[ 専門医の検査のはなし 13 ] 2004.05.01

血液の中の電解質を調べると何が分かるの?

日本臨床検査専門医会  中 川 俊 正


 電解質とは電気を通すという意味に由来し、水に溶ける物質の中で塩化ナトリウムのように電荷をもったイオンとして解離するものを指します。生体では、血液中の電解質は常に一定の値を保っています。電解質は、酸塩基平衡、水分の保持、細胞膜の電位差など生理的な動きに重要な役割を果たします。電解質濃度の恒常性は主に腎臓により調節されています。過度の発汗、嘔吐による胃液の漏出や下痢による脱水などによりバランスがとれなくなりますが、これは同時に水代謝にも関連します。

 次にそれぞれの電解質に分けて、濃度の増減の意義を述べます。

●血清ナトリウムとクロール
  NaおよびClは水代謝の指標として用いられます。大部分が細胞外液に存在しており、検査値は水分バランスの指標となります。 Naが高値を示すのは脱水(糖尿病、尿崩症)、低蛋白血症、摂取過剰、内分泌疾患などが考えられ、低値を示すのは、消化管液の漏出(嘔吐、下痢)、尿細管性アシドーシス、アジソン病、ネフローゼなどが考えられます。Clも、 Na同様、脱水、低蛋白血症、尿細管性アシドーシスなどで高値を示し、低値を示すのは、同様の原因(嘔吐、利尿剤投与、急性腎不全)などです。

●血清カリウム
 カリウムはNaと対照的にほとんどが細胞の中に存在します。その値は消化器系や腎臓の影響を受けて変動します。嘔吐、下痢などでカリウムが低くなり、腎臓機能が低下して腎不全になりますと、高値を示すようになります。その他、保存血の大量輸血や高アルドステロン剤の投与などでも高値が見らます。

●血清カルシウム
 生体のカルシウムの99%が骨の中に存在します。血清カルシウム代謝には多くのホルモンがかかわっています。異常高値は、原発性副甲状腺機能亢進症、多発性骨髄腫、悪性腫瘍骨転移、甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒などで見られ、異常低値は、ビタミンD欠乏、副甲状腺機能低下、慢性腎不全などで見られます。

●血清無機リン
 リンは生体内での糖代謝、エネルギー代謝に必須です。異常高値は、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、ビタミンD過剰摂取、末端肥大、腎不全などで見られ、異常低値は、ビタミンD欠乏、原発性副甲状腺機能亢進症、くる病などで見られます。