2001.5.1

 健診 (検診)で通常行われている尿検査方法は、随時尿(その場で採取した尿)を用いて、試験紙法で定性検査で得られた結果です。尿糖が陽性というと一般の人でも生活習慣病の一つの糖尿病と考えてしまいます。科学的に見ると、その時に採取された尿が試験紙法で陽性と判定されたということです。直ぐに糖尿病に結びつくわけではありません。尿糖は通常は糖類の中でもブドウ糖を意味します。ブドウ糖は腎の糸球体で濾過されますが、ほとんど全量が尿細管で再吸収されます。尿糖が陰性というのは定性法によって検査した場合で、定量法で測定すれば健常人でも10〜30mg/dl程度は検出されます。定性法の感度は血糖が腎臓の排泄閾値を越えた場合に尿糖を確認できるように設定されています。定性法の結果の解釈は大体十一が50mg/dl、1+が100〜2OOmg/dl、2+が250〜500mg/dl、3+が500mg/dl以上に相当します。
 尿糖が陽性の場合は可能性を二つ考えなくてはいけません。高血糖を伴う場合と高血糖を伴わない場合です。後者には、腎臓の閾値が変化した腎性糖尿、妊娠腎、新生児の場合があります。稀ですが、尿細管障害も否定できません。通常は、尿糖を認めた場合は、糖尿病を含めて高血糖に関して臨床検査を進めます。血糖は食後に増加するので、空腹時の採血が基本となります。『御飯を食べずに来て下さい』と指示したら『パンを食べてきた』とか食事は取らなかったけど『ジュース』を飲んだという笑えない話がたくさんあります。空腹時に関する患者さんへの説明は丁寧に行わなくてはいけません。
 外来では血糖と、長期間の血糖を反映するヘモグロビンA1Cの測定を行います。日本糖尿病学会の現在の糖尿病の診断基準は血糖に基づきます。尿定性法の試験紙はビタミンCの影響を受けて、偽陰性となります。自販機で売られている飲料には大量のビタミンCが含まれているものがあるため、患者は知らずに大量に摂取していることがあります。また、健康食品の一部には糖尿病が治ると称してビタミンCが含まれている物があるので、注意が必要です。尿試験が市販されているので、『自分は尿糖が陰性なので糖尿病でない』といった誤つた自己判断をすることがあるので、ここでも患者さんへの説明が大切です。糖尿病も含めて生活習慣病の高尿酸血症(痛風)、高脂血症の診断、治療、経過観察には臨床検査が重要です。