2001.4.1

 尿中に排泄される蛋白量が異常に多いときに「尿蛋白が陽性」と呼んでいます。健康な人の尿にもごく微量の蛋白が排泄されています。しかし、その量はせいぜい一日20〜150mg程です。この程度の生理的にみられる尿蛋白は、一般に尿蛋白は「陰性」とします。
 尿蛋白陽性すなわち、病的尿蛋白の検出は、まず試験紙法によってスクリーニングされます。試験紙を尿に浸して、色調が変化するのをみて判定します。尿中の蛋白が15mg/dl以下では(一)で陰性、15〜30mg/dlでは(±)で擬陽性、30mg/dl以上で(十)以上となり陽性と判定されます。
 激しい運動の後などでは一過性に陽性になることがありますが、心配はありません。小児では、立位姿勢や腰部前彎位の姿勢により尿蛋白が陽性になりやすく、体位性あるいは起立性尿蛋白といわれます。また、発熱のときにも一過性に尿蛋白が陽性になります。これらは予後良好な尿蛋白です。
 しかし、持続する尿蛋白は腎臓病の重要な所見です。腎臓病は自分で気づく症状が出たときには病気が進んでしまっていることが多いので、尿検査が早期に病気を診断する手掛かりになります。特に尿蛋白検査は重要です。試験紙法で(±)あるいは(十)のときには二次検診を受け、陰性でなければ一日尿(24時間蓄尿)を溜めてどのくらいの蛋白が尿に排泄されているか、その濃度を測定します。
 一日3.5g以上の大量の蛋白が持続して尿中にでていると「ネフローゼ症候群」といいます。このような状態が続くと「むくみ」などの症状があらわれます。しかし、少量の尿蛋白(一日0.2g以上)でも常に尿蛋白がある場合には、腎臓の糸球体に病変があるといえます。
 糸球体は、毛細血管の魂のような組織で、両方の腎臓に200万個ありますが、老廃物を含む血液を濾過し、体に必要な赤血球や蛋白などは通過しないような巧妙な仕組みになっています。しかし、糸球体に病変が起こると正常な濾過作用が障害されて赤血球や蛋白が通過してしまい、尿中に赤血球や蛋白がでてくるのです。したがって、尿中に蛋白と同時に赤血球が一緒にみられる場合は腎臓病があると考えられます。血尿は試験紙でスクリーニングできますが、正確には新鮮尿を遠心分離機にかけてその沈殿物(沈渣)を顕微鏡で調べるのです。
 腎臓病はその原因や症状が20種類以上あります。病気の種類や程度を知り、治療の方針をきめるためには、背中から針を刺して腎臓の組織を少し採って調べる「腎生検」という検査が必要になります。専門医のところで、安全に受けることができる検査です。