が一切なかったことにもある.
情報公開の進行が診療情報提供書料の増額という結果を生み,施設の機能別選別が進んで病診連係が必要になったのだから,電子化された患者カードを発行したときには診療情報提供書料,また再診時それに書き込むたびに診療報酬として,診療情報提供料の1/10額の点数を再診料に加算するのは,診療報酬が減少するのだから理屈が通っているし現実的であるといえる.

今後の施設の対応

電子カルテ(カルテは日本式ドイツ語,本来は板・固い紙・地図などを意味し,正しくはプロトコルと言うべきだが,しかしカルテという言葉はもう日本語して定着した感じ)のシステムの確立を急ぐことが第一である.
その第一歩は施設コンピューターシステムの改良・新設で,眼目はコンピューター容量,特に中央検査室コンピューターの容量の拡大とともに,中検システムとレセプトシステムをドッキングさせた個人ごとのファイルシステムの作成,印刷時の病名・検査項目・薬剤などのコードの世界的・全国的統一コードヘの変換(施設の中では自己の独自に決めたコードでも良いが,打ち出すときは ICD-10, WHO, メデイスなどのコードに変換する),今回受診時・今月の処置請求のための総括取り出し(一覧表およびレセプトの印刷)システムの構成である.
そしてシステムインテグレーターとしては今のうちに膨大な記録の中から,各特殊性をもった診療科や医師が必要とする記録を,コンピューターで要約する方法を個人別,あるいは臨床科・施設ごとにある程度行っておくべきである.

この電子カルテシステムの学問的欠陥

この簡易システムでは病名はあっても症状の記載がほとんど欠けることになる.このままにした理由は国際的な観点から見た場合,症状の統一国際コードが未だに規定・実現されないことにも現れていて,それは症状の表記方式が感覚的表現と数量的表示が混在し,前者はヒト感覚の主観的表現のため各国の言語によって全く異なる表現だったり,または極端な場合表現そのものが異質あるいはそのような表現が存在しない場合すらあるためである.
したがって症状の一部はこれからの研究課題としてさらに要素に解析され,より客観的・数量的指標に変換されねばならないが,すべてを解決できることはない.なぜなら我々はまだまだ医学的に無知なのであって,特に感覚的なものは数量化しにくいからである.
例えば痛みはアラキドン酸カスケードやプロスタグランディンなどの研究とともに痛覚の原因・伝達物質が,解剖学的には痛覚経路としてある程度まで理解されてきたが,局所はともかく痛みの中枢での処理方式はまだわかっていないし,だからそのその表現を一定の数量化した指標で表すことはできない.これは中枢性鎮痛剤の定量実験方式が確立しない原因の一つでもある.
まして記憶や判断という前頭葉の関与か大きい中枢の機能については,認識とはどうして成立するか,という点からすでにわかっていない.コミュニケーションが少しでもできる痴呆については痴呆の程度をスコアリングすることはできても,その障害経路を同定できないから治療はできない.高齢による血管性痴呆は,行動も知能も一見乳幼児に戻っていくように見えるが,全く同じ経路を逆に辿ってはいないし,小児に対するのと同じ教育でリハビリテーションできることはない.これが高齢化社会で増加していく痴呆者の予防・治療・介護度の決定が極めて困難な理由の一つである.
これらの点から,症状はICD-10, に見られる最低のレベル(診断がつかない場合のみの症状コード)しか記載しない方が混乱を招かないであろう.そしてやむをえない場合のみ「日本語で」特異な症状(あるいはそれがない旨)を記載するに留めた方が,他の医療関係者にかえって親切である.
だが検査を含む症侯の組み合わせ・治療による効果と変化などは医学・医療の進歩・研究のうえで基本的に重要なものであり,これらは今後の重要な学問的検索項目としてカードや固定された情報コードにこだわることなく,各研究者がさらに独自のプログラムを組んで発展研究されるべき分野と思う.

経済的側面

このシステムが機能した場合,最大の恩恵を受けるのはもちろん被保険者で,それは健康という最も重要だが無形のものであるが,その費用は重複検査・投薬の解消・転記ミスによる事務的損失の消滅によって1年で償却できる.つまり医療施設側のシステム変更・リーダーライター設備購入査用は診療情報提供費で賄うことになるが,その支払増加額は2年分割にした場合でも重複投薬がなくなった額以下である.それ以外の分野で最大の恩恵を受ける可能性は生命・損害保険会社か,いろいろな分類・商品名でより正確な保険料を計上できることにある.
金融機関は今までの規制がばずれ,個人・機関投資信託部門,ベンチャー投資部門(優良大型企業は自己株の買戻も許可され,社債によって資金を得られるから今までの銀行は用がなくなる)・定期と小口預金を集めて日常の経済流通を行う今までの銀行部門(アメリカのように影が薄くなる)が合同しつつあるが,これに加えて今後は法律の改正(最低3年はかかるに違いない)を待って生命・損害保険部門も総合金融機構の一部門に統合されざるをえないだろう.
そのためにはソルベンシー・マージンの合理的決定法を含む保険会社を巡る法律の改正が必要で,生保と損保の中間的存在,第三分野に属するガン保険などの解禁が外圧によって許可になった現在,この動きは加速されるだろう.
大容量の健康カードをクレジット・カードにするには,銀行は個人の信用調査が必要だし医療機関は手数料のことで交渉ぜねばならず,簡単ではない.また限定した額を定期的にカードに振り込んでプリペイドカードとする場合でも,これは一種の預金通帳であって施設での現金化の方法について,デビットカードに類する工夫がいる.
この方式が採用されるとそれぞれの発生源入カ(診療科外来・中央検査室での採血・処置室の処置などの終了)とともに支払が終わってしまうので,診療が終わった後に会計窓口で清算を待つ手間が省けるし,そのために要する人件費が減少することが考えられるのだが.
以上述べたように,健康保険組合が従業員(保険組合員)全員のカードの発行をを金融機関に引き受けで貰うまでには,金融機関としてはこれを他の商品購入にも使えるように(デビットカード機能と購入品目・日付けなどの記録)しても,銀行ごとにリスクとインカムを計算した金融新商品の販売に等しい,悩み多い決断を要するだろう.
だからこのカードの発行で生命保険会社が最大の利益を得るにもかかわらず,銀行も保険会社もおそらく手を出さない理由はここにあり,これも多分外国の(アメリカの)銀行の後塵を拝してから慌てることになるであろう.

結   論

医療面でのカード利用,特に健康保険証のカード化に伴う健康記録記入方法について概観した.間題は労働厚生・経済産業省・日本医師会・医療審議会が少なくとも磁気ストライプのコード方式確定とともに,カード記入を診療情報提供科として健康保険の適用(カード記入を伴う場合の初診・再診科の加算)を認めることである.
臨床検査は項目・検査法などが時々刻々に進変更・増加しており,IS0の項自も単位も日本には馴染みがないものが多く,コードとして記入することが現在最も困難なため,検査のアルファベット略称と基準値を併記しておく以外にない.
コード化されていないと,検索せねばならない記録が膨大な量になったとき,特定の検査結果を取り出すのに別のプログラムを組まねばならなくなるので,なるべくなら将来はコード化したい.同じ検査がASTやGOTなどと違う記号で書かれるのも避けたい.そのため,新検査法の略称の決定や単位の決め方,今までの検査法を含めた検査法のコード番号化・項目新設時の新コード番号命名法などは,将来は日本医師会が電子病歴学会などから構成される委員会の決定を公認する方法をとるのが望ましい.
カードメティアとしてはコニカ・ビクターなどが売り出し,研究しているCDカードがレーザー化されたもののような,書き換えができず記憶容量が4メガ以上のクレジットカードサイズのものが望ましい.しかしないものを欲しがるのは痴呆のみ,各保険組合の良識に信頼して今後の発展を待ちたい.なお,これらのカード価格は1枚500円以下,リーダー・ライターは施設コンピューターとの接続インターフェイスを別途計上すれば,5万円以下でできるはずである.