巻 頭 言

マニュアル化・SOP化

庶務・会計幹事 
高木 康



世の中、右も左もマニュアル化である。臨床検査領域でもSOP (Standard Operating Procedure: 標準操作手順書)が一般に浸透してきており、検査はSOPに則り行われることになる。検査センターでの査察でも、「SOPのチェック」は採点対象となっており、SOPはセンターが最低常備しなければならない書類の1つである。インスペクターは適切なSOPが備わっているかを確認しなければならない。SOPを作成するには、凄まじいばかりのエネルギーを必要とする。臨床検査項目全ての項目について、検体採取、測定機器、測定手順、測定結果報告、トラブル処理、などについて詳細に記載しなければならない。このSOPに従って作業をすれば、検査ができて正確な結果を患者に返却できる、のがSOPである。誰でも同じ検査ができるためにはSOPは欠かせないものである。
 一定の標準した操作により検査を行うにはSOPは優れており、マニュアル化は優れた手段である。そして、少なくともSOPを作成した技師はその検査項目については詳細を勉強し、全てに精通することができる。しかし、これを使用するだけの技師が果たしてSOPを作成した技師と同等な知識と技術を習得しているかは疑問である。しかも、SOPだけを検査室に並べているだけで、内容をほとんど理解していない検査室、検査技師もいる。技師は検査を行うにあたっては、少なくともSOPの欠点を見つけて、あるいはトラブル対処についての新知見を加筆する意欲がなくてはならないであろう。
 マニュアル化は最低の作業はできるもののより良い作業を模索するには妨げになる危険もある。マニュアルどおりに作業していればいい、マニュアルに書いてないことはできない、する必要がない、などの誤った考えが蔓延しないとも限らない。事実、フレキシブルなものの考え方、行動ができなくなった技師が増えており、企業はこのような技師をアテにできないためにますますブラックボックス化に邁進しているように感じるのは筆者だけであろうか。
 検査室のSOPの優秀さは、改訂が多いことであると自覚して、真摯かつ柔軟に検査を行う検査技師を育成し、検査室を構築することが、我々検査医のもう1つの役目ではないだろうか。