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シスタチンC 精密測定(準用先区分D015「10」)(区分E-3)

平成17年10月1日より適用
保険点数:130 点   定量試験
製品名:
1. N−ラテックスシスタチンC キット
 製造元:DADE BEHRING MARBURG GMBH
 販売元:デイド ベーリング(株) 電話:03-3537-3822
 測定法:ネフェロメトリー法
 結果が出るまでの時間:10 分
 自動化:可(ベーリングネフェロメーター用)
 同時再現性:10%以下
 検体:血清、血漿

2. イアトロCys−C
 製造元ならびに販売元:(株)三菱化学ヤトロン 電話:03-5206-1661
 測定法:ラテックス凝集比濁法
 結果が出るまでの時間:10 分
 自動化:可(汎用自動分析装置のみ)
 同時再現性:10%以下
 検体:血清、血漿

3. ネスコートGC シスタチンC
 製造元ならびに販売元:アルフレッサ ファーマ(株) 電話:06-6941-0308
 測定法:金コロイド凝集法
 結果が出るまでの時間:10 分
 自動化:可
 同時再現性:10%以下
 検体:血清、血漿

【特徴】本法は、抗原抗体反応を利用した、ネフェロメトリー法、ラテックス凝集比濁法、または金コロイド凝集法により血清中のシスタチンC 値を測定するものである。
 試薬N−ラテックスシスタチンC キットでは、ポリスチレン粒子に吸着させた抗ヒトシスタチンCポリクロナール抗体(ウサギ)と、検体中のシスタチンCとの抗原抗体反応で生じる凝集を光散乱(ネフェロメトリー)の変化量として測定し、シスタチンC濃度を算出する。
 試薬イアトロCys−Cでは、抗ヒトシスタチンCポリクロナール抗体(ウサギ)感作ラテックスと、検体中のシスタチンCとの抗原抗体反応により形成された凝集塊の濁度を光学的に測定してシスタチンC濃度を算出する。
 試薬ネスコートGC シスタチンCでは、金コロイド粒子表面上の抗シスタチンC抗体と検体中のシスタチンCとを特異的に結合させ、凝集反応過程に伴って生じた金コロイドの吸収スペクトル変化を測定してシスタチンC濃度を算出する。
 シスタチンC はシスタチンスーパーファミリーに属し、分子量13kD の塩基性低分子蛋白である。全身の有核細胞で産生され、システインプロテアーゼインヒビターとして、生理的には細胞の損傷を防いでいる。
 血清シスタチンC 濃度は糸球体濾過率(GFR)と負の相関を有しており、GFR の低下はシスタチンC 濃度を上昇させる。
 腎機能検査にはGFR、腎血漿流量、尿細管機能検査などがある。現在わが国で臨床的に用いられている主なGFR 測定法は、内因性クレアチニンクリアランス(Ccr)や外因性チオ硫酸ナトリウムクリアランス(Cthio)、イヌリンクリアランスなどがあり、また、GFR を推定するための腎機能マーカーとして、血清クレアチニン(Cr)値、血液尿素窒素(BUN)値および低分子蛋白の血清β2 ミクログロブリン(β2-m)値などが用いられている。
 Cthio を測定するには、静脈注射や正確な蓄尿が必要で患者への負担が大きく、測定操作も煩雑である。Ccr を算出するためには、標準的には24 時間、簡便法でも1 時間の蓄尿が必要で患者の拘束時間も長く、また腎機能低下の過程で尿細管からのCr 分泌が増加するなどの問題点も指摘されている。血清中の測定を行うものでは、Cr 値は個体の筋肉量に関係するため、運動、性別、年齢の影響を受け、またCr 値1mg/dL 以下の単位はGFR の低下を反映しにくいブラインド領域と呼ばれている。BUN 値は食事からの蛋白摂取量の影響を強く受けやすく、β2-m 値は、悪性腫瘍および自己免疫疾患の場合に上昇するという腎前性の影響があるなど、いずれも必ずしも理想的なGFR の血清マーカーではない。Cthio によるGFR を基準にしたとき、血清シスタチンC 濃度測定は糸球体機能検査として広く普及しているCcr と同等、もしくはそれ以上の腎機能障害の診断能力を有している。また、1/シスタチンC とGFR との相関性は、GFR と1/Cr およびGFR と1/β2-m の相関性より高く、シスタチンC の腎機能マーカーとしての有用性は高い。

【保険請求上の注意】シスタチンC精密測定は、ネフェロメトリー法、ラテックス凝集比濁法、または金コロイド凝集法により実施した場合に、区分「D007」に準じ、検査料については、区分「D015」の血漿蛋白免疫学的検査の「10」に準じて算定できる。
 シスタチンC精密測定は、血清中尿素窒素(BUN)又はクレアチニン測定により腎機能低下が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる。ただし、区分「D286」 の肝及び腎のクリアランステスト(尿素又はクレアチニンを用いたクリアランステストに限る。)を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。

 

レムナント様リポ蛋白(RLP)コレステロール(適応先区分D007「36」)(区分E-2)

平成17 年10 月1 日より適用
保険点数:230 点   定量試験
製品名:デタミナーRLP-C
製造元:協和メディックス(株) 電話:03-6219-7611
販売元:協和メディックス(株) 電話:03-6219-7611
測定法:酵素法
結果が出るまでの時間:30 分  自動化:汎用自動分析装置
同時再現性:1.3〜2.6%
検体:血清

【特徴】本法は、血清中のレムナント様リポ蛋白(Remnant Lipoprotein, RLP)を界面活性剤とホスフォリパーゼD を使用して選択的に分離し、その後にRLP 中のコレステロールを測定するものである。既に保険収載されている免疫吸着法-酵素法では、まず特異抗体を用いて血清中の正常なリポ蛋白を吸着し、残りのRLP を分離した後にRLP中のコレステロール濃度を測定してRLP を測定している。
 レムナント様リポ蛋白(Remnant Lipoprotein, RLP)は腸管から吸収された脂質を運搬するカイロミクロンと肝臓で合成された超低比重リポ蛋白(VLDL)が、毛細血管内でリポ蛋白リパーゼにより水解された中間代謝物質である。一方、動脈硬化とくに冠動脈疾患の危険因子には加齢、糖尿病、高血圧、喫煙、高LDL 血症や低HDL血症が知られている。近年、これらの危機因子とは別に新たなものが提唱されており、その一つがRLP である。冠動脈疾患の発症と食後高脂血症との関連が報告されているが、これに関わるリポ蛋白がRLP である。RLP が血液中でうっ滞すると血管内膜に沈着し動脈硬化を進展させると考えられており、RLP が増加する病態としては家族性III 型高脂血症や糖尿病があげられる。
 本測定方法では検体中からのRLP の吸着を行うなどの前処理が不要なため、測定結果判定までの時間が210 分から75 分と約1/3 に短縮され迅速性に優れている。また、手技も簡易化され、かつ汎用自動分析装置で測定可能であるため、測定誤差がより少なく精度が向上する。なお、本RLP 測定方法と既存のRLP 測定方法を比較検討した結果、良好な相関を認めている。

【保険請求上の注意】(36)のレムナント様リポ蛋白(RLP)コレステロールは免疫吸着法−酵素法又は酵素法により実施し、3月に1回を限度として算定できる。

 

クラミジア・ニューモニエIgM抗体価精密測定 (準用先区分D012-21)(区分D-1)

平成17年1月1日より適用
保険点数:180点          定性検査
製品名:ヒタザイム C.ニューモニエ Ab−IgM
製造元:日立化成工業(株)
発売元:(株)カイノス   (株)TEL:03-3816-4485
測定法:ELISA法 
結果がでるまでの時間:約4時間   自動化:可
検体:血清
【特徴】ELISA法により血清中の抗クラミジア・ニューモニエIgM抗体を検出する。クラミジア・ニューモニエは市中肺炎のうち、非定型肺炎の起炎菌として頻度も高く、適切な抗菌薬選択のためにも、とくに細菌性肺炎との鑑別が重要である。呼吸器感染症では適切な抗菌薬が使用されないと重症化したり、薬剤耐性菌の発現など、重大な問題を起こす可能性があり、また薬剤の投与期間が不十分だと、症状が遷延したり、再燃、潜伏感染化をきたし、周囲への感染拡大も予想される。クラミジア・ニューモニエの診断には、分離培養法、特異的抗原検出、PCR法、直接蛍光抗体法などが用いられてきたが、抗原検査は検体採取が困難であり、いずれの検査法も煩雑で時間がかかるため、研究目的に利用されているのが現状である。従がって、通常の呼吸器感染症においては起炎菌を同定せずに、推定原因微生物に対する抗菌薬を投与するempiric therapyが行われるのが一般的である。クラミジア・ニューモニエでは、初感染の場合、IgM抗体は感染後2〜3週間後から急激に上昇し、次いでIgG抗体やIgA抗体が感染後4〜5週間後からゆっくりと上昇する。すでにIgG抗体及びIgA抗体は保険収載されているが、これらにより感染を確定するには原則としてペア血清を採取・検査する必要があり、しかも診断までに長い日数を要し、感度的にも問題がある。これに対しIgM抗体は、シングル血清により早期に診断が可能であり、診断確定により早期に治療が開始でき、感染の蔓延も予防できる。 比較的簡便で迅速診断が可能で、特異性も高い。また、IgM抗体検査を実施することでIgG抗体及びIgA抗体によるペア血清検査を実施する必要が無くなると考えられる。
【保険請求上の注意】ア 抗クラミジア・ニューモニエIgM抗体価精密測定は,区分「D012」感染症血清反応の「21」に準じて算定できる。
イ 「10」のクラミジア・ニューモニエIgG抗体価精密測定またはクラミジア・ニューモニエIgA抗体価精密測定のうち1項目または2項目を,抗クラミジア・ニューモニエIgM抗体価精密測定と同時に実施した場合は,主たるもののみ算定する。

 

尿中肺炎球菌莢膜抗原測定 (準用先区分D012-23)(区分D-1)

平成17年1月1日より適用
保険点数:200点          定性検査
製品名:BinaxNOW肺炎球菌
製造元:Binax Inc. (アメリカ)   TEL(800)323-3199
輸入先:アスカ純薬(株)      電話:03-3254-0575
発売元:三共(株)         電話:03-5225-7111
測定法:免疫クロマト法       12テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:15分     自動化:不可
検体:尿
【特徴】肺炎球菌莢膜抗体を利用した免疫学的抗原抗体反応による免疫クロマト法を用いて、肺炎球菌莢膜抗原を検出する。
 市中肺炎の原因菌のうち肺炎球菌は、検出頻度が約25%と第一位を占めると同時に、適切な抗菌薬使用を誤ると重症化する危険性の高いことは知られている。培養法では菌の同定結果が出るまで急いでも2日間程度を要し、初期治療の選択には参考にならない。一方、尿中肺炎球菌莢膜抗原の検出は尿検体採取後30分程度で結果が得られるので的確な初期治療薬の選択が可能になる。本検査法は、尿を検体とするため侵襲性はなく、喀痰等の呼吸器系検体が得られない場合にも測定可能である。しかも特別な機器も必要とせず、検査結果を目視判定できる利点があり、国内相関性試験から喀痰培養法との比較において感度61.3%(19/31)、特異度72.1%(98/136)、血液培養との比較において感度80.0%(4/5)、特異度73.3%(98/133)であった。
 感染発症日から0〜2日後では、尿中抗原量が十分でないことによる偽陰性、上気道・口腔内に常在する肺炎球菌が培養されることによる喀痰培養の偽陽性を呈することがある。肺炎球菌は自己融解酵素を持つため死滅しやすく、検体の採取状況や取り扱いによっては培養法で検出されないこともあるが、肺炎球菌の「菌そのもの」ではなく「莢膜抗原」を検出するため、自己融解酵素による影響を受けないと考えられる。さらに、培養法では検体採取前に抗菌薬が使用されている場合、原因菌の検出ができないことが多いが、「莢膜抗原」を検出することから、事前の抗菌薬投与による影響を受けないことも確認されている。従って、培養法では検出できない場合であっても、肺炎球菌莢膜抗原として検出することが可能である。尿検体採取後30分(反応時間15分)程度で結果が得られるため、エンピリック療法を行うことなく、的確な初期治療薬の選択が出来る
【保険請求上の注意】尿中肺炎球菌莢膜抗原は,免疫クロマト法により実施した場合に,区分「D012」感染症血清反応の「23」に準じて算定できる。

 

クラミジア・トラコマチス核酸増幅同定検査 (準用先区分D023-3)(区分D-2)

平成16年11月1日より適用
保険点数:240点             定性検査
製品名:BDプローブテックET クラミジア・トラコマチス 
製造元:Becton Dickinson and Company 
発売元:日本ベクトン・ディッキンソン (株)  TEL:0120-855590
測定法:SDA法        20テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:約3時間
自動化:増幅・検出工程は自動(全自動化の予定あり)
検体:尿、子宮頚管擦過物、男性尿道擦過物
【特徴】採取した検体をDNA抽出液が入っている溶液(BDプローブテックET CT/GC希釈液入りチューブ)の中に入れ、SDA(Strand Displacement Amplification)法によりDNAを増幅して抽出する。
 かつては、性感染症は歓楽街を中心に一部の限られた人々の感染症と思われていたが、いまやこの性感染症は一般の人々の生活の中に急速に広がってきている。現在流行しているクラミジア・トラコマチス感染症は若年層(15〜29歳)、特に女性における発生頻度が高いと報告されている。しかも、最近では自覚症状がない無症候感染症が蔓延しており、若年層の女性がこの無症候のクラミジア・トラコマチスに長い間感染した場合、卵管は閉塞し、不妊症に至る可能性が高くなる。
 本法の感度・特異性は他の核酸増幅法(PCR法およびLCR法)と比較してほぼ同等な成績であり、良好な相関を示した。女性尿検体を用いた検討でも、既存法であるLCx(LCR)と感度・特異性に関してほぼ同等の成績を示したことにより、採取が容易な尿検査で測定が可能である。また、84種類の微生物を用いた交差反応試験では、ターゲットとするクラミジア・トラコマチス検体以外に陽性を示すものは無かった。
【保険請求上の注意】「3」のクラミジアトラコマチス核酸増幅同定検査と「2」のクラミジアトラコマチス核酸同定精密検査または区分「D012」感染症血清反応の「21」のクラミジアトラコマチス抗原精密測定を併せて測定した場合は,主なもののみ算定する。なお,クラミジアトラコマチス核酸増幅同定検査は,PCR法,LCR法またはSDA法による。

 

抗IA−2抗体精密測定 (準用先区分D008-18)(区分D-1)

平成16年11月1日より適用
保険点数:230点            定量試験
製品名:IA−2Ab「コスミック」
製造元:RSR Ltd.(英国)   TEL:029-2073-2076
販売元:(株)コスミック コーポレーション  TEL:03-5802-5971
測定法:RIA法
結果が出るまでの時間:19.5〜25.5時間  自動化:不可
測定範囲:0.4U/mL〜50U/mL       基準値:0.4U/mL未満
同時再現性:0.79〜6.97%         日差再現性:2.50〜3.45%
検体:血清
【特徴】本法は抗ヒトIgGによる定量的ラジオイムノアッセイ法により血清中の抗IA-2抗体を検出するもので、本試薬IA-2Ab「コスミック」は血清中の抗IA-2抗体を特異的に定量測定するキットである。 rIA-2抗原に125Iを標識することにより作成されていることから、既存のγカウンターを利用した測定が可能である。
 1型糖尿病は、主として自己免疫学的機序により膵β細胞が破壊され、インスリンの絶対的不足を来す疾患である。膵β細胞に対する自己抗体(ICA:islet cell cytoplasmic antibody)にはこれまでに、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)、抗インスリン自己抗体など10種類以上の抗体が報告されており、これらの自己抗体を検出することにより、1型糖尿病の発症予知が可能と考えられている。膵β細胞に発現している受容体タイプのチロシンホスファターゼ類似蛋白(IA-2蛋白)は、ICA陽性患者血清と膵島のcDNAライブラリーを用いた発現クローニング法によりICAに対応する抗原の一つとして同定された蛋白であり、1型糖尿病患者血清中には高率にIA-2抗原に反応する抗体(抗IA-2抗体)が存在している。
 1型糖尿病、なかでもわが国に多いとされている緩徐進行型1型糖尿病では、身体的にも主だった所見に乏しく、思春期前の小児例では感冒などのストレスを契機に病態の急激な悪化を来すものが少なくない。また、早期にインスリン治療に移行しないと身体発育障害を来したり、高血糖状態の持続により失明、腎不全、自律神経障害、虚血性心疾患、下肢切断などの合併症を引き起こすことがあり、とくに早期診断が重要となる。「日本糖尿病学会診断基準、1999年」では、1型糖尿病が疑われる場合には抗DAD抗体、膵島抗体、抗インスリン自己抗体、抗IA-2抗体、ICA512などの自己抗体を検索することを推奨しているが、こられの自己抗体のうち、現在保険収載されているものは抗GAD抗体のみである。しかし抗GAD抗体の陽性率は45.5〜50.9%に留まり、1型糖尿病が疑われる患者の約半数が経過観察されることになる。一方、抗IA-2抗体の陽性率は53.3〜65.5%であるが、両者を組み合わせて測定することによりその陽性率は66.7〜76.9%となり、18.4〜30.9%の抗体検出率の向上が認められる。すなわち、両抗体は補完関係にあるものと位置づけられ、両抗体を測定することで、より速やかに1型糖尿病を診断することが可能となる。抗体検査以外に1型糖尿病を診断する方法としては、C-ペプタイド(CPR)検査(血中、尿中、食事負荷後測定)やグルカゴン負荷試験があるが、いずれも病態が進行しないと判定することは困難であるとされている。抗GAD抗体陰性を確認した後に抗IA-2抗体の測定を行うことにより、抗GAD抗体陰性で抗IA-2抗体陽性の1型糖尿病を診断することが可能となる。
 なお、本測定では、自己免疫性甲状腺疾患、慢性関節リウマチ患者でも陽性になることがあるので、測定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果と合わせて総合的に判断するのが望ましい。
【保険請求上の注意】(13) 抗IA-2抗体精密測定は,すでに糖尿病の診断が確定し,かつ,「12」の抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体価精密測定の結果,陰性が確認された30歳未満の患者に対し,インスリン依存型糖尿病(IDDM)の診断に用いた場合に算定する。なお,すでに糖尿病の診断が確定し,かつ,「12」の抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体価精密測定の結果,陰性が確認された30歳以上の患者に対して算定する場合にあっては,診療報酬明細書の摘要欄にその理由および医学的根拠を詳細に記載すること。

 

淋菌核酸増幅同定精密検査 (準用先区分D023-3)(区分D-2)

平成16年11月1日より
保険点数:240点            定性検査
製品名:BDプローブテックET ナイセリア・ゴノレア
製造元:Becton Dickinson and Company 
発売元:日本ベクトン・ディッキンソン (株)  TEL:0120-855590
測定法:SDA法 
結果がでるまでの時間:約3時間
自動化:増幅・検出工程は自動(全自動化の予定あり)
検体:尿、子宮頚管擦過物、男性尿道擦過物
【特徴】採取した検体をDNA抽出液が入っている溶液(BDプローブテックET CT/GC希釈液入りチューブ)の中に入れ、SDA(Strand Displacement Amplification)法によりDNAを増幅し抽出する。
 性感染症の一つである淋菌感染症は、病原性の強い淋菌は化学療法で徐々に消されてしまい、最近では病原性の弱い菌が残っている。この結果、無症候感染症が増加してきていると言われているが、無症候感染症例の疫学調査は、現在までほとんど行われていない。淋菌感染症はクラミジア感染症と同様に卵管を閉鎖し、不妊症に至る可能性が高い。
 本法は、交差反応が無く、子宮頚管スワブのみならず、採取が容易な尿検体でも測定可能である。本法の感度・特異性は他の核酸増幅法(PCR法およびLCR法)と比較してほぼ同等な成績であり、良好な相関を示した。女性尿検体を用いた検討でも、既存法であるLCx(LCR)と感度・特異性に関してほぼ同等の成績を示したことにより、採取が容易な尿検査で測定が可能である。また、84種類の微生物を用いた交差反応試験では、ターゲットとする淋菌検体以外に陽性を示すものは無かった。
【保険請求上の注意】ア 「3」の淋菌核酸増幅同定精密検査と「2」の淋菌核酸同定精密検査,区分「D012」の「18」の淋菌同定精密検査または区分「D018」細菌培養同定検査等を併せて実施した場合は,主なもののみ算定する。イ 淋菌核酸増幅同定精密検査は,LCR法による増幅とEIA法による検出,PCR法による増幅と核酸ハイブリダイゼーション法による検出を組み合わせた方法またはSDA法による。淋菌核酸増幅同定精密検査は,泌尿器または生殖器からの検体によるものである。ただし,男子尿を含み,女子尿を含まない。

 

Major bcr-abl mRNA核酸増幅精密測定検査 (準用先区分D006-2)(区分D-1)

平成16年11月1日より適用
保険点数:1,200点
製品名:DNAプローブ「RG」Amp−CML
製造元:Gen-Probe Inc.(アメリカ)  TEL:858-410-8000
輸入・発売元:レビオ・ジェン(株)  TEL:0426-44-9621
発売元:富士レビオ(株)  TEL:03-5695-9210
測定法:TMA法 
結果がでるまでの時間:約2時間30分    自動化:不可
検体:全血
【特徴】major bcr-abl mRNAに特異的な塩基配列を鋳型とし、合成される2本鎖DNAを介して塩基配列RNAを増幅する方法である。検体としては末梢血の全血よりRNAを抽出して用いる。慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)は骨髄細胞にフィラデルフィア(Ph)染色体が出現することを特徴とし、Ph染色体上にはbcr-ablという融合遺伝子が出現する。Bcr-ablは高いチロシンキナーゼ活性を有する異常蛋白を産生し、これがCML発症の原因になっていると考えられている。現在、CMLの診断にはPh染色体あるいはbcr-abl遺伝子の検出が必須となっており、治療効果の判定ならびに再発の発見にはbcr-ablの動態をみることが有用である。FISH法のbcr-ablの検索は保険適応になっている。今回申請されたTMA法によるmajor bcr-abl mRNA核酸増幅精密測定検査(Amp-CML)は、Amp-CMLと染色体分析(G-Band法)ならびにFISH法はそれぞれ有意な正の相関を示した。また、染色体分析よりも感度の高いReal Time PCR法によるbcr-abl mRNA の定量は、海外では広く用いられ、本邦でも研究レベルでは広く行われているが体外診断用医薬品としての認可を受けていない。Amp-CMLはReal Time PCR法とも有意の正の相関を示した。
【保険請求上の注意】ア Major bcr-abl mRNA核酸増幅精密測定は,区分「D006−2」血液細胞核酸増幅同定検査(造血器腫瘍核酸増幅同定検査)(注を除く。)に準じ,区分「D026」検体検査判断料の「2」の血液学的検査判断料を算定する。ただし,検査料については,区分「D016」細胞機能検査の「9」を算定できる。なお,区分「D025」基本的検体検査実施料の「注2」に掲げる検体検査には含まれない。
イ Major bcr-abl mRNA核酸増幅精密測定は,TMA法により測定した場合に限り算定できる。

 

尿中レジオネラ抗原測定 (準用先区分D012-23)(区分D-2)

平成16年8月1日より適用
保険点数:200点            定性検査
製品名:BinaxNowレジオネラ
製造元:Binax Inc.(アメリカ)     TEL:800-323-3199
輸入先:アスカ純薬(株) 電話:03-3254-0575
発売元:三共(株)  電話:03-5225-7111
測定法:免疫クロマト法      20テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:15分    自動化:不可
検体:尿
【特徴】免疫クロマト法により尿中のレジオネラニューモフィラ血清型1LPS抗原を検出する。
 レジオネラ属は環境中に広く存在する土壌細菌で,クーリングタワー水、循環式浴槽内や温泉などで良好に発育し、とくにこれらの環境中では自由生活性アメーバなどの原生動物を宿主として増殖するため、通常の塩素消毒では死滅しない。これらレジオネラを含む水溶液がエロゾルを形成してヒトに空気感染するか、あるいは接触感染の形式により直接宿主の起動に侵入する。本菌属による臨床的発現としては重症肺炎(レジオネラ肺炎)と一過性の発熱(ポンティアック熱)が挙げられる。とくに前者は重症であり、傾眠、昏睡、幻覚などの中枢神経症状を早期から合併する傾向があり、死亡率が高い。レジオネラ菌の診断方法としては(1)菌の分離、(2)直接・間接蛍光抗体法による検体からの菌の証明、(3)菌の遺伝子の検出、(4)血中抗体価上昇の証明、(5)尿中抗原の証明がある。しかし、(1)本菌族は通常用いられる細菌培地に発育しない、(2)喀痰からの検出率が低い、(3)検出率を向上させるためには気管支鏡下肺生検や気管支肺胞洗浄液採取などの侵襲的手技が必要である、(4)血清抗体価の上昇は発病後2〜4週を要するため早期診断には用い得ない、などの理由から、侵襲性が低く、レジオネラ肺炎の早期診断が可能な検査法の保険適応が待たれていた。尿中抗原の検出は発病早期から陽性となるため、レジオネラ肺炎の早期に有用であり、検体が尿であるため採取が容易で安定した測定成績が得られる。また、本診断薬による成績と現在保険適応を受けているELISA法での成績は感度、特異度ともに良好な相関を示す。さらに、本診断薬はその測定に特別な器具を必要とせず、また、測定時間もELISA法での2〜3時間と比べ、15分と大幅に短縮され、ベッドサイドでの早期診断による早期治療開始が可能となる。
【保険請求上の注意】「23」の尿中レジオネラ抗原は,症状や所見からレジオネラ症が疑われる患者に対して,ELISA法または免疫クロマト法により実施した場合に限り1回を限度として算定する。

 

ヘリコバクター・ピロリ抗原測定 (準用先区分D012-19)(区分D-2)

平成16年8月1日より適用
保険点数:160点          定性検査
製品名:テストメイト ラピッド ピロリ抗原
製造元:わかもと製薬 (株)   電話:03-3279-0371
発売元:日本ベクトン・ディッキンソン(株)  電話:0120-855590
測定法:免疫クロマト法       20テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:10分    自動化:不可
検体:糞便
【特徴】免疫クロマト法を測定原理とした検出試薬である.
 ヘリコバクター・ピロリは慢性胃炎、消化性潰瘍の病原因子として認識されており、本菌関連の胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対するリコバクター・ピロリ除菌療法には感染診断が必須となる.ヘリコバクター・ピロリの検出法には内視鏡検査により得られた生検組織を用いるものと、呼気,血清,糞便を検体とする非侵襲的な方法とがあり,いずれもすでに保険適応になっている.通常,乳幼児期に感染し,持続感染することが知られているが,検体として糞便を用いる方法は,小児や高齢者においても検体の採取が容易で,患者の負担も少ない。
 ヘリコバクター・ピロリ糞便中抗原の測定における我が国の成績では,感染診断および治療後の除菌判定に高い精度を有することが報告されている.すでに保険適応されている方法は糞便中のヘリコバクター・ピロリ抗原をEIA法で直接検出するものである。本法とEIA法による便中抗原一致率は97.5%と良好な成績であり,さらに本法と総合判定の一致率は100%と,EIA法と同様に高い一致率を示した.本法の便中抗原検出に要する反応時間はわずか10分とEIA法の70分と比較しても短時間であり,診察中に結果を報告することが可能となる。薬剤服用を必要とする尿素呼気試験,内視鏡検査により検体を採取する組織鏡検法・培養法・迅速ウレアーゼ試験や血清中の抗体測定などに比べて安価でもある。
【保険請求上の注意】ア「19」の糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原は,EIA法または免疫クロマト法により測定した場合に限り算定する。
イ 当該検査を含むヘリコバクター・ピロリ感染診断の保険診療上の取扱いについては「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断および治療に関する取扱いについて」(平成12年10月31日保険発第180号)に即して行うこと。

 

SARSコロナウイルス核酸増幅検査(準用先区分D023-4)(区分D-1)

平成15年12月18日より適用の微生物核酸同定・定量検査
保険点数:480点          定性検査
製品名:Loopamp SARSコロナウイルス検出試薬キット
製造・発売元:栄研化学(株)     電話03-3813-5401(代表)
測定法:LAMP法          48テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:約1時間   自動化:不可
検体:糞便または鼻腔咽頭拭い液
【特徴】他のコロナウイルスとのホモロジーが低く、SARSコロナウイルスでは比較的保存されているReplicase 1B領域内にプライマーを設計し、その領域をLAMP法で核酸増幅することにより、SARSコロナウイルスをリアルタイム濁度あるいは蛍光目視で検出する。
 SARSコロナウイルスに感染しているか否かを調べる臨床検査法には、1)患者から直接ウイルスを分離する方法 2)患者血液中の抗体価を調べるウイルス抗体検査法 3)ウイルスに特有な遺伝子を同定する遺伝子検査法の3種類がある。これらの3種類の方法は操作が煩雑で、測定時間も長いなどの難点があった。
 今回、栄研化学(株)が独自に開発したRT-LAMP(Reverse Transcription Loop-Mediated Isothermal Amplification)法は、従来のRT-PCR法と比較し、6領域4つのプライマーを使うことで、標的遺伝子のみを特異的に増幅させるため増幅効率が高くなり、標的遺伝子が多量に出来るのが特徴である。RT-LAMP法はリアルタイム濁度法と蛍光目視法の2つの判定法があり、それぞれ70分で測定できる。
 SARS研究ネットワークの重点施設である香港中文大学でWHOのSARS診断基準に従ってSARSと診断された香港のSARS患者糞便検体と鼻腔咽頭拭い液についてRT-LAMP法(本キット)とRT-PCR法を比較検討した。RT-LAMP法によるリアルタイム濁度法/RT-LAMP法による蛍光目視法/RT-PCR法による有病正診率は、それぞれ81.0%(64/79)/77.2%(61/79)/84.8%(67/79)となり、鼻腔咽頭拭い液16検体では、それぞれ56.3%(9/16)/56.3%(9/16)/67.8%(11/16)となり、RT-PCR法に比べ、RT-LAMP法がほぼ同等の成績であった。また、非SARS患者の糞便5検体、鼻腔咽頭拭い液2検体について検討したところ、無病正診率は全て100%であった。
【保険請求上の注意】SARSコロナウイルス核酸増幅検査は、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法により測定した場合に限り、区分「D023」微生物核酸同定・定量検査の「4」に準じて算定できる。SARSコロナウイルス核酸増幅検査は、糞便又は鼻腔咽頭拭い液からの検体により行うものである。本検査は「感染症法に基づく医師から都道府県等への届出のための基準の改正について」(平成15年11月5日健感発第1105006号)による臨床的特徴、届出基準によりSARS感染症の患者であることが強く疑われる者に対して行った場合に、診断の確定までの間に1回を限度として算定する。ただし、発症後10日以内に他疾患であるとの診断がつかない場合は、さらに1回に限り算定できる。

 

糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原(準用先区分D012-16)(区分D-1)

平成15年11月1日より適用の感染症血清反応
保険点数:160点         定性検査
製品名:メリディアン HpSA ELISA
製造元:Meridian Bioscience, Inc. Cincinnati, Ohio, USA
輸入元:(株)テイエフビー      TEL:03-3559-2309
発売元:富士レビオ(株)        TEL:03-5695-9277
    (株)テイエフビー       TEL:03-3559-2309
測定法:ELISA法          48テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:約1時間30分   自動化:可
検体:糞便
【特徴】ウェルに固相した抗ヘリコバクター・ピロリ ポリクローナル抗体により検体中のヘリコバクター・ピロリ抗原を捕捉し、酵素標識抗体でサンドイッチする。ウェルを洗浄後、基質液を加えて発色させ、吸光度を測定又は目視判定により結果を判定する。
 現在ヘリコバクター・ピロリの除菌治療は胃潰瘍、十二指腸潰瘍において、潰瘍の治療と再発の抑制を目的として保険適用が認められている。本検査はこの除菌治療に伴う感染診断と除菌判定の両方に有用である。ヘリコバクター・ピロリの検出法はこれまで、培養法、鏡検法、迅速ウレアーゼ試験、血中抗体測定、尿中抗体測定、尿素呼気試験が保険適用されている。本検査は糞便を検体として用いる非侵襲的検査法の一つである。本検査では、抗原を直接検出することから除菌治療前の感染診断のみでなく、除菌治療後の除菌判定にも使用できる。
 本検査の感染診断時では有病正診率98.7%、無病正診率96.6%、除菌判定時では有病正診率88.6%、無病正診率97.3%と、既存の検査法とほぼ同等の性能を有した。日本ヘリコバクター学会の「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2003年改訂版」に除菌治療前および除菌治療後の感染診断法として掲載されている。小児の検査としても有用である。
【保険請求上の注意】糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原は、EIA法により測定した場合に限り、区分「D012」感染症血清反応の「16」に準じて算定できる。 当該検査を含むヘリコバクター・ピロリ感染診断の保険診療上の取扱いについては「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」(平成12年10月31日保険発第180号)に則して行うこと。
【文献】田中昭文,他:Helicobacter pylori感染診断における便中抗原測定法.医学と薬学,47:937-942,2002.

 

糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原(準用先区分D012-06)(区分D-1)

平成15年11月1日より適用の感染症血清反応
保険点数:160点           定性検査
製品名:テストメイト ピロリ抗原   EIA
製造元:わかもと製薬(株)       TEL:03-3279-0371
発売元:わかもと製薬(株)       TEL:03-3279-0371
測定法:EIA法
94テスト/キット(シングル測定)
結果が出るまでの時間:1時間10分  自動化:不可
検体:糞便
【特徴】抗ヘリコバクター・ピロリマウスモノクローナル抗体を固相化したマイクロプレートのウェルと酵素標識抗ヘリコバクター・ピロリマウスモノクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA法である。希釈糞便検体を試料として、反応後、吸光度の測定または目視により陽性・陰性を判定する。
 糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原の検出はヘリコバクター・ピロリ感染診断の臨床的有用性を有する。特に除菌治療前の感染診断および除菌治療後のヘリコバクター・ピロリ感染診断(除菌判定)に有用であることが、学術論文で報告されている。便中H. pylori抗原に特異的なモノクローナル抗体を使用しているため、特異性が高い。また、特別な機器や試薬を必要とせず、比較的短い時間で結果を得ることができる。
 本検査の感染診断時と除菌判定時における有病正診率は100%、無病正診率は100%となり、既存の検査法とほぼ同等の性能を有した。
【保険請求上の注意】同上
【文献】福田能啓他(学会報告):Helicobacter pylori感染診断における便中H. pylori抗原検出キット(テストメイトピロリ抗原EIA)の有用性.
第8回日本ヘリコバクター学会プログラム抄録集W9-4, 頁105, 2002年

 

抗抗酸菌抗体価精密測定(準用先区分D012-12)(区分D-2)

平成15年11月1日より適用の感染症血清反応
保険点数:120点           定性検査
基準範囲:2U/mL未満陰性      直線性:0.125〜32U/mL
製品名:デタミナーTBGL抗体
製造・販売元:協和メデックス(株)  TEL:03-3297-8101
測定法:EIA法            92テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:2時間30分  自動化:可能
検体:血清、血漿(EDTA、ヘパリン)
【特徴】本法は、結核菌の菌体表層の糖脂質成分TBGL抗原を固相化したマイクロタイタープレートを固相担体に用い、固相化された抗原に結合した血清または血漿中の特異抗体を酵素標識化抗体で検出するサンドイッチ型エンザイムイムノアッセイ法である。
 本キット(デタミナーTBGL抗体、エンザイムイムノアッセイ法)は、平成9年12月19日に保険適応申請が提出されたが、臨床データを追加することが望ましいということで、取り下げられた。平成13年7月1日に金コロイド免疫測定法による抗抗酸菌抗体検出試薬キット「マイコドット」が保険適用を受けたため、本キットは区分D-1からD-2に変更された。今回、臨床データを追加して再提出された。本キット(デタミナーTBGL抗体)は、マイクロタイタープレートを固相抗体に用い、固相化された抗原に結合した血清や血漿から特異抗体を酵素標識抗体で検出するEIA法である。直接検出法では菌が検出できない排菌陰性例や肺外結核例でも高い感度を有する。検体量は数μLと微量であり、妨害物質の影響はほとんど受けない。測定時間は2.5時間と迅速で、結果は数値で表示されるので客観的に判定できる。
 本キット(EIA法)とマイコドットキット(金コロイド免疫測定法)の有病正診率を比較すると、それぞれ67.1%(49/73例)/61.7%(45/73例)となり、無病正診率も93.2%(41/44例)/95.5%(42/44例)とほぼ同程度の結果が得られている。
【保険請求上の注意】特になし。
【文献】岸本寿男、守田修、中村淳一、松島敏春、副島林造:結核血清診断キット、デタミナーTBGL抗体の有用性の検討:基準値の設定.結核 74:701-706,1999

 

血清中のHBVプレコア変異及びコアプロモーター変異遺伝子同定検査(準用先区分D-023)(区分D-1)

平成15年7月1日より適用の肝炎ウイルス関連検査
保険点数:550点             定性検査
カットオフ値:HBVプレコア変異      0.1以上
       コアプロモーター変異遺伝子 0.4以上
製品名:HBV DNA検出キット(プレコア/コアプロモーター)
製造元:(株)医学生物学研究所        TEL:052-971-2081
発売元:(株)ゲノムサイエンス研究所     TEL:03-5833-3451
測定法:PCR法          32テスト/キット(シングル測定)
結果が出るまでの時間:4時間30分     自動化:可
検体:血清
【特徴】核酸増幅[PCR法]とミニシークエンス法(プレコア測定)及び核酸増幅[PCR法]と変異特異的ハイブリダイゼーション法(コアプロモーター測定)を組み合わせて、点変異を測定する。判定はELISAでの発色反応の吸光度を測定することにより行う。コアプロモーター変異は肝障害の程度と持続期間を反映し、プレコア変異は肝炎の沈静化とウイルス量の減少を反映する。B型急性肝炎では、変異型ウイルス(プレコアあるいはコアプロモーター)の感染により、重症化・劇症化しやすいことが報告されている。本キットの使用により肝性昏睡による脳症発症以前に劇症化を予測し、早期に治療を開始できる。B型慢性肝炎では、ALT値上昇などの肝炎増悪期にウイルス変異の各型を調べ、コアプロモーター野生型/プレコア野生型及びコアプロモーター野生型/プレコア変異型の組み合わせの場合にはセロコンバージョンによる自然治癒の可能性が高く、抗ウイルス薬等の治療の対象外となる。一方、コアプロモーター変異型/プレコア野生型及びコアプロモーター変異型/プレコア変異型の場合は肝炎症状が進展する恐れがあるため抗ウイルス薬等の治療を行う必要がある。このように本キットの測定で変異の有無を調べることは治療方法の選択に有用である。また、本キットはB型慢性肝炎において、従来のHBe抗原、HBe抗体の測定では判定できなかったウイルス遺伝子の変異を直接検出し、病態の把握と早期診断ができる。従来法であるHBs抗原陰性の健常人血清100例は、本キットでも全例陰性となった。また、B型慢性肝炎と診断された247例を従来法(カイロン社プローブ法)と本キットで比較検討したところ、従来法ではHBV DNA陽性が66.0%(163/247)、本キットではHBV DNA陽性が98.7%(244/247)となり、本キットが高い感度を示した。さらに本キットのPCR増幅以後の操作は、市販のELISA(マイクロプレート)用の自動機器で測定可能である。
【保険請求上の注意】B型急性肝炎患者に対しては、劇症肝炎が疑われる場合に限り、患者1人につき1回算定できる。B型慢性肝炎患者に対しては、経過観察中にALT異常値などにより肝炎増悪が疑われ、かつ、抗ウイルス薬等のB型肝炎治療薬の投与対象患者の選択のために行われた場合に限り算定できる。なお、本検査実施以降は、区分「D013」肝炎ウイルス関連検査のうちB型肝炎に関する検査(ただし抗ウイルス薬等のB型肝炎治療薬の治療効果判定に用いる検査を除く。)は、算定できない。
【文献】矢野右人,他:「PCP-A」および「PCP-B」キットを用いてのB型肝炎ウイルスのプレコア領域およびコアプロモーター領域の遺伝子変異検出の臨床的検討.肝胆膵,39:583-588,1999

 

血清中抗デスモグレイン1抗体の測定 (準用先区分D014-15) (区分D-1)

平成15年7月1日より適用の自己抗体検査
保険点数:310点          定量検査
基準範囲:Index値で14未満     カットオフ値:Index値で20未満
製品名:MESACUP デスモグレインテスト「Dsg1」
製造・発売元:(株)医学生物学研究所  TEL:052-971-2081
測定法:酵素免疫測定法        48テスト/キット(ダブル測定)
結果が出るまでの時間:約150分    自動化:可
同時再現性:1.5〜4.3%        日差再現性:4.2〜11.0%
検体:血清
【特徴】リコンビナントデスモグレイン1蛋白質を感作したマイクロカップに、検体(抗デスモグレイン1抗体)及び標準血清1、抗Dsg1抗体標準血清2を添加し、さらにペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGを添加して抗原・抗体・酵素標識抗体の免疫複合体を形成させる。これに酵素基質(過酸化水素及びテトラメチルベンチジン)を添加し、発色させる。反応停止後、吸光度(A450)を測定し、検体中の抗デスモグレイン1抗体の量を測定する。天疱瘡は現在3,000〜4,000人の患者が存在し、毎年新たに400人が発症するといわれている。天疱瘡は口腔粘膜および全身の皮膚に水疱とびらんを生じる自己免疫性水疱症で、落葉状天疱瘡と尋常性天疱瘡の2種類ある。落葉状天疱瘡は、鱗屑痴皮を伴った紅斑水疱を特徴とするが、粘膜には水疱を認めず治療に比較的良く反応する。一方、尋常性天疱瘡は弛緩性水疱と難治性・疼痛性のびらんを有し、ほぼ全例、口腔粘膜にびらん生ずる。天疱瘡の診断は水疱の状態やニコルスキー現象を臨床的にとらえる他、病理組織的に表皮内水疱を確認し、免疫組織学的に診断していた。天疱瘡には病因抗体として、抗デスモグレイン1抗体と、抗デスモグレイン3抗体が存在し、抗デスモグレイン1抗体は落葉状天疱瘡の病因抗体であることが西川、天谷などにより明らかになった。抗デスモグレイン1抗体の抗体価は落葉状天疱瘡の治療効果をよく反映し、また、臨床症状の悪化に先立って抗体価の上昇を認めることから、再燃前に治療を開始することができる。これら両抗体の存在を比較することで、粘膜優位型尋常性天疱瘡、粘膜皮膚型尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡の鑑別診断が可能となり、それぞれの病態にあわせた治療方針が確立できる。
 デスモグレイン1抗体と抗デスモグレイン3抗体のいずれもが陽性の場合は粘膜皮膚型尋常性天疱瘡、デスモグレイン1抗体が陽性で、抗デスモグレイン3抗体が陰性の場合は、落葉状天疱瘡、デスモグレイン1抗体が陰性で、抗デスモグレイン3抗体が陽性の場合は粘膜優位型尋常性天疱瘡、デスモグレイン1抗体と抗デスモグレイン3抗体のいずれもが陰性の場合は健常者または他の疾患であると考えてよい。デスモグレイン1抗体の有病正診率は89.1%(41/46)、無病正診率は90.9%(459/505)であった。
【保険請求上の注意】血清中抗デスモグレイン1抗体は、ELISA法により、天疱瘡の鑑別診断又は経過観察中の治療効果判定を目的として測定した場合に、区分「D014」自己抗体検査の「15」に準じて算定できる。なお、鑑別診断目的の対象患者は、厚生省特定疾患調査研究事業稀少難治性疾患に関する調査研究班による「天疱瘡診断基準」により、天疱瘡が強く疑われる患者とする。落葉状天疱瘡の患者に対し、経過観察中の治療効果判定の目的で、本検査と血清中抗デスモグレイン3抗体を併せて測定した場合は、主たるもののみ算定する。
【文献】Amagai M et al. : Usefulness of enzyme-linked immunosorbent assay using recombinant desmogleins 1 and 3 for serodiagnosis of pemphigus. Br J Dermatol 140: 351-357, 1999

 

血清中抗デスモグレイン3抗体の測定 (準用先区分D014-15) (区分D-1)

平成15年7月1日より適用の自己抗体検査
保険点数:310点          定量検査
基準範囲:Index値7未満       カットオフ値:Index値で20未満
製品名:MESACUPデスモグレインテスト「Dsg3」
製造・発売元:(株)医学生物学研究所 TEL:052-971-2081
測定法:酵素免疫測定法       48テスト/キット(ダブル測定)
結果が出るまでの時間:約150分   自動化:可
同時再現性:0.6〜4.4%       日差再現性:1.3〜5.4%
検体:血清
【特徴】リコンビナントデスモグレイン3蛋白質を感作したマイクロカップに、検体(抗デスモグレイン3抗体)及び標準血清1、抗Dsg3抗体標準血清2を添加し(1次反応)、さらにペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGを添加して抗原・抗体・酵素標識抗体の免疫複合体を形成させる(2次反応)。これに酵素基質(過酸化水素及びテトラメチルベンチジン)を添加し、発色させる(酵素反応)。反応停止後、吸光度(A450)を測定し、検体中の抗デスモグレイン3抗体の量を測定する。
 天疱瘡は難治性の疾患で、尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡の2種類ある。尋常性天疱瘡は弛緩性水疱と難治性・疼痛性のびらんを有し、ほぼ全例、口腔粘膜にびらん生ずる。一方、落葉状天疱瘡は、鱗屑痴皮を伴った紅斑水疱を特徴とするが、粘膜には水疱を認めず予後は比較的よい。抗デスモグレイン3抗体の測定は天疱瘡の診断、落葉状天疱瘡と尋常性天疱瘡の鑑別診断及び治療効果の判定に使用される。天疱瘡の診断には、患者血清中に表皮細胞間抗体の存在を証明することが重要である。天疱瘡には病因抗体として、抗デスモグレイン1抗体と、抗デスモグレイン3抗体が存在し、これら両抗体の存在を比較することで、単に天疱瘡の診断のみならず、粘膜優位型尋常性天疱瘡、粘膜皮膚型尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡の鑑別診断が可能となり、それぞれの病態にあわせた治療方針の確立が可能となる。抗デスモグレイン3抗体の抗体価は尋常性天疱瘡の治療効果をよく反映し、また、臨床症状の悪化に先立って抗体価の上昇を認めることから、再燃前に治療を開始することができる。
 デスモグレイン1抗体、抗デスモグレイン3抗体のいずれもが陽性の場合は粘膜皮膚型尋常性天疱瘡、デスモグレイン1抗体が陽性で、抗デスモグレイン3抗体が陰性の場合は落葉状天疱瘡、デスモグレイン1抗体が陰性で、抗デスモグレイン3抗体が陽性の場合は粘膜優位型尋常性天疱瘡、デスモグレイン1抗体と抗デスモグレイン3抗体のいずれもが陰性の場合は健常者または他の疾患であると考えてよい。
 デスモグレイン3抗体の有病正診率は89.1%(41/46)、無病正診率は97.2%(458/471例)であった。
【保険請求上の注意】血清中抗デスモグレイン3抗体は、ELISA法により、天疱瘡の鑑別診断又は経過観察中の治療効果判定を目的として測定した場合に、区分「D014」自己抗体検査の「15」に準じて算定できる。なお、鑑別診断目的の対象患者は、厚生省特定疾患調査研究事業稀少難治性疾患に関する調査研究班による「天疱瘡診断基準」により、天疱瘡が強く疑われる患者とする。尋常性天疱瘡の患者に対し、経過観察中の治療効果判定の目的で、本検査と血清中抗デスモグレイン1抗体を併せて測定した場合は、主たるもののみ算定する。
【文献】Amagai M et al. : Usefulness of enzyme-linked immunosorbent assay using recombinant desmogleins 1 and 3 for serodiagnosis of pemphigus. Br J Dermatol 140: 351-357, 1999

 

尿中レジオネラ抗原(準用先区分D012-23)(区分D-1)

平成15年4月1日より適用の感染症血清反応
保険点数:230点 定性検査
基準範囲:陰性
製品名:レジオネラ抗原 「ユカ」
製造元:Biotest AG, D-6072 Dreieich, Germany
輸入元:三菱化学メディカル(株) Tel 03-3283-6124
発売元:(株)ダイアヤトロン Tel 03-3863-6259 (技術統括部)
測定法:ELISA法 96テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:約2時間30分 
  自動化:可(マイクロプレート用自動機器)
検体:尿
【特徴】本法は、サンドイッチ法により尿中のLegionella pneumophila血清型1 LPS抗原を検出するELISA法の試薬である。固相(マイクロプレート)及び酵素標識抗体には同一の抗レジオネラ抗原ウサギポリクローナル抗体を使用している。
レジオネラ肺炎の起因菌であるLegionella pneumophilaには血清型1_15までの15種類の血清型群が知られている。最近では、温泉レジャー施設や24時間風呂などが原因とされるレジオネラの集団感染事例が頻発し、大きな問題となっている。レジオネラ肺炎は急速に進行する劇症肺炎で、早期に有効なマクロライド系あるいはニューキノロン系の抗菌薬が投与されなければ、急激に悪化し、呼吸不全により死亡する。従って、レジオネラ肺炎では発症後すみやかに診断を確定し早期に投与する必要がある。本法による尿中抗原検出法は肺炎発症の初期から陽性となるため、レジオネラ肺炎の早期診断に有効である。レジオネラ肺炎は早期診断の必要性が高い感染症であり、本法により早期診断が可能となることから、レジオネラ感染による死亡率を減少させる効果が期待される。
従来からある診断法には1)喀痰からのLegionella pneumophila菌の分離、2)直接あるいは間接蛍光抗体法による検体中の菌の証明、3)病原体の遺伝子の検出、4)血清抗体価測定などがあるが、検出率が低いことが問題であった。レジオネラ症と確定診断された59例について本キット、血清抗体、培養法、PCR法による検出率を比較したところ、それぞれ64.4%(39/59)、血清抗体35.1%(20/57)、培養法37.1%(13/35)、PCR法62.9%(22/35)となり、本キットが最も高い感度を示した。本法では、検体は尿であり、採取が容易で均一であるため、安定した測定結果を得られる。さらに、本試薬はトータルの反応時間が2時間10分と短時間で結果が判明し、市販のELISA(マイクロプレート)用の自動機器で測定可能である。
【保険請求上の注意】尿中レジオネラ抗原は、症状や所見からレジオネラ症が疑われる患者に対して、ELISA法により実施した場合に限り、区分「D012」感染症血清反応の「23」に準じて、1回を限度として算定する。 【文献】新垣 紀子、比嘉 太、小出 道夫、他:レジオネラ肺炎に対する早期診断法としての尿中抗原検出法の意義.感染症誌.73(5):421-428, 1999

 

HER-2遺伝子(準用先区分D-103)(区分D-1)

平成15年4月1日より適用の染色体検査
保険点数:2000点     定量検査
カットオフ値:2.0以上
製品名:パスビジョンHER-2 DNAプローブキット
製造元:Vysis Inc. 3100 Woodcreek Drive, Downers Grove, IL U.S.A.
輸入・発売元:藤沢薬品工業(株) TEL: 06-6206-7890
測定法:FISH (Fluorescence in situ hybridization)法。20テスト/キット、50テスト/キット、100テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:30時間
自動化:一部可
検体:乳がん組織・細胞
【特徴】2種類の蛍光標識DNAプローブ(17番染色体のセントロメア及び同じ17番染色体上にあるHER-2遺伝子を認識)と固定化した染色体上のターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせた後、蛍光顕微鏡下でHER-2遺伝子の増幅度を判定する。測定対象の組織・細胞の空間的な配置を保持したままで、遺伝子増幅を測定出来る利点がある。
HER2タンパク測定に関しては、平成14年12月6日に血清中HER2タンパク測定、乳頭分泌液中HER2タンパク測定、HER2タンパクが保険収載され、平成13年6月1日にも乳癌組織抽出液中のHER2/neuタンパクが保険収載されている。
 今回のキット(パスビジョン)は、ホルマリン固定パラフィン包埋した乳癌の組織・細胞中のHER2遺伝子を2種類の蛍光標識DNAプローブ(17番染色体のセントロメア及び同じ17番染色体上にあるHER-2遺伝子を認識)と固定化した染色体上のターゲットDNAをハイブリダイゼーションさせた後、蛍光顕微鏡下でHER-2遺伝子の増幅度(HER-2遺伝子のシグナル総数と17番染色体のセントロメアのシグナル総数の比)をFISH(Fluorescence in situ hybridization)により判定する。従来法がHER2タンパクを定性的に測定しているのに対し、本キットは染色体のDNAを定量的に測定している点で異なる。
 Massら(2000年)の報告によると、今回のFISHと従来からのIHC(免疫組織化学法)との一致率は、IHCを基準とした場合、IHC0(陰性)の検体で3.0%(7/214例)がFISH陽性となり、IHC1+(陰性)でも7%(2/30)がFISH陽性となった。IHC2+(陽性)検体ではFISH陽性は24%(21/88)と低値を示した。IHC3+(陽性)の検体は89%(176/197)がFISH陽性であった。FISHとIHCの一致率は81.7%(432/529)、感度は69.1%(197/285)、特異度は96.3%(235/244)となった。
 IHC2+とIHC3+(陽性)で乳がん再発後の初回治療を行った62検体では、FISH陽性の41%(17/41)がハーセプチンに有効であったのに対し、FISH陰性では5%(1/21)がハーセプチンに対する効果を示すにとどまった。 このように、最近の研究結果ではハーセプチンはFISH陽性の患者に対しては非常に高い治療効果を示すが、IHC陽性であってもFISH陰性の場合はハーセプチンに対しては無効であることがわかった。FISH検査を採用することによりIHC検査によるHER2タンパク偽陽性患者を発見し、不要な薬剤の費用を節減することができる。 【保険請求上の注意】HER2遺伝子は、乳癌の転移が確認された乳癌患者に対して、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体抗悪性腫瘍剤の投与対象患者の選択のため、FISH(Fluorescence in situ Hybridization)法により遺伝子増幅検査を行った場合に限り、区分「D103」染色体検査に準じて、1回を限度として算定する。ただし、同区分の「注」(分染法加算:400点)については所定点数に含まれ、別に算定できない。なお、本検査と区分「D101-2」その他の病理組織検査の「3」のHER2タンパクを併せて実施した場合は、主たる点数のみを算定する。 【文献】Tsuda H et al.: Detection of HER-2 /neu (c-erbB-2) DNA Amplification in Primary Breast Carcinoma: Interobserver Reproducibility and Correlation with Immunohistochemical HER-2 Overexpression. Cancer. 92(12): 2965-74, 2001

 

βクロスラプス精密測定 (準用先区分D007−33)(区分D−1)

平成15年2月1日より適用の血液化学検査
保険点数:220点   定量検査
基準範囲:治療開始後、治療前値より33%以上減少したとき、陽性とする。
直線性:100-6000ug/ml
製品名:フレライザβクロスラプス
製造元:Nordic Bioscience Diagnostics A/S, Herlev, Denmark
輸入発売元:富士レビオ(株)  Tel 03-5695-9210
測定法:酵素免疫測定法(ELISA法)  96テスト/キット(シングル測定)
結果が出るまでの時間:2時間30分   自動化:可
同時再現性:1.8〜6.9%     日差再現性:4.9%〜5.3%
検体:尿
【特徴】本試薬は、競合法による酵素免疫測定法(ELISA)試薬である。βクロスラプスを結合させたプレート(固相)に検体と第一抗体及び酵素標識抗体を加えて反応させると、検体中のβクロスラプスと固相に結合したβクロスラプスが第一抗体に競合的に反応し、更に酵素標識抗体が第一抗体に結合すると固相上に抗原抗体複合体が形成される。洗浄操作後、基質(テトラメチルベンジジン)を加えて反応させると、競合的反応した検体中のβクロスラプス量に応じて発色する。これに反応停止液を加えると反応が停止するので、この吸光度を波長450nmにて測定し、同時に測定したβクロスラプス標準液の吸光度から作成する標準曲線よりβクロスラプス濃度の算出を行うことができる。本キットは競合法を用いた酵素免疫測定法(ELISA法)を原理として、尿中βクロスラプスを特異的に測定する試薬で骨吸収マーカーのひとつである。
 今回の申請ではβクロスラプスの使用法を、骨粗鬆症の患者を対象としたHRTやビスフォスフォネート療法を実施した場合に、その治療効果判定および経過観察に限定している。
 そこで、HRT(ホルモン補充法)やビスフォスフォネート療法(他の類似する治療法を含む)の治療効果の判定のために6か月後のβクロスラプス値と2年後の骨塩量(DEXA法)を調べた。即ち、HRTとしてエストラジオールおよびチボロンを用いた治療法を同じ患者に継続実施し、6か月後のβクロスラプス値と治療2年後の骨塩量(DEXA法)を調べたところ、それぞれ有病正診率87%/89%、無病正診率77%/62%、診断効率84%/84%とほぼ同等の結果が得られた。
 同様に、ビスフォスフォネートにアレンドロネートおよびイバンドロネートを用いた治療法を同じ患者に継続実施し、6か月後のβクロスラプス値と治療2年後の骨塩量(DEXA法)の変動率を見ると、それぞれ、有病正診率90%/85%、無病正診率43%/38%、診断効率74%/74%と大きな差異は認められなかった。
 このことから、骨粗鬆症の患者に対しHRTやビスフォスフォネート療法(他の類似する治療法を含む)を実施した場合には、その治療効果判定および経過観察については、従来よりの治療2年後の骨塩量ではなくて、βクロスラプス値を測定することにより6か月後に、治療効果のあるもの(レスポーダー)と、効果のないもの(ノンレスポーダー)を鑑別することができるとしている。
 骨粗鬆症の検査には、NTx(I型コラーゲン架橋N-テロペプチド)、DPD(デオキシピリジノリン)、BAP(骨性アルカリフォスファターゼ)、骨塩定量検査(DEXA法)などが既に保険収載されている。これらの検査と比較すると、βクロスラプスは変動率が鋭敏で、臨床的価値が高い。即ち、健常人8例について閉経前、周閉経期、閉経後についてβクロスラプス、DPD、BAPについての変動を見たところ、βクロスラプスでは100%/180.9%/245.8%、DPDでは100%/140.0%/168.8%、BAPでは100%/132.3%/161.6%とβクロスラプスの変動率が最も高値であった。またHRTとてして結合型エストロジオールを用い、治療後6か月と12か月のマーカーの変化をβクロスラプスとNTxの値で見たところ、それぞれ−48.3%/−61.9%、−34.0%/−46.5%とβクロスラプスの変化率が高値であった。
【保険請求上の注意】βクロスラプス精密測定は、骨粗鬆症におけるホルモン補充療法およびビスフォスフォネート療法等、骨吸収抑制能を有する薬物療法の治療効果判定または治療経過観察を行った場合に、区分「D007」血液化学検査の「33」に準じて算定できる。ただし、治療開始前においては1回、その後は6月以内に1回に限り算定できる。
【文献】折茂肇、他:CrossLapsの臨床的有用性の評価、新薬と臨床、47(5):674-717,1998

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