[ 検査結果でわかること 18 ]

中性脂肪が高い時

日本臨床検査医会 猪川 嗣朗



2002.09.01


 疾患上、問題となる脂質は主にコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸 (FFA)です。今回は、このうち高中性脂肪血症を中心に解説します。

 1)中性脂肪(トリグリセリド)のみが高い場合
高中性脂肪もコレステロールほどではないが動脈硬化の危険因子のひとつとみなされており、特に血清コレステロールも同時に高値を示す場合では、さらに高い危険因子となります。また、中性脂肪の異常高値(1,000mg/dl以上)は急性膵炎を引き起す恐れがあります。中性脂肪の測定はリポ蛋白代謝に関する酵素異常症、リポ蛋白そのものの異常をきたす疾患において、また糖尿病や肥満などの診断や治療の効果をみるのに有用です。酵素法で測定され、基準値は30〜150 mg/dl (60歳代前半まで女性<男性)

 2)カイロミクロン血症を伴う場合
カイロミクロンは外因性リポ蛋白で小腸で合成され、リポ蛋白中最大で、中性脂肪を多く含みます。食後2〜3時間以降血中に出現し、血清乳びを示しますが通常5〜6時間で清明となります。LPL( lipoprotein lipaseリポ蛋白リパーゼ)活性低下などの原因により、カイロミクロンがカイロミクロン・レムナントにならない場合、肝臓に取り込まれず「乳び」となります。通常、測定では検出されませんがI型又はV型高脂血症(WHO分類)では血中に認められます。
 カイロミクロンのみ高い場合をI型、カイロミクロンとVLDL(preβ)の両方が高い場合がV型です。これらが家族性のものか、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症などの二次的な原因によるものかの鑑別診断が必要。家族性のものに二次的な原因が加わっている場合も多く、このときは家族調査を進めます。

 3)LPL異常を伴う場合
LPLは高中性脂肪血症の成因や処理機能の障害を評価するのに有用です。LPL高値を示す疾患として肥満があります。最近では直接血清中のLPLを測定する系(ELA法)が開発され鑑別診断に有効。基準値は135〜1320ng/ml

[異常中性脂肪値を示す疾患]
 高値を示すものと低値を示すものがありますがここでは高中性脂肪血症を来たす代表的疾患の機序を図に示します。疾患としてネフローゼ症候群、I型高脂血症 (高カイロミクロン血症)、V型高脂血症、糖尿病、肝疾患、甲状腺機能亢進症、その他、飢餓、妊娠。

[基準値と生理的変動]
 中性脂肪、LPL、カイロミクロンは、食事(特にアルコール)、運動、精神的ストレス、喫煙、寒冷などの諸因子の影響を強く受けますので、安静状態で空腹時に採血します。サンプル保存は4℃で24時間が限度です。高脂血症が指摘された場合は、その原因と治療を知るため専門医を受診することが望まれます。