シアル化糖鎖抗原 KL-6(区分先:D007「22」)(区分E-2)
平成21年6月1日より適用 血液化学検査
保険点数:120点
判 断 料:D026-3 生化学的検査(I)判断料 144 点
製 品 名:ナノピア KL−6 エーザイ
血清又は血漿中のシアル化糖鎖抗原 KL-6 の測定
製造販売元:積水メディカル(株) TEL 03-3272-0674
販 売 元:三光純薬(株)
販売提携:エーザイ(株)
測 定 法:ラテックス凝集比濁(LTIA)法 定量検査
包装単位:400 テスト/1 キット(キャリブレーション用に 10 テストを用い,最大 390 検体)
結果が出るまでの時間:10分 自動化:可
検 体:血清,血漿(当初は血清のみの適用であったが,6 月 27 日から血漿も適応となった)
参考基準範囲:105.3〜401.2 U/mL
カットオフ値:500 U/mL
正確性:測定期待値の85〜115%
同時再現性:変動係数10%以下
測定範囲:50〜5000U/mL(7170形日立自動分析装置による)
相関性(血清):酵素免疫測定法に対し,r=0.981 y=0.99x−5.9
電気化学発光免疫測定法に対し,r=0.986 y=0.96x+7.1
【特徴】 シアル化糖鎖抗原(KL-6)はシアロ糖蛋白抗原であり,U型肺胞上皮細胞等に発現する分子量 100 万以上の巨大分子で,クラスター 9 に分類されているMUC-1 に属するムチンである。間質性肺炎で血清中の KL-6 値は健常者や他の呼吸器疾患に比して有意に高い。間質性肺炎の診断に有用とされ,既に保険収載されている検査である(D007 血液化学検査 22)。
今回保険収載される方法は,従来収載されている検査方法とは異なった方法で行うものである。これまでは酵素免疫測定(EIA)法,電気化学発光免疫測定(ECLIA)法であったが,今回のものはラテックス凝集比濁(LTIA)法で行う。本品は,抗ヒト KL-6 マウスモノクローナル抗体感作ラテックスを用いて,抗原抗体反応によるラテックス凝集を吸光度変化として測定することにより,血清又は血漿中のシアル化糖鎖抗原 KL-6 濃度を測定する試薬である。汎用生化学自動分析装置での測定が可能であり,測定時間も 10 分間と極めて短時間であるため,臨床現場に迅速な測定結果を提供することが可能である。また,KL-6 の測定範囲も充分広く,再現性も良いことが確認されており,測定精度において従来の測定法(EIA 法,ECLIA 法)と同等の性能を示すことが検証されている。
【保険請求上の注意】(下線が変更点)
(23)「22」のシアル化糖鎖抗原 KL-6,「23」のサーファクタントプロテインA(SP-A)及び「24」のサーファクタントプロテインD(SP-D)のうちいずれか複数を実施した場合は,主たるもののみ算定する。シアル化糖鎖抗原 KL-6 は,EIA 法,ECLIA 法又はラテックス凝集比濁法により,サーファクタントプロテイン A(SP-A)及びサーファクタントプロテインD(SP-D)は,EIA 法による。
(一部改定があったため、6 月 27 日に修正収載)
尿中サイトケラチン8・サイトケラチン18総量 (準用区分先:D009「7」)(区分E-3)
平成21年6月1日より適用 腫瘍マーカー
保険点数:160点
判 断 料:D026 4 生化学的検査(U)判断料144点
製 品 名:UBCキット「ヤマサ」EIA
検査目的:尿中サイトケラチン8・サイトケラチン18総量の測定
製造販売元:ヤマサ醤油(株) TEL 0779-22-9888
測 定 法:エンザイムイムノアッセイ(EIA)法 定量検査
包装単位:96 テスト/1 キット(1 回ですべて使用の場合,84 検体。検量線作成は 2 重測定で行い,1回の測定において 6 濃度× 2 重=12 テストを使用する。)
結果が出るまでの時間:約 4 時間
自動化:不可
検 体:尿
同時再現性試験:変動係数 15%以下
測定範囲:0.1〜15μg/L
カットオフ値:16ng/mgCr。カットオフを超えた場合,陽性として尿路上皮膀胱癌の可能性を考慮する。
【特徴】細胞骨格を形成するフィラメントの構成蛋白のひとつであるサイトケラチン8及びサイトケラチン18(CK8・18)は上皮性組織に由来する癌細胞内に高濃度で検出される蛋白であり,とくに膀胱癌の初期ステージでCK8・18が対で発現されていることが知られている。上皮組織由来の癌細胞培養液にも見出されており,実際,尿路上皮膀胱癌で尿中濃度が上昇する。
今回保険収載される方法は,抗ヒトCK8・18マウスモノクローナル抗体を固相したマイクロプレートと酵素標識抗ヒトサイトケラチンウマポリクローナル抗体を用いた 1 ステップサンドイッチ法による酵素免疫学的測定法(EIA法)を測定原理として,尿中のサイトケラチン 8 及びサイトケラチン 18 総量(UBC)を測定するものである。この定量値を同時に測定したクレアチニン値を用いて補正UBC (UBC/Cr)を求める。
本法による UBC/Cr は,尿路上皮膀胱癌において92.8%という高い有病正診率を示し,一方,コントロール群における無病正診率は 100%であった。同一検討でのこれらの値は,すでに保険収載されている尿中 NMP22 での有病正診率 58.8%に比較し有意に高く,無病正診率 83.9%に対しても高い値を示した。異型度(Grade)T,深達度(Stage)T1,大きさ(Size)10mm以下の比較的早期の尿路上皮膀胱癌を対象とする検討においては,UBC/Cr は尿中 NMP22に比し有意に高い陽性率であった。また,腫瘍径30mm 以上の進行膀胱癌における UBC/Cr の陽性率は 100%であり,尿中 NMP22 の 71.4%,尿細胞診の85.7%より高かった。さらに,膀胱癌のスクリーニング検査として用いられている経腹的超音波断層検査での測定限界とされる腫瘍径 10mm以下の腫瘍においても,89.5%という高い陽性率を示した。一方で留意しておくべきことは,偽陽性が出やすいことである。泌尿器科外来を受診した全患者に測定を実施した検討では,UBC/Cr 陽性患者の 15%が良性疾患であり,これらの患者の多くは膀胱炎あるいは尿路結石であった。これらの良性疾患患者では,尿中白血球の急激な増加あるいは疼痛を主訴とするなどの特徴的臨床症状を有することから鑑別は可能と考えられる。いずれにしても,一般的身体所見や症状を考慮した上での検査実施が求められる。
膀胱癌の診断において膀胱鏡検査は最も確実な診断法であるが,検査費用が高くかつ侵襲的検査であることから,他の確実性の高い検査により不必要な膀胱鏡検査を除外することが望まれている。膀胱癌はその約 90%が移行上皮癌であり,多くの場合経尿道的腫瘍切除術が行われるが,その半数以上に再発がみられる。再発腫瘍の早期発見にも膀胱鏡検査が有用であるが,本検査によって膀胱鏡検査の頻度を減少させることも期待される。
【保険請求上の注意】
(5) 尿中サイトケラチン 8・サイトケラチン18総量
ア 尿中サイトケラチン 8・サイトケラチン18総量は,区分番号「D009」腫瘍マーカーの「7」の尿中NMP22 精密測定に準じて測定する。
イ 尿中サイトケラチン 8・サイトケラチン 18 総量は,区分番号「D002」尿沈渣顕微鏡検査により赤血球が認められ,尿路上皮癌の患者であることが強く疑われる者に対して行った場合に限り算定する。
ウ 尿中サイトケラチン 8 ・サイトケラチン 18 総量は,尿路上皮癌の診断が確定した後であっても,区分番号「B001」特定疾患治療管理料の「3」悪性腫瘍特異物質治療管理料は算定できない。
(6)「7」の尿中 NMP22 精密測定及び尿中サイトケラチン 8・サイトケラチン 18 総量を同時に実施した場合は,いずれか一方の所定点数を算定する。
EGFRタンパク(準用区分先:「N002」免疫染色(免疫抗体法病理組織標本作製 3 HER2タンパク))(区分E-3)
平成21年1月1日より適用
保険点数:690点
製 品 名:EGFR pharm Dx「ダコ」
検査目的:組織・細胞中のEGFR(上皮増殖因子受容体)タンパクの検出(悪性腫瘍診断の補助等)
製造販売元:ダコ・ジャパン(株) TEL 075-211-3674
測 定 法:病理組織免疫染色法 定性検査
包装単位:用手法用 35テスト/1キット(コントロール5テスト分除く) 自動免疫染色装置用 50テスト/1キット(コントロールスライド10テスト分除く)
結果が出るまでの時間:脱パラフィン後,2時間半 自動化 : 不可
検 体:病理組織標本
同時再現性試験:EGFRタンパク発現陽性ヒト培養細胞HT-29及びEGFRタンパク発現陰性培養細胞CAMA-1から作製した標本スライド各3枚を同時に染色した場合,HT-29における発現はいずれも本試薬判定基準の2.5±0.5の範囲内であり,CAMA-1における発現はいずれも判定基準の0を示す。
感度試験:正常ヒト扁平上皮を管理用検体とした場合,基底層におけるEGFRタンパク発現は,本試薬判定基準の2.0以上を示し,表層においては1.0以上を示す。HT-29を管理用検体とした場合,EGFRタンパク発現は本試薬判定基準の2.5±0.5の範囲内にある。CAMA-1を管理用検体とした場合,EGFRタンパク発現は本試薬判定基準の0を示す。
【特徴】上皮成長因子(EGF)の受容体である上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)はチロシンキナーゼ型受容体で,細胞膜を貫通して存在する糖タンパクである。上皮系,間葉系,神経系起源の多様な細胞に発現しており,EGFと結合することにより活性化される。正常組織においては細胞の分化・増殖,血管新生誘導,アポトーシス阻害などに重要な役割を演じているが,このEGFRに遺伝子増幅や遺伝子変異,構造変化が起きると,発癌,および癌の増殖,浸潤,転移などに関与するようになる。過剰発現はシグナル伝達系を混乱させ,細胞の腫瘍化・悪性化を惹起するだけでなく,実際さまざまな悪性腫瘍で過剰発現が確認されており,腎癌では50〜90%,非小細胞肺癌では40〜80%,前立腺癌では40〜80%,頭頸部癌では36〜100%,卵巣癌では35〜70%,胃癌では33〜74%,乳癌では14〜91%,大腸癌では25〜77%で過剰発現が見られるとの報告がある。
今回,保険収載される体外診断用医薬品「EGFRタンパク」は,通常の病理検査室において供与されているホルマリン固定パラフィン包埋した病理組織標本を用いて,対象癌の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク発現の有無を免疫組織化学的手法により診断するものである。検体中のEGFRタンパク抗原に対し,一次抗体として抗ヒトEGFR(2-18C9)・マウスモノクローナル抗体を,次いで抗マウスイムノグロブリン・ヤギポリクローナル抗体を反応させ,形成された【抗原−一次抗体−抗マウスイムノグロブリン・ヤギポリクローナル抗体−パーオキシダーゼ複合体】に基質溶液を反応させる。この基質溶液中の3,3’-テトラヒドロキシクロライドが酸化を受けてオスミウム好性可視産物が生成され,抗原部位が褐色に染色される。最終的に,この染色された抗原部位を光学顕微鏡で観察し,判定する。染色態度が連続性あるいは不連続性かに関わらず,腫瘍細胞の細胞膜に染色が認められるものを陽性とし,全ての腫瘍細胞において細胞膜への染色が認められないか,細胞質のみに染色が見られるものは陰性と判定する。
EGFR 過剰発現を呈する悪性腫瘍は予後不良であり,ホルモン療法,化学療法,放射線療法に耐性を示すことが報告されているが,このような状況下,EGFR を標的とした薬剤の開発が進められている。現在までに EGFR に細胞内外で作用するさまざまな新規治療薬が開発され,国内・国外共に多くの臨床試験が実施され,医薬品の承認が取得されつつある。すでに我が国でも EGFR 陽性の転移性結腸・直腸癌患者の治療を目的とした医薬品「Cetuximab」が昨年 9 月に薬価収載された。
本品の臨床性能試験としては,2006〜2007 年に国内 2 施設において無差別に選択した結腸・直腸癌 201症例のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックについて,当該 2 施設での実績ある従来法と比較したところ,それぞれ 92.6%,98.0%という高い一致率を示した。本品はすでに米国,カナダ,EU 諸国において,Cetuximab 治療対象患者選別を目的とした検査キットとして承認を得ている。
EGFR 抗体治療薬は,薬理学的観点から EGFR タンパクの過剰発現が認められる症例においてのみ有用であり,当該治療薬投与前に responder の選別を行うことで non-responder に対する投与を未然に防ぐことができる。本検査により responder/non-responder の選別することで無駄な薬剤投与を防止できるため医療費の抑制にもつながる。
【保険請求上の注意】
免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製は,病理組織標本を作製するにあたり免疫染色を行った場合に,方法(蛍光抗体法又は酵素抗体法)又は試薬の種類にかかわらず,1臓器につき1回のみ算定する。
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