Lab. Clin. Pract., 19(2) : 107-108 (2001)第11回 春季大会記録
パネルディスカッション:検体検査管理加算と検査医の役割検体検査管理加算に対する日衛協の取り組み
日本医学臨床検査研究所
佐 守 友 博
1. は じ め に
検体検査管理加算と検査医の役割という総合テーマである.異なった施設に勤務する検査医が,それぞれの立場での役割を発表した.しんがりに衛生検査所に勤務する検査医としての発言の機会を巽春季大会長に与えていただいた.
一見,衛生検査所は,検体検査管理加算とは関係がないように思われる.すなわち,検体検査管理加算(I)に関する施設基準の中には,「院内検査に用いる検査機器及び試薬が受託業者から提供されていないこと」という文章が書かれており,FMSやブランチなどを導入した医療機関では,この検体検査管理加算(I)は算定請求を行えないシステムになっているからである.
しかし,このことに対して,衛生検査所の団体である(社)日本衛生検査所協会(日衛協と略す)は,すでに取り組みを始めている.日衛協の組織や事業と併せて紹介していく.
2. 日衛協の組織と事業
図1に日衛協の組織図を示した.保険制度関連の専門委員会として,医療制度検討委員会があり,表1にメンバーを示したが,ここに2名の検査専門医*がいる.表2に日衛協の平成13年度事業計画案骨子を示したが,これらの事業をすべて単独で行うのではなく,項目によっては臨床検査関連6団体協議会(日本臨床検査医学会・日本臨床検査医会・(社)日本臨床衛生検査技師会・(社)日本衛生検査所協会・日本臨床検査薬卸協議会・(社)日本臨床検査薬協会・オブザーバー:日本病理医会)に諮りながら行う計画である.この通称六団協は,従来各団体がばらばらに行政や国民に対応してきたことによる弊害を是正する目的で,検査関連団体の一致した意見を具申するために1999年2月に結成されたものである.同年7月,厚生大臣,厚生官僚をはじめ医師会,病院会などに統一要望書(表3)を提出し,ある程度の成果を得ているので,今回も六団協との共同戦線を張れるものはできるだけ協力したいという日衛協の意識である.
図1 (社)日本衛生検査所協会組織図
表1. (社)日本衛生検査所協会 医療制度検討委員会 担当副会長 宮 哲正☆ (保健科学研究所) 委員長 熊沢 健雄 (ビー・エム・エル) 副委員長 佐守 友博☆ (日本医学臨床検査研究所) 委 員 岸本 勝保 (苫小牧臨床検査センター) 委 員 箕輪 正和 (エスアールエル東京メディカル) 委 員 久川 芳三 (保健科学研究所) 委 員 古賀 克己 (ファルコバイオシステムズ北陸) 委 員 平崎健治郎 (ファルコバイオシステムズ) 委 員 吉田 勲 (兵庫県登録衛生床検査センター) 委 員 佐野 紀男 (メヂィック) 委 員 福田 和太 (ビー・エム・エル) 委 員 中村 利弘 (大塚製薬(株)大塚アッセイ研究所) 事務局 西村 正博 (エスアールエル)
表2. (社)日本衛生検査所協会 平成13年度事業計画案骨子 1.医療の規制緩和に対するの確かな対応と実施 2.精度管理・精度保証を担保する新制度の検討と実現 3.資質向上を目指す教育研修制度の再構築 4.21世紀の医療に対する全ての組織の再検討 5.有議者会議、医療フォーラム21の開催(医療業界の今後のあり方について) 6.国民に対する臨床検査の啓蒙活動の実施 7.適正営業の実施と推進 8.学術・技術の向上に関する教育研修の実施 9.衛生検査所が抱える問題の調査検討及び組織体制の整備 10.組織強化 11.諸外国との交渉・調査 12.行政機関、諸団体との連携・協力の推進
表3. 医療制度改革における検体検査の取扱いに関する要望書 平成11年7月12日 臨床検査関連6団体協議会 1.趣旨 −省略− 2.要望事項 (1)包括化に対応する検体検査の質と確保するための措置と講ずること (2)委託検査の検査価格差(価格差益)と解消するために、検体検査実施 料の扱い及び支払い方式について新しいシステムを遵入すること。 (3)検体検査の安定供給と確保し、研究開発の促進ができる環境と整備すること。 (4)検体検査に混合診療を遵入すること。 (5)検査データ共有化のための環境整備を行うこと。 以上、検査6団体としての要望提案の趣旨は全て医療資源の有効利用と患者に とって質の良いサービスの提供につながるものと考えており、法の整備を必要と する点もあるが、今回の医療制度の抜本的改革に際し、ぜひご検討頂けるよう関 連団体総意として要望する処である。
3. 検体検査管理加算をどう扱うかという日衛協理事会の諮問に対する医療制度検討委員会の答申(要望案)
表4に現行制度と要望事項を示した.この要望理由として,次の(1),(2)を挙げた.
(1)現行のブランチやFMSは,院内検査室と同等の施設水準で運用されている.当該医療機関内のブランチやFMSであっても,公平性の観点で保険適用の対象とすべきである.
(2)検査室の合理化を図り,効率的な運営に取り組んだ医療機関に対して,保険適用が除外されるのは疑問である.
また,これと同時に,同じく上記(1)(2)の理由で時間外緊急院内検査加算についても,表5のように要望した.
表4. 検体検査管理加算(I)に対する要望事項
現行 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続の取扱いについて」保険発第30号(平成12年3月17日)
第10 検体検査管理加算(I)
1検体検査管理加算(I)に関する施設基準
(1)検体検査管理加算(II)に関する施設基準のうちA〜Dまでの全てを満たしていること
(2)院内検査に用いる検査械器及び試薬が受託業者から提供されていなりこと要望 (1)は現行のまま
(2)を全文削除すること
表5. 「時間外緊急院内検査加算」に対する要望事項
現行 1入院中の患者以外の患者について、緊急のために保険医療機関が表示する診療時間以外の時間、休日又は深夜において検体検査を行った場合は、第1款の各区分の所定点数に1日につき110点を加算する
「時間外緊急院内検査加算」
(1)「時間外緊急院内検査加算」については、保険医療機関において、当該保険医療機関が表示する診療時間以外の時間、休日又は深夜に入院中の患者以外の患者に対して診療行った際、医師が緊急に検体検査の必要性を認め当該保険医療機関において、当該保険医療機関の従事者が当該保険医療機関に具備されている検査械器を用いて当該検体検査を実施した場合に限り算定できる。
尚、当該加算の算定にあたっては、当該加算の対象たる検査の開始時間をもって算定できる。要望 ・(1)は現行のまま
・時間外緊急院内検査加算の(1)の下線部分を削除すること4. さ い ご に
医療制度検討委員会では,その他に表6のようなことを検討していこうと筆者は考えている.衛生検査所に勤務する検査医だけでなく,正しい検査の利用と発展のために,日本臨床検査医会の会員諸氏の協力をお願いする次第である.
表6. 医療制度検討委員会・平成13年度検討事項(佐守私案)
分類 検討事項 提案理由 業務関係 1.一般の衛生検査所で行うべき検査の整理特に古くて 意義の同じあるいは薄れた検査の統廃合 2.指導監督医の指示による必要な検査項目の追加 RBC↓ ⇒網赤血球 LDH↓⇒アイソザイム WRC↑↓⇒白血球像 3.医療機関での遠心分離 4.医療機関での外注検査項目と外注検査所の表示義務 5.ブランチ、FMSでのconsulationを可能にする。 検査機関と医療機関の間で診断・治療についての consulation契約を結べるようにする 1.省資源、省エネ。 2.患者の診断を早める 3.精度の向上 4.医療機関の姿勢を患者が知る 5.検査の最新情報と患者治療に活かす法律制度関係 1.登録した場所以外での検体検査の許可 2.検体採取所の拡大。 医療機関より採血指示箋の発行 3.義務関係の2は場合によっては法整備は必要 1.出張検査:医療機関で検体を受け取っ てすぐ検査(アンモニア等)移動検査 車、巡回検査、医療機関での輸血検査 2.駅前採血、街頭採血、移動検査車に よる検査、出張検体採取。その他 1.検査差益が存在することをマスコミを通じて公表す る 2.日衛協で優良医療機関を表彰する (1)検体の提出条件が適正 (2)依頼時に検査に必要な情報が適正 (3)取引条件が適正 etc. 1.国民の判断と待つ 2.医療機関の啓蒙のため