[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(12)] 2006.3.1

肝臓の異常を発見する時に受ける検査

 

日本臨床検査専門医会  影 岡 武 士


肝臓の働き
 肝臓は体の中で最大の内臓であり、その機能は多岐にわたっています。例えば、血液の蛋白質の一つであるアルブミンを産生して、体がむくむのを防いだり、体内の成分を運搬する役目をします。止血に欠かせない凝固因子も肝臓で作られています。摂取した糖分や脂肪の一部を将来のエネルギー源として肝臓に蓄えています。赤血球が120日の寿命を終えた時にその残骸として残るヘモグロビンの一部をビリルビンとして便中に排泄します。体内で不要となった蛋白質やアミノ酸から出来る身体に有害なアンモニアを毒性のない尿素に変え尿中に排出します。
 このように多様な働きをしている臓器ですから、一旦機能不全になると健常な身体を維持することが困難となります。腎不全の場合には透析治療で腎臓の働きに代えることも出来ますが、肝不全には現在のところそのような有効な方法は確立されておらず、肝移植も限られた条件でしか行えません。肝臓は沈黙の臓器といわれているように、かなり高度に傷害されないと症状として現れません。そのようなこともあって、高齢にさしかかったり、体調不良が長引いたり、輸血の経験があったりするような時には、一度肝機能を含め検査を受けることで早期発見の糸口になると思います。

1、スクリーニング検査
 病院の初診時や健康診断の時に行う検査項目の中には、たいてい肝機能検査の項目が入っています。
 例えば、全身がだるい、食欲低下、悪心・嘔吐、黄疸などが長引く時には肝臓の機能障害も疑われます。また、輸血歴や大量飲酒の習慣がある場合や生貝を食べた後に上記の症状がある時にも肝炎の疑いがもたれますので受診することを勧めます。検査項目としては肝臓の酵素類(AST、ALT、ALP、γ-GT、コリンエステラーゼなど)や黄疸の元であるビリルビンなどが測定されます。一般的にはこれらが大幅に上昇しているようであれば肝炎が疑われます。肝機能検査と同時に脂質検査も同時に行えば生活習慣病に関連した肝障害もチェックできます。

2、スクリーニング検査で異常が認められた時
 肝酵素の大幅な上昇があり肝炎が疑われた場合には、肝炎のタイプを確認するためにウイルス検査や抗体の検査が追加されます。例えば、B型肝炎ではHBs抗原、HBc抗体、また経過観察はHBe抗原・抗体も測定されます。C型肝炎ではHCV抗体やHCV-RNAを測定し病状や治療の判断に用います。
 また、腫瘍性疾患の可能性があれば腫瘍マーカーとしてアルファフェトプロテインやPIVKAIIなどを測定し診断の目安とします。

3、画像検査(腹部超音波検査、CT検査)
 肝臓は沈黙の臓器と述べましたが、慢性に進行した肝障害や肝癌などではよほど肝臓が犯されない限り、自覚症状が現れずスクリーニング検査によって発見できないことも決して少なくありません。特に、輸血歴がありB型肝炎やC型肝炎の既往がある場合や、多量飲酒、肥満や高脂血症の方はスクリーニング検査に加えてエコー検査やCT検査を行うと肝腫瘍や脂肪肝を発見できます。
 これらの検査では直径10mm以下の腫瘍でも検出できることが多く、早期の治療が可能となります。
 最近は肥満や高脂血症の生活習慣病が急増しており、腹部エコー検査で脂肪肝を発見する機会が多くなっています。

 以上肝臓の異常を発見するための検査について簡単に述べましたが、肝臓障害からくる症状が現れた時や、肝炎や輸血の既往がある場合には定期的に受診することで病気を早期に発見できます。また、一定の年齢に達した時には定期健康診断を受診することも大切です。