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サイトケラチン(CK)19 mRNA(準用区分先:D006-7)(区分 E-3)

平成20年11月1日より適用  検査
保険点数:2,000 点
判 断 料:125 点
製 品 名:リノアンプ BC
検査目的:摘出された乳癌所属リンパ節中の CK 19mRNA の検出(乳癌におけるリンパ節転移診断の補助に用いる)
製造販売元:シスメックス(株) TEL 078-265-0591
測 定 法:OSNA(One-Step Nucleic Amplification)法 定性検査
包装単位:240 テスト/1 キット(1 日当たり 3 症例の実施かつ 1 症例当たり 3 リンパ節測定の場合,24 症例。1 日当たり 1 症例の実施かつ 1 症例当たり 2 リンパ節測定の場合,16 症例。)
結果が出るまでの時間:約 40 分 自動化:不可(前処理はマニュアルで,全自動専用機RD-100iを使用
検  体:乳癌所属リンパ節
同時再現性試験:CK19 mRNA 250,000 copies/μLの陽性基準液を連続3回測定するとき,いずれの測定も陽性と判定される。CK19 mRNA 陰性標準液を連続 3 回測定するとき,いずれの測定も陰性と判定される。
検出感度:250 copies/μL
カットオフ値:250 copies/μL。5,000以上を陽性(++),250以上5,000未満を陽性(+),250未満を陰性(−)。ただし,測定サンプルのコピー数がカットオフ未満であっても,希釈サンプルのコピ−数がカットオフ以上の場合は(+)Tと判定。
【特徴】乳癌に対する手術はすでに縮小手術が一般的に受け入れられており,乳房切除とセンチネルリンパ節生検が標準的な手術々式となりつつある。これまではリンパ節転移の有無は専ら病理組織学的診断により行われてきており,とくに術中の迅速診断はリンパ節郭清併施の要否決定に用いられてきている。しかし,転移の有無に対する迅速診断の精度は標本作製が 1 つの割面で行われることが多いことに加え,病理診断の精度に大きく依存することから,簡便で迅速性および精度に優れた診断法が求められてきた。
 CK 19mRNA は,乳癌の転移陽性リンパ節において mRNA 発現が特異的に高い遺伝子を探索し,最終的に最適な乳癌マ−カ−として選択された遺伝子である。今回,保険収載される乳癌所属リンパ節中の CK 19mRNA を検出するキット【リノアンプBC】は,RT-LAMP 法を用い,リンパ節の可溶化から遺伝子増幅反応までを1段階で行う One-Step Nucleic Amplification(OSNA)法により検出するものである。本法と病理組織検査との相関を検討した結果では,pN0 患者由来のリンパ節における陰性一致率は99.2%(124/125)であり,不一致の1例では追加検討でミクロ転移の局在が証明された。また,合計253リンパ節(88症例)における 3 割面病理組織検査との一致率は97.6%(247/253)であり,不一致の 6 例で更に薄切り切片を作成して追加検討したところ,いずれも転移巣の局在による非一致であった。さらに,マクロ転移と判定されたリンパ節との陽性一致率(マクロ転移検出能)は100%と極めて高い結果を示した。
 本キット【リノアンプBC】は,専用装置RD-100iを用いて約 40 分で報告可能である。迅速病理診断の精度に関わらず転移診断可能であり,侵襲を伴う不要なリンパ節郭清を回避できること,術中迅速病理診断での陰性判定が術後の永久標本診断で陽性に覆ることによる腋窩リンパ節郭清再手術が回避できること,さらに再発率を下げることが期待できる。現状の病理組織顕微鏡検査と比較しても,その精度,迅速性はほぼ同等であり,簡便性についてはより優れている。本検査は画像診断も含めて臨床的には転移陰性と判断されるようなN0症例,さらには術中迅速病理診断で陰性と判定された症例のみが対象となるが,乳癌症例が著しく増加している現状から,臨床的,そして医療経済的有用性が期待される検査である。
【保険請求上の注意】
 (2)サイトケラチン(CK)19mRNA
 ア サイトケラチン(CK)19mRNAは,区分番号「D006−7」WT1mRNA定量に準じて算定する。
 イ サイトケラチン(CK)19mRNAは,術前の画像診断又は視触診等による診断でリンパ節陽性が明らかでない乳癌患者に対して,摘出された乳癌所属リンパ節中のサイトケラチン(CK)19mRNAの検出によるリンパ節転移診断の補助を目的として,OSNA(One-Step Nucleic Amplification)1法により測定を行った場合に,一連につき 1 回限り算定する。

 

UDPグルクロン酸転移酵素遺伝子多型(準用区分先:D006-7)(区分 E-3)

平成20年11月1日より適用  検査
保険点数:2,000点
判 断 料:125点
製 品 名:インベーダーUGT1A1アッセイ
検査目的:全血より抽出したゲノム DNA 中の UDP グルクロン酸転移酵素遺伝子多型UGT1A1*28,UGT1A1*6の判定
製造販売元:積水メディカル(株) TEL 03-3272-0674
測 定 法:インベーダー法 定性検査
包装単位:50 テスト/1 キット(1 キット当たりの測定可能検体数 44テスト)
結果が出るまでの時間:約 5 時間 自動化 : 不可
検  体:全血
同時再現性試験:それぞれの管理用陽性コントロ−ルを用いて測定した場合,全ての結果が正しく判定される。
検出感度:0.0025 amol/μL(合成DNAとして)
判  定:2 つの蛍光強度(R Signal,R Signal)から算出した Ratio から,6 種の遺伝子多型をそれぞれの基準により判定(詳細は使用説明書を参照)。
【特徴】UGT1A1 は肝臓の UDP グルクロン酸転移酵素(UGT : Uridine diphosphate glucuronosyl-transferase)の分子種の一つであり,抗悪性腫瘍剤として世界で広く使用されている塩酸イリノテカンの代謝酵素である。臨床的にしばしば問題となる塩酸イリノテカンによる重篤な薬物有害反応については,UGT 遺伝子多型の関与における重要性が広く認められつつある。
 今回保険収載される UDP グルクロン酸転移酵素遺伝子多型の測定は,全血から抽出したゲノム DNA を試料として,インベーダー法により UGT1A1 の遺伝子多型であるUGT1A1*28,UGT1A1*6を判定するものである。インベーダー法は,標的 DNA の二重鎖結合部に 2 つのプロ−ブが結合して形成される三重鎖構造を特異的に認識して切断するクリベ−ス(エンドヌクレア−ゼの一種)を利用した遺伝子多型判定法である。二段階の等温反応で増幅を必要としないことからコンタミの影響はなく,蛍光反応により測定することから簡便である。また,約 200 例による社内検討で,直接シ−クエンス法との一致率が100 パーセントを示しており,正確性も高い。
 UGT1A1 遺伝子多型と塩酸イリノテカンの重篤副作用(特に好中球減少,重度の下痢)に関する検討において,塩酸イリノテカン単剤投与の場合,UGT1A1*28,UGT1A1*6 についていずれかをホモ接合体(UGT1A1*6/*6,UGT1A1*28/*28)又はいずれもヘテロ接合体(UGT1A1*6/*28)としてもつ高リスク群では,80%にグレ−ド 3 以上の好中球減少が認められた。これに対し,野生型の群ではグレ−ド 3以上の副作用発生は 20%に留まっている。他の抗癌剤との併用療法の場合,上記高リスク群では 53%にグレ−ド 4 以上の好中球減少が認められたのに対し,野生型の群では 21%のみと低い発生率となっている。これらの報告を受け,この度,塩酸イリノテカンの添付文書において,平成 20 年 6 月 16 日付 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づき,使用上の注意が「本剤の活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素である UGT の 2 つの遺伝子多型(UGT1A1*28,UGT1A1*6)について,いずれかをホモ接合体(UGT1A1*6/*6,UGT1A1*28/*28)又はいずれもヘテロ接合体(UGT1A1*6/*28)としてもつ患者では,UGT1A1 のグルクロン酸抱合能が低下し,SN-38 の代謝が遅延することにより,重篤な副作用(特に好中球減少)発現の可能性が高くなることが報告されているため,十分注意すること。」と改訂された。
 UGT1A1 遺伝子多型(UGT1A1*28,UGT1A1*6 遺伝子多型)を判定することにより,UGT 活性が減少している危険性を持つ患者,すなわち塩酸イリノテカンの重篤副作用(特に好中球減少)を発現する可能性の高い患者をあらかじめ鑑別することができる。これにより,高リスク患者に対し適切な治療法を選択することで重篤副作用を回避することができ,より安全で効率的な抗癌剤治療が可能となる。
【保険請求上の注意】
 (3)UDP グルクロン酸転移酵素遺伝子多型
 ア UDP グルクロン酸転移酵素遺伝子多型は,区分番号「D006−7」WT1mRNA 定量に準じて算定する。
 イ UDP グルクロン酸転移酵素遺伝子多型は,塩酸イリノテカンの対象となる患者に対して,その投与量等を判断することを目的として,インベーダー法により測定を行った場合,当該抗悪性腫瘍剤の投与方針の決定までの間に 1 回を限度として算定する。

 

1,25ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)(区分先:D007「37」)(区分 E-2)

平成20年11月1日より適用  血液化学検査(T)
保険点数:400点
判 断 料:144点
製 品 名:1,25(OH)2D ELISAキット「IDS」
検査目的:血清又は血漿中の 1,25 ジヒドロキシビタミンD3の測定
製造販売元:(株)医学生物研究所 TEL 0265-76-1777
測 定 法:酵素免疫測定法(ELISA法) 定量検査
包装単位:96ウェル/1キット(二重測定により最大39検体)
結果が出るまでの時間:約24時間(一晩の静置を含む。実質は,抽出に125分,測定に90分)
自動化 : 不可
検  体:血清又は血漿
測定範囲:6〜500 pmol/L
正確性試験:±25%(既知濃度の管理血清を測定するとき,既知濃度に対して)
同時再現性試験:15%以内(既知濃度の管理血清を 3回測定するとき)
【特徴】生体内においては,ビタミンDは肝で水解され25-OH-D3となって血液中に存在する。25-OH-D3は腎でさらに水解されて活性型の 1,25-OH-D3(1,25ジヒドロキシビタミンD3)となる。1,25 ジヒドロキシビタミンD3は副甲状腺ホルモンにより合成を促進され,小腸からカルシュウムの吸収を促進し,骨からの溶出を促進させることにより血中のカルシュウム濃度を上昇させる作用を有する。したがって,血清あるいは血漿中の1,25ジヒドロキシビタミンD3は,特発性副甲状腺機能低下症,偽性副甲状腺機能低下症,ある種のくる病,慢性腎不全などで低下するため,それらの疾患の診断に有用とされ,既に保険収載されている検査である(D007 生化学検査 37 1,25ジヒドロキシビタミンD3)。また,これらの疾患に対して活性化ビタミンD3剤が投与されるので,本検査はそのモニターとしても使用されている。
 今回保険収載される方法は,従来収載されている検査方法とは異なった方法で行うものである。今まではラジオアイソトープ(RI)を用いるラジオイムノアッセイ法(RIA法)で行うものが主体であったが,今回のものはELISA法で行う。本ELISA法と既承認の RIA 法との相関はr=0.953(N=153)ときわめて良好であり,本品を用いても臨床診断等に影響はないと考えられる。本方法ではRIを用いなくて検査が可能であり,RIの廃棄,RIへの被爆,放射線管理などの問題がないことがメリットとなる。
【保険請求上の注意】(下線が変更点)
 「37」の1,25ジヒドロキシビタミンD3 (1,25(OH)2D3)は,ラジオレセプターアッセイ法,RIA 法又はELISA法により,慢性腎不全,特発性副甲状腺機能低下症,偽性副甲状腺機能低下症,ビタミンD依存症T型若しくは低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病の診断時又はそれらの疾患に対する活性型ビタミンD3剤による治療中に測定した場合にのみ算定できる。なお活性型ビタミンD3剤による治療開始後1月以内においては2回を限度とし,その後は3月に1回を限度として算定する。

 

骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ(TRACP-5b)(準用区分先 : D008「12」)(区分E-3)

平成20年8月1日より適用  内分泌学的検査
保険点数: 160点
判 断 料: 144点
製 品 名:オステオリンクス TRAP-5b
検査目的:代謝性骨疾患及び骨転移の診断補助並びに治療経過観察時の補助的指標
製造販売元:日東紡績(株) TEL 03-3238-4540
測定方法:酵素免疫測定法(EIA) 定量検査
包装単位:96テスト/1キット(2重測定で行う場合,43検体分)
結果がでるまでの時間:約2時間半 自動化:不可
検  体:血清およびヘパリン血漿
同時再現性:15%以下
測定範囲:0.1〜15 U/L(用手法による場合)
参考基準範囲:健常男性:1.7〜5.9 U/L
       健常女性(閉経前):1.2〜4.2 U/L
【特徴】骨代謝マーカーは骨吸収や骨形成の過程で骨組織や破骨細胞,造骨細胞から分泌される物質を尿検体や血清検体を用いて測定するものであり,骨粗鬆症や副甲状腺疾患などの代謝性骨疾患,血液透析患者での腎性骨症,癌の骨転移などにおける骨代謝回転の診断ならびに治療効果判定に用いられている。
 今回保険収載される骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP-5b : tartrate-resistant acid phosphatase 5b)は,破骨細胞に局在する酸性加水分解酵素の一種であり,骨吸収時に血中に漏出され,破骨細胞の細胞数やその活動を反映する。血清およびヘパリン血漿中のTRACP-5bを,抗ヒトTRACP-5bマウスモノクロナール抗体を結合させたマイクロウェルプレートを用いたEIA法により測定する。
 既収載の骨代謝マーカーであるI型コラーゲン代謝物の尿中デオキシピリジノリン,I型コラーゲン架橋N-テロペプチド,βクロスラプスは日内変動があるため検体採取時間について注意が必要であり,さらに尿を検体として使用するマーカーは腎機能の影響を受けるためクレアチニンでの補正を要するなど,使用上に制約があった。TRACP-5bは日内変動が小さく,食餌,腎機能の影響が少ないという,これまでのマーカーに比べ利便性の面で優れた特長を有している。また,ビスフォスフォネート治療後1ヵ月のTRACP-5b変化率は6ヵ月間の骨密度変化率と相関していた。TRACP-5bは骨粗鬆症管理における骨折防止,慢性腎不全患者における骨代謝の急激な変化の発見などにおいて,従来の検査に比較し,より有用性の高い検査と考えられる。
【保険請求上の注意】
ア TRACP-5b定量は,区分番号「D008」内分泌学的検査の「12」のI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)精密測定に準じて算定する。
イ TRACP-5b定量は,代謝性骨疾患及び骨転移(代謝性骨疾患や骨折の併発がない肺癌,乳癌,前立腺癌に限る)の診断補助並びに治療経過観察時の補助的指標として実施した場合に6月以内に1回に限り算定できる。また治療方針を変更した際には変更後6月以内に1回に限り算定できる。
 本検査を「12」のI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)精密測定,「13」のオステオカルシン精密測定,「16」の尿中デオキシピリジノリン精密測定と併せて実施した場合いずれか一つのみ算定する。
 なお,乳癌,肺癌又は前立腺癌であると既に確定診断された患者について骨転移の診断のために当該検査を行い,当該検査に基づいて計画的な治療管理を行った場合は,区分番号「B001」特定疾患治療管理料の「3」悪性腫瘍特異物質治療管理料の「ロ」を算定する。

 

MDA―LDL(準用区分先:D007「29」)(区分:E−3)

平成20年6月1日より適用  血液化学検査
保険点数: 200点
判 断 料: 144点
製品名:オステオリンクス TRAP-5b
製造販売元:積水メディカル株式会社 Tel 03-3272-0674
測定方法:酵素免疫測定法(ELISA)  定量検査
包装単位:96 テスト/1キット(1キット当たりの測定可能検体数 48検体)
結果が出るまでの時間: 約9時間
自動化:不可
検体: 血清
同時再現性:15%以下
測定範囲: 10〜330 U/L
参考診断カットオフ値:110U/L 

【特徴】
 酸化LDLは酸化的変性を受けたLDLの総称で、動脈硬化の形成・進展に関与しており、代表的な酸化LDLとしては、マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA−LDL)が知られている。
 今回収載される方法は、2種類の特異的なモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定(ELISA)を用いて、血清中のMDA−LDL(酸化LDL)濃度を測定するものである。
 糖尿病(DM)患者、とくに冠動脈疾患(CAD)の既往歴がある患者では、将来の冠動脈イベント発症リスクが高いとされている。実際に、DM、CAD患者において血清中MDA−LDL値との関係を検討した結果、DMを合併したCAD患者では、コントロール群、DMあるいはCADだけを有する患者に比較し、MDA−LDL値は有意に上昇していた。次いで冠動脈疾患(CAD)既往歴のあるDM患者で検討を行ったところ、カットオフ値を110U/Lとした場合、カットオフ値以上の患者の心イベント発症率は45%であり、カットオフ値未満の心イベント発症率8%に比較して有意に高いイベント発症率であった。また、経皮的冠動脈再建術(PCI)治療を行ったDM患者における検討では、再狭窄群は非再狭窄群に比べMDA−LDLが有意な高値を示し、カットオフ値未満の患者に比べ、相対危険度5.3で再狭窄のリスクが高かった。
 以上より、血清中のMDA−LDL値はCAD既往歴のあるDM患者において、CAD再発に関する予後予測のマーカーとして、また、DM合併患者におけるPCI治療後の再狭窄の予測マーカーとして、優れた有用性を有することが明らかになった。
 血清中MDA−LDL測定によって冠動脈再狭窄、CADハイリスクの患者抽出が容易となり、早期診断により治療の重点化を行うことが可能となる。

【保険請求上の注意】
ア MDA―LDLは、区分「D007」血液化学検査の「29」のレムナント様リポ蛋白(RLP)コレステロールに準じて算定する。
イ MDA―LDLは、冠動脈疾患既往歴のある糖尿病患者で、冠動脈疾患発症に関する予後予測の補助の目的で血清中のMDA―LDL(酸化LDL)を測定する場合に3月に1回に限り算定できる。ただし、糖尿病患者の経皮的冠動脈再建術治療時に、治療後の再狭窄に関する予後予測の目的で測定する場合、上記と別に術前1回に限り算定できる。

 

涙液中総IgE定性(準用区分先:D004「6」)(区分E-3)

平成20年6月1日より適用  穿刺液・採取液検査
保険点数: 100点    判断料: 34点
製品名:アレルウォッチ 涙液IgE
検査目的:涙液中の総IgEの測定
製造販売元:日立化成工業株式会社   TEL 03-5546-9367
測定法:イムノクロマトグラフィー法   定性検査
包装単位:10テスト/1キット
結果が出るまでの時間:約12分     自動化:不可
検体:涙液
同時再現性:陰性検体を5回同時測定したときの結果は5回ともにクラス0(陰性)、表示クラス2(陽性)を示す陽性管理検体を測定したときの結果は5回ともクラス1(弱陽性)または2であった。
測定範囲:5.0〜15,000 UA/mL
判定:クラス1(弱陽性)以上を陽性

【特徴】
 アレルギー性結膜疾患は、即時型アレルギー反応を原因として発症する角結膜疾患である。慢性化したり症状が改善しても再燃を繰り返し、治療が長期化するために早期の適切な治療が重要である。これまで確定診断には、結膜分泌物の顕微鏡検査による結膜局所でのアレルギー反応の証明、血清中特異的IgE抗体検査などが行われてきた。結膜分泌物の顕微鏡検査では検体採取で患者に苦痛を与え、塗抹・染色操作が煩雑で確定診断に至らない割合も多く、また、血清中特異的IgE抗体検査は採血を必要とし、有用性も低いことから、多く症例では症状の発現時期、臨床所見などにより診断が行われている。
 今回収載されるアレルギー性結膜炎に対する検査は、涙液中のIgE量を測定するキットである。本法はサンドイッチ法に基づく免疫クロマトグラフィー法を原理としており、患者の下側結膜円蓋からシルマー紙(通常の涙液量測定用の5×35mmの濾紙)を用いて涙採を取液し、形成された金コロイド標識ヒトIgE抗体- IgE -金コロイド標識抗ヒトIgE抗体複合体を、シルマー紙上で視覚的に観察する。
 アレルギー性結膜炎の涙液中IgE濃度は、血清中IgE濃度に比較して臨床像と相関が高いといわれてきたが、検査法の容易性のため、これまでは血清中の特異的IgEの測定が行われてきた。臨床診断と本法との陽性一致率は73.6%であり、血清総IgEとの陽性一致率34.7%に比較し、高い一致率が得られている。また、本法と血清総IgEとの陽性一致率は91.4%、陰性一致率は50%であり、血清特異的IgEとの陽性一致率は78.3%、陰性一致率は75.0%であった。臨床診断と本法との陽性一致率を結膜炎の病型毎にみると、季節性アレルギー性結膜炎63.7%、通年性アレルギー性結膜炎63.3%、急性角結膜炎91.7%、春季カタル100%、巨大乳頭性結膜炎78.8%であり、対照眼では陰性一致率100%であった。1型アレルギーであるアレルギー性結膜炎等より、増殖性変化等を伴う結膜炎である春期カタルやコンタクトレンズ使用にともなう巨大乳頭性結膜炎などとの一致率で高い傾向が認められた。

【保険請求上の注意】
ア 涙液中総IgE定性は、区分「D004」穿刺液・採取液検査の「6」の子宮頸管粘液中顆粒球エラスターゼに準じて算定する。
イ 涙液中総IgE定性は、アレルギー性結膜炎の診断の補助を目的として判定した場合に月1回に限り算定できる。

 

B型肝炎ウイルスコア関連抗原(HBcrAg)定量 (準用区分先:D023「4」)(区分E3)

平成20年1月1日より適用  肝炎ウイルス関連検査
保険点数: 290点
製品名:ルミパルスHBcrAg
検査目的:B型肝炎ウイルスコア関連抗原(HBcrAg)の測定
製造販売元:富士レビオ株式会社  TEL:03-5695-9210
測定法:酵素免疫測定法(EIA)   定量検査
包装単位:1キット84テスト(最大79テスト)
結果が出るまでの時間:約60分  自動化:可(専用自動分析装置)
検体:血清または血漿
同時再現性:5%以下
測定範囲:3.0-7.0 LogU/mL
参考基準値:3.0 LogU/mL未満

【特徴】
 B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって引き起こされる直接的疾患は、一過性の急性B型肝炎と持続性のB型慢性肝炎である。B型慢性肝炎では治療によるHBVの完全排除は困難であり、ウイルス量の異常高値持続が肝硬変さらには肝癌のリスクとなることから、ウイルス量の低減および低値維持が治療の目標となる。
 今回保険収載される方法は、血清または血漿中のB型肝炎ウイルス関連抗原(HBcrAg:HBcore−related antigen)を測定する試薬である。HBcrAgには HBe抗原、HBc抗原およびHBVプレコア蛋白質(p22cr)の3種類が含まれる。この試薬はHBcrAgを網羅的に捕捉する3種類のモノクローナル抗体を固相とし、 2種類の酵素標識モノクローナル抗体を組合せた2ステップサンドイッチ法を測定原理とするものであり、全自動化学発光酵素免疫測定装置を用いて1時間程度で測定される。これまでのB型肝炎ウイルス関連測定試薬(例えばHBe抗原、 HBe抗体あるいはHBc抗体測定試薬)とは異なり、検体を界面活性剤で前処理することにより、HBV粒子、不完全ウイルス粒子、HBe抗原抗体複合体、HBc抗体などを破砕することにより、HBcrAg量を正確に測定できることが特徴である。
 これまでの研究では、核酸アナログ剤を未だ投与していない症例ではHBcrAg濃度は血中HBV DNA量と良好な相関を示すこと、核酸アナログ投与症例では、血中 HBV DNAが検出感度以下に低下した場合であっても血中HBcrAgは陽性を示し、その濃度は肝組織中の残存ウイルス量を反映している可能性が示唆されている。このため、核酸アナログ剤を投与していない患者ではHBV DNA測定法の代替となりえるとともに、核酸アナログ剤投与患者では経過観察、特に血中HBV DNAが陰性化した後の経過観察に有用と考えられる。また、肝組織中のウイルス量を正確に測定するためには肝生検によるHBV DNAあるいはcccDNA(covalently closed circular DNA)の測定が望まれるが、簡便性などに課題のある現状においては、血液を検体とするHBcrAg測定は汎用性の観点からも適していると思われる。さらに、HBV DNA遺伝子検査で手技的に問題となる検体のクロスコンタミに起因する測定トラブルもないと考えられる。なお、HBcrAg濃度の経時的な測定が核酸アナログ剤の投薬休止判断あるいは薬剤耐性株の出現予測に有用とする報告もあり、今後の更なる検討が期待される。

【保険請求上の注意】
ア B型肝炎ウイルスコア関連抗原(HBcrAg)定量は、区分「DO13」肝炎ウイルス関連検査に準じ、区分「DO26」検体検査判断料の「5」の免疫学的検査 判断料を算定する。ただし、検査料については、区分「DO23」微生物核酸同定・ 定量検査の「4」のHBV核酸同定精密測定に準じて算定できる。
イ B型肝炎ウイルス感染の診断の補助及び治療効果の判定の目的で、血清または血漿中のB型肝炎ウイルスコア関連抗原(HBcrAg)を測定した場合に1月に回に限り算定する。なお、HBV核酸同定精密測定、HBV核酸定量測定、DNAポリメラーゼを同時に測定した場合は、主たるもののみ算定する。

 

ミオイノシトール定量(準用区分先:D001「12」)(区分E3)

平成20年1月1日より適用  尿中特殊物質定性定量検査
保険点数: 120点 
製品名:ルシカMI
検査目的:尿中のミオイノシトールの測定(耐糖能診断の補助)
製造販売元:旭化成ファーマ株式会社  TEL:03-3259-5875
測定法:酵素サイクリング法   定量検査
包装単位:前処理液、反応液 各30mL×2本
結果が出るまでの時間:約10分  自動化:可(汎用自動分析装置)
検体:尿
同時再現性:5%以下
測定範囲:10-1500μmol/L
参考基準値(凾tMIとして):10mg/gCr未満

【特徴】
 ミオイノシトールは環状糖アルコール構造を有し、穀物、柑橘類、豆類などの植物、哺乳動物の筋組織や牛乳などに含まれる水溶性のビタミン様作用物質の一種である。主に生体組織に、遊離ミオイノシトールあるいはフォスファチジルイノシトールの構成成分として存在し、フォスファチジルイノシトールが分解されて生成するイノシトール3燐酸は細胞内のセカンドメッセンジャーとして働くことが知られている。糖尿病状態では、神経系において細胞内ミオイノシトールが減少し、神経伝達障害をもたらすとされる一方で、糖尿病患者尿中にミオイノシトールが高濃度に排泄されていることが古くから知られている。
 今回保険収載される方法は、75gOGTTによるブドウ糖負荷を行って負荷前尿、負荷後2時間尿のミオイノシトール濃度を測定し、同時に測定した尿中クレアチニン値(市販の体外診断薬(酵素法)で測定)で補正して2時間値−負荷前値(凾tMI)を算出するものである。これまではミオイノシトールの測定にはガスクロマトグラフィーマススペクトル法(GC-MS)などが用いられてきたが、今回申請された測定法は、特異的酵素と2種類の補酵素を組み合わせた酵素サイクリング法を用いており、新たに開発されたものである。
 大規模臨床試験であるDECODE スタディ や舟形スタディにおける75gOGTT解析結果から、空腹時血糖値よりも負荷後2時間血糖値が高いほど大血管障害の発症のリスクが高いことが示され、食後高血糖の判定が重要であることが明らかになっている。
 75gOGTTを実施した362例において併せて測定された本検査の結果では、尿中ミオイノシトールは耐糖能の低下の程度に応じて増加し、負荷後2時間にピークを示した。本検査においては、2時間値単独で見るよりも凾tMIを用いる方が正常型と境界型、糖尿病型との差が大きくなること、凾tMIは空腹時血糖よりも負荷後の血糖値と強く相関することから、凾tMIが適用されることになった。
 カットオフ値を10mg/gCreとした場合、一般的に75gOGTTの対象とされる群(空腹時血糖110-126mg/dl、N=122例)における儷MIの感度は空腹時血糖異常(IFG;46例)で 54%、耐糖能異常(IGT;48例)では81%であり、糖尿病型(28例)では100%を示した。今回の尿中ミオイノシトール定量検査により求められる凾tMIは、負荷後血糖値上昇を反映しており、耐糖能診断の補助に有用である。
 高齢化社会の進行に伴い生活習慣病、とくに耐糖能異常者が急増している。 これら患者予備群の早期検出において、本検査は採血を要さない簡便な尿検査であることから患者および医療スタッフの負担が軽減され、さらに一次健診と糖負荷試験の間の二次検査に位置づけられることから無駄な糖負荷試験を回避するための患者振り分けが可能となり、QOLの改善、さらには医療経済効果につながるものと期待される。

【保険請求上の注意】
ア ミオイノシトール定量は、区分「DOO1」尿中特殊物質定性定量検査の「12」のアルブミン定量精密測定に準じて算定する。
イ 空腹時血糖が110mg/dl以上、126mg/dl未満の患者に対し、耐糖能診断の補助として、尿中ミオイノシトールを測定した場合に1年に1回に限り算定できる。ただし、既に糖尿病と診断されている場合は、算定できない。

 

抗p53抗体 (準用区分先:D009「9」)(区分E-3)

平成19年11月1日より適用  生化学的検査(U)
保険点数: 170点
製品名:MESACUP anti-p53テスト
測定内容:食道癌・大腸癌及び乳癌における血清中の抗p53抗体測定
主な対象:食道癌・大腸癌及び乳癌が強く疑われる患者
製造販売元:株式会社 医学生物学研究所  TEL 0265-76-1777
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法)   定量検査
包装単位:96テスト(最大85検体)
結果が出るまでの時間:3時間  自動化:不可(一部の専用機では可)
検体:血清
同時再現性:15%以下
測定範囲:0〜20U/mL
最小検出限界値:0.05U/mL
参考カットオフ値:1.3U/mL

【特徴】
 p53遺伝子から誘導されるp53タンパクは、393アミノ酸からなる核内タンパク質で、細胞周期のG1期/S期境界での停止、アポトーシス誘導、DNA修復促進や血管新生などの 重要な細胞機能にかかわっている。これらの細胞機能が傷害されることは発癌に有利に働くと考えられるが、実際、p53遺伝子変異は各種の悪性腫瘍において最も高頻度に検出されて おり、遺伝子の変異によりDNA修復が不能となり、遺伝的に不安な細胞(癌細胞)が出現することからp53遺伝子は癌抑制遺伝子として位置づけられている。変異のない p53タンパクは分解されて蓄積されないのに対し、p53遺伝子が変異して生じた変異p53タンパクはユビキチン化を逃れ、癌細胞の核内に異常蓄積が起こる。 その結果として変異p53タンパクに対する抗体である抗p53抗体が血清中に出現してくるとされる。
 今回収載される方法は、遺伝子工学的に合成されたp53タンパクをマイクロカップに固相化した抗原感作マイクロカップを用いて、血清中の抗p53抗体を ELISA法により検出する診断薬である。本キットは他に、抗p53抗体標準血清、陽性・ 陰性コントロール、反応用緩衝液、標識抗体等で構成されている。
 本検査は腫瘍マーカーとして抗p53抗体を測定するものであり、食道癌・大腸癌及び乳癌が強く疑われる患者に 対して使用される。これら癌患者の15〜30%において血清中の抗p53抗体が陽性であるが、この抗体は他の腫瘍マーカーと陽性率で重なりが少なく、比較的早期の癌での陽性率が 高いことが特徴とされる。しかし各疾患(癌)に対する感度は、最大でも食道癌の31.0%であり、その他、大腸癌で24.7%、乳癌では14.8%という低値にとどまる。さらに、早期の 癌で陽性率が高い傾向がみられるものの、ステージとの間には一定の傾向がみられないこと、p53遺伝子変異が証明された症例での抗体陽性率が50〜60%に留まるなど、未解明の 部分も多い。
 従来の腫瘍マーカーとの間に劣性を認めないとされての保険収載となったが、症例数が不十分で統計的解析に適性を欠く。本来ならば先進医療などでより詳細な検討が行われてから保険収載すべきとも考えられ、今後、症例の集積による再評価が必要となろう。

【保険請求上の注意】
食道癌・大腸癌及び乳癌が強く疑われる患者に対し血清中の抗p53抗体を測定した場合に算定できる。

 

WT1 mRNA定量(準用区分先:D006−2)(区分E-3)

平成19年11月1日より適用  血液学的検査
保険点数: 2000点 
製品名:WT1 mRNA測定キット「オーツカ」
測定内容:急性骨髄性白血病の診断の補助または経過観察としてのWT1mRNAの測定
主な対象:急性骨髄性白血病患者
製造販売元:大塚製薬 (株)      TEL 050-316-12345
測定法:リアルタイムRT−PCR法   定量検査
包装単位:96テスト(最大68検体)
結果が出るまでの時間:4時間  自動化:不可
検体:全血(末梢血中の白血球)
同時再現性:10%以下(WT1 mRNA測定時、GAPDH測定時)
測定範囲:WT1 mRNA 2.50×103〜5.00×107 copy/mL  GAPDH 6.25×104
5.00×109 copy/mL (RNA 1μg当たりのコピー数に換算すると、50copy/μgRNA)
参考カットオフ値:50 copy/mL

【特徴】
 WT1(Wilms tumor gene-1)は小児ウイルムス腫瘍の原因遺伝子である。最近、本遺伝子のmRNAが白血病細胞で発現されていることが報告されており、とくに急性骨髄性白血病(AML) で高頻度に発現していることが判明した。一昨年の我が国の23施設の共同研究においても、AML患者114例中107例(94%)が陽性となっている。さらに、WT1 mRNAはAMLの経過中に 病勢とともに変動することが分かっており、とくに経時的に測定すると治療により一時陰性化したWT1 mRNAが再発時に再上昇すること、血液学的異常を認めるより早期に上昇 することが判明している。このことは、WT1 mRNAの測定はAMLの病勢のモニタリングに有用であり、 WT1が残存すると再発のリスクとなることを示している。 以上より、WT1 mRNAは AMLの微小残存病変(minimum residual disease, MRD)を検出するのに適している。WT1 mRNAでAMLのMRDを検出することにより、通常の血液学的検査では 検出できない約106個の白血病細胞を早期に確認できる。なお、AMLでは特異性がより高いキメラ遺伝子の発現するものもあるが症例が限定されており、多くの症例ではMRDマーカーと してWT1 mRNA定量が有用となる。
 今回申請する「WT1 mRNA定量」検査は、末梢血白血球より抽出したRNAを検体として用い、WT1 mRNAの発現量を定量リアルタイムRT-PCR法にて測定するキットである。なお、本測定では検体としてRNAを用いるため、RNA分解が測定値に影響を及ぼす可能性がある。そのため、WT1 mRNAを測定する際に、同じ検体を用いて別途コントロール遺伝子(GAPDH mRNA)を測定し、RNA分解の影響を補正する。また、本法によるWT1 mRNA発現の有無の基準は50 コピー/μg RNA未満を陰性、以上を陽性としている。
 なお、このキットを用いた研究では、AMLの再発早期発見の参考基準値を200コピー/μg RNAとした際に、診断効率は92.7%との結果を得ている。このことは、 AMLの現行の臨床上の再発判定より43日(中央値)早期に再発を予見することが可能であることを示している。また、この際の特異性は100%で、200 コピー/μg RNAを超えた症例に寛解症例は存在しない。このように、WT1 mRNA測定により、高感度にMRDを検出可能であり、AML治療をより早期に、かつ的確に施行することができる。

【保険請求上の注意】
WT1 mRNA定量は急性骨髄性白血病の診断の補助または経過観察時に月1回 に限り算定できる。

 

フィブリンモノマー複合体定量精密検査(準用区分先:D006「22」)(区分E-2(適応追加))

平成19年9月1日より適用  出血・凝固検査
保険点数: 240点
目的:血漿中可溶性フィブリンモノマー複合体の測定
製品名:エバテスト FM
測定法:エバネセント波蛍光免疫測定法(EV-FIA)  定量法
包装単位:1キット 60テスト (最大51検体)
結果が出るまでの時間: 約10分    自動化:可(専用機)
同時再現性:15%以内
測定可能範囲:3〜300 ug/mL
参考基準値:6.1 ug/mL
製造販売元:日水製薬株式会社  TEL:03-5846-5611

製品名:オートLIA FM
測定法:ラテックス凝集法(LA)  定量法
包装単位:1キット 100テスト(最大88検体)
結果が出るまでの時間: 約10分    自動化:可(汎用機)
同時再現性:10%以内
測定可能範囲:3〜300 ug/mL
参考基準値:6.1 ug/mL
製造販売元:日水製薬株式会社  TEL:03-5846-5611
販売元:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 TEL:03-5443-7040 
検体:血漿

【特徴】
 フィブリンモノマー複合体(FMC)は凝固活性化により産生されたトロンビンが作用し、フィブリノゲンがフィブリンに変化する初期過程で形成される。凝固 活性化の非常に早い時点で出現するため、血管内凝固活性化を早期発見する指標となるといわれている。フィブリンモノマー複合体定量精密測定は、「DICの診断及び治療 経過観察のために測定した場合に算定する」としてすでに保険収載されているが、今回、「静脈血栓症又は肺動脈血栓塞栓症」に対する適応が追加された。
 下肢静脈血栓症(深部静脈血栓症:DVT)はわが国においても、近年、その発生頻度が増加しつつあり、これに伴って続発性の肺動脈血栓塞栓症(PE)も多数報告され るようになった。特に術後PEは急性発症し、死に至る症例も少なくないことから早期診断が求められる。DVTおよびPEにおけるFMC測定の有用性については多くの報告が あり、実際に臨床の場においてもFMC検査がすでに施行されている。特にサブクリニカルな病態も含め、急性期あるいは活動期のDVT、PEにおける感度は極めて高い。
 DVT・PEにおけるFMC、Dダイマー(DD)、トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)の比較検討では、人工股関節置換術症例を中心としたROC解析でのAUC値は、術前で FMC:0.6214、DD:0.5921、TAT:0.5476、術後1日目でFMC:0.8194、DD:0.7247、TAT:0.7167、術後7日目でFMC:0.6836、DD:0.7737、TAT:0.7359であった。2004年新潟 県中越地震時には生活環境の悪化によりDVT、PEが多発したが、震災直後からのFMC濃度と下肢静脈エコーにおける血栓陽性率の変動推移は類似していた。また車中泊群で の震災直後のFMC濃度は基準値よりも高く、避難所泊群、自宅泊群に比し有意に高値であった。
 本検査による静脈内血栓の早期診断・治療から、静脈血栓症ならびに肺動脈血栓塞栓症の発症を減少させることが可能となるものと期待される。

【保険請求上の注意】
D006 出血・凝固検査
「22」フィブリンモノマー複合体定量精密測定
ア フィブリンモノマー複合体定量精密測定は、DIC、静脈血栓症又は肺動脈血栓塞栓症の診断及び治療経過の観察のために実施した場合に算定する。
イ フィブリンモノマー複合体定量精密測定は、区分「D006」血液・凝固検査の「19」のトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)精密測定及び「20」のプロトロンビン フラグメントF1+2精密測定のうちいずれか複数を同時に測定した場合は、主たるもののみ算定する。

 

血清中抗BP180NC16a抗体(準用区分先:D014「18」)(区分E-3)

平成19年9月1日より適用  自己抗体検査
保険点数: 270点
検査目的:水疱性類天疱瘡の診断の補助としての血清中の抗BP180NC16a抗体の測定
製品名:MESACUP BP180テスト
製造販売元:株式会社医学生物学研究所 TEL:0265-76-1777
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法)   定量検査
包装単位:48ウエル(最大46検体)
結果が出るまでの時間:3時間      自動化:不可(一部の専用機では可)
検体:血清
同時再現性:15%以下
測定範囲:Index値7〜150
参考カットオフ値:Index値9

【特徴】
 ほぼ全身皮膚に及ぶ緊満性水疱とびらんの多発を特徴とする水疱性類天疱瘡(妊娠性類天疱瘡を含む)は、表皮基底膜部のヘミデスモソームを構成するタンパク質(BP180) に対するIgG自己抗体(抗BP180抗体)が、表皮真皮境界部の接着を障害することにより誘導される。
 今回収載される方法は、BP180の主要エピトープが存在するNC16a領域に対する自己抗体である抗BP180NC16a抗体をELISA法により検出する診断薬である。本キットは 組換えBP180NC16a蛋白質を結合させたマイクロカップと、反応用緩衝液、標識抗体等で構成されている。
 本試薬を用いた臨床性能試験では、水疱性類天疱瘡84.4%(54/64)、瘢痕性類天疱瘡33.3%(2/6)、落葉状天疱瘡0.0%(0/42)、尋常性天疱瘡0.0%(0/69)、 膠原病1.1%(1/91)、健常者1.5%(5/336)と、水疱性類天疱瘡に対して高い感度を示すとともに他の疾患や健常者に対して高い特異性を示した。さらに、本抗体価は 病勢とよく相関しており、病勢の客観的判断、ステロイドの治療効果判定に有用である。
 病理組織学的検査、生検皮膚を用いた蛍光抗体直接法検査、あるいは患者血清を用いた蛍光抗体間接法検査に加え、水疱性類天疱瘡の診断の補助として用いられる。

【保険請求上の注意】
(15)血清中抗BP180NC16a抗体
ア 血清中抗BP180NC16a抗体は、区分D14自己抗体検査の「18」の血清中抗デスモグレイン3抗体に準じて算定できる。
イ 血清中抗BP180NC16a抗体は、ELISA法により、水泡性類天疱瘡の鑑別診断又は経過観察中の治療効果判定を目的として測定した場合に算定できる。

 

淋菌核酸増幅同定精密検査
(SDA(Strand Displacement Amplification)法)(準用区分先:D023「3」)(区分E-2)

平成19年9月1日より適用  微生物核酸同定・定量検査
保険点数: 210点 
目的:淋菌感染症の診断又は治療効果の判定
製品名:BDプローブテックET ナイセリア・ゴノレア
製造販売元:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社  TEL:0120-8555-90
測定法:SDA法による標的DNAの増幅と増幅産物の検出    定性検査
包装単位:96ウェル×4 (最大46検体/1アッセイ)
結果が出るまでの時間: 3〜4時間             自動化:不可
検体:泌尿器または生殖器からの検体、咽頭擦過物
同時再現性:陰性はすべて陰性、陽性はすべて陽性
最小検出感度:1回測定当り10セル
参考正常値:陰性

【特徴】
 淋菌は性感染症のうち最も主要な病原菌であり、性風俗産業の拡大・多様化と初交年齢の低年齢化などにより、その患者数は性器感染症罹患率とともに年々 増加傾向を示している。2000年度における集計では、淋菌の10万人年対罹患率(女/男比)は78.1(0.26)であり、1998年度に比較すると、女性で91.5%、男性で 27.7%の増となっている。また近年のオーラルセックスの一般化により、咽頭が新たな淋菌感染経路として問題視されており,実際,男女を問わず,性器淋菌感染症患者の 約30%で咽頭から淋菌が検出されたとの報告がある。さらに,この淋菌性咽頭炎の殆どが無症候性であり,化学療法に対する抵抗性が淋菌性尿道炎と比較して高いことが 報告されている。
 今回収載された「BDプローブテックETナイセリア・ゴノレア」は、尿、子宮頸管擦過物、男性尿道擦過物、咽頭擦過物中のナイセリアゴノレアDNAを、SDA(Strand Displacement Amplification)法を用いて、標的遺伝子に特異的な4種のプライマー、鎖置換型DNAポリメラーゼおよび制限酵素を用いた等温での標的遺伝子の増幅反応と、 蛍光標識プローブを用いた増幅産物の検出を同時に行うものである。すでにこの6月に保険収載された「淋菌およびクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査」の うち、ナイセリアゴノレアDNAのみを同じ方法を用いて検出するものである。咽頭検体においては、SDA法以外によるこれまでの方法では淋菌以外のナイセリア族との交差性 による擬陽性リスクが指摘されてきたが,本法ではその交差性が少ないことから咽頭検体からの検出が可能となった。既収載検査法との相関においては,子宮頸管擦過物を 検体としたときの「アンプリコアSTD-1 ナイセリアゴノレア」との陽性一致率は100%、陰性一致率は99.4%と良好であった。また、咽頭擦過物におけるDNA probe法との 陽性一致率は100.0%、陰性一致率は93.8%であった。

【保険請求上の注意】
D023 微生物核酸同定・定量検査
(3)淋菌核酸増幅同定精密検査
ア 淋菌核酸増幅同定精密検査と本区分「2」の淋菌核酸同定精密検査、D012感染症免疫学的検査の「21」の淋菌同定精密検査又はD018細菌培養同定検査を併せて 実施した場合は、主なもののみ算定する。
イ 淋菌核酸増幅同定精密検査は、LCR法による増幅とEIA法による検出を組み合わせた方法、PCR法による増幅と核酸ハイブリダイゼーション法による検出を 組み合わせた方法又はSDA法による。淋菌核酸増幅同定精密検査は、泌尿器又は生殖器からの検体によるものである。ただし、男子尿を含み女子尿を含まない。
 なお、SDA法においては咽頭からの検体も算定できる。

 

抗GQ1bIgG抗体(準用区分先:D014)(区分E-3)

平成19年8月1日より適用  自己抗体検査
保険点数: 460点      判断料: 144点
製品名:ガングリオシド・チェック GQ1b
検査目的:血清中の抗GQ1bIgG抗体の検出(フィッシャー症候群の診断の補助)
製造販売元:株式会社 シノテスト    TEL:042-753-0354
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法)    定性検査
包装単位:1キット96ウェル(最大23検体)
結果が出るまでの時間:19時間      自動化:不可
検体:血清                同時再現性、日差再現性:5%以下
カットオフインデックス:0.400未満を陰性、1.0以上を陽性、0.4以上1.0未満を判定保留

【特徴】
 フィッシャー症候群(FS)はギラン・バレー症候群(GBS)の亜型の一つであり、外眼筋麻痺、失調、腱反射の低下を伴う神経疾患である。日本での年間発症者数は200〜400人と 推定されている。発症機序はGBSと同様であり、FSにおいては血中のガングリオシドGQ1bに対する抗体(抗GQ1bIgG抗体)の上昇がみられる。
 今回収載される抗GQ1bIgG抗体測定検査は、ガングリオシドGQ1bを固相化させたマイクロプレートウエルに血清中の抗GQ1b抗体を反応させ、ペルオキシダーゼ標識 ウサギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体で反応させELISA法で測定するものである。
 このキットを用いた研究では、抗GQ1bIgG抗体はFS患者(n=55)で85%陽性となったが、その他の神経患者(n=41)および正常人(n=105)では陽性者は認められな かった。また、髄液蛋白細胞検査を施行したFS患者(n=35)において、本検査は31例(89%)で陽性であったのに対し、蛋白細胞解離は7例(20%)に留まった。さらに、 発症1週以内の髄液検査で解離を認めなかったものの発症2週以降に解離が確認された7例のうち、全例が発症1週間以内の抗GQ1bIgG抗体が陽性であった。

【保険請求上の注意】
ア 抗GQ1bIgG抗体は、区分「D014」自己抗体検査に準じ、区分「D026」検体検査判断料の「5」の免疫学的検査判断料を算定する。ただし、検査料については、 区分「D009」腫瘍マーカーの「16」のインターロイキン2受容体(IL-2R)精密測定に準じて算定できる。
イ 抗GQ1bIgG抗体は、ELISA法により、眼筋麻痺又は小脳性運動失調等のフィッシャー症候群が疑われる場合において、診断時に1回に限り算定でき、 経過観察時は算定できない。


 

抗GM1IgG抗体(準用区分先:D014)(区分E-3)

平成19年8月1日より適用  自己抗体検査
保険点数: 460点      判断料: 144点
製品名:ガングリオシド・チェック GM1
検査目的:血清中の抗GM1IgG抗体の検出(ギラン・バレー症候群の診断の補助)
製造販売元:株式会社 シノテスト   TEL:042-753-0354
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法)   定性検査
包装単位:1キット96ウェル(最大23検体)
結果が出るまでの時間:19時間   自動化:不可 
検体:血清                同時再現性、日差再現性:5%以下
カットオフインデックス:0.400未満を陰性、1.0以上を陽性、
               0.4以上1.0未満を判定保留

【特徴】
 ギラン・バレー症候群(GBS)は急速に発症する四肢筋力低下と腱反射消失を主徴とする自己免疫性末梢神経疾患である。日本での年間発症者数は1,000〜2,000人と 推定されている。本疾患はウィルスや細菌による感染が引き金となり、自己免疫機序を介して発症すると考えられている。現在、本疾患の診断は基本的には神経学的所見や 髄液検査(蛋白細胞解離)で行われている。
 GBSと最も関連する病原体はCampylobacter jejuniであり、約1/3の症例において先行感染が認められる。その他、サイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマ ・ニュウモニエなども関連病原体としてあげられ、菌体上のGM1ガングリオシド様リポ多糖に対して、ある免疫遺伝子学的背景を有する患者でIgGクラスの自己抗体 (抗GM1IgG抗体)が産生される。これが末梢神経上のGM1ガングリオシドと交差反応し、末梢神経障害が生じるとされている。
 最近はGM1IgG抗体がGBSの病態に関わる物質として注目されている。これらの抗体は正常者や他の神経疾患では検出されないか低力価であることより、GBSの 補助診断マーカーとして有用であるとされるが、国内では検査用のキットがなく、本抗体を測定することは困難であった。
 今回収載される抗GM1IgG抗体測定検査は、ガングリオシドGM1を固相化させたマイクロプレートウエルに血清中の抗GM1抗体を反応させ、ペルオキシダーゼ 標識ウサギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体で反応させELISA法で測定するものである。
 このキットを用いた研究では、抗GM1IgG抗体はGBS患者(n=95)で約50%が陽性となったが、その他の神経疾患患者(n=41)では陽性2%で、正常人(n=105)では 陽性者はなかった。また、髄液蛋白細胞解離がみられたGBS19例中、本検査は10例(53%)で陽性となった。さらに、発症1週以内の髄液検査で解離を認めなかったものの 発症2週以降に解離が確認された12例のうち、11例が発症1週間以内の抗GM1IgG抗体検査が陽性であった。

【保険請求上の注意】
ア 抗GM1IgG抗体は、区分「D014」自己抗体検査に準じ、区分「D026」検体検査判断料の「5」の免疫学的検査判断料を算定する。ただし、検査料については、 区分「D009」腫瘍マーカーの「16」のインターロイキン2受容体(IL-2R)精密測定に準じて算定できる。
イ 抗GM1IgG抗体は、ELISA法により、進行性筋力低下又は深部腱反射低下等のギランバレー症候群が疑われる所見が見られる場合において、診断時に1回に限り算定でき、 経過観察時は算定できない。


 

低カルボキシル化オステオカルシン精密測定(準用区分先:D008「16」)(区分E-3)

平成19年8月1日より適用  内分泌学的検査
保険点数: 170点
製品名:ピコルミucOC
検査目的:血清中の低カルボキシル化オステオカルシンの測定
     (骨粗鬆症におけるビタミンK2剤の選択時及びビタミンK2剤の効果判定の補助的指標)
製造販売元:三光純薬 株式会社       TEL:03-3851-1672
測定法:電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)   定量検査
包装単位:100テスト(最大96検体)
結果が出るまでの時間:20分   自動化:可(専用のECLIA汎用機)
検体:血清               同時再現性:10%以下
測定範囲: 0.39〜50 ng/mL    参考カットオフ値:4.5 ng/mL

【特徴】
 骨特異蛋白であるオステオカルシン(OC)はビタミンKの作用によりグルタミン酸残基(Glu)がγ―カルボキシグルタミン酸残基に変換(Gla化)されてGla化 オステオカルシンとなり、骨形成に関与している。ビタミンK欠乏状態ではOCはGla化されず、低カルボキシル化オステオカルシン(undercarboxylated osteocalcin:ucOC)と なって骨代謝などに対する機能を失い、すべてが血中に放出されると考えられている。
 今回収載される方法は、抗GluOC 4-5マウスモノクローナル抗体を結合した磁気ビ−ズを固相とし,電気化学的変化で発光するルテニウム錯体を標識した抗OCG3 マウスモノクローナル抗体を用いた1ステップサンドイッチ法による電気化学発光免疫測定法を測定原理として、血清中のucOC濃度を測定する体外診断用医薬品である。
 2003年のWHOのテクニカルレポ−トシリ−ズ921において、血中のucOC濃度は大腿骨頸部骨折のリスクファクタ−になる可能性が報告されている。わが国における高齢女性 集団における検討では、血中ビタミンK濃度低値群で新規骨折発生頻度が高かった。骨粗鬆症を有する群では有しない群に比較し、ビタミンK不足を示す例が多く、 血清ucOC値も有意に高かった。また、新規脊椎骨骨折発生群でもucOC値が有意に高いことが示されている。
 骨粗鬆症患者にビタミンK2剤を投与する前後の経過観察において、ビタミンK2剤投与後の血清ucOC値は有意に低下し、加えて骨密度の維持、骨折の抑制が得られることが 明らかになった。
 以上より、血清ucOC測定は骨粗鬆症患者におけるビタミンK不足の診断ならびにビタミンK2剤の治療効果判定に有用である。
 カットオフ値を4.5 ng/mLとした場合、感度78.6%、特異度64.1%、正診率67.9%、陽性的中度44.0%、陰性的中度89.3%であった。
 本検査の実施により、高齢化社会の進行に伴い増加している骨粗鬆症患者、とくにビタミンK欠乏に起因する骨粗鬆症患者の診断、適切な骨粗鬆症治療薬を選択することで 骨折を予防することが可能となり、高齢者のQOLの改善、さらには医療経済効果につながるものと期待される。

【保険請求上の注意】
ア 低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)精密測定は、区分「D008」内分泌学的検査の「16」のオステオカルシン精密測定に準じて算定できる。
イ 低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)精密測定は、骨粗鬆症におけるビタミンK2剤の治療選択目的、又は治療経過観察を行った場合に算定できる。ただし、 治療開始前においては1回、その後は6月以内に1回に限り算定できる。


 

ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定(準用区分先:D008「13」)(区分E-3)

平成19年6月1日より適用  内分泌学的検査
保険点数: 140点
製品名:NT-proBNP測定用 エクルーシス proBNP
製造販売元:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 TEL:03-5443-7040
測定方法:電気化学発光免疫測定法(ECLIA)   定量検査
包装単位: 100 テスト/キット(1キット当たりの測定可能検体数 79検体)
結果が出るまでの時間: 約18分
自動化:可(専用機器:エクルーシス2010、cobas e411、モジュラーアナリティクス及びcobas 601など)
検体: 血清または血漿           同時再現性: 10%以内
測定範囲: 5〜35,000 pg/mL
参考診断カットオフ値:慢性心不全 125 pg/mL, 急性心不全 300 pg/mL

【特徴】
 ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)は、76個のアミノ酸より構成されるペプチドである。循環血液量の増加や心室壁へのストレスなど 心負荷の増大により脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体(proBNP)が産生され、これが蛋白分解酵素により、ヒト心臓中で生理活性を持つBNPと生理活性を有しない NT-proBNPに分解されて血中に放出される。
 今回保険収載されるNT-proBNP測定用試薬「エクルーシスproBNP」は電気化学発光免疫測定法によりNT-proBNPの濃度を測定するものである。第一反応で検体中の NT-proBNPに2種類の抗NT-proBNP抗体を反応させて免疫複合体を形成させ、第二反応でこの免疫複合体をSA磁性MPと結合させ、これを電気化学発光により測定すると いう、3つのステップによりNT-proBNP濃度を算出する。
 NT-proBNPの血中濃度はBNPと同様、健常者では極めて低値であるが、心負荷に応じて増加する。NYHA分類による心不全重症度をよく反映するため、心不全の病態 把握および心機能障害の指標として有用である。NT-proBNPはBNPと比較して血中半減期が長いため血中濃度の上昇率が高く、心不全の早期診断や疾患レベルの明確な 判断が可能になるものと期待される。
 臨床現場での運用に当たり、BNPは血漿検体しか使用できないため他の検査で使用される血清検体とは別に採血が必要となるが、NT-proBNPは血清検体での測定が可能で、 患者負担の軽減や検査室の効率化に繋がる。またBNPに比べ検体中の安定性が良好で測定値の信頼性が高い。検体の短期(2〜3日)冷蔵保存ならびに長期凍結保存も可能で、 臨床所見から追加オーダーや測定結果疑義に対する再検査の必要性が生じた場合などにおいて、保存検体を用いた測定が可能である。
 NT-proBNPとBNPとの相関性は良好(r=0.940)であり、BNPと同様に、欧州心臓病学会やアメリカ心臓病学会の慢性および急性心不全の診断ガイドラインにおいて 有用な指標として評価されている。また、本邦でも循環器病学会・心臓病学会心不全学会など7学会からなる合同研究班作成のガイドライン(2005年改訂版)に 心不全の治療効果判定および予後評価の指標として評価されている。海外では、すでに10カ国以上で保険適用され使用されている。

【保険請求上の注意】
D008 内分泌学的検査
(10)ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定
ア ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定は、区分「D0008」内分泌学的検査の「13」のヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP)精密測定に準じて算定できる。
イ ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定は、心不全の診断又は病態把握のために実施した場合に月1回に限り算定する。
ウ 1週間以内に、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定、区分「D0008」内分泌学的検査の「13」のヒト脳性ナトリウム利尿 ペプチド(BNP)精密測定及び同区分「22」のヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(HANP)精密測定のうち2項目以上を併せて実施した場合は、主たるもの1つに限り算定する。
エ 本検査を実施した場合は、診療報酬明細書の摘要欄に本検査の実施日(ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)精密測定又はヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド (HANP)精密測定を併せて実施した場合は、併せて当該検査の実施日)を記載する。

 

淋菌およびクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査(SDA(Strand Displacement Amplification)法)(準用区分先:D023「5」)(区分E-2)

平成19年6月1日より適用  微生物核酸同定・定量検査
保険点数: 300点 
製品名:BDプローブテックETクラミジア・トラコマチス ナイセリア・ゴノレア
製造販売元:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社  TEL:0120-8555-90
測定法:SDA法による標的DNAの増幅と増幅産物の検出   定性検査
包装単位:96ウェル×4 
結果が出るまでの時間:約3.5時間             自動化:不可
検体:泌尿器または生殖器からの検体、咽頭擦過物
同時再現性:陰性はすべて陰性、陽性はすべて陽性
最低検出感度:クラミジア 1回測定当り1IFU(標的DNA約10コピー相当)
          淋菌    1回測定当り10セル
参考正常値:陰性

【特徴】
 クラミジアトラコマチス及び淋菌は、産婦人科および泌尿器科領域における性感染症のうち最も主要な起炎菌である。我が国における最近の検討において、淋菌あるいは クラミジアトラコマチス検査陽性者のうち、両者の重複感染率は産婦人科(女性)で約8%、泌尿器科(男性)では約19%と報告されている。どちらか一方の症状が強い 場合は臨床症状のみではもう一方の感染を見分けることは難しく、単独検査ではこれら目に見えない感染を見つけにくい。コマーシャルセックスワーカーや風俗店経験者 などではクラミジアと淋菌の混合感染の可能性が高い確率で疑われ、本人の気付かないところでの感染の拡大が危惧される。
 今回収載された「BDプローブテックETクラミジア・トラコマチス ナイセリア・ゴノレア」は、体液または組織中のナイセリアゴノレアDNAおよびクラミジアトラコマチスDNAを、 SDA法を用いて、標的遺伝子に特異的な4種のプライマー、鎖置換型DNAポリメラーゼおよび制限酵素を用いて等温での標的遺伝子の増幅反応と蛍光標識プローブを用いた 増幅産物の検出を同時に行うものである。本キットを用いることで淋菌とクラミジアトラコマチスを同一検体から同時に検出できるため、重複感染例を早期に診断でき、 感染の拡大を予防できる。さらに、臨床所見、問診またはその他の検査では感染因子の鑑別が困難なものに対しても、とくに淋菌とクラミジアトラコマチスの重複感染者に 対する治療法の選択、治療効果判定が可能となる。別々に検査を行った場合に比べて患者の再受診の手間、コストの負担軽減や治療期間の短縮などが期待でき、医療費の 削減に繋がるものと考えられる。
 「BDプローブテックETクラミジア・トラコマチス ナイセリア・ゴノレア」のロット間再現性は100%であり、既存測定法である「アンプリコアSTD-1 クラミジア トラコマチス ナイセリアゴノレア」との相関性もクラミジア検査において陽性一致率98.2%、陰性一致率99.4%、淋菌検査において陽性一致率100%、陰性一致率 99.4%と良好であった。

【保険請求上の注意】
D023 微生物核酸同定・定量検査
(8)淋菌およびクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査
ア 「5」の淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、クラミジア・トラコマチス感染症若しくは淋菌感染症が疑われる患者又はクラミジア・ トラコマチスと淋菌による重複感染が疑われる患者であって,臨床所見,問診又はその他の検査によっては感染因子の鑑別が困難なものに対して治療法選択のために 実施した場合及びクラミジア・トラコマチスと淋菌の重複感染者に対して治療効果判定に実施した場合に算定できる。
 ただし,区分「D012」感染症免疫学的検査の「21」の淋菌同定精密検査,同区分「21」のクラミジアトラコマチス抗原精密測定,本区分「2」の淋菌核酸同定精密検査, クラミジアトラコマチス核酸同定精密検査,「3」の淋菌核酸増幅同定精密検査又はクラミジアトラコマチス核酸増幅同定検査を併せて実施した場合は,主たるもののみ 算定する。
イ 淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、TMA法による同時増幅法並びにHPA法及びDKA法による同時検出法、PCR法による同時増幅法 及び核酸ハイブリダイゼーション法による同時検出法又はSDA法による。淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、泌尿器又は生殖器からの検体に よるものである。ただし、男子尿は含み女子尿は含まない。なお、SDA法においては咽頭からの検体も算定できる。

 

抗シトルリン化ペプチド抗体精密測定(準用区分先:D014「15」)(区分E-3)

平成19年4月1日より適用  免疫学的検査
保険点数: 210点
製品名MESACUP CCPテスト
検査目的:関節リウマチの診断補助
製造販売元:株式会社 医学生物学研究所  TEL 052-971-2081
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法) 定量検査   包装単位:96ウェル
結果が出るまでの時間: 約2時間半    自動化:可(ELISAの汎用機)
検体:血清                  同時再現性:15%以内
測定範囲:0.6〜100 U/mL        参考カットオフ値:4.5 U/mL

【特徴】
 シトルリン化抗原に対する抗体(抗cyclic citrullinated peptide抗体;抗CCP抗体)は、1990年代に新たに発見された関節リウマチ(RA)に特異的な自己抗体である。 アルギニンの一部が酵素peptidylarginine deiminase(PADI)により加水分解された部分を認識していると考えられており、炎症性滑膜組織においてはシトルリンフィブリンが 検出されることから、これが抗原として抗CCP抗体産生を誘導していることが示唆されてる。
今回保険収載される測定試薬「MESACUP CCPテスト」は、シトルリン化フィラグリンユニットのエピトープを人工的に環状化した分子(環状シトルリン化ペプチド)を抗原に 用いて作成されたものである。この合成環状シトルリン化ペプチドを固相化したマイクロカップに検体を添加して反応させ、アルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgGモノクロ ナール抗体を添加して複合物を形成させる。基質としてフェノールフタレイン一燐酸を添加し、酵素により発色させ、吸光度測定から血清中のシトルリン化抗原に対する抗体量を 算出する。
従来より、RAの診断においてはリウマトイド因子(RF)が利用されているが、RFのRAにおける感度は60〜70%とする報告が多く、また、RA以外の自己免疫疾患や 慢性肝炎、結核、ザルコイドーシスなどの疾患群でも出現するため、その感度・特異度ともに必ずしも高いとはいえない。そのため、RAの診断においてはRFに加えて、 IgG型リウマチ因子精密測定、C1q結合免疫複合体精密測定、C3d結合免疫複合体精密測定、モノクローナルRF結合免疫複合体精密測定およびマトリックスメタロプロ テイナーゼ-3精密測定が使用されており、これらの検査はすでに保険収載されている。
抗CCP抗体の感度については、RFとほぼ同程度との報告が多いが、特異度については83〜98%であり、RFに比較して高い特異度を示している。RAの診断が未確定の 状態で抗CCP抗体が陽性であった症例が後にRAと診断される確率が高いこと、初診時より臨床経過の全過程を通じてRF陰性のまま推移するseronegative RAにおいて、 その約半数が抗CCP抗体陽性であったとの報告がある。また、抗CCP抗体とRFを組み合わせた感度は90.7%、特異度は94.2%と高く、その診断効率は86.8%と RFと他の組み合わせと比較して有意に高いことが示されている。
すでに抗CCP抗体を含んだ診断基準、早期診断基準案も作成されており、今後は他の疾患マーカーと抗CCP抗体検査を組み合わせることにより、RAの早期診断の精度が 高まるものと期待される。

【保険請求上の注意】
ア 抗シトルリン化ペプチド抗体精密測定は、D014「15」のIgG型リウマチ因子精密測定に準じて算定できる。
イ 抗シトルリン化ペプチド抗体精密測定は、診察、リウマチ因子測定、画像診断等の結果から、関節リウマチと確定診断できない者に対して診断の補助として検査を行った 場合に、原則として1回を限度として算定する。ただし、当該検査結果が陰性の場合においては、3月に1回に限り算定できる。なお、当該検査を2回以上算定するに当たっ ては、検査値を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
ウ 抗シトルリン化ペプチド抗体精密測定、D014「15」のIgG型リウマチ因子精密測定、D014「11」のC1q結合免疫複合体精密測定、D014「15」のC3d結合免疫複合体精密測定、 D014「14」のモノクローナルRF結合免疫複合体精密測定、D014「9」の抗ガラクトース欠損IgG抗体精密測定及びD014「9」のマトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP−3) 精密測定のうち2項目以上を併せて実施した場合には、主たるもの1つに限り算定する。

 

淋菌およびクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査(PCR法による同時増幅法と核酸ハイブリダイゼーション法による同時検出法)(適応先区分:D023「5」)(区分E-2)

平成18年11月1日より適用  微生物核酸同定・定量検査
保険点数: 300点
製品名:アンプリコアSTD-1クラミジアトラコマチス/ナイセリアゴノレア
     コバスアンプリコアSTD-1クラミジアトラコマチス/ナイセリアゴノレア
製造販売元:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社     TEL:03-5443-7045
測定法:PCR法による標的DNAの増幅と核酸ハイブリダイゼーション法による検出
定性検査

アンプリコアSTD-1クラミジアトラコマチス/ナイセリアゴノレア
包装単位:96回 
結果が出るまでの時間:約4時間  自動化:不可
検体:泌尿器または生殖器からの検体
同時再現性:陰性はすべて陰性、陽性はすべて陽性
最低検出感度:クラミジア 1回測定当り1 IFU(標的DNA約10コピー相当)
          淋菌    1回測定当り5 CFU(標的DNA5コピー相当)
参考正常値:陰性

コバスアンプリコアSTD-1クラミジアトラコマチス/ナイセリアゴノレア
包装単位:96回
結果が出るまでの時間:約4時間 自動化:可(専用全自動分析器コバスアンプリコア使用)
検体:泌尿器または生殖器からの検体
同時再現性:陰性はすべて陰性、陽性はすべて陽性
最低検出感度:クラミジア 1回測定当り1 IFU(標的DNA約10コピー相当)
          淋菌    1回測定当り5 CFU(標的DNA 5コピー相当)
参考正常値:陰性

【特徴】
 クラミジアトラコマチス及び淋菌は、産婦人科および泌尿器科領域における性感染症のうち最も主要な起炎菌である。我が国における最近の検討において、淋菌あるいは クラミジアトラコマチス検査陽性者のうち、両者の重複感染率は産婦人科(女性)で約8%、泌尿器科(男性)では約19%と報告されている。どちらか一方の症状が強い場合は臨床 症状のみではもう一方の感染を見分けることは難しく、単独検査ではこれら目に見えない感染を見つけにくい。コマーシャルセックスワーカーや風俗店経験者などではクラミジアと 淋菌の混合感染の可能性が高い確率で疑われ、本人の気付かないところでの感染の拡大が危惧される。
 今回申請された「コバスアンプリコアSTD-1 クラミジアトラコマチス ナイセリアゴノレア」および「アンプリコアSTD-1 クラミジアトラコマチス ナイセリアゴノレア」は、いず れも体液または組織中のクラミジアトラコマチスDNAおよびナイセリアゴノレアDNAを、PCR法による標的DNAの増幅と核酸ハイブリダイゼーション法により検出するキットである。 その測定は、(1)臨床検体からのDNA抽出操作、(2)ビオチン標識プライマーを用いたPCR法によるクラミジアトラコマチスDNA及びナイセリアゴノレアDNAの増幅、(3)マイクロウェル プレート(コバスアンプリコアSTD-1では磁性粒子)に固相化したクラミジアトラコマチス特異的プローブ/ナイセリアゴノレア特異的プローブとのハイブリダイゼーション反応、 (4)増幅された標的DNAのビオチンと酵素標識アビジン試薬を反応させ、TMB発色試薬にて発色反応を行い、吸光度を測定、の4つのステップからなる。「コバスアンプリコア」では (1)〜(4)までの操作を全自動で、「アンプリコア」ではすべての操作を用手法で行うものである。
 本キットを用いることで淋菌とクラミジアトラコマチスを同一検体から同時に増幅し検出できるため、重複感染例を早期に診断でき、感染の拡大を予防できる。さらに、臨床所見、 問診またはその他の検査では感染因子の鑑別が困難なものに対しても、治療法の選択、淋菌とクラミジアトラコマチスの重複感染者に対する治療効果判定が可能となる。別々に 検査を行った場合に比べて患者の再受診の手間、コストの負担軽減や治療期間の短縮などが期待でき、医療費の削減に繋がるものと考えられる。
 「コバスアンプリコアSTD-1クラミジアトラコマチス ナイセリアゴノレア」、「アンプリコアSTD-1クラミジアトラコマチス ナイセリアゴノレア」と、すでに保険収載済みである 「アプティマCombo2クラミジア/ゴノレア(TMA法)」との比較において、女子子宮頸管スワブ検体および男子尿検体における判定結果の一致率はいずれも96%以上と良好であった。 また、「コバスアンプリコアSTD-1 クラミジアトラコマチス ナイセリアゴノレア」と「アンプリコアSTD-1 クラミジアトラコマチス ナイセリアゴノレア」の一致率は100%で あった。

【保険請求上の注意】
淋菌およびクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査
ア 「5」の淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、クラミジア・トラコマチス感染症若しくは淋菌感染症が疑われる患者又はクラミジア・トラコマチスと 淋菌による重複感染が疑われる患者であって、臨床所見、問診又はその他の検査によっては感染因子の鑑別が困難なものに対して治療法選択のために実施した場合及びクラミジア・ トラコマチスと淋菌の重複感染者に対して治療効果判定に実施した場合に算定できる。
 ただし、区分「D012」感染症免疫学的検査の「21」の淋菌同定精密検査、同区分「21」のクラミジアトラコマチス抗原精密測定、本区分「2」の淋菌核酸同定精密検査、クラミジ アトラコマチス核酸同定精密検査、「3」の淋菌核酸増幅同定精密検査又はクラミジアトラコマチス核酸増幅同定検査を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
イ 淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、TMA法による同時増幅法並びにHPA法及びDKA法による同時検出法又はPCR法による同時増幅法及び核酸ハイブリ ダイゼーション法による同時検出法による。淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、泌尿器又は生殖器からの検体によるものである。ただし、男子尿は 含み女子尿は含まない。

 

ヘモグロビン及びトランスフェリン精密測定(適応先区分D003「11」)(区分E-2)

平成18年10月1日より適用  糞便検査
保険点数:75点
製品名:ネスコート ヘモ Plus
    ネスコート トランスフェリン Plus
製造販売元:アルフレッサ ファーマ株式会社  TEL 06-6941-0308
測定法:金コロイド凝集法     定量検査

「ネスコート ヘモ Plus 」
  包装単位:2400回(実質測定可能数2288テスト/キット)、他に1200回用 
結果が出るまでの時間:10分以内  自動化:可(専用測定装置ヘモテクトNS-Plus C 使用)
検体:便
同時再現性:15%以下
測定範囲: 20〜1200ng/mL(4〜240μg/g便に相当)
(専用測定装置ヘモテクトNS-Plus C 使用の場合)
参考正常値:100ng/mL(20μg/g便に相当)未満

「ネスコート トランスフェリン Plus」
包装単位: 600回(実質測定可能数572テスト/キット)
結果が出るまでの時間:10分以内 自動化:可(専用測定装置ヘモテクトNS-Plus C 使用)
検体:便
同時再現性:15%以下
測定範囲: 5〜500ng/mL
(専用測定装置ヘモテクトNS-Plus C 使用の場合)
参考正常値:50ng/mL(10μg/g便に相当)未満

【特徴】
 便潜血検査は大腸がんなどの消化管疾患の診断に有用で、現在、主に抗体を利用した免疫学的方法によるヘモグロビンの測定が行われている。しかしヘモグロビン単独の 検査では、糞便中の腸内細菌や粘液成分のムチン等による抗原性の変化で偽陰性化が起こりうることから、消化管出血に特異的で細菌抵抗性があり、ヘモグロビンに比べて抗原性の 低下が少ないトランスフェリン検査が実施されるようになった。実際、ヘモグロビン及びトランスフェリンの両物質を測定することで便潜血検査の正確度が増し、大腸がんなどの 消化管疾患の発見率が向上したとの報告がある。
 ヘモグロビン精密測定はラテックス凝集法、金コロイド凝集法を用いた測定法が、トランスフェリン精密測定についてはラテックス凝集法を用いた測定法がすでに保険収載され ている。本法は、トランスフェリン測定において、従来のラテックス凝集法とは異なり金コロイド凝集法を用いるものである。ヘモグロビン精密測定については前述の如くすでに 金コロイド凝集法によるものが保険収載されているが、トランフェリンが単独で検査されることはなく、通常はヘモグロビンと併せて検査が行われるため、今回ヘモグロビン及び トランスフェリンの両者を精密測定するということで、保険収載された。
 ヘモグロビン及びトランスフェリン検査は糞便を検体とするものであるため、汚染やキャリーオーバー などの問題から専用採便容器を用いた専用機器による自動測定が主流になっている。本試薬も「専用採便容器および便潜血専用機器による糞便中のヘモグロビン及びトランス フェリン自動測定法」に対応しており、ヘモグロビン精密検査、トランスフェリン精密検査ともに金コロイド凝集法を用いる。1本の採便容器で2項目を同時測定することが 可能であるが、従来発売されているものとは異なり、両試薬が別々のキットになっているため、2項目を選択的に使い分けて測定することができる。従来のラテックス凝集法 (トランスフェリン)、金コロイド凝集法(ヘモグロビン)との相関は両項目ともに良好である。なお、ヘモグロビン及びトランスフェリン精密検査において、本金コロイド 凝集法では測定に使用する試薬(主に抗体)が従来のラテックス凝集法に比べて少量(計算上、1テストあたり約750分の1)で測定可能であり、試薬にかかる費用がより安価で あるとされる。

【保険請求上の注意】
 ヘモグロビン及びトランスフェリンを金コロイド凝集法による定量法にて行った場合は、本区分「11」のヘモグロビン及びトランスフェリン精密測定により算定する。

 

フェリチン精密測定(適応先区分D007「26」)(区分E-2)

平成18年10月1日より適用  内分泌学的検査
保険点数:120点
製品名:ネスコートGC フェリチン
製造販売元:アルフレッサ ファーマ株式会社  TEL 06-6941-0308
測定法:金コロイド凝集法   定量検査
包装単位:200テスト用(実質測定可能数151テスト/キット)
結果が出るまでの時間:10分  自動化:可(汎用自動分析装置)
検体:血清または血漿
同時再現性:10%以下
測定範囲: 10〜1000ng/mL
参考正常値:男性40〜100ng/mL、女性20〜70ng/mL

【特徴】
 フェリチンはアポフェリチンの中に鉄が挿入されている蛋白である。本蛋白は肝、脾、骨髄などのマクロファージ中に存在し、鉄の供給源となる。フェリチンから放出された 鉄は主に造血、特にヘモグロビンの合成に用いられる。フェリチンは血液中に微量存在し、臨床的には体内の貯蔵鉄の量を反映する。したがって、体内の貯蔵鉄が枯渇する鉄欠乏性 貧血の診断に有用である。また、ある種の悪性腫瘍や白血病では細胞からフェリチンが放出されて血液中に増加するため、腫瘍マーカーとしても使用される。さらに、肝炎、 血球貪食症候群および成人Still病でも高値になり、臨床応用されている。
 従来から血清フェリチンは抗原抗体反応を原理としたラテックス凝集比濁反応や化学発光免疫法などを 用いて専用機器で測定されている。また、最近ではラテックス凝集比濁反応を用いた汎用生化学自動分析装置でも測定されており、すでに少なくとも3種類の測定キットが発売 されている。本法は、従来法と同様に抗原抗体法を用いて汎用生化学自動分析装置で分析するものであるが、本測定法が従来と異なる点は、測定原理としてラテックス凝集法で なく金コロイド凝集反応を用いていることである。本測定法と従来のラテックス凝集法との間における測定値の相関は、相関係数 r=0.997と極めて良好であった。本法のフェリチン 測定値は極めて変動が少なく、また、測定に使用する試薬(主に抗フェリチン抗体)が従来のラテックス法に比べて少量で測定可能であり、試薬にかかる費用がより安価であると される。

【保険請求上の注意】
 フェリチン検査を金コロイド凝集法による定量法にて行った場合は、本区分「26」のフェリチン精密測定により算定する。

 

βクロスラプス精密測定(準用区分先D008「16」)(区分E-3)

平成18年8月1日より適用  内分泌学的検査
保険点数:170点 
製品名:フレライザ○R βクロスラプス−N○R
製造元:Nordic Bioscience Diagnostics A/S, Denmark
製造販売元:富士レビオ株式会社  TEL 03-5695-9210
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法)   定量検査
包装単位:96テスト/キット(二重テストでは41テスト/キット)
結果が出るまでの時間:2時間30分  自動化:可(ELISAの汎用機)
検体:血清または血漿
同時再現性:10%以下
測定範囲: 0.075ng/mL〜約2.5ng/mL(βクロスラプス標準液Fの表示値)
参考カットオフ値:26.7%

【特徴】
 本法は、1ステップ酵素免疫測定法(ELISA)により、血中のβクロスラプス値を測定するものである。ストレプトアビジンを結合させたプレート(固相)に検体と 2種類の抗体混合液(ビオチン結合モノクローナル抗体および酵素標識モノクローナル抗体)を加えて反応させ、基質(テトラメチルベンジジン;TMB)を加えて酵素反応を 行った後、吸光度により測定する。この値からβクロスラプス標準液A〜Fの吸光度により作成した標準曲線を基に検体中のβクロスラプス濃度を求める。
 βクロスラプスは、骨吸収過程において、骨マトリックスI型コラーゲンが破骨細胞由来カテプシンK及びその他の非特異的プロテアーゼの作用により分解されて生じる ペプチド断片内のアスパラギン酸がβ転移して生じた8個のアミノ酸からなるペプチドであり、血液中に放出された後、尿中に排泄される。また、その濃度は骨吸収の程度を 反映することから、骨吸収マーカーとして位置付けられる。
 尿中のβクロスラプス測定については、骨吸収の定量的指標として既に平成15年2月に保険適用がなされている。このβクロスラプス精密測定は尿中で測定される物質と同一で 使用目的、効能効果も同一であり、同等の有用性を有するが、血中濃度を直接測定するものであり、尿中のβクロスラプス測定で行われる尿量補正等の必要はない。骨吸収抑制療法の 治療効果判定及び経過観察に有用とされており、骨粗鬆症におけるホルモン補充療法及びビスフォスフォネート療法等、骨吸収抑制能を有する薬物療法の治療効果判定又は 治療経過観察に使用されている。治療開始前および治療開始3ヶ月から6ヵ月後に採取した検体中のβクロスラプス測定値を用いて変化率(%)を算出し、 治療効果の判定に用いる。

【保険請求上の注意】
 ア βクロスラプス精密測定は,区分「D008」内分泌学的検査の「16」の尿中βクロスラプス精密測定に準じて算定できる。
 イ βクロスラプス精密測定は,骨粗鬆症におけるホルモン補充療法及びビスフォスフォネート療法等,骨吸収抑制能を有する薬物療法の治療効果判定又は治療経過観察を行った 場合に算定できる。ただし,治療開始前においては1回,その後は6ヵ月以内に1回に限り算定できる。
 なお,尿中βクロスラプス精密測定と併せて実施した場合は,主たるもののみ 算定する。

 

イヌリン(準用先区分D015「11」)(区分E-3)

平成18年7月1日より適用  血液化学検査
保険点数:120点
製品名:ダイヤカラー・イヌリン
製造販売元:東洋紡績(株)  電話:06-6348-3335
測定方法:酵素法    定量試験(測定範囲0.5〜30 mg/dL)
包装単位:666テスト(試薬ロスを差し引くと528テスト)
イヌリンクリアランスとしての参考基準範囲
  男性:72〜176mL/min/1.73m2(2は肩付き文字)
  女性:81〜137mL/min/1.73m2(2は肩付き文字)
  (Levey, AS. Kidney Int 1990 ; 38 : 167-184 から引用)
結果が出るまでの時間:3時間     自動化:可(汎用自動分析装置)
同時再現性:15%以下
検体:血清、尿

 *:「商品名:イヌリード注」も平成18年6月1日、新医薬品の腎機能検査用薬として保険収載された。
    効能効果 :糸球体濾過量の測定による腎機能検査
    製造販売元:(株)富士薬品 電話:048-851-7200

【特徴】
 本法は、血清及び尿中(蓄尿)のイヌリン濃度を測定するもので、測定結果から腎糸球体濾過値(GFR)を算出し、腎機能の評価を行う。被検者にイヌリン製剤 「イヌリード注」(4g/40mL)を添付の日局生理食塩水360mLに希釈して点滴静注した後、一定時間をおいて、血清及び尿中(蓄尿)のイヌリン濃度を測定する。希釈検体を用い、 以下の酵素法により測定する。イヌリナーゼによりイヌリンから生成されたフルクトースにフルクトースデヒドロゲナーゼを作用させると、還元型1-m-PMSが生成される。 溶存酸素下にこの還元型1-m-PMSから生じた過酸化水素は、ペルオキシダーゼの作用でN-エチル−N(2-ヒドロキシン-3スルホプロピル)-m-トルイジンと4-アミノアンチピリンとを 酸化縮合させる。これをキノン色素に変換して比色定量し、標準液からイヌリン濃度を決定する。
 血管内に注入されたイヌリンは血漿蛋白とは結合せずに糸球体で濾過され、尿細管の分泌・再吸収の影響を受けずに尿中に排泄されることから、GFR測定に理想的な物質である。 本邦では、GFR(糸球体濾過率)を示す腎クリアランスの測定には、体内成分であるクレアチニンを指標とするクレアチニンクレアランス(Ccr)が汎用されている。しかし、 クレアチニンは、尿細管からの分泌もあるためCcrは必ずしも正確なGFRを反映しているとはいえず、腎疾患患者、腎移植患者、肝硬変患者では高値を示し、蛋白質食、薬剤の 影響を受けるとの報告がある。一方、欧米ではGFRの測定にはイヌリンクリアランス(Cin)が用いられており、腎機能の指標として広く用いられている。また、他のGFR診断薬の 妥当性を検証する際にも基準法として使用されている。なお、これまでイヌリン測定に用いられてきたアンスロン法との比較では、本測定法と有意差を認めていない。

【保険請求上の注意】
 ア イヌリンは、区分「D007」に準じ、検査料については、区分「D015」血漿蛋白免疫学的検査の「11」に準じて算定できる。
 イ イヌリンは、区分「D007」血液化学検査「1」の尿素窒素(BUN)又は同区分「1」のクレアチニンにより腎機能低下が疑われた場合に、6月に1回に限り算定できる。 ただし、区分「D007」血液化学検査「1」のクレアチニン(腎クリアランス測定の目的で行い、血清及び尿を同時に測定する場合に限る。)又は区分「D286」肝及び腎の クリアランステスト(腎クリアランステストに限る。)を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。

 

淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査(適応先区分D013「10」)(区分E-3)

平成18年2月1日より適用
保険点数:300点    定性検査
製品名:アプティマ Combo 2 クラミジア/ゴノレア
製造元:Gen-Probe Incorporated
製造販売元:レビオジェン(株)
発売元:富士レビオ(株)      電話:03-5695-9210
測定方法:核酸増幅法:TMA(Transcription Mediated Amplification)法
検出法:HPA(Hybridization Protection Assay)法及びDKA(Dual Kinetic Assay)法の組み合わせ
包装単位:Aセット、Bセット100回分
結果が出るまでの時間:約5時間    自動化:不可
検体:尿、子宮頚管擦過物又は男性尿道擦過物

【特徴】
 クラミジアトラコマチス(chlamydia tracomatis)及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は、男性では主に尿道炎、女性では主に子宮頚管炎などを引き起こす性感染症であり、 近年世界的な蔓延が指摘されている。
 これまで性器クラミジア感染症及び淋菌感染症の診断は、臨床所見により感染因子を推定し、クラミジア同定検査又は淋菌同定検査の どちらか一方が実施されている。近年の淋菌感染症及び性器クラミジア感染症が蔓延している状況下において、ハイリスク患者群は淋菌とクラミジアの重複感染の可能性も高い。
 本キットは、標的物質のみを特異的に捕捉回収する検体前処理技術であるTCS(Target Capture System)法、RNAを標的とする遺伝子増幅技術であるTMA (Transcription Mediated Amplification)法、そして2つの異なる標的物質を同時に分別検出する化学発光測定技術であるHPA(Hybridization Protection Assay)及びDKA (Dual Kinetic Assay)法の4つの技術を組み合わせることにより、1つの検体から抽出・捕捉・増幅・検出を1つの試験管内で行い、クラミジアトラコマチス及び淋菌を 同時に鑑別できる。本キットの国内臨床試験において、男性尿検体でのクラミジア、淋菌の陽性率はそれぞれ25.8%、53.8%であり、重複陽性率は20.5%、このうち、 クラミジア陽性例の淋菌重複感染率は44.3%、淋菌陽性例のクラミジア重複感染率は27.6%であった。一方、女性スワブ検体でのクラミジア、淋菌の陽性率はそれぞれ 67.6%、25.3%であり、重複陽性率は8.8%、このうち、クラミジア陽性例の淋菌重複感染率は11.5%、淋菌陽性例のクラミジア重複感染率は27.3%であった。また、 臨床診断の結果と遺伝子増幅検査である本品の判定結果との比較において、臨床症状による診断のみではクラミジアまたは淋菌感染を見落とす或いは判断できない可能性の あることが示唆された。なお、本キットとPCR法による測定では同等の一致率が得られ、男女共に尿検体とスワブ検体の相関は同等との結果が得られている。

【保険請求上の注意】
ア 淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、区分「D023」の微生物核酸同定・定量検査に準じ、区分「D026」検体検査判断料の「6」の 微生物学的検査判断料を算定する。ただし、検査料については、区分「D013」肝炎ウイルス関連検査の「10」に準じて算定できる。
イ 淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、クラミジア・トラコマチス感染症又は淋菌感染症が疑われる患者及びクラミジア・トラコマチスと 淋菌による重複感染が疑われる患者であって、臨床所見、問診、又はその他の検査によっては感染因子の鑑別が困難なものに対して治療法選択のために実施した場合並びに クラミジア・トラコマチスと淋菌の重複感染者に対して治療効果判定に実施した場合に算定できる。ただし、区分「D012」感染症血清反応の「18」の淋菌同定精密検査、 同区分「21」のクラミジアトラコマチス抗原精密測定、区分「D023」微生物核酸同定・定量検査の「2」の淋菌核酸同定精密検査、クラミジアトラコマチス核酸同定 精密検査、同区分「3」の淋菌核酸増幅同定精密検査、又はクラミジアトラコマチス核酸増幅同定検査を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
ウ 淋菌及びクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査は、TMA法による同時増幅法とHPA法及びDKA法による同時検出法により、泌尿器又は生殖器からの 検体による。ただし、男性尿は含み女性尿は含まない。

 

プロカルシトニン(PCT)(準用先区分D007「43」)(E-3)

平成18年2月1日より適用
保険点数:320点    定量検査
製品名:ブラームスLUMI test PCT
製造元:B・R・A・H・M・S Aktiengesellshaft
販売元:和光純薬工業(株)     電話:06-6203-3741
測定方法:免疫化学発光法
包装単位:50回用(二重測定時)
結果が出るまでの時間:2.5時間   自動化:不可
検体:血清または血漿
同時再現性:12%以下       測定範囲:0.3〜500ng/mL
敗血症(細菌性)鑑別診断のカットオフ値:0.5ng/mL
敗血症(細菌性)重症度判定(severe sepsisとsepsisの鑑別)のカットオフ値:2.0ng/mL

【特徴】
 本品は免疫化学発光法により、血清または血漿中のプロカルシトニンを測定するキットである。抗カタカルシン抗体(マウス)が固定化されたテストチューブに検体 (血清または血漿)とアクリジニウム標識抗カルシトニン抗体(マウス)(標識抗体)を加え、テストチューブ上に形成された「抗カタカルシン抗体−プロカルシト ニン−アクリジニウム標識抗カルシトニン抗体」の複合体を、B/F分離後、アクリジニウムをアルカリ性下で過酸化水素により発光させ、その化学発光量を測定する。
 プロカルシトニン(PCT)はカルシウム調節ホルモンであるカルシトニンの前躯体であり、ホルモン活性は有していない。正常な代謝状態では甲状腺のC細胞で生成され、 代謝によりホルモン活性を持つカルシトニンとして分泌される。また、正常な状態では細胞内で分解され血中には放出されず、健常人における血漿中濃度は検出限界以下 である。1993年Bohuonらは、敗血症および感染症患者において血中プロカルシトニン濃度が上昇することを始めて報告し、その後多数の臨床研究により、細菌感染症および 敗血症患者の血中プロカルシトニン濃度は上昇するが、ウイルス感染や真菌感染症では上昇しないことが報告された。また、日本国内の臨床研究において、血中プロカルシ トニン測定は細菌感染症の鑑別診断および重症評価に有用であることが報告された。しかし、細菌感染症においてプロカルシトニンが産生される部位についてはまだ解明さ れていない。甲状腺摘出を受けた患者においても重度の感染症では高濃度のプロカルシトニンが検出されることから、感染症で誘導されるプロカルシトニンは甲状腺で産生 されるものではないと考えられる。最近の研究では、エンドトキシン、TNF、IL−1,2,6などのサイトカインにより単核白血球からプロカルシトニンのmRNAが 誘導されること、エンドトキシンにより肝臓からプロカルシトニンが産生されることなどが明らかになってきている。現在、細菌感染症の鑑別診断には主として培養検査が 行われているが、この検査は結果報告までに時間がかかり、感染症に対する治療が遅れることから細菌感染症を迅速に鑑別する診断法が要望されていた。感染症の疑いのある 患者に対し、細菌感染群と細菌非感染群を対象としてエンドトキシン検査との比較試験を行った結果では、本検査が有意に優れていることが示された。また、臓器機能障害・ 循環障害あるいは血圧低下を伴ったsevere sepsis群では、これらの症状を伴わないSIRS患者であるsepsis群に比較し、高い診断効率を示した。

【保険請求上の注意】
ア プロカルシトニン(PCT)は、区分「D007」血液化学検査の「43」に準じて算定できる。
イ プロカルシトニン(PCT)は、敗血症(細菌性)を疑う患者を対象として測定した場合に算定できる。ただし、区分「D007」血液化学検査の「43」エンドトキシン 定量検査を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。

結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ測定(準用先区分 D023「4」)(区分E-3)

平成18 年1 月1 日より適用:血漿蛋白免疫学的検査
保険点数:410点             定量試験
製品名:クオンテイフェロンTB-2G
製造元:Cellestis Ltd. (Australia)
販売元:(株)日本ビーシージーサプライ  電話:03-5800-5311
総輸入発売元:(株)ニチレイ       電話:03-3248-2208
測定方法:酵素免疫測定(EIA)法     192テスト(40検体分)/キット
結果が出るまでの時間:21時間       自動化:不可
検体:全血
同時再現性:15%以下           測定範囲:0.05〜15.0 IU/mL
カットオフ値:0.35 IU/mL

【特徴】
 本法は、結核菌特異抗原と全血を共培養することにより、活性化された全血中のTリンパ球から産出された培養上清中のINF-γを酵素免疫測定(EIA)法を用いて測定する。
 今日の日本の結核は年間約3万人の患者発生と2000人以上の死亡者数を記録する。慢性疾患であり、人口比で見た発生率も米国の5倍と高く、さらに、院内・施設内集団感染事例も多く報告され、今後も継続して重要感染症として対応してゆくべき疾患の一つである。
 報告された症例を罹患臓器別に見ると肺結核が80%、肺外結核が20%である。肺結核にあっては全体の2/3の症例で喀痰の塗抹・分離培養または核酸増幅法(PCR法等)を用いた結核菌の直接証明により診断が確定している。しかし、X線所見、喀痰塗抹・分離培養で結核を確定できないが他の臨床所見でなお結核を疑う症例、肺外結核を疑う症例、さらに関節リウマチやクローン病で免疫抑制剤を投与する前やこれら薬剤投与中に結核菌感染が疑われる症例、臓器移植および骨髄移植が行われる症例などで、結核菌感染の有無の確定が要求される症例が多く存在するため、結核の診断や除外診断に用いる的確な検査法の開発が望まれてきた。
 クオンテイフェロンTB-2Gは「全血の結核菌特異蛋白との共培養による遊離インターフェロンγの測定」による結核菌感染の診断補助を目的に開発された体外診断薬である。検査は1)被検者全血と結核菌特異抗原を一夜培養、2)血漿中に産生されたIFN-γを酵素免疫法(ELISA)により測定すること、の2段階によって成立し、キット化された製品である。
 本キットを用いた結核患者群とBCG接種健常人群を対象とした成績からはその有病正診率は89.0%(105/118)、無病正診率は92.2%(200/217)と高かった。また、本キットとツ反検査を比較したところ、本キットの 有病正診率は92.2%(71/77)、無病正診率は92.2%(200/217)であるのに対し、ツ反検査では各々90.9%(70/77)、16.6%(36/217)であり、本法が特異性の点で格段に 優れていた。この結果はツ反検査がBCG既接種の影響を受けるのに対し、本キットは影響を受けないことを示した。1977年にBCG予防接種が中止されたデンマークでは、 国民の約2/3が未接種であるためBCGの影響を受けることなく、接触者健診のBCG非接種群における本キットとツ反の測定結果を比較できる。この国における研究では 本キットとツ反の結果は極めてよく相関し、本キットによって潜在結核患者を鋭敏に検出できることが証明された。さらに、医療従事者における潜在結核感染実態検討や 結核集団感染事例での結核感染者検出の検討では、本キットがツ反に代わって、結核菌感染を疑う症例に対する潜在性結核診断のツールとしてきわめて有用であることが 報告されている。

【保険請求上の注意】
ア 結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ測定は、区分「D015」血漿蛋白免疫学的検査に準じ、区分「D026」検体検査判断料の「5」の免疫学的検査判断料を算定する。ただし、検査料については、区分「D023」の微生物核酸同定・定量検査の「4」に準じて算定できる。
イ 結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ測定は、診察又は画像診断等により結核感染が強く疑われる患者を対象として測定した場合のみ算定できる。ただし、区分「D023」微生物核酸同定・定量検査の「4」の結核菌核酸同定精密検査又は「6」の結核菌群核酸増幅同定検査を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。

 

ペントシジン(準用先区分 D015「10」)(区分E-3)

平成18年1月1 日より適用:血液化学検査
保険点数:130点            定量試験
製品名:FSKペントシジン
製造元:(株)伏見製薬所         電話:0877-22-6231
販売元:(株)伏見製薬所         電話:0877-22-6231
測定方法:ELISA法           96テスト(23検体分)/キット
結果が出るまでの時間:4時間      自動化:不可
検体:血漿
同時再現性:8%以下          測定範囲:0.002〜2.0μg/mL
参考正常範囲:0.00915〜0.0431μg/mL

【特徴】
 本法は競合法を利用し、ELISA法により、血漿中のペントシジンを測定するキットである。ペントシジンを固相化したマイクロプレートに蛋白分解酵素で前処理した検体及び標準ペントシジン溶液を加え、更に抗ペントシジンウサギポリクロナール抗体溶液を加える。洗浄後、酵素溶液を加えて再洗浄し、発色剤を加えて吸光度を測定する。
 ペントシジンは、1989年Sellらによりヒト脳硬膜コラーゲン中から単離された蛍光性の蛋白糖化反応最終生成物(advanced glycation endoproducts:AGEs)である。次いで、末期腎不全患者の皮膚コラーゲン中に著明に増加していること、血漿中ペントシジン濃度が健常者に比較して糖尿病患者で2.5倍、末期腎不全患者で23倍に上昇していることが報告され、さらに早期の腎症(微量アルブミン尿)でも皮膚コラーゲン中のペントシジン含量は有意に増加していること、腎疾患患者の血中ペントシジン濃度が著明に増加していることなど、腎疾患におけるペントシジンの生理的意義が明らかになった。
 腎疾患は一般に初期の段階では自覚症状がないため、健診の際の尿検査や血液検査(クレアチニン、尿素窒素)などで発見されることが多い。糖尿病性早期腎症の診断には尿中のアルブミン定量精密測定、マイクロトランスフェリン精密測定、・型コラーゲン定量精密測定がすでに保険収載されているが、非糖尿病患者を対象とした初期腎症診断における検討では、血中ペントシジン濃度測定は尿中アルブミン、尿蛋白、血漿クレアチニンなどの検査マーカーに比較して最も高い診断感度を示した。
 糖尿病患者における血漿ペントシジン濃度の血糖値、血糖コントロールマーカーとの相関分析では有意な相関はみられなかったが、酸化マーカーである80Hdgとには 相関性が認められており、ペントシジンは糖化より酸化の影響をより強く受けているとも考えられる。しかしHbA1cと血漿ペントシジンとの間に相関性を認めるとする論文が 発表されている現状において、本法により糖尿病性腎症の早期診断をすることには問題が残る。従って、本検査の対象患者は非糖尿病で腎機能の低下が疑われる者 (尿蛋白(+)以上又は尿蛋白(-)で尿潜血(±)以上)のうち、血中のクレアチニン値<1.5mg/dL、尿素窒素値正常範囲の者となった。なお、本法とこれまで行われてきた HPLC法とを比較検討した結果、良好な相関を認めている。

【保険適応上の注意】
ア ペントシジンは、区分「D007」血液化学検査に準じ、区分「D026」検体検査判断料を算定する。ただし、検査料については、区分「D015」の血漿蛋白免疫学的検査の「10」に準じて算定できる。
イ ペントシジンは、区分「D007」血液化学検査の「1」の尿素窒素(BUN)又はクレアチニンにより腎機能低下(糖尿病性腎症によるものを除く。)が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる。ただし、区分「D286」の肝及び腎のクリアランステスト(尿素又はクレアチニンを用いたクリアランステストに限る。)又はシスタチンC精密測定と併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。

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