[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(8)] 2005.11.01

高血圧を予防するために受ける検査

日本臨床検査専門医会  北 本 康 則


はじめに
 わが国では高血圧患者は2000万人以上にのぼり30歳以上では3.5人に1人が高血圧というように生活習慣病のなかでも大きな位置を占めます。高血圧だけでは自覚症状に乏しく、放置すれば脳心血管障害を起こし命に関わります。検診の血圧測定ではじめて分かることが少なくありません。
 高血圧には遺伝的なものと生活習慣がかかわる本態性高血圧と、他の病気によって高血圧になる二次性高血圧があります。生活習慣因子としては食塩過剰摂取、過食、運動不足、肥満、ストレス、アルコールの過剰摂取、カリウム摂取不足などがあります。血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積で決まりますが、循環血液量の調節、交感神経機能、内分泌因子(レニン・アルドステロン・アンギオテンシン)が重要で、臓器では心臓、腎臓、血管が中心となります。各種生活習慣因子はインスリン抵抗性・高インスリン血症、交感神経活性亢進、循環血液量増加をきたし高血圧の原因となります。カリウムには利尿降圧作用があります。二次性高血圧の原因としては甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモン増加)、クッシング症候群(コルチゾールの増加)、末端肥大症(成長ホルモンの増加)アルドステロン症(アルドステロンの増加)、褐色細胞腫(カテコールアミンの増加)、腎不全(クレアチニンの上昇)、大動脈炎症候群(CRPの上昇)、大動脈狭窄症などがあります。そのほか糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、動脈硬化症などでも高血圧の合併が多くなります。

 このような背景から、高血圧の予防と早期発見のためには検診を受けることをおすすめします。血圧は繰り返し測ることも必要で、家庭での血圧測定も必要です。高血圧の予防には食塩制限、適正体重の維持、アルコール制限、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える、適度の運動、禁煙などの生活習慣の改善が必要です。検査を受け生活環境因子による異常をチェックすることも必要です。検査の内容はほとんどが検診に含まれる項目ですが、身長体重(BMI)測定、血圧測定(座位と立位、左右差)、胸部X-P、心電図、腹部エコー、眼底検査、尿検査、血算、赤沈、CRP、血液生化学(BUN、Cre、尿酸、Na、K、Cl、Ca、総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、ALP、AST、ALT、LDH、γ-GTP、CPK、血糖、総蛋白、蛋白分画)、必要に応じて心エコー検査も行います。二次性高血圧が疑われる場合は専門機関で精密検査を受ける必要があります。