[ 専門医の検査のはなし 18 ] 2004.10.01

遺伝子の検査って何? 調べると何がわかるの?

日本臨床検査専門医会  末 広 寛


遺伝子とは?
 遺伝子とは、いわば生命体の設計図にあたります。その設計図はA,G,C,Tという、4つの記号の組み合わせから成り立っています。たった4つの記号ですが、その組み合わせは無数に存在するため、結果として非常に複雑な設計図を作り上げることができるのです。その設計図をもとに、蛋白質が作られます。蛋白質は、生命を維持したり、病気から体を守ったりするのに、必要不可欠な物質です。もし設計図に誤りがあると、蛋白質が作られなかったり、あるいは間違った蛋白質がつくられてしまいます。その結果、細胞に異常が起きて、色々な病気にかかりやすくなってしまいます。

遺伝子の検査の実際
 遺伝子は、細胞の中にあるので、まず、この細胞を集めます。口の中の粘膜を、綿棒でごしごし擦ったり、あるいは注射器を使って血液を取って、その中に含まれている細胞を集めます。この後、細胞をつぶして、その中に含まれる遺伝子を取り出し遺伝子の設計図中のA,G,C,Tの並び方を調べます。そして、健康な人の遺伝子の設計図中のA,G,C,Tの並び方と比較して、なんらかの相違があったときに、その患者さんの遺伝子の設計図に異常があると判定します(図)。

遺伝子の検査で何が分かるの?
 遺伝子の設計図を調べることで、その人が現在かかっている病気の診断をしたり、その人が将来病気になる可能性を予測することができます。遺伝子の設計図の異常と病気になりやすさの度合いは、様々です。ある特定の遺伝子の設計図に異常があると、その遺伝子が関わる病気に必ずなってしまうこともあります。
 
 一方で、ある特定の遺伝子の設計図に異常があったとしても、必ずしも病気にならない場合もあります。
 遺伝子は親から子へと伝えられていきます。そのため、親の遺伝子に設計図の誤りがあると、その誤りはそのまま子供へと引き継がれるため、親と子が同じ病気を発症することがあります。
 遺伝子の検査の究極的な目標は、その遺伝子と病気の発生の機構を解明することで、病気の発生を抑える方法や、治療法を確立することです。現在の段階では、まだ十分有効な病気予防法や治療法は確立していません。しかし、遺伝子の研究はものすごい勢いで進んでいますので、近い将来、色々な予防策や治療法がみつかることが期待されています。