[ 検査結果でわかること 13 ]

CRP が 高 い 時

日本臨床検査医会 山田 俊幸



2002.04.01


 CRP(C反応性蛋白)は炎症マーカーの一つです。炎症とは、症状でいえば何かに感染して発熱したり、リウマチで関節が腫れたり、心臓疾患で胸痛を感じたりすることです。専門的には、原因はともかく身体を傷害するようなできごとに反応して、それを修復しようとする過程のことです。したがって、本来合目的なものなのですが、長びきますと(慢性炎症)、正常な部分までも傷つけ続けることになります。
 炎症という現象のメカニズムについてはだいぶわかってきて、活躍の中心は組織に存在するマクロファージという細胞で、ここから産生される物質が発熱や、痛みなどを引き起こします。さらに血液蛋白質の産生センターである肝臓にも作用し、ある蛋白質は産生が低下し、別の蛋白質は産生が増加します。前者にはアルブミンが含まれ、重症な炎症ではアルブミンが低下するため総蛋白濃度も低下します。後者の代表がCRPで、この蛋白質はふだんゼロに近い濃度で、炎症が起こると上昇してくるため臨床検査に良く使われています。
 CRPが高いといっても、それだけでは原因の特定はできないのですが、一旦病気の診断がつけば、その経過を追うのに有用です。例えば肺炎を想定すると、肺炎には抗生物質治療を施しますが、症状やレントゲン所見とあわせて、CRPの動きを見て治療を継続するか、中止するか判断します。同じような目的に使われるものに白血球数や赤血球沈降速度がありますが、これらは炎症以外の因子にも影響されるため、CRPが最も信頼できる炎症のマーカーとされています。欠点は炎症が起こってから血中濃度の増加を認めるのに半日かかることで、早さでは白血球数の増加が即時に起こります。
 さて、健康診断などでCRPを測定したとして、これが高い時になにを考えるかですが、濃度が2mg/dlを超えるようであれば、なんらかの症状があるはずで、医師の診察を要するでしょう。感染を考える時、細菌性のものはCRPが高く反応し、感冒などのウィルス性のものの反応は低い傾向にあります。0.5〜1.0mg/dlであっても、繰り返しそうであるなら、リウマチ性疾患や腫瘍性疾患も否定できず、医師に相談すべきでしょう。通常はゼロに近いと述べましたが、感度よく測定すると、健康な人は0.01〜0.2mg/dlの範囲に分布します。この範囲にあっても、肥満、糖尿病、喫煙など生活習慣病のリスクを持っている人、あるいは症状のでない前の動脈硬化症の状態にある人はより高いCRP値を示すことが最近の研究でわかってきており、コレステロールなどとともに観察しようとする動きもあります。