今回は、みなさんにとってなじみの深いテーマを扱います。 それは「基準値」というものです。「基準値」は、検査結果を判断する目安となる大事な値なのですが、なかなか難しいものでもあります。ほとんどの方にとってなじみにくいでしょう。 さて、この記事をお読みの読者の方々も職場、地域、あるいは学校の健康診断で血液検査をされたことがあると思います。貧血検査、肝機能、脂質などが代表的な項目でしょう。これらは採血の後、検査室で測定され、しばらくすると検査結果として、自分のもとに返ってきます。肝機能の値が高かった、昨年よりもコレステロールの値が高かった、しかも医療機関に受診が必要と書かれている!、などのように血液検査の結果は我々にとっても気になるものです。医療機関に受診されたかたは、つい今しがた採血をされたかも知れません。きっとこの次に外来を受診するときには検査結果を主治医に知らされるでしょう。速いところなら、すでに知らされているかも知れません。みなさんはさぞや不安な気持ちを持たれていることと思います。 ところで、検査値で「高い」「低い」などのように判断される根拠はどこにあるのでしょうか。その基準はどのようにして決定されているのでしょうか。 難しい話になりますが、我々は、一般的に、健常者の多数の検査値を統計的に処理して、その95%の人が含まれる範囲を求め、これを「基準範囲」、この上下両端の値を「基準値」と呼んでいます。これを外れた値を「高い」、あるいは「低い」と表現しています。文字通り基準となる値を意味しています。「基準値」を求める対象の健常者として学生や職員が用いられることが多いです。すなわち、健常者であっても5%の人はこの範囲をはみだすことになります。ですから、もうおわかりのように検査値が「高い」あるいは「低い」という結果をもらっても、決して即異常 = 病気ではないのです。 というわけで、すこしわかりにくい話になりましたが、検査で所見が指摘されたら、即異常 = 病気があると考えるのは早計に過ぎますが、すくなくとも健常者の95%の仲間には入っていない、注意が必要だと考えましょう。もっとも、これは値が「基準値」よりすこしはずれた場合の話で、明らかに値がはずれた場合は異常所見の可能性が高いですので、精密検査が必要となります。 |