[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(4)] 2005.07.01

肺の異常を発見する時に受ける検査

日本臨床検査専門医会  諏訪部 章


 肺の病気を発見する健診の検査には、胸部レントゲン検査、呼吸機能検査、痰の検査の三つがあります。

 「胸部レントゲン検査」は、一般の住民検診で必ず行われますが、これによって肺癌や肺結核などが見つかります。これらは病気が進んでくると、咳や痰、血痰などの症状があらわれますが、病気の初期にはまったく症状がないので、早期発見のためには最低1年に1回はこの検査を受ける必要があります。

 しかし、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)を主な症状とする気管支喘息、咳や痰がでる慢性気管支炎、肺が壊れて息切れがする慢性肺気腫(はいきしゅ)などは胸部レントゲンであきらかな異常は見つかりません。これらに共通するのは息をする時の気管支が細くなる点です。発作的に息が苦しくなりゼーゼーする、咳や痰が長引いている、階段を上ると息が切れる、などの症状がある時は、「呼吸機能検査」を行ってもらいましょう。この検査は、単に肺活量を調べるだけではなく、“一秒量”といって一秒間でどのくらい息が吐けるかを調べることで、どのくらい気管や気管支が細くなっているかを調べることができます。

 気管支喘息はハウスダストやダニなどが関与するアレルギー性の病気で、年々増加しており人口の3〜5%がこの病気にかかっているといわれます。また慢性気管支炎と慢性肺気腫は長年のタバコが原因であり、日本では500万人以上がこの病気にかかっているといわれています。この三つの病気は、早期に正しく診断されれば病気の進行は食い止められますので、早期診断のためにも呼吸機能検査はとても大切です。

 タバコをたくさん吸っている方は、肺癌を見つけるために、ぜひ「痰の検査」を受けて下さい。胸部レントゲン検査でも肺癌は見つかりますが、タバコを吸う人に多い扁平(へんぺい)上皮癌という種類の癌はレントゲンでは写りにくいのですが、逆に痰の中に癌細胞があらわれますので、痰を顕微鏡で観察することで早期発見が可能です。

 これらの検査で異常が見つかった場合は、呼吸器専門科を受診しましょう。呼吸器専門医は、採血の検査、アレルギーの検査、胸部CTの検査、気管支鏡の検査、動脈の酸素の検査など、より詳しい検査をすることで病気を正しく診断し適切な治療を行ってくれます。肺の病気はたいへん怖い病気が多いですが、いずれも早期発見・早期治療を心がければ恐れることはありません。