2001.12.1

 


GOT, GPT(今は、AST, ALTとも呼ばれています)は、検診などを通じ肝機能検査のひとつとして一般の方にも良く知られておりますが、本来の機能は、アミノ酸の代謝に重要な役割を果たす酵素といわれているものです。ところで、五臓六腑という言葉がありますように、生体内には肝臓を始めとして複数の異なる臓器が存在し、夫々の役目を果たしています。そのおかげで我々は健康な生活を営むことができるわけです。臓器が特有の機能を持つのは、臓器を構成する細胞レベルの機能が異なるからであり、構成成分も自ら違うものとなります。翻ってみると、構成成分から由来の臓器が推定できることになります。その手がかりとなる検査が、専門用語で逸脱酵素の測定といわれるものです。専門的には、酵素の由来臓器 (元々どの臓器に多く含まれているか)と血中の半減期(寿命)を知ることにより障害臓器と程度・時期などを知ることが可能です。GOTは肝臓、筋肉、赤血球等に、GPTは主に肝臓に含まれています。血中の寿命は前者が約20時間で、後者が約50時間といわれております。

 これらの値が高い場合は、前述の臓器が損傷を受けた可能性を示唆します。両者が同時に増加している場合、特に、GOT<GPTの場合は、現時点での肝臓の傷害を強く示唆しております。一方、GPTの増加があり、GOT≒GPT、さらにはGOT>GPTとなってくるのは、慢性化の兆候であり、アルコール性の肝障害や肝硬変などでこのような関係になります。一般に上昇の程度と損傷の程度は、比例しておりますが、慢性化が進展すると、この関係は必ずしも成立せず、肝硬変、肝癌の症例ではGOT>GPTの関係で値が基準範囲内になってきますので、数値が上昇していないと安易な判断は禁物です。また、他の肝臓に関するデータに異常がなくGOTが高い場合は、筋疾患や溶血(赤血球の破壊)の可能性を考慮する必要があります。臓器に明らかな損傷がない場合でも、代謝を司る甲状腺の機能が低下すると、結果的にGOT,GPTが増加してきます。安易に肝障害に直結させず、甲状腺機能低下症などによる場合があることも覚えておきましょう。また、腎機能が悪化している場合は、見かけ上低下するので注意が必要です。この検査は、あくまでも損傷の程度を推定するものであり、臓器本来の生理的機能、とりわけ、大変複雑多岐にわたる機能を有する肝臓においては、別個に評価する必要のあることを忘れてはいけません。