[ 専門医の検査のはなし 16 ] 2004.08.01

エイズの検査はどうするの?

日本臨床検査専門医会  香 川 和 彦


 HIV感染症とはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している状態を言います。感染時には一時的に風邪のような症状が出ることがありますが、その後はほとんど無症状で経過します。しかし病状が進行すると免疫能(抵抗力)が低下し、健康な人では罹りにくい病気(日和見感染症など)を引き起こします。そして診断基準を満たせばエイズ(AIDS一後天性免疫不全症候群)を発症したと診断されます。従って、HIVに感染したこと= エイズになった、ということではありません。一般的に「エイズの検査」と表現する場合は、HIVに感染しているかの検査を意味し、通常は血液検査で行います。

 HIVに感染すると、全経過を通じて体内にはHIV(抗原)が存在し、またHIVに対する抗体が出現します。この抗体は感染初期には検出できるほど十分に出ません。感染してからおよそ10週間前後で、ほとんどの場合に抗体が検出できるようになります。つまり実際には感染していても抗体が陰性となることがあり、この時期をウィンドウ・ピリオド(空白の期間)と呼んでいます。

 HIV感染症の検査は段階的に、1)スクリーニング検査法と、2)確認検査法の二つに分類されます。また何を検出するかによって、1)抗体検査と、2)抗原検査に分類されます。HIV感染症が疑われた時に最初に実施する方法がスクリーニング検査です。この検査はHIVに対する抗体の有無を調べます。その結果、「陽性」または「保留」と判定された場合には、必ず確認検査を実施します。スクリーニング検査の結果だけで感染しているかどうかを診断することはありません。

 スクリーニング検査の目的は、本当の感染者(陽性者)を見逃さないことにあるので、これには感度が高い検査が必要になります。しかし感度が高いということは、本当は感染していない人(陰性者)でも、逆に陽性という結果(偽陽性)が出てしまう危険が多くなるわけです。そこで必ず確認検査という別の方法で最終的な判定をします。先ほど述べたウィンドウ・ピリオドの問題があるので、確認検査としては、抗体検査(スクリーニング検査とは別の方法で行う抗体検査)と同時に、血液中に存在するHIV遺伝子を検出する抗原検査を行うことが推奨されています(日本エイズ学会推奨法)。これにより、感染の見逃しを少しでも減らすことが期待されています。

 なお地域の保健所などでは、無料で匿名のスクリーニング検査が受けられます。検査できる曜日や時間が各保健所などで異なりますので、利用したい場合には事前に確認するとよいでしょう。