2001.8.1

 「赤血球が少ないようです」「ヘモグロビンの値が低いようです」と先生からいわれたら、何を意味しているのでしょうか。赤血球は血液の流れにのって全身を循環しています。その赤血球の中には、鉄蛋白のヘモグロビンが九割以上を占めて存在します。ヘモグロビンは赤血球が肺から受け取つた酸素と結合し、全身に運搬する役割を担っています。この酸素を運ぶ力は体全体の血液中のヘモグロビン量でほぼ決まつてきます。
 人によって差はありますが、血液中のヘモグロビン濃度が8.0g/dlぐらいに下がつてくると、体を動かしたときに動悸を感じやすくなります。体の組織が酸素を欲しがり、心臓が多くの赤血球を送ろうとするためです。これは貧血の典型的な症状の一つです。貧血は赤血球自体の異常で起こるとは限りません。ヘモグロビンの構成成分である鉄分や赤血球を造る段階で必要なビタミンB12もしくは葉酸の不足があっても起こります。また赤血球を取り巻く環境の変化が原因の溶血や、赤血球が体外に出る出血によっても引き起こされます。
 出血などの症状があればその部位を直接確認します。それと同時にどのようなタイプの貧血かは血液検査で調べられます。体内にある赤血球の平均的な容積(MCV)、赤血球一個あたりのヘモグロビン濃度(MCH)を組み合わせることで、貧血の原因が大きく分けられます。
そのうえでさらに、鉄、ビタミンB12、葉酸などの不足がないか、体内で溶血が起きていないかなどについて調べます。場合によっては、赤血球を造っている骨髄の状態を調べることも大切です。他の病気から二次的に起きていることを考えて、甲状腺機能や肝機能検査を行なうこともあります。
 頻度は多くありませんが、男性では赤血球数が600万/μl以上、ヘモグロビン濃度が18g/dl以上のときには、赤血球増加症を考えます(女性では男性より10%減の値以上)。ただし、これらは単位あたりの濃さを意味していますので、脱水症でも起こり得ます。そこで循環赤血球量の測定が必要になります。循環赤血球量が増加しているときには、骨髄での造血能や、造血因子であるエリスロポエチンなどを調べます。骨髄増殖性の病気か、他の原因で二次的に起きているのかを診断するためです。