[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(14)] 2006.5.1

大腸の異常を発見する時に受ける検査

日本臨床検査専門医会  田 部 陽 子


 大腸の異常で一番気になるのは癌です。大腸癌は、年々増加し、近い将来には、大腸癌による死亡が、男性では肺癌、肝臓癌に次いで三番目、女性では一番になるだろうと 予測されています。これは主に食生活の変化(欧米化、つまり肉食の増加)が原因です。特に大腸ポリープになったことがある人や、家族に大腸癌になった人がいるといった 場合は要注意ですし、40歳を過ぎたら、大腸癌は他人事ではありません。ただ、ありがたいのは、大腸癌は早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や外科療法により完全に治す ことができる病気だということです。早期発見、早期治療に努めない手はありません。 

 早期の大腸がんに自覚症状はありませんので、検診を上手に利用することが大切です。 まず、一番簡単なのが、便潜血検査で、検便によって目に見えないほどの血液を見つけます。食事に関係なく検査でき、職場健診を中心に普及していますが、コンビニで キットを買って便を郵送するだけで検査が出来るコンビニ健診もあります。ここで大切なのは、必ず二回(二日間)検査するということで、一回ではうまく見つからない出血も 二回の検査で検出率が飛躍的にあがります。便潜血検査で進行癌の約九割、早期癌の約半分をみつけることができます。しかし、一番沢山ひっかかってくるのは痔です。次に 大腸炎や大腸ポリープです。大腸癌はというと、陽性になった人の3%に過ぎません。ですから、この検査で陽性が出たから即、癌だ、ということではないのです。しかし、 もちろん、「3%しか陽性にならないのだから私は大丈夫」ということでもありません。最近、がんセンターで、手術を受けた患者さんの30%近くが便潜血検査で発見された という報告があります。もし、陽性とでたら、迷わず、精密検査を受けてください。もっともお勧めできるのは、大腸内視鏡検査です。内視鏡検査の良いところは、見逃しが なく、ポリープや早期癌ならばその場で切除して治してしまうことができるという点です。ですから、大腸癌の心配の強い人や、便に血がついている、便が残っている感じ (残便感)がある、便秘と下痢を繰り返すなどの症状のある人は、はじめから精密検査としての内視鏡検査を受けることをお勧めします。内視鏡検査と比べると注腸バリウム 造影検査(これは肛門からバリウムを注入して行うレントゲン検査です)は精度やその場で治療が出来ないという点で劣っています。

 40歳を過ぎたら、年に一度は検査を受けて、大腸癌の早期発見、早期治療に努めましょう。