[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(9)] 2005.12.01

発熱の原因を調べる検査

 

日本臨床検査専門医会  満 田 年 宏


 
●発熱とは
 “発熱”は、感染症、外傷、そのほかの炎症性疾患にかかった際に、からだの反応として体温が上昇する現象です。体温には個人差があります。体温計(腋窩で測定するもの[腋窩温] や、耳で計るタイプ[耳内温] をはじめ口で計る[口腔温] 、直腸温などをはかる体温計があります)を用いて健康なときの生理的な体温を測って各自の健康な状態の体温を調べて記録しておくと良いでしょう。女性の場合、生理的に月経開始前2週間は体温が高くなります。小児のうち、生後1歳頃までは生理的に体温が高めで約37.5℃程度まで平熱と見なします。1歳以下の乳幼児期の38℃以上の発熱の際には、咳や鼻水がなくとも中耳炎、髄膜炎(ずいまくえん:頭の中で病原菌が炎症を起こした状態)や尿路感染症(膀胱や腎臓で病原菌が炎症を起こした状態)などを引き起こしている場合もありますので、まず小児科医の診察を受けましょう。リウマチの治療薬として用いられるステロイドホルモン剤や消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい:痛み止め)などの薬を服用していると、発熱しているにもかかわらず薬の影響でマスクされて微熱程度しか出ない場合もありますので注意が必要です。

●発熱の原因と検査
 発熱の主な原因は、“はな・のどの痛み・せき”に代表される耳鼻科領域の感染症や呼吸器系の感染症です。“おなかのかぜ”すなわち感染性胃腸炎(かんせんせいいちょうえん)で発熱する場合もあります。最近、高齢者介護施設で集団感染を起こし、問題となったノロウイルスによる感染性胃腸炎でも発熱することがあります。こうした呼吸器や消化器の日常生活で罹る感染症を総称して、“かぜ症候群”と呼んでいます。いわゆる“かぜ”です。5〜6歳以下の呼吸器感染症の多くは細菌性の感染症ですが、6歳以降はウイルス性が圧倒的に多く、坑生物質は効果がありません。成人の5〜15%のかぜはマイコプラズマやクラミジアなどの病原体が原因で、通常お医者さんが最初に処方する抗生物質が効かないタイプの病原体です。
 虫垂炎(ちゅうすいえん)で発熱することもあります。炎症の反応の強さをみるため、採血した血液を用いてC反応性蛋白(CRP)、白血球数、赤血球沈降速度(ESR)などの検査を実施しますが、直接的な病原体診断目的の検査ではありません。感染症の診断をつけるには病原菌を見つけるためにガラス板に痰や膿を付けて染色液で染め出し、顕微鏡で直接観察する方法があります。(グラム染色検査)また、採取した検査材料を寒天の上に塗布し病原菌を増やしたり(細菌培養検査)増えた菌の抗生物質の効きめを調べる検査(抗菌薬感受性試験)などを行ないます。外来で、すぐに発熱の原因の病原体を調べられる検査もあります。その代表が、インフルエンザウイルス感染症の迅速診断キットです。病原体に特徴的な蛋白を調べる検査(抗原検査や抗体検査)や遺伝子検査もあります。
 発熱の原因のよく分からない場合“不明熱”と呼ばれ、診断にはさらに詳しい検査が必要です。