[ 知っておきたい! 病気予防の検査の知識(3)] 2005.06.01

日頃から尿検査で健康チェック

日本臨床検査専門医会  水 島 孝 明


 皆さんは「尿検査」と聞いて何を連想されるでしょうか?「おしっこの検査なんて"汚い" "くさい" "面倒"」といった悪い面を連想される方もいらっしゃると思います。そこで今回は尿検査がいかに有用で優れた検査であるかについて書いてみます。

 病院などで行う尿検査は通常、コップに半分ほど(約100ml)おしっこを取っていただきます。ここで"試験紙"と呼ばれる細長いプラスチックに試薬をしみこませた反応紙が7〜10種類ほどついたものをおしっこに浸します。30〜60秒後に試験紙の色の変化で正常・異常を判定する検査です。この検査で異常があった場合は、おしっこの中に含まれる細胞などを分離して、顕微鏡観察することもあります。

 血液検査と違って、おしっこを採る際は、偶発症(予期せぬ悪い出来事)が起こりませんし、痛くありませんので、何度でも繰り返し検査することが可能な検査です。体内で不要となった物質がおしっことして体の外に排出されますので、腎臓病だけでなく様々な疾患によって異常を示します。尿試験紙で行うことができる検査には尿蛋白、尿糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、潜血、亜硝酸塩、PH、比重などがあります。

 このうちのいくつかの項目について説明します。

尿蛋白
 正常では、おしっこの中にはありません。腎臓が弱ってくると、糸球体(血液からおしっこを濾し出すところ)の機能が悪くなって、体に必要な蛋白質が漏れ出すようになり、これがおしっこの中に出てきます。さらに心臓、甲状腺といった、腎臓以外の病気でも出ることがあります。また膀胱癌や尿管結石といった、おしっこの通り道の病気でも異常になることがあります。

尿糖
 正常ではおしっこの中にはありません。糖尿病のように、血液中の糖分が異常に多くなってくるときに、おしっこの中に出てきます。過食やストレス、妊娠など病気でなくても糖が検出されることがあるので、おしっこに糖が出たからといって、必ずしも糖尿病とは限りません。

ビリルビン
 正常ではおしっこの中に出てきません。ビリルビンは肝臓で作られる胆汁色素(黄色の色素)の主成分で、主に肝臓付近の病気(肝硬変や胆石発作など)や血液の病気(溶血)によりおしっこの中に出てきます。

潜血(血液のこと)
 正常ではおしっこの中に出てきません。炎症(膀胱炎など)、異物(尿管結石など)、腫瘍(膀胱癌など)などによりおしっこの中に出血している場合に出てきます。また腎臓そのものから出血する病気(糸球体性疾患など)もあります。このほかにも、たくさんの病気が見つかることがあります。ですから「おしっこの検査をしましょう」とよく言う医師は、患者さんに優しくて気配りできる良医の証なのです。