2001.9.1

 

 血液中を流れている細胞には、赤血球と白血球ともうひとつ血小板があります。動物の細胞は普通、細胞膜で囲まれた中に細胞質と核を持っています。赤血球は酸素を全身の組織に運ぶ役割を担っており、人間のような高等動物では、細い血管の中を流れやすいように成熟した赤血球には核がありません。また、血小板は細胞膜で囲まれた細胞質の断片で、核はなく、血管が破れて出血がおきた時に血管をふさいで出血を止める(止血の)働きを持っているものです。

 さて白血球は、核も細胞質もある完全な細胞で、血液1μl(1Lの百万分の一)中に約6000個(4000〜8000/μl)ぐらいあります。健常人の血液中の白血球はイラストのように、大きく分けて五種類の成熟細胞に分類されます。顆粒球や単球は、組織に侵入してきた微生物や異物を、その喰作用によりとりこみ、分解・消化して排除する役割、リンパ球は単球と協力して「ここに侵入者がいるよ」という標識(侵入物に対する抗体)を作る役割をもちます。つまり白血球は外敵と戦う免疫・生体防御という機能を持っています。 専門的に「白血球の増加・減少」というと、白血球の総数の増減だけでなく、五種類の細胞のそれぞれの増減についても問題となり、また総数の増減に関係なく、普段は出現しないような未成熟な白血球が増加しているときは、問題となります。

 まず、白血球が増加するのは細菌によって起こされた炎症の時で、急性虫垂炎(俗にいう盲腸)のような激しい炎症では1μlあたり10000〜20000と上昇することがあります。この時は好中球が増加しておりリンパ球は相対的に減少します。次に総数が増加していて発見されることが多いのが白血病です。これは血液(白血球)の腫瘍と呼ばれていますが、最近は種々の治療法が開発され「不治の病」のイメージが払拭されつつあります。総数は正常でも、ウィルス感染症ではリンパ球の比率(%)が増加し好中球は相対的に減少し、アレルギ-や寄生虫感染症では好酸球の比率(%)が増加します。

 最後に、白血球の減少ですが、特殊な疾患(AIDSなどの免疫不全)や特殊な治療により低下を起こす時以外、そんなに心配するような減少はありません。基準範囲は4000〜8000/μlと申し上げましたが、正常健常人の95%がこの中に入るという意味で、2.5%の人は正常でも4000〜2500/μl、残りの2.5%の人は8000〜12000/μlぐらいに分布しています。要は白血球の総数と分類での好中球数やリンパ球が外敵に対応できるだけの量があって、異常な細胞が出ていなければよいのです。