[ 専門医の検査のはなし 12 ] 2004.04.01

血液中の脂肪分を調べると何が分かるの?

日本臨床検査専門医会  岡 部 紘 明


血液の脂肪の役割
 血液には赤血球、白血球、血小板という細胞と血漿、或いは血清という液体成分から構成されています。血漿は、蛋白、脂肪、糖質や無機物などから構成され、呼吸や栄養の輸送と老廃物を排泄する作用があります。又、酸性やアルカリ性の調整と水分や体温の調節も行っています。脂肪分は水に溶け難く、細胞を構成したり、血漿蛋白と結合して、水に溶けてリポ蛋白というものになって、血液中の脂肪であるコレステロール(TC)や中性脂肪(トリグリセリド、TG) を運搬しています。
 脂肪には、他にリン脂質や脂肪酸がありますが、病気の検査で重要なのはTCとTGです。これらは、アポ蛋白と結合してHDLやLDLというリポ蛋白(LP)となって移動します。これらの脂肪は細胞を作ったり、エネルギー源として重要な働きをしていますが、多すぎると悪さをします。

脂肪分を調べると分かること
 脂肪の濃度の高い血液を高脂血症といい、動脈硬化の原因となります。脂肪の濃度が低い事もありますが、他の方法で診断が出来ます。脂肪が多いと血液の流れが悪く、血管の傷ついた部分に溜まって、粥状動脈硬化となり、血栓を作り、血管を塞いで、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
 高脂血症は表に示した様に、国際的にはWHOの六段階の分類が良く使われます。脂肪が増える時には、先天性の場合と、何か他の病気があったり、治療している場合に起きる後天性の異常があります。異常の判定は、血清の外観に異常がないか、他に疾患がないか、家族に似たような状態の人がいないかなどが診断に重要です。
 検査は12〜16時間空腹後、採血した血液を分離して、上清に白濁がないか、濁が有れば、その状態を4度で12時間放置して見て、濁が一様か、クリーム層が浮上していたり、又クリーム層の下層が透明か、濁っているかを見ます。TC、TGを測定して、異常が認められれば、リポ蛋白電気泳動を行います。他に心電図や血糖検査のような生理学的検査や化学的検査や等も参考にし、確診のためには、アポ蛋白や脂質関連酵素などを調べます。