[ 検査結果でわかること 22 ]

C型肝炎ウィルス検査で異常があるといわれたら

日本臨床検査専門医会 佐藤 尚武



2003.01.01

C型肝炎ウイルスの検査
 C型肝炎ウイルス(HCV)の検査には、HCVに対する抗体を測定する検査と、HCVのウイルス自体を測定する検査があります。このうちHCVに感染しているか否かを知るため、スクリーニング検査として利用されているのはHCV抗体検査です。今回のテーマは「HCV検査で異常があるといわれたら」ですが、ここでは抗HCV抗体(以下HCV抗体)が陽性だった場合として話を進めます。

HCV抗体陽性の意味
 HCV抗体が陽性であるという結果はどのような意昧を持つのでしょうか。これには三つの場合が考えられます。
1)現在のHCV感染、2)HCV既感染、3)偽陽性、です。1)は現在HCVが体内に存在していることを示します。2)は以前HCVに感染したが、現在は体内に存在していない状態です。これにはインターフェロン治療によってHCVが排除された場合と、自然治癒があります。3)は検査結果の誤りで、現在も以前にもHCVには感染していません。

HCV抗体が陽性の場合はどうすればよいでしよう
 HCV抗体が陽性だった場合は現在HCVに感染しているか否か、すなわち前記1)と、2)および3)を区別する必要があります。2)や3)の場合は肝炎に対する治療は必要ありませんが、1)では多くの場合治療が必要です。
 この区別は抗体価とウイルス抗原の検出で行います。HCV抗体の力価が高い場合は、非常に高い確率でHCVに感染しているといえます。HCV抗体力価が中等度の場合はウイルス抗原の検出を行います。この検査法にはPCR法と分岐DNAプローブ法があり、中にはウイルス量が測定できる方法もあります。HCV抗原(RNA)が検出されればHCVに感染している可能性が極めて高く、検出されない場合は、現在HCVに感染している可能性は非常に低いといえます。抗体価が低力価の場合は既感染であることが多く、現在HCVに感染している確率は極めて低いので、通常HCV抗原の検出は省略します。

 HCVに感染していると、図のような自然経過をとります。治療の必要なことが多く、治療が必要ない場合でもある程度の経過観察が必要です。肝硬変に進展した例では、肝細胞癌の合併率も高くなります。治療には、HCVの排除を目指すインターフェロン(IFN)やIFNと抗ウイルス剤の併用療法と、対症的肝庇護療法があります。いずれにしてもHCV抗体陽性の場合は、専門の医療機関を受診することが必要です。