[ 検査結果でわかること 10 ]

γ‐GTPが高い時

日本臨床検査医会 三宅 紀子



2002.01.01

 γ‐グルタミルトランスフェラーゼの略でγ‐GTと表記されることもあります。肝臓、腎臓、膵臓などに存在する酵素で解毒作用や細胞老化や癌化の抑制作用のあるグルタチオンの分解や再合成、アミノ酸を転送する役割を持っています。

 γ‐GTは腎臓、甲状腺、脾臓、肺、腸、前立腺など様々な臓器に分布します。しかし、血液中に存在するγ‐GTPは主に肝臓由来であるため、肝障害の指標として利用されています。特に、胆汁うっ滞で血液中のγ‐GTPが上昇するため、胆道系酵素の一つにあげられます。胆汁はビリルビンと胆汁酸を含み、肝臓内の細胆管、毛細胆管と呼ばれる細い胆管を通り肝臓から胆のうに集まります。胆汁は胆のうで濃縮され、食事で胆のうから総胆管を経て十二指腸へ排泄されます。この胆汁の流れに障害を来した状態を胆汁うっ滞といいます。

 γ‐GTPが上昇する代表的な疾患としては胆石症、アルコール性肝障害、脂肪肝、薬剤性肝障害、肝炎・肝硬変や肝腫瘍があります。

 また、このような疾患では他の胆道系酵素のアルカリホスファターゼ(ALP)、ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)やビリルビン、さらに肝細胞障害の指標となる酵素や肝臓で産生される蛋白成分を測定して病態把握に利用されます。さらに、ALPやLAPなどの胆道系酵素と異なりアルコール常習だけで上昇する特徴があります。日本酒換算で一日二合以上の飲酒者は非飲酒者に比べ高値となります。このため、アルコール常習者でγ‐GTPが高くなったらアルコールを控える必要があります。禁酒二週間後には禁酒前の半分になります。

 肝臓以外の臓器障害で著明な高値を示す場合はほとんどありませんが、自己免疫性疾患や腎疾患の一部で高値となる場合があります。

 また、男性は女性よりやや高値で、これは男性生殖器由来のγ‐GTが影響していると考えられています。