2001.7.1

 みなさんの中でも「健康診断で尿潜血が陽性といわれたことがある」という方がおられると思います。尿潜血反応とは、尿に血液が混ざっている、という意味ですが「でも全然赤くないし、血液が混ざつているとは思えない」という方が大半だと思います。
 尿の潜血反応は、通常試験紙法によって検査されます。この検査は、非常に鋭敏な検査で、わずかの血液が混ざつただけでも陽性となるため、健康診断では、かなりの比率で陽性になってしまいます。特に女性では、生理の影響で陽性率が高くなつてしまいます。また、生理の直後などでもほんの少しの血液が尿に混入して陽性となります。
 尿潜血反応が陽性になる原因には、非常に多くのものがあります。健康診断で陽性となり、二次検査にまわった方は、尿検査のほか、血液検査、超音波検査、レントゲン検査など、非常にたくさんの検査をおこなった記憶があるかもしれません。その結果、「原因がはっきりしないので、このまま様子を見ましょう」という結論になった方も少なくないでしょう。
 二次検査にて明らかな原因の特定ができるものは40%にすぎませんし、治療を必要とするものはそのうち40%弱であるという統計まであります。それではなぜ、尿の潜血を調べるのでしょう? それは、陽性者の中に、ごくわずかですが、尿路系の悪性腫瘍が見つかるからです。また、そのほかにも様々な腎臓病や泌尿器科の病気が見つかることもあります。
 尿潜血陽性となる病気を診断していく上で、尿沈渣検査といって尿を顕微鏡で見る検査があります。通常、尿潜血陽性の場合には尿沈渣検査でも赤血球が多くみられます。しかし、まれに、沈渣の中に赤血球がみられないこともあります。このような場合には、尿に血液そのものが混ざつているのではなく、ヘモグロビンや、構造が似ているミオグロビンという蛋白が尿に入っている可能性があります。特にミオグロビンは、激しい運動などで大量に筋肉から放出され、尿にでてくることがあります。
 尿沈渣で赤血球が認められる場合、その形にも注目します。血液の中では、赤血球は均一の円板状の形をしていますが、腎臓病で尿に赤血球がみられる場合、リング状の赤血球やこぶのある赤血球など、様々な変形を伴うことが多くなります。このような変形がない場合は、腎臓以下の尿路、すなわち膀胱や尿管などの病気の可能性が高くなります。
 尿潜血が陽性となる病気の多くは、ほかにこれといった症状がみられません。したがって、健康診断などでたまたま見つかることが大半です。腎臓病などでは、以前から健康診断のたびに尿潜血をいわれていたが症状もないため放っておいて、気がついたら腎不全で透析をしなくてはならなかった、ということもありますので、原因がはっきりわからない場合でも定期的な健診をおすすめします。