[ 専門医の検査のはなし 9 ] 2004.01.01

血液中の蛋白を調べると何が分かるの?

日本臨床検査専門医会  北 島 勲


 人の体を流れる血液は、45%の有形成分と55%の液体成分からなりたっています。病院などで採血後、その液体成分(血清または血漿といいます)を利用して、肝機能や腎機能などの検査を行います。総蛋白(TP:Total protein)は、血液中に含まれるいろいろな蛋白質の総称で、全身的な栄養状態を知ることができます。食物から摂取した蛋白質は、小腸内でアミノ酸に分解され、門脈(消化管から吸収した栄養を運ぷ血管)を経て、肝臓に運ばれた後、体に必要な蛋白に再び合成されます。各組織の細胞へ送り出され、細胞の新陳代謝に関与します。健康な成人の値は、ぼぼ6.5〜8.0g/dlです。総蛋白の50〜70 %をアルブミンが占め、残りがグロブリン(電気泳動を行うと、α1、α2、β、γという分画に分かれます)です。

 病気や体に異常がある場合、蛋白の量や分画バランスが崩れてきます。総蛋白が増加している場合、多くはグロブリンの増加が考えられます。γグロブリンは体の免疫を担当しでいる物質で、感染症や骨髄腫、自己免疫疾患などで増加します。脂肪肝ではアルブミンが軽度に上昇することがあります。また、脱水によって血液が濃縮して、見かけ上高値になることもあるので注意が必要です。逆に、総蛋白とアルブミンがともに減少している場合、栄養状態が悪いことが推定されます。摂取量不足や腸管からの吸収障害、ネフローゼによる腎臓からの流出、下痢、出血、火傷、外傷など体外への喪失も考えられます。また、肝硬変、劇症肝炎などによる肝臓での蛋白合成低下も考えられます。あるいは、急性炎症性疾患、悪性腫瘍、外傷、火傷、甲状腺機能亢進症による崩壊充進によることもあります。

 以上は、蛋白の量的変化からわかる異常でしたが、先ほど述べました電気泳動による蛋白画の検査からは、アルブミンやグロブリンのどの種類が増加あるいは減少しているか蛋白質の変化を把握することができます。分画の変化と疾患との関係は図を参照して下さい。血液中の蛋白を調べることにより、蛋白質の摂取、吸収、合成に関わる臓器の状態と蛋白質量に影響する血漿水分量や漏出、炎症にともなうグロブリンの増加などを知ることができます。ただし、検査値の変化のみで病名を特定することはできないので、次の詳しい検査にすすむ必要があります。