[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(11)] 2006.2.1

腎臓の異常を発見する時に受ける検査

 

日本臨床検査専門医会  安 原 努


 腎臓は背中の左右に一対ずつある、約200万の糸球体(ネフロン)と呼ばれる機能単位で構成されている臓器です。老廃物の排泄と、有用な成分の回収、血液の酸塩基平衡の保持、水分量や電解質の調整をして、血液成分や血圧のコントロール等を担っています。しかもこれらの仕事は片方の腎臓でもこなせるほど機能的には余裕を持っています。この機能が障害されると老廃物の蓄積、糖や蛋白など必要な成分の排泄、血液の酸性化やアルカリ化が起こります。電解質や水分の調節ができなくなると、血圧異常や浮腫が認められるようになります。自覚症状として、腎結石や尿管結石などでは、激しい背部痛や血尿を認めるため、異変に気付きやすいですが、多くの腎臓の病気は高血圧や糖尿病などの基礎疾患やその他の種々の原因により、ネフロンが少しずつ陣害されていきます。機能に余剰分が多いことが災いし、症状に気付きにくい結果となり「物言わぬ臓器」とも呼ばれています。腎臓の異常を発見するには、尿試験紙検査がスクリーニング検査として有効な検査です。主に尿中の蛋白、糖、潜血等を検出する検査で、本来健康な腎臓からはほとんど検出することはありませんので、陽性になるようであれば注意が必要です。尿検査は患者さんの負担も少ない簡便な検査ですが大量の飲水や脱水、採尿時の状態で結果が不正確になることもあり、腎臓の機能が直接反映する検査として、血液検査の尿素窒素(BUN)、尿酸、クレアチニンと呼ばれる検査項目などを利用しています。いずれも腎機能が低下してくると尿中に排泄される量が低下し血液中に増加してくる検査ですが、BUNはアミノ酸で、尿酸は核酸(プリン体)に関連して増加するため食事などにより影響を受けるのが欠点です。クレアチニンは筋肉から一定量ずつ放出されるため、腎機能を調べるには変動の少ない検査です。実際の腎機能は、血液中の成分が尿中へ、どの程度排泄されているかを体表面積、血液検査、24時間蓄尿検査から算出する糸球体濾過率 (GFR)で求めています。この成分としてクレアチニンを用いて、これをクレアチニンクリアランスと呼んでいます。GFRは一般的に100ml/分前後ですが、加齢により低下していきます。GFRが70ml/分を切るようになるとネフロンに余裕が無くなり、クレアチニンが徐々に増加していきます (図1)。

 外来では一日の蓄尿検査は困難なので2時間の蓄尿や一回の採尿を計算式に当てはめ、求めています。正しく検査するには24時間蓄尿や薬物を使用する必要がある大変な検査ですが、最近では各種要因に影響されず血液検査だけで、腎機能の指標として使用できるシスタチンCと呼ばれている新しい検査項目も注目されています。腎臓は症状の少ない臓器なので、定期的な検査や、体に異変を感じる時は早めの受診が大切です。臨床検査も早期発見ができるようにがんばっています。