[ 検査結果でわかること 21 ]

B型肝炎ウィルスの検査で異常があると言われたら

日本臨床検査医会 岩谷 良則



2002.12.01

 主なウィルス肝炎にはA型、B型、C型肝炎の三種類ありますが、B型肝炎ウィルスの検査で異常がある場合には、(1) B型肝炎ウィルスに持続的に感染しているが肝炎を発症していない無症候性キャリアという状態と、(2) 無症候性キャリアから発症して慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと進展する病態、そして(3) 一過性に感染して発症し自然に治癒する急性肝炎と、(4) 感染後の死亡率が高い劇症肝炎までさまざまな病態が存在します。まず自分がどの病態であるかを医師に確認して、正しい知識を時つことが大切です。

 一般に検査結果では、B型肝炎ウィルスの無症候性キャリアは、肝機能検査(ALT(GPT)、AST(GOT)やビリルビンなど)が正常でHBs抗原陽性が6ヶ月以上持続する場合を指しますが、このときHBV-DNAやHBc抗体の検査も陽性です。通常、新生児や乳幼児期に感染するとキャリアになります。B型慢性肝炎は、HBs抗原が陽性で肝機能検査の異常が6ヶ月以上持続している場合を指します。HBc抗体も陽性で高力価になります。一般にB型慢性肝炎は無症候性キャリアから発症しますが、陽性であったHBe抗原が陰性化してHBe抗体が陽性になれば肝炎が安定することが多く、肝炎が長期化したり激しい場合には肝硬変・肝癌と進展することもあります。B型急性肝炎は、急激な肝機能検査の異常を示す急性肝炎の発症早期にHBs抗原が陽性でIgM型HBc抗体が上昇することで診断されます。このときHBV-DNAの検査も陽性です。通常、B型急性肝炎は、B型肝炎ウィルスを持つ人、すなわちHBe抗原またはHBs抗原の陽性者との性交や針刺事故などにより感染して発症しますが、発症後1〜2ヶ月で回復し、ふつう成人の感染では慢性化することはありません。このようにB型急性肝炎の予後は一般にはよいのですが、まれにB型劇症肝炎をきたして死の転帰をとる場合があります。劇症化のリスクが高いときには、肝の予備能を示す肝機能検査(プロトロンビン時間、コリンエステラーゼ、アルブミンなど)の異常が著明になり、腹部エコーで肝の萎縮などの所見が認められます。

 現在、B型肝炎ウィルスに対しては、感染後48時間以内に実施可能なB型肝炎発症予防のための高力価HBs抗体含有免疫グロブリン注射や、感染前のB型肝炎感染予防のためのワクチン接種が行われています。また、B型慢性肝炎に対しても、抗ウィルス薬やインターフェロン治療がありますので、是非医師に相談して最も適切な処置や治療を受けられるようにして下さい。それから、現在B型肝炎ウィルスに感染しているHBs抗原またはHBe抗原が陽性の人は、このウィルスが針刺事故や性行為などで血液や体液を介して感染することを認識して、常に適切な感染防止対策を講じることが大切です。