[ 検査結果でわかること 11 ]

尿素窒素(BUN),クレアチニンが高い時

日本臨床検査医会 久保 信彦



2002.02.01

1. クレアチニンやBUNは腎臓の機能が悪いと上昇します。

 皆さんは腎臓が悪いというと、顔や足がむくむとか、おしっこが減るとか、あるいは人工透析治療のことを思い浮かべるかも知れません。腎臓の機能は血液中のクレアチニンやBUNを調べて推測できます。どうしてでしょうか?
 腎臓は生体中のさまざまな老廃物を尿中に排泄して血液をきれいにする機能があります。1分間におよそ200mlの動脈血が腎臓を流れてゆきますが、血液中のクレアチニンやBUNは、血液が正常な腎臓を通過するごとに取り除かれて尿に排泄されます。特にクレアチンは、血液が一度腎臓を通過するだけでほぼ完全に尿中に排泄されます。しかし、腎臓の機能が低下するとさまざまな老廃物は尿中に廃棄されずに血液中に滞ります。このように、クレアチニンやBUNは他の老廃物と同様、腎臓の機能の低下にともなって血液中に滞って上昇するので、血液中でこれらを調べることで腎臓の機能を推測することができるのです。それでは、血液中のクレアチニンやBUNが正常なら腎機能は正常と言えるでしょうか?残念ながらクレアチニンやBUNは腎機能の低下が軽い場合は上昇しません。ごく早期の腎機能異常には向かないので、その場合は精密検査(たとえばGFR:糸球体ろ過値、など)をする必要があります


2. 上昇するのは腎臓の機能が悪いときだけでしょうか?

 血中のクレアチニンもBUNも、ともに腎機能の指標として測定されますが、これら二つの由来は少し異なっています。クレアチニンはクレアチンという物質が代謝されて生まれます。クレアチンは筋肉の収縮のエネルギー源であるクレアチンリン酸の構成成分で、筋肉に存在します。血液中のクレアチニンはクレアチンの量、つまり筋肉の量に比例しているので、男性(筋肉質)の基準値は女性よりも若干高くなります。一方、BUNの検査では、血清の尿素の窒素濃度(尿素窒素)を測定します。尿素窒素は、食物中や生体の蛋白が分解されてできる有害なアンモニアを無毒化する過程でできます。ですから、たとえばステーキなどをたらふく食べた後、胃潰瘍などで大量出血の場合など、胃の中の多量の蛋白質がもとになって尿素窒素が生まれて、血液中のBUNは少し上昇します(しかし、この場合はクレアチニンは上昇しません)。他にも、高い熱が続いた後、激しいマラソンをした後など脱水、つまり水分が血液中から失われてしまうような場合、BUNはクレアチニンとともに上昇します。このように、BUNやクレアチニンが血液中で上昇するのは必ずしも腎臓が悪い場合だけではありません。また、まれにBUNやクレアチニンが正しく測定できないことがありますから、理由が明らかではなく検査値に異常がみられる場合には主治医の先生や検査技師さん、検査が専門の先生に相談することをお勧めします。