Lab. Clin. Pract., 19(2) : 93-94 (2001)
第11回 春季大会記録
パネルディスカッション:検体検査管理加算と検査医の役割
検体検査管理加算と検査医の役割
天理よろづ相談所病院臨床病理部
松 尾 収 二
我々は検体検査管理加算に値するだけの仕事をしているか
表1は検体検査管理加算(II)の要件を示している.この中で臨床検査医がいないとどうしてもできないものはあるだろうか.それは1番の常勤医師の存在という要件だけである.後は内容さえ,レベルさえ問われなければ特に医師が必要というわけではない.臨床検査技師でも十分やれるし,むしろ臨床検査技師が優れている分野もある.
このままでは検体検査管理加算(II)は削除されるのではないかと危惧する.常勤医の要件が削除されて検体検査管理加算(I)と同じとなり,臨床検査技師でよろしいということになる.「検査医の自分がいるから検体検査管理加算がとれるんだ」ではなく,「検査医の自分がいるからレベルの高い検査ができるんだ」を実践しよう.そうでないと一緒に働く臨床検査技師からも侮られることになろう.我々は,検体検査管理加算を医師の能力を活かした要件へと変更すべきときにきている.
表1. 検体検査管理加算(II)の施設基準 |
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1. 臨床検査を専ら担当する常勤の医師がいる.
2. 日常的な検査項目が緊急検査として常時実施できる.
末梢血液検査,生化学検査,輸血検査など
3. 定期的な精度管理を行っている.
4. 外部精度管理に参加している.
5. 臨床検査適正化に関する委員会が設置されている.
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臨床検査医と臨床検査技師はどこに違いがあるのか
臨床検査医が臨床検査技師と違うところは,医療について幅広い知識を有することであろう.専門領域に限れば優れた臨床検査技師はたくさんいるが,全体的な力量となると医師の方が上である.とは言ってもこれは平均的なことであって,臨床検査技師でも幅広い知識を有する方はいる.一方,医師でも研究に没頭し,診療あるいは検査の現場の仕事が少なくなり臨床的力量が身についていない方がいる.臨床的能力がなければ臨床検査技師との差は出てこない.検体検査管理加算(II)は医師の臨床的能力を問うものとすべきである.
検体検査管理加算に対して我々はどう取り組むべきか
検査のソフト面の評価であり死守したい.コンサルテーション,コメントの付記など医師の能力を活用できるものとし,記録,証拠として残せるものは残すことを基本とする.臨床検査医会,臨床検査医学会は自主的に新たな提案を行う.それは現行の基準を具体的に表すものであってもよいし,また現行の基準の幅を広げてハードルを高くしたものでもよいと思う.さらには検体検査管理料にランクを設けてもよいと考える.
検体検査管理加算(II)を具体的な内容とする
現在の検体検査管理加算の要件の書き方ではあいまい過ぎて実績を上げているか否かの評価がしにくい.表1の検体検査管理加算(II)のうち具体的にすべき事項は,まず3および4の精度管理である.精度管理は得てしてやりっぱなしになるので,検査担当者を含む関係者で討論し,それが日常検査にフィードバックをされたかどうかを記録として残しておくことを明記する.5の適正利用に関しては委員会の議事録を残しておくことはもちろんだが,それ以外に,付帯事項として,コンサルテーションやコメント付記についても実施し,その記録を残しておく旨を追加する.
医師の能力を活かした検体検査管理加算(II)とする.
表2は臨床検査医の教育の一般目標である.このうち*で示した要件を検体検査管理加算(II)に加え,表3のような案を提案したい.特徴は,臨床検査医の能力を活かしたものである.ポイントのひとつはコンサルテーションやコメント付記を行い,その記録を残すということである.それと教育である.医師や看護婦,あるいは臨床検査技師に対して,検査の使い方,適正利用について教育,啓蒙することも大事なことである.表3はひとつの案であり,学会が積極的に検討し提案していくことは,検体検査管理加算(II)の意義を高めるとともに,学会の存在そのものを高めることにつながると考える.
表2. 臨床検査認定医教育の一般目標 |
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1. 臨床医のコンサルトとして機能できる.
2. 診断,コメントが必要なものは,それを報告書に記載発行できる.
3. 教育に寄与できる.
4. 予防医学,健康管理の分野で貢献できる.
5. 研究能力を育成し,将来研究指導ができる.
6. 検査室の適切な管理,運営の基本を身につける.
7. 精度管理事業の企画,実行に協力し,精度管理,
監査の報告書が作成できる.立ち入り調査では監査指導できる.
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表3. 検体検査管理加算(II)の施設基準―新たな提案― |
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1. 臨床検査をもっぱら担当する常勤の医師がいる.
2. 日常的な検査項目について迅速検査や緊急検査が常時実施できる.
末梢血液検査,生化学検査,輸血検査など
3. 外部および内部精度管理を日常検査の精度向上に活かす.
ベッドサイド検査を含め施設全体の精度管理ができている.
4. コンサルテーションを受ける機能および報告書にコメントを付記できる機能を有する.
5. 医師お,看護婦(士),臨床検査技師等の教育に関与する.
6. 臨床検査適正化に関する委員会の設置し,施設全体において効果的な検査の活用を図る.
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さ い ご に
検体検査管理加算は検査管理(ラボラトリマネージメント)を身につけることである.検査を診療に活用する視点からの検査あるいは検査室の運用を考えねばならならない.役に立つ臨床検査医をめざすため襟を正すことが求められていると思う.